下関市の梅光学院中・高校で、今年4月から5月にかけて、有効な教員免許状を持たない非常勤講師が中学3年生の社会科の授業を担当していたことが明らかになり、昨年に続き、また生徒らが補習を受ける事態となっている。保護者らには文書とともに6月中に開催された保護者会の場で説明がおこなわれた。
有効な臨時免許を持たないまま授業をしていたのは、昨年から勤務している非常勤の社会科教員。高校の地歴の教員免許状は持っているが、中学校に関しては臨時免許状で教えていた。しかしそれは福岡県教委が発行した臨時免許状であり、山口県では有効でないものだった。山口県学事文書課による訪問指導のさいに指摘を受けて発覚した。4月から5月13日までにこの教員がおこなった授業について、該当する中学3年生46人は20時間に及ぶ補習授業を、7月から来年3月にかけての計8日間に分散して受けなければならない。
6月中に開催された保護者会の場で樋口紀子校長(学院長、大学学長兼務)は「私どもの見落としであった」と謝罪したものの、大木教頭(県立高校校長を退職し、今年度より同学院に就職)が、「専門的なことになるので、一般教員でも知らないことだ」とフォローするなど、2年連続で同様の事態を招いたことへの深刻さを自覚しているのか疑問視されるものでもあった。山口県で有効な臨時免許については、指摘を受けたあとすぐに申請し、現在は認可が下りているという。
同学院では昨年度にも英語と社会の教員3人が有効な臨時免許を持たないまま授業をしていたことが発覚し、中学生の全学年、高校3年生が夏休みに補習を受ける事態になった。子どもたちにとって中学校・高校での学校生活は限られた貴重な期間だ。問題が発覚したさい、保護者から「また同じことがくり返されるようなことがあれば、安心して子どもを預けることができない」など、厳しい指摘がなされていたにもかかわらず、同じミスを再びくり返し、そのつけが子どもたちに回ることとなっている。
さらに、保護者らのなかで疑問視されているのが、補習内容について「ウェイクアップ全員留学の事前学習として、東南アジアの近現代史を学ぶ」という説明があったことだ。樋口校長は「近現代史に関して幅広く、違う視点で授業をしようということで、全員留学の準備として、アジアの近現代史なども踏まえて幅広く学びを検討したい」と説明し、県学事文書課の許可も得ているとのべた。
本来は必要のない授業に二〇時間もの時間を割くことはもちろんのことだが、その内容について保護者会の場でも意見が出たという。ウェイクアップ全員留学は、今年度から突然導入されたもので、そんなことを想定せず入学した家庭もあるのに費用は校納金で徴収され、「行かないのなら辞めてもいい」といった対応がおこなわれ、生徒・保護者とのあいだで何度も衝突が起こっているものだ。実際に今年度の高校一年生のなかで参加しなかった四人のうち一人が転校を強いられる形となり、そうした対応に保護者のなかで疑問が語られている。
これについて県学事文書課は「同じことを二度やってもということなので、生徒の興味関心にあうよう、学力がつくよう適切に判断してほしいという話をした」と説明している。
梅光学院はここ数年、教職員の雇い止めや退職勧奨を毎年のようにおこない、非正規雇用の教員ばかりに置き換えてきた。学校が回るか回らないか関係なく、意に添わぬ教職員を辞めさせたり、別部署に異動させたりするものだから、事務的なミスも頻発している。「グローバル人材を育てるのだ」と改革を主張しているが、その前に子どもたちが安心して学べる環境を整えること、教員免許を持った教員が授業をする学校にすることが求められている。