いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

タカリ商法の民営化JR  下関・梶栗駅突破口に10駅 税金と寄付で建設

江島市政が下関市内でJR梶栗駅をつくるために住民から強制寄付を集めて反発を食らっている。この梶栗駅は旧市内に新たに8つのJR新駅を建設し、既存の長府駅、下関駅の駅舎を建設する突破口に位置している。江島市政は10カ所のJR駅舎建設・周辺整備に約200億円もの税金をぶちこもうとしている。JR駅を税金でつくらせようというのは全国でも現れている問題である。国鉄民営化はいまにつづく構造改革のさきがけの位置にあるが、その経営たるや鉄道独占ということをいいことにして、自治体や住民へのタカリ商法といわざるを得ない。それはまた、国家財政、地方財政を大企業が好き勝手に分けどりするようにした構造改革なるものの姿を典型的にあらわしている。市民税は上がるばかりで、高齢者は年金は下がり税金は容赦なくまきあげられ、若者には働く場すらなく、小中学校ではトイレットペーパー代まで父母の自己負担。食っていくことがままならない市民にさらにたかる政治はまともではない。



 住民からの強制寄付に怒り


 下関市内では、山陰線のJR安岡駅~綾羅木駅(区間距離は、わずか2・5㌔)の中間に梶栗駅(下関市立考古博物館前駅)を建設する計画が具体的に動き始めている。8つの新駅候補のなかでも先陣を切った格好で、市上層部や1部議員、それをバックアップするJR西日本の鼻息は荒い。この無人駅舎にかける費用は5億6000万円で、JRの負担はいっさいない。


 隣接の安岡駅は1昨年に地域の要望を蹴って無人化されたばかり。トイレ掃除まで地域の人人がボランティアでまかなっている。夜は悪ガキがたまり場にするので、見回りの手間も加わった。その隣の福江駅になるともっとひどい。うっそうと生い茂った草は放置されっ放しで、ホームの主人公といわんばかりである。夜になると電灯も薄暗く「恐ろしい場所」になる。トイレはなくなり水道もストップ。廃駅の1歩2歩手前のような印象すら漂わす。


 現在、便所廃止問題ですったもんだしているのは梅ヶ峠駅である。水道代すら出し惜しみしており、沿線住民のなかには「JRいい加減にしろ!」の思いが充満している。尼崎線事故で露呈した“効率化”経営を物語るには十分すぎるほどである。


 山陰線は近年、いっきに無人駅だらけになった。JRの経営感覚からすれば、まぎれもなく“切り捨て路線”なのだ。現在、安岡駅~長門駅までの区間で駅員がいるのは長門駅、滝部駅、川棚温泉駅、小串駅だけ。その他の15の駅はみんな空箱になった。4年前に無人駅になった川棚温泉駅では、下関市がシルバー人材センターから雇った業務員が切符切りや乗車券発行をやっているあり様である。滝部、小串は委託職員。


 そんな山陰線に突如浮上したのがデラックスな梶栗駅構想で、わずか2・5㌔の区間を割って停車させる必要性がどこにあるのだろうかと、地域住民の多くが首を傾げている。しかしプログラムはトントン拍子で進行し、JR出身や地元自民党市議などが目の色を変え、自治会などを通じて、断りにくい雰囲気で「請願署名」が回されたのがちょうど1年前。頭数をそろえて出るところに出たら「地元要望の請願駅」というわけで、江島市政は「市民の要望に応えます!」の体裁を整え、JR側は「仕方ないから作ってよい」の格好をして突っ走りはじめた。



 「請願」の詐欺商法暴露 熱烈な請願派は不明 


 しかしここにきて暴露されはじめたのが、「請願」の詐欺商法である。地元住民は怒り心頭に発している。地元負担が2000万円とされ、川中地区には1000万円、安岡地区1000万円が課され、自治体や各団体をフル動員して寄付金集めまで始まったからである。文化協会が6万円、婦人会には5万円と各種団体にも割り当てられ、遺族会には「指3本」で30万円が要求された。


 寄付の用紙だけを送りつけてきたとか、各地で住民の神経を逆なでしながら「JR駅舎の金集め」は進行中である。ちなみに真っ先に狙われたのが事業所で1口が1万円だった。誰かがどこかで勝手に決めて、暴走列車のように突っ走る。もともと「1億円程度でできる」という説明は5・6倍に跳ね上がり、「負担はいっさいないから」と説明して署名を集めながら、JRへの箱物利権事業に化けたという悪徳商法である。水道代すらケチる企業に寄付をよこせというから、怒りを通り越して、半ば呆れかえっている住民も多い。


 ちなみに、地域の関係者が梶栗地域の大企業たるMr.MAX福岡本店に、寄付のお願いに行ったところ「駅など作られたらうちの駐車場にとめられて迷惑です」と追い返された。


 わずか1両編成の車両(1時間に1~2本程度)が運ぶ人数ならば、サンデン交通が便数と運行時間を調整し、運賃を全国並に安くすれば楽に解決する問題である。ちなみに、林義郎代議士ジュニアの林芳正副大臣を擁するサンデン交通は、老人パスなどでガッポリ市財政から公金を受けとり、駅前の公有地をバス停として整備させたり、バス停を整備させたりで、昔から公共性を売り物にして市や県の利権で商売をする先駆者のような存在。そういう意味ではJRなど後発企業といってもよいくらい。


 上から上から押しつけてきた「地元請願」の根拠は揺らぎはじめ、「結局、誰が言いだしっぺなのか?」という疑問が、いまになって地域では語られはじめた。それほど熱烈な請願派が見あたらないからである。


 昨年2月の請願署名をとりくむ段、旗頭の一人だった定宗議員(二月の市議選で落選。JR下関駅の助役出身。梶栗駅舎問題などが影響を与えたといわれている)などは「寄付をいったら断られるから、署名を回したあとに頼め」といっていたことは周知の事実である。これは人騙しというもので、“作戦”を聞かされた自治会長たちのなかには、非常に後ろめたい気持ちを抱えながら住民の視線を感じている人も少なくない。福田市議も「私が梶栗駅舎を誘致した!」と選挙で叫んで回った。江島市政やJRとつながって、これらの人人が「上から動かしてきた」という経緯を否定する人はいない。


 なお、3万人目標にたいして、集まった請願署名は1万6000人分。吉見や勝山など、あまり関係のない地域まで手広く書かせて、やっと叩き出した数字である。「名前だけでいいから。寄付はいわないから!」といい、署名を書かなかったら、自治会長が自宅にやってきて書かされたという住民もいる。10万人の有料指定ゴミ袋値下げを求める署名を突きつけられて数10円しか値下げしない江島市長が、この手の「請願署名」には飛びついて5億円ポイッと出すというのだから、「民意の価値」もいい加減な扱いだといわれている。



 JRの駅だけに 通勤や通学に影響・「迷惑千万」と声


 梶栗駅のほかに、水面下で候補として上げられているのが、彦島駅、幡生駅、山の田駅、勝山駅、長府豊浦駅、王喜駅、王司駅など7カ所。市は今後のとりくみについて「地元との調整しだい」と説明する。これだけ作ったら、下関市内はJRの駅だらけになる。現在旧市内にあるのは10駅で、1・8倍に増えたら、それだけ停車時間もプラスされ、バスに毛が生えた路面電車のようになる。旧豊浦郡や山陽小野田市方面から通勤・通学で北九州方面へ向かう人人にとっても迷惑千万という意見が出ている。


 また、既存の駅舎では、長府駅改築と周辺整備に総事業費で29億円かけると、昨年市議会建設委員会(門出眞治委員長、当時)で発表された。これもJR西日本はほとんど金を出さず、市財政でまかなうという、デタラメなものである。


 できた駅の所有権の詳細について市の担当課は明言を避けたがるものの、全国の同様のケースでは、長府で計画されているような橋上駅舎なら、通路・階段などが、地元自治体の所有で、バリアフリーに対応したエレベーターの維持費も地元負担になる場合が多いとされる。全国で税金を使ったJR駅舎建設は多発しており、総事業費の1%も負担しなかったケースなどもある。


 また、目玉は「現在検討中」とされている下関駅舎・駅ビルの再開発である。昨年1月7日に、浮浪者による放火で駅舎や乗務員センターが燃えてしまった。その10日前にJR西日本広島本社と下関市、山口銀行の3者による、下関駅舎改築プラン作成協議会がもたれたばかりで、あまりのタイミングの良さに誰もが疑いの眼を向けた。初期消火の設備も体制もなく、なすがままに燃えたことと合わせて、プランで取り壊しが話し合われていた駅舎と乗務員センターが綺麗そっくり姿を消したことも、市民のなかに深い印象を残した。下関駅舎建設は、安倍氏(当時官房長官)も参加して駅舎建設の決起大会をやった関係。



 市内の業者は排除 小さい談合やめさせ・大手の官制談合


 市民の誰もが知っていることは、先の市長選で江島市長は得票率19%でかろうじて当選した。安倍事務所の丸抱えで、とくにJRが最大動員で選挙を取り組んだ。そして出てきたのが200億円に上ると見られるJR駅舎計画である。これが選挙の利益誘導であることはだれが見てもはっきりしているが、江島市政をめぐる疑惑について山口県警が動いた試しはない。


 またJR駅舎などの建設は、JRの規格があって、広成建設など関連企業しか工事ができないようになっている。200億円余りの市財政を使った事業を市内業者排除でやろうというのである。


 民営化を宣言した私企業であるJRが、国鉄時代にもやらなかったような親方日の丸経営をやり、税金や寄付強要のタカリ商売をやる。それを安倍総理が旗を振り、江島市長と子飼いの市会議員どもが踊り回って推進する。談合廃止を叫んだ結果は、小さい地元企業の談合をやめさせることによって、大手の官製談合をやるというものである。


 それはゼネコンなど大手企業全体がやっている手口である。近年、唐戸市場に80億円、海響館に123億円(三菱重工など)、奥山清掃工場に105億円(落札企業・神戸製鋼所)、リサイクルプラザに60億円(神戸製鋼所、ほか)、現在進行中のあるかぽーと開発に135億円(神戸製鋼所、佐藤総合計画、ほか)、社会教育複合施設に155億円(官製談合疑惑でもめ、再入札に)、頓挫した新博物館に105億円(プランハウス、佐藤総合計画、ほか)と大型公共事業の落札金額だけ見てもすさまじい。


 地元企業は電子入札や大企業のピンハネ構造でダンピング競争に追われて倒産し、大企業が地方財政のタカリをやっているのである。安倍総理代理の江島市長は自由競争といって、大企業のつかみ取り政治に熱心である。


 江島市長の「市財政はボクの金」といわんばかりの食い潰しはさらに加速して、新市庁舎建設や、関門海峡道路(第2関門橋)構想も本格化する様相だ。そうした利権のつけを北海道・夕張のように肩代わりさせられる市民にとっては、たまったものではない。


 目前で繰り広げられる特定大企業による市財政へのタカリ商法は、国政の舞台で見るなら、30兆円もの税金投入を受けて復活した巨大金融機関がそうであるし、北朝鮮騒ぎの陰で迎撃ミサイル開発注文を受注し、株価を上昇させる三菱重工とか、上げればきりがない。10%の法人減税によって大企業は約4兆円規模の減税を受け、その財源は消費税の2%アップ(1%上げただけで2兆2000億円もの増税になる)で賄うとか、大企業が元気になる分は「国民に肩代わりさせろ!」の主張となんら変わりない。


 下関の江島市長によるJRの駅舎新設ラッシュ計画は、綾羅木地域の寄付を強制される住民だけの問題ではない。10駅もつくる全市民の問題であり、全国で現れている問題である。さらに大企業の財政タカリ商法による、住民食いつぶし政策の典型的な問題である。


 現在下関では、市民が行動すれば市政を動かすことができるという空気が強まっている。老人の憩いの施設である満珠荘をつぶす計画に対して署名活動が始まったが、綾羅木地域でも行動をして計画をつぶそうの動きがおきようとしている。文化会館建て替えの入札やり直しをやろうという動きがあり、あるかぽーと計画を再度議会に提案するという話も流れている。これらの諸問題の根は1つであり、全市民共通の問題として、それらを阻止し、市民の生活を守る世論と運動が発展しようとしている。

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。