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核攻撃想定の市民総動員  下関市国民保護計画  米軍事行動のための弾圧体制

 下関市の江島市長は、開会中の3月定例議会において、武力攻撃事態などを想定した国の有事法制にもとづく「下関市国民保護計画」を報告した。A4判123ページにわたるぼう大な報告書で、下関市に対する「着上陸侵攻」や「核兵器攻撃」などの「武力攻撃事態」があると想定し、市、自衛隊、県警の連携、自治会や住民の対応などを詳細に明記。全国初の訓練を六連島でやるとしている。安倍総理や江島市長の「戦争ゴッコ」とはいっておられない、まことに不気味な内容となっている。

 六連島で全国初の実働訓練


 「下関国民保護計画」は、下関の地形や気候、道路・鉄道・港湾の配置などを分析した第1編の「総論」と、市役所各部局の役割配置、運送業社や病院、自治会などとの連携体勢を明記した第2編の「平素からの備え」「着上陸侵攻」「核兵器攻撃」など、具体的事態における市の動き、住民の動き、避難方法などを定めた第3編の「武力攻撃事態等への対処」を中心に構成されている。その他、第4編で「復旧」を、第5編で「緊急対処事態」を取り上げている。


 第1編では、「国民保護法におよぼす地域特性」として、自衛隊基地や石油コンビナートが存在すること、3方が海に開け国際航路があることなど7項目があげられ、対応した武力攻撃事態を想定。中身は、「小型船舶が接近しやすい沿岸部が当初目標になりやすい」「石油コンビナート等への攻撃と2次被害」(着上陸侵攻)、「政治経済の中枢、鉄道、橋梁、ダムに注意が必要」(ゲリラや特殊部隊による攻撃)などだ。


 第2編では、平常時における市役所内の組織・体勢を各部局ごとに決定。市民部は、国民保護法の作成や見直し、訓練の実施や啓発などを担当し、総合政策部は、バス・トラックなど運送手段の支援要請と能力の把握を担当。財政部は住家情報の把握、保健部は医療、医薬品などの供給体制整備、消防局は、武力攻撃事態における対処策に関することなど、具体的に配置している。


 中でも、消防局、守衛・警備員の当直体制をふくめて24時間即応を作ることや、消防局に加え、避難住民などの誘導に役立てるため消防団を充実し、国民保護措置にもとづく訓練に参加させること。医療機関や学校、大規模事業者などからの情報収集体制を整えること、運送業者の輸送能力の把握、医療機関との連携強化が強調されている。


 その他、食料から建設資材、化学防護服や放射線測定装置、ヨウ素剤、ワクチンにいたるまでの物資、資財の備蓄・整備を国、県と連携しながら進めるとしている。



 市役所の体制を規定 戦時は全課に役割分担


 戦争状態に突入したときの体勢を定め最大注目となる第3編では最初に、市の体勢を決定。体勢は、事態レベルに応じて変化するとされている。まず、「武力攻撃やテロ活動がありそうだ」との通報があった場合には情報収集をはじめ、国が「武力攻撃事態」と認定する可能性がある場合には、先取りして江島市長を室長とする「緊急事態連絡室」を市役所本庁の7階大会議室に設置。メンバーには、副市長、各総合支所長などが入る。そして、国から「本部設置」の通知がくれば、本格的な「対策本部」を設置するのだという。


 「対策本部」には、「平素からの備え」と同様に市役所の全部局、職員が組み込まれ、戦時の役割を各部、各課ごと詳しく具体的に分担させられている。主なものは、行政管理課と職員課が、労務者の雇いあげ事務などを受け持ち、管財課が、緊急車両の確保・借り上げ・配車など。商工振興課は、食料の確保や輸送車両・業者の確保、総務課と企画振興課が、対策に必要な海域確保や障害物除去、教育委員会の体育課は、ヘリポートの設置や管理をやることとなっている。


 負担が大きいのが、消防局や防災安全課だ。消防局の場合、水火災の警戒・防御や住民の避難・救助などのために、戦場のなかや核・生物・化学兵器で攻撃された現場に無防備で送り込まれる。また、防災安全課の職員などとともに攻撃された地域、攻撃されそうな地域の警戒、米軍・自衛隊などの対処地域への立ち入り制限、退去命令の仕事が課せられる。その上、じゃまになる市民の土地、建物の没収や排除なども加えられている。


 第3編では、戦争状態となったときの住民に対する警報発令、避難方法なども記されている。住民への警報通達では、戦前の空襲警報のように、大音量でサイレンを流し続けて注意を引いてから事実を伝えるのだという。その後の避難方法については、弾道ミサイル攻撃では、コンクリート造りなど堅牢な施設に入れとか、ゲリラ攻撃では一時的に安全な場所に隠れてから待避する、市内は徒歩で施設まで、県内、県外待避であれば借り上げた車両で移動など抽象的な計画のみだ。


 全体として「国民保護計画」とはいうものの、緊急事態となった場合の市各部の任務やレベルに応じた体勢、国、県、自衛隊、県警、医療機関、交通機関などとの連携方法や手段などが中心となっている。企業や学校、自治会、消防団などとの連携を強調しているのも特徴で、「市民保護」はそっちのけの、いわば戦時中の国家総動員法ばりの挙国一致体制の具体化となっている。



 有事法の具体化 米軍の軍事作戦最優先


 そもそも、「下関市国民保護計画」をつくるよう定めた国民保護法は、戦時国家発動の手続きを定めた「武力攻撃事態法」や自衛隊の先制攻撃を認めた「自衛隊法」、米軍の戦争サポートのための「米軍支援法」など、有事法制の1部分にすぎない。一連の有事法制は、アメリカのアフガン戦争、イラク戦争、米軍再編などと歩調をあわせつくられ、インド洋での油の無償給油、自衛隊のイラク派兵などがおこなわれてきた。


 すべての骨格となる周辺事態法は、戦時体制に移行するための根拠となる「事態」について、攻撃されると予測される事態、攻撃がせまっている切迫事態、攻撃が実際におこなわれた発生事態の3つを想定。米軍が攻撃し自衛隊が後方支援をしている状態では、自衛隊への反撃が当然にも予測されるから、そのまま「予測事態」となり戦時体制に移行。さらに、「ミサイルが発射されそうだ」という“客観的”な情報がはいれば、自衛隊が防衛出動し、米軍から「ミサイルに燃料が注入された」とか「日本と戦争するための基地をつくっている」との“情報”が入れば、自衛隊が先制攻撃できるなどとした、むちゃくちゃな法律だ。


 その上、米軍支援法や一連の自衛隊関係の法律によって、いざ「有事」となれば、すべてに優先して空港から港湾、鉄道、道路、施設の自由な使用権、作戦のために土地・建物をかってに没収し基地をつくることなどが米軍に認められるよう定められている。逆らえば刑罰がもうけられており、地方自治体もすべて組み込まれている。


 「国民保護法」もその一環であり、避難などのための国民保護よりも、作戦行動が優先されるのは常識となっている。ここ数年、全国各地でテロ対策訓練などがおこなわれてきたが、訓練の“先進地”鳥取県では、計画どおり住民を避難させようとしたところ、作戦行動をとるための米軍・自衛隊などによって道路、港湾、空港、施設などが専有されたため「職員が愕然とした」のだといわれている。


 下関にゲリラ部隊が侵攻するとか、ミサイル攻撃や核攻撃があると想定し、大まじめで対処計画を作るような事態は異常きわまりないものである。拉致問題で騒ぐ北朝鮮は、日本を攻撃しても占領する力はなく、むしろ報復ミサイルの雨でめちゃくちゃに破壊される関係にある。いつも戦争を仕掛けているのは日本に基地を置くアメリカである。


 着上陸作戦を問題にするなら、アメリカが戦後62年間、日本に対してやり続けている事実である。そして日本全土を焼き払ったあと、日本を占領し、中国革命への干渉戦争をやり、朝鮮戦争をやり、ベトナム戦争、そして今のイラク戦争と、戦争に次ぐ戦争を放火してきたのはアメリカである。


 アジアにおいても、日本に武力攻撃があるとすれば、米軍が日本全土を基地にして北朝鮮や中国、ロシア、アジアに戦争を仕掛ける体制を強めているからである。日本から米軍を引き上げさせ、これらの国国と友好連帯の関係を作るなら、日本を戦場とした戦争の危機などなくなるのは当たり前である。


 アメリカが日本を戦争に駆り立てるときなどは、日本海から米艦船がミサイルを日本の都市に撃ち込み、「北朝鮮がやった」など騒いで攻撃する、というシナリオなどが考えられる。戦争をやるときは、敵が攻撃をしたから防衛するといって人をだまして駆り立てるのが常識である。


 今度の「国民保護計画」は、アメリカが日本を戦争に駆り立てるときに、全国の市町村を使って国民全体を総動員態勢で縛り付け、戦争反対の行動を押さえつけ、米軍が自衛隊を従えて日本全土で自由な軍事行動をやろうとするのが最大の眼目といえる。国民保護の中身は国民拘束にほかならない。

 六連島実働訓練 住民総動員までも計画


 江島市長は、「国民保護計画」の報告と同時に、さっそく六連島で実働訓練をする方針を明らかにした。内容は、六連島にある石油タンクが攻撃されると、「予測される事態」「攻撃された事態」を想定したもので、住民、市職員、消防はもとより、海上保安庁や警察、自衛隊までをふくめた大がかりなものを五月末ごろまでに計画中といわれる。全国でも、市町村レベルで実働訓練をおこなっている自治体は見あたらず、「1番のり」を目指しているとみられる。


 下関では、近年、米軍艦船が港を好き放題に利用できるようになり、一昨年からは、テロ対策訓練などが頻繁におこなわれるようになった。港には、テロ対策として一般人が立ち入ることのできないようフェンスがはりめぐらされた。また、商業港としては、利用価値が見込めない人工島に何100億円もつぎ込み、関連して下関インターや第2関門橋などとも連携する周辺道路も驚くほどの整備が進んでいる。北朝鮮との核実験騒ぎのなかで、臨検港として下関の名前があがったほどで、人工島が米軍基地となることも十分予測されている。


 安倍総理代理の江島市政は、市民生活を食い物にして箱物利権に突っ走り、市民の不人気は極点に達している。そして戦争熱心ではぬきんでている。市民に忌み嫌われるほど戦争でものをいわせないようにすることに熱心なのであろう。


 下関市民にとって、生活は困難になり、政治に声も届かなくなり、ハコモノ利権暴走でわざとでも財政をパンクさせ、北九州への身売り計画を達成し、そして下関を要塞都市にするという基本コースが姿を現しつつある。これは市民にとって、構えて立ち向かうべき事態となっている。

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