下関市にある梅光学院大学の学生有志は15日、「渡辺玄英先生の授業を来年度も受講することができるよう」要請する署名103筆を学院に提出した。渡辺玄英准教授は、文学部人文学科の日本文学・文芸創作専攻で教鞭をとっているが、今年度限りでの雇い止めを通告されている。文芸創作のゼミ担当は渡辺玄英准教授と村田喜代子客員教授(小説)の2氏しかいない。これまでも専門的な指導を受けてきた教員たちが次次にいなくなっており、「深く学びたい」という学生たちの思いは強まっている。学生有志らは、渡辺玄英准教授の雇い止めが俎上にのぼった6月頃から夏休みを挟んだ9月にかけて、以下のように署名を呼びかけてきた。
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渡辺玄英先生は、2016年に思潮社出版の現代詩文庫より詩集が発行されるなど文学界から高く評価され、現代を代表する詩人として認められている。受け持っている文芸創作のゼミナールでは、詩を創作するにあたって、創作全般の質の高い知識や技術を指導して下さっている。また、ハイカルチャーだけでなくサブカルチャーにも深く精通しておられ、現代詩研究などの専門的な授業はもちろんのこと、映画論やサブカルチャー論などの科目は、学年、専攻に関わらず、毎年多くの学生が受講している。その質の高い授業を受講する学生は多く、授業を受講できなかった学生やゼミナールに所属していない学生も休み時間や放課後に渡辺玄英先生の元を訪ねて指導を仰ぐ学生もいる。多くの学生が渡辺玄英先生に厚い信頼を寄せており、1年生や2年生にも授業以外の場で指導を受けている学生もいる。来年度以降も大学で授業がおこなわれることが強く望まれる先生であり、今年度限りでの雇い止めに1年生から4年生の多くの学生が失意している。
浅薄な学問になる事を懸念
この署名には、一昨年の矢本特任准教授の雇い止め撤回を求める署名と同じく100人を超える学生が署名を寄せている。文学部では、数年前に着任した教員も雇い止めになるが、それらをまったく知らない学生も多く、署名のなかで驚きの声も多かったという。
今年度の3年生は、渡辺准教授の持つゼミが締め切られ、所属することができなかった。詩を学びたい学生たちは「裏ゼミ」と呼び、自主的に渡辺准教授のゼミに参加するなどしてきた。学院は代替教員を公募しているが、担当予定科目は「文芸創作ゼミ(専門・散文)、日本語表現」となっており、来年度、詩を専門とする教員が着任するかどうかは不明だ。
署名にかかわった学生たちは、「まだまだ詩を学びたいという思いが強くある学生も熱意を持って署名を集めてくれた。大学の募集要項にはなぜか小説を募集していて、来年、詩の先生が来るかわからない。詩の大切さを理解していない」と話している。
学生有志は15日付で学院に署名を提出し、「学生の意志を真摯に汲み取ったうえ、学生や保護者、渡辺玄英先生に対して、雇い止めにすると判断した理由を十分に説明する」ことを要求し、正当な理由が見当たらない場合には白紙撤回を求めている。
また今年2月におこなわれた子ども学部教員の雇い止め反対の署名、5月に学生有志より提出した要求状(質問状)を学院が黙殺していることに関して、誠実な対応を求め、「真っ当な対応をお待ちしています」と結んでいる。
梅光学院大学は先人たちの努力によって「文学の梅光」という地位を確立してきたが、この間の「改革」による雇い止めなどで文学部の教員らが続続と学院を去った。古典、近世、中世、近現代、創作と全分野を網羅する教授陣がそろっていた文学部はすでに惨憺たる状態になっている。
専門の教員の首を切り、かわりの教員をかき集めて来るものの、専門外の教員が授業を担当する状況が拡大しており、浅薄な学問になっていることを学生たちはもっとも問題にしている。これまで、学生たちの署名や要望に対して「怪文書だ」などとして黙殺してきた学院がどのように対応するのか注目される。