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22日下関で『蒼のシンフォニー』上映会 ー日本で生まれ育った朝鮮学校生徒たちの物語ー

「今だからこそ見てほしい」山口朝鮮初中級学校の母親たちが企画

 

 朝鮮学校の生徒たちが祖国である朝鮮民主主義人民共和国を訪れ、さまざまな人人との出会いを通して人間的に成長する様子を伝える長編ドキュメンタリー映画『蒼(そらいろ)のシンフォニー』(朴英二監督、2016年製作・95分)の上映会が22日の昼夜2回、下関市で開催される。山口朝鮮初中級学校の保護者、教員らでつくる実行委員会が主催する。

 

 『蒼のシンフォニー』の副題は「日本で生まれ育った朝鮮学校生徒たちの物語」。日本各地の朝鮮学校は戦後、在日朝鮮人1世たちが子弟に植民地統治で奪われた民族の言葉や歴史・文化を教え、誇り高く生きていけることを願って設立した。今、学校で学んでいるのは、日本で生まれ育ち祖国の地にふれたことがない在日3世、4世の子どもたちである。高校3年生になると修学旅行で北朝鮮を訪れ、これまで学んできた認識を実際に見聞したことで裏づけ、豊かな人間性を育む契機となっている。

 

 朴監督はみずからも朝鮮学校出身者で、これまで北朝鮮と韓国を自由に往来してきた。映画は、茨城朝鮮初中高級学校の男女生徒(58期生)11人が3年前に北朝鮮を訪問したとき、同行して撮影した場面がそのほとんどである。

 

 カメラはピョンヤンを中心に同世代の若者との交流や合唱、散髪屋のおじさんとの掛けあいなど日常生活を送る市民との人情味あふれる出会いを映し出す。生徒たちが、テレビでは見たことがなかった北朝鮮の老若男女の自然な姿に肌身で接し、相互に深まる心の通い合いをとらえている。

 

 生徒たちは、写真でしか見たことがなかった美しい風景や歴史文化に見入り、遊園地やプールのウォータースライダーではしゃぐ一方で、板門店の軍事境界線では眼前の祖父母の出身地に足を踏み入れることができない、南北が分断された民族の苦悩を噛み締める。滞在を終えた生徒たちは別れを惜しみ、涙をぬぐって日本に戻った。ある生徒は「なぜ、父や母が寮にまで入れて朝鮮学校に入れたのか、わかったような気がした」と語る。

 

 

 

 朴監督は、「この生徒たちの姿の中に、世界中の人人に通じる普遍的な何かが存在する」と語っている。さらに、「子どもが教育を受ける権利は、政治や外交と関係なく保証されるべきだ」との思いが、この映画製作の根底にあることを明らかにし、こう続けている。

 

 「日本で報道される“北朝鮮”と、自分の目で直接見た朝鮮の姿はあまりにも違いすぎている。朝鮮の人たちは毎日軍事演習をして表情も硬く、飢え死にしていく、そんなイメージを持っている場合が多い。だからこそ、面白いおじさんもいれば、親切なおばさんもいる、朝鮮の日常をそのまま見せることがとても重要だと考えた」と。

 

 さらに、「とくに、今のように政治と外交が複雑な状況の中、国民たちが政治に一方的に流されてはいけないのではないでしょうか。とにかく会って対話をして互いに理解していかないといけない。それを遮断してしまえば状況はさらに悪化するしかない」と訴えている。それは、浮ついた政治宣伝が飛びかい、情報が遮断された北朝鮮に2500万人もの人人が暮らしている現実に心を寄せ、平和への道を模索する日本国民の心情と響きあうものである。

 

 『蒼のシンフォニー』は2016年、「ダラスアジアン映画祭」で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞している。下関実行委員会は、「朝鮮情勢が緊迫化する今だからこそ、多くの市民の方方に見てほしい」と、観賞を呼びかけている。会場は、竹崎町のシーモールシアターで、22日午後2時と夜7時からの2回。上映後に朴英二監督のトークも予定している。チケットは1500円(高校生以下無料)。当日券もある。問い合わせは事務局(090―1356―2832)。

 

朴英二監督

 

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