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給与差押え解除求めると逮捕 下関中尾市政・39歳の労働者  冷酷な税取立てに全市的怒り

 下関市で26日の夕方、市役所を訪れていた39歳の男性が「不退去」の容疑で逮捕される事件が起こった。男性は市納税課を訪れて給与の差押えを解除するよう求めており、市職員の数回の退去要求に応じず、閉庁時間を過ぎても帰らなかったためだという。翌日の新聞報道には警察発表として小さく扱われたが、この事件は市民のなかで衝撃的に受け止められている。この間の中尾市政による差押えに対する怒りは市内で渦巻いている。下関の経済の疲弊と市民生活の窮状は尋常でない事態に至っており、生活の糧である給料まで差し押さえるという中尾市政の冷酷さに、血税で箱物にうつつを抜かしている市長や税金にたかる市議会の実態とあわせて、深い怒りが湧き上がっている。
 
 市民にたかる市長や市議

 今回逮捕された男性を知る人たちの話によると、おおよそ次のような事情のようである。
 男性は約2年分の市県民税を滞納していたが、滞納している自覚はなく、勤め先の会社が天引きして支払ってくれているものだと思っていた。しかし突然市役所から「すぐに払わないと差し押さえる」との通知が来て驚き、問い合わせると「固定資産を差し押さえるか、給与を差し押さえるか二つの道しかない」といわれた。
 子どもや妻、妻の両親なども抱えているため、一度ですべてを支払うことは難しい。市役所と交渉しようとしたが受け付けられず、給与が差し押さえられた。男性が納税課に出向いて、すぐに解除するよう求めると、市職員は「変わることはないから帰ってくれ」との対応で、話し合いに応じる姿勢はなく、男性が「こちらの話は終わっていない」と、午後7時16分頃まで窓口で話し合いに応じるよう求めていたら、警察が来て逮捕された――。

 誰の為の市役所なのか 激増する差押え 

 真面目に工場で働いている労働者が、市役所に交渉を求めただけで逮捕されたのである。中尾市政になってから激増している差押えを巡っては、市民のなかでさまざまな事例が語られている。今回の事件は改めて「だれのための市役所なのか」との怒りを喚起している。
 自営業の婦人は、最近知人の50代の男性が税金を滞納したといって、同じように給料を差し押さえられたと話す。勤め先の会社に市職員が来て、差押えの手続きをしていったため、社長や同僚からも信頼を失い、いたたまれなくなって長年勤めてきた会社を辞めざるを得ない事態に追い込まれた。「何千円、何万円という単位でも差押えに来る。大きなところはやらないで、なぜこんなことばかりやるのか」と客のなかでも語られているという。
 「市役所の窓口に行って、分割して払う約束をしても、“これで差押えが解除になったとは思わないで下さい”といわれる。約束通り分割して払っていても金が入り次第、それが仕入れの金であろうが差押えに来る。そんなことよりみんなに仕事があって、金が回るようにするのが先ではないか」と深い憤りを込めて語っていた。
 またある建設業者は、数年前に払い忘れていた市県民税が滞納として残っていた。「こっちにはなんの連絡もなく、すっかり忘れていたら、元請に市が行って差し押さえていた。元請から連絡があり、初めてわかって慌てて払いに行ったが、市民が生きていけないようなことを市が平気でしている」と語っていた。
 ある年配の婦人は、息子が電話で「2カ月分滞納していたから、お母さんがかけてくれていた生命保険を解約することになった」と連絡してきたと話す。終身の生命保険を解約したときにわずかに出る解約金を差し押さえていったという。飲食店で働く息子夫婦の給料は安く、払い物をしたら手元にはいくらも残らない。病気になったりしたときにはなにもないから、心配した母親が長年かけてきたものだった。50代になりこれから病気が出てくる時期。一度解約すれば、次に契約するときには年齢が引っかかって入りにくくなる。市民の切実な生活に心を寄せることない市の冷淡さに怒りを語っていた。

 産業疲弊の復興が急務 税収落込む一方 

 下関市では江島市長時代の平成17年度から「集中改革プラン」の一環として徴収強化がうち出され、とくに平成20年度を境に差押え件数は急増してきた。「経営者視点」を自慢する中尾市長が2年前に就任してからは、税金だけでなく国保料や保育料をとり立てる体制づくりを進め昨年(22年)度からは「徴収を強化してさらに5億円を捻出する」と熱を上げてきた。しかし市がとり立てればとり立てるほど、市の自主財源である市税収入は落ち込む一方。ここ2、3年で30億円近く落ち込むという異常事態になっている。
 税収が落ち込んでいるのは、「悪徳滞納者」が増えたからではなく、根本の問題は下関の産業が疲弊し、経済が崩壊していることだ。下関を支えてきた水産業が衰退し、地元建設業界には仕事がなく、市役所の仕事をすれば安くたたかれる。失業・倒産があいつぐなかで、市民の消費購買力は落ち込み、商店には客が来ないし、大型店にも客が来ない。下関の衰退は尋常ではない事態になっているという実感が広がっている。
 豊前田商店街でも「これまで飲みに来ていた人がぱったり来なくなった。下関の疲弊状況は異常事態だ」と語られている。リーマン・ショック後一段と落ち込んできたが、今年に入り震災を経てさらに深刻となっており、市民のなかでは最大の課題は下関の産業を復興させ、若者が働く場をつくることであり、そうしなければ下関がつぶれてしまうことが切迫した問題として語られている。
 中尾市長や議員連中が、こうした市民の窮状とは別の世界でうつつを抜かしていることが市民のなかで我慢ならないものとなっている。中尾市長は命を削って働いている市民からとり立てた税金で市庁舎建て替えや消防庁舎の海沿いへの移転、駅前開発など箱物利権で使い果たそうとしており、また市長の側近が税金で職を得る。そして議員たちが選挙を巡って、税金を横領していたことが明らかになっても、議員連中は開き直った状態にある。こうした現実に市民の怒りは尋常でないものとなっていることすらわからないと、みんながいっている。
 ある商店主は、「税金の滞納が莫大な金額になっていて、払えといわれたから、親戚に頭を下げて回り、何百万円というお金を借りて払った。その金がペンギンの餌代や箱物で使い果たされてしまうと思うと腹が立って仕方がない。せっかく払った税金を市民のために役立つものに使ってほしい」と怒りを語る。
 商店には客が来ないが、それは市民の購買力がなくなっており、市内の仕事も職もまともにないことを問題にしている。下関のあらゆる業種全体がそれぞれ依存しあって成り立っており、全体が良くなるようにしなければ、一つ一つの企業もそれぞれの市民も良くならない。そのような市民全体の声を形にし力にすることが切望されている。
 そしてその力は、安倍、林代理の江島・中尾市政の下関食いつぶし政治を規制する以外にはできない。とくに規制緩和、新自由主義と称して、「市民のため」「下関の発展のため」などどうでもよく、一部の連中が利権をむさぼる略奪政治を転換させることが急務となっている。
 「私は市役所の社長」という中尾市長の下で、市民からとり立てるばかりの仕事をしている市職員のなかでは、市民の反発に直面して、また職員削減で夜の10時過ぎまで働いて、精神的・健康的にも追い込まれる者も少なくない。職員の多くも極限状態におかれている。
 市民経済を疲弊させ、ハコモノ利権ばかり追求させたら、市税収入も激減するばかりで、市財政も破綻するのは必至となる。自治体職員も「市民のため」「公共のため」「下関のため」に、市民と団結し、職員全体が団結することにしか展望がなくなっている。

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