全国の地方議会で議会基本条例を制定する動きがすすんでいる。下関市議会でも、関谷博議長が全国市議会議長会の会長になったのを契機に「議会改革」を唱え始め、来年春の制定を目指した動きとなっている。下関の市議会が市民のことなど心配するものはおらず、もっぱら自分の損得ばかりで、各会派がうちそろってオール与党体制で、市民の前で威張るばかりとは議員本人らが思っていることである。条例がなかったから腐っていたので、今度は条例を作ったら議会が変わるとはだれも思っていない。条例で決めようという内容は地方自治法で昔から定めてあることで、それを絵に描いた餅にして実行するのは別というのが問題の焦点となっている。この議会基本条例について見てみたい。
言った事とやる事はまったく別
11月中旬から、下関市議会は議会基本条例の住民説明会を開いてきた。開催するのを自治会長にも知らせず、狭い研修室しか用意しないなど、表向きは住民に説明した格好で、実態は住民に集まって欲しくないという二面的な姿勢。そこで示されたのは「市民に開かれた議会にする」「市民の模範として活動する」など、どれも当たり前のことで、わざわざ条例にする必要などない文面ばかり。議会の質を向上させるための「最高規範」なのだという説明であった。
条例では、「議会とは二元代表制の下で運営される合議制の機関である」「市民の立場から、適正な市政運営が行われているか監視し評価する」(議員の活動原則)といった、地方自治法で定められている文面をなぞっているに過ぎない。そのほか、傍聴を排除して密室政治をやってきた常任委員会や特別委員会を原則公開にすることを目玉としている。これも「原則」という言葉を入れて、公開しなくても問題にならない表現にしている。また市長や執行部に「反問権」を与えることを目玉にしている。
今度の下関の条例には「~するよう努める」「原則的に」といった曖昧な表現が多い。やってもやらなくてもどうでも良いという解釈ができるように配慮している。そのなかで、執行部側が「来年からの一般質問が楽しみ」と喜んでいるのが反問権の付与である。議員が市長や執行部に対して質問する本会議の場で、市長や執行部が質問議員に対して反論したり、逆質問を浴びせることを認めるもので、議員をやりこめることを認めようというのである。チェックを受ける側が問題をすり替えたり、逆に攻撃に回るなど、ますます一元代表制にしてしまうこと、議会のチェック能力をなくすことが危惧されている。
下関市議会の現状の問題としては、9月議会で市民の会の本池議員の質問に対して、中尾市長が1時間中黙り続け、まったく答えない出来事があった。議会の冒涜であり市長の失格であった。しかし、市長答弁を促さなければならない関谷議長も黙認で、執行部側にたって議事を進行し、議会は本池議員をせせら笑ってやり過ごした。議員がみずから自分ら議会をバカにしている姿を暴露した。答弁をしない市長は懲罰するような規則を作るのが先の問題となっている。現状では、質問の意味については執行部側から問いただすことはやっており、気に入らない議員の質問については、中尾市長が好き放題に反論しており、大声でまくしたてる場面もある。その状態をもっとひどくするということになる。
いずれにしても、条例を決めるということは、二元代表制とか、議員の政治倫理とか、まともにやっていなかったことを意味している。ところが条例が決まったから議員の行いが変わるかどうかわからない。いうこととやることが全然違うのが問題なのだ。
無所属蚊帳の外に暴走 会派天国の議員差別
下関市議会では、全国的に見ても異例な議会ルールが発達してきた。「所管の委員会で審議されている案件を所属議員が本会議で口にしてはならない」という発言規制は少し緩和されてきたものの、「3月議会では予算議案以外のことを質問してはならない」等等、議会みずからの自主規制ルールが多い。議会はしゃべってはならない議会、執行部を追及してはいけない議会になっている。安倍、林代議士の利害に差し障りのある案件に口を挟むと、所属議員たちが寄ってたかって質問を妨害するという制度も発達している。
さらに委員会の傍聴は山口県内のすべての自治体で公開され、「やむを得ぬ場合は秘密会にする」というのが地方自治法で定められた原則であるのに、下関市議会では、長年にわたってモニター中継がある第3委員会室以外での審議は秘密会となり、委員会の議事録が出てくるのは数カ月後。市民が重大な関心を持っている議案でも、「部屋が狭い」「記者クラブ加盟者以外の部外者は入れない」といって閉め出してきた。
今回の基本条例で初めて「市民の委員会傍聴を認める」としたものの、「原則公開」という但し書きが付き、やってもやらなくてもよいという形にしている。
さらに会派会長会議、議会運営委員会で実際には議案の扱いを決めてしまい、無所属を蚊帳の外にして暴走する仕組みになっている。山口県議会のような一人会派(4つ)は認めず、無所属議員に知らせないままの情報が多いのも特徴。会派天国の議員差別である。そして会派はみなオール与党のなれ合い体制。
今回の議会基本条例も会派の代表らが作成したものを「34人全員で決めました」「下関市議会の総意です」といっている。「市民に開かれた議会を目指す」(基本条例)のはもちろんであるが、まずは議員に開かれた議会にすることが課題となっている。また、議会運営委員会、さらに会派会長会議のような、よそは公開している秘密会についてもすべて公開することが求められている。
実費以上の支給野放し 報酬千万円超に加え
会期で拘束されるのはわずか年間40~50日であるのに、報酬1000万円プラスアルファをもらいながら、政務調査費(年間60万円)、委員会視察旅費(12万2000円)、一般調査視察旅費(15万円)など、ふんだんな税金によって飼い慣らされて、市民感覚はすぐ失い、市民に威張るだけの議員ができる。選挙カーの公費負担に対する不正請求など氷山の一角で、税金に群がるのが当たり前になっている。
11月に総務委員会が兵庫県明石市、静岡県沼津市に2泊3日の視察旅行に出かけたことがあった。2時間の視察を終えるとその日はやることがなく、「夕食代」として議員一人一人に9000円があてられた。そのお金で、「夜の部」を楽しんで来いというもので、2泊の夕食費で計1万8000円が支給された。
議員たちが視察に行く場合、宿泊費(食事込み)として1泊1万4800円プラス2000円の日当が支給される仕組みになっている。仮に宿泊費が5800円だったら、残りの9000円が「夕食代・飲み代」として議員が好きにできる制度になっている。なぜ飲み代まで税金で支給されるのか議会事務局にたずねたところ、「実費支給ではなく、概算でお渡しすることになっているからだ。条例でそのように定められている。日頃疎遠だった人も含めて、議員さんたちが酒も入りながら交流されるのは良いことだと思う」という見解だった。
さらに視察から帰ってきた数日後、総務委員会のメンバーたちには「視察旅費の余りです」(議会事務局)といって、今度は1710円入りの封筒が手渡された。予算として使い切れなかった残金を議員たちに分配するシステムになっているとの説明であった。総務委員会の本池妙子市議が初めての視察に際して、驚きの連続だったことと合わせて明らかにした内容である。返還しようにも受け付けられず、概算で組み立てた予算はみな消化するよう、余ったお金まで議員の小遣いとして山分けする制度が定着している。
視察旅行になると、まるで遠足に行く子どものように議員たちがはしゃぐのは、こうした背景があるからだと指摘されている。出張三昧の市長にも同様の概算払いが適用され、そのたびに「夕食代」「飲み代」が公金から支給されている。物価の違う中国や韓国に行けば、「9000円」の小遣いが大変なことになる。条例で実費支給に切り換えることが待ったなしとなっている。
条例案では政治倫理を説いているが、実態の解決ができないものが何をいうかというのが市民の怒りである。選挙カー費用をタクシー会社に一括請求したら実費の2倍の45万円が支給され、選挙前年には「もうかる方法がある」と話になって11人もやった。このような事件を議会みずからが解決できない。しかも、下関の市議会で決めた条例の解釈を総務省に聞くという、議会の権限も責任も放棄した態度をシャーシャーととってきた。罰則規定のない公費負担条例はそのまま放置して再発防止策もとらず、公金横領のような犯行を罰する条例にする気はない。
また、議員生活者の実態として、企業に顧問料をたかったり、社員待遇で5万~10万円もの報酬を出させて斡旋業をする者がゴロゴロしている。委員長ポストを得たら業界を回って小遣いをせびったり、豊前田での飲み代の支払いは企業名を記入してツケ払いさせたり、マスコミ記者まで企業のツケで飲ませたりする実態はよく知れ渡っている。こういう実態をまん延させた上で、政治倫理の条項をいくら決めても人をだますだけである。
地方自治体は二元代表制という建前だが、下関はそういう規制は早くからなくなって、執行部・議会一体の一元代表制を実行してきた。「市民の代表」とか「議会の執行部にたいする監視機能」などというのは吹っ飛んだ勢力が圧倒してきた。何十年も前から連合も公明党も自民党安倍派で、「日共」集団までみんな仲良く、1000万円プラスアルファの議員報酬とさまざまな税金泥ボー制度で飼い慣らされて、市民とは別世界の棲息物となってきた。そして二元代表制などどこの世界の話かという調子のオール与党体制で、議会は早くからないのと同じ状態になってきた。
専決処分乱発の阿久根市長の議会無視、防府市長の議員削減、名古屋市長も、大阪府知事もで、議会の無駄、腐敗をあげて議会をなくしてしまう流れが強まっている。現在の下関の議会は市民のだれが見ても腐っている。議員がボロだから減らせと市民がいっているといって定数を削減し、組織票だけがものをいって、市民が代表を選挙で議員にしようとしてもほとんど不可能な状態になってきた。議員の歳費は半分以下にして、定数を増やして市民がもっと議会に入れるようにすることが必要となっている。
下関は議会が執行部の付属物になる点では全国先端を走ってきた。今度の下関の議会条例は、今度は二元代表制をやるという格好で、実はもっと議会がない状態にすることが予測される。いったこととやることはまったく別というのが多すぎるのだ。二元代表制をなくし、議会機能をますますなくすために、二元代表制の条例を決めるという手法と思われる。