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中尾市政4年の評価問う  本池・下関市議の一般質問

 下関市議会12月議会が20日をもって終了し、中尾市長にとって、最後になるかもしれない一般質問が終わった。下関市民の会の本池妙子市議は、19日に一般質問をおこない、中尾市政四年間の総括について問うた。深刻さを増す下関の経済情勢や社会動態、新卒者の就職状況、雇用問題への対応について追及し、この4年間をどう評価するのか中尾市長に見解を求めた。本池議員の質問と、執行部の答弁を要約して紹介する。
 本池 中尾市政の4年間がまもなく終わろうとしている。この4年間といえば、リーマンショック直後からの厳しい経済情勢のもとで、市民の生活も以前とは様変わりしてきた。MCSの大量解雇もあったが、老舗の倒産も相次ぎ、この師走に入ってからは、さらに深刻さを増していることがさまざまなところで話題になっている。市政とのかかわりで見ると、市税収入が激減しているのも一つのあらわれだ。下関の産業がのるかそるかが問われ、地方自治体の役割が増すなかで、中尾市政四年間とはどのようなものであったのか、市長選を前に検証することが必要だと思う。
 
 下関の経済情勢とその対応、認識について


 本池 まず下関をめぐる動態や経済情勢をどのように認識し、対応しているのか聞きたい。この4年間の人口減少数はどのようになっているのか。出生数、地元企業の倒産件数はどのようになっているか。負債総額も教えてほしい。また、産業別にはどのような特徴があると認識しているのか質問する。「失業率」も聞きたいが、執行部からの聞きとりの際にこれまでと同じく、「失業率はわからない」「有効求人倍率なら」ということだったので、それでお願いする。
 大﨑総合政策部次長 人口減少数は平成20年3月末から平均で毎年2113人減少している。直近の平成23年3月から平成24年3月末までは2524人となっている。出生数は平成20年は2156人、最新データの平成22年は2145人となっている。
 三木産業経済部長 企業の倒産件数は、TSR情報によると、負債総額1000万円以上において、平成20年は26件、負債総額約175億円だったが、24年10月末では31件、負債総額45億円。建設関連業が両年とも件数の4割をしめているのが特徴。有効求人倍率は、平成20年10月末現在は0・96倍、世界的な金融経済の悪化により平成21年6月末には0・54倍今年10月末現在は1・00倍まで回復した。
 本池 来春卒業予定の高校生の就職状況や実態について、市としてどのように把握し、認識しているのか明らかにしてほしい。4年前の数字との比較もお願いする。
 三木産業経済部長 平成20年3月卒業者の就職内定率は99・5%だった。今春卒業者は99・6%。県内就職内定率は平成20年が99・3%、平成24年が99・5%。
 本池 私は11月から12月にかけて市内の5つの高校を訪ね、来春に卒業する生徒さんの就職状況や、市内にどれくらい就職することができ、市外に出ていく生徒さんはどれくらいいるのか、また厳しい就職戦線の実情について、先生方にお話をお聞きした。社会に巣立っていく子どもたちのために、先生方も大変な思いでサポートにあたっておられた。就職に強いといわれる工業高校でも、担当の先生たちが早くから企業回りをおこない、卒業生の力も借りながら一つ一つの求人を確保されたようだ。三井金属の子会社MCSが工場閉鎖し、来年は三菱重工も造船不況で仕事がないとか、神戸製鋼も以前のようにはいかないというなかで、必死だったそうだ。
 求人を出す企業数が同程度あっても、前年まで3人だった求人枠が2人とか1人に減っている状況が共通して語られた。さらに、4年前にはなかった非正規の求人も学校に上がってくるようになっている。大学や専門学校への進学希望者が、今年は進学にかかる費用の負担感やその後の就職の困難さを考え、進学をやめて就職希望となる生徒が増えているとのこと。普通科や商業系には女子生徒が多いが、女子の状況はさらに厳しく、事務職はなく、専門とはちがう販売やサービス業、介護の仕事、しかもパート求人が増えてきたといわれていた。市内に希望する仕事がないので県外に出る生徒が増えている。
 ある学校では昨年は県外に就職した子は1割だが、今年は3割だといわれていた。別の工業高校では、なるべく地元で就職したいと希望する生徒が増えているといわれていた。「下関で生まれ育った子どもたちがずっと下関で働いて暮らしていけるようにしてやりたい」と先生方は語られ、農林水産業も含め、市内に雇用をつくり、下関を担って生きていけるようにしていくことこそが何よりもしなければならないことだ、ということだった。新卒者だけでなく、現役世代も同じことがいえると思う。この4年間の産業政策について、中尾市長はどのように総括しているのか、ご本人に尋ねる。
(中尾市長答えず)
 三木産業経済部長 市としては金融面の支援で中小企業者の経営安定に努めている。求人確保では、市長が率先して企業を訪問している。
 本池 私は中尾市長に産業政策に対しての総括意見を聞きたいと思っている。本人が答えるべきではないかと思うが次の質問にいく。箱物建設や開発は相次いでおり、いわば中尾市政版ニューディールなのかと思うが、そのお金はいったいどこに消えていったのか? 市民のなかで循環したのか疑問だ。今年の暮れは、中小企業の職場では年末のボーナスや餅代もなく仕事がないまま年を越さねばならない市民も少なくない。市庁舎建て替え工事がやられている真ん前の唐戸商店街には「長年のご愛顧ありがとうございました」と閉店を告げる貼り紙がされた店舗をいくつも見かける。市長が「自分はこれだけやったのだ」と実績を披露されるのとは裏腹に、産業は衰退の一途をたどり、市民経済は冷え切り、見通しがないというのが実際だ。出生数は横ばいとはいえ、人口が4年間で1万人も減少し、地元企業が数十軒なくなっている。個人商店を入れればもっと多いと思う。有効求人倍率は上がっているということだが、パートはあってもずっと働ける正規の仕事はないのが市民の実感だ。
 質問だが、下関は県下でももっとも市民所得の平均額が少ない街に該当する。平成21年度で市民所得の平均額は253万6000円。平成24年現在の数値はもっと下がっていると思う。失業者に対する対応を見ると国から降りてくるお金の規模だけで決まっていく「緊急雇用対策」ではとても間に合っていない。しかも状況は悪くなっているのに、予算枠は雇用対策事業も縮小されるばかりだ。職安には市民がひっきりなしに訪れているが、今年はいったい何人の緊急雇用がおこなわれたのか。市としては失業者に対する対応はこれで十分だと思っているのか。
 三木産業経済部長 今年度の緊急雇用対策による雇用人数は手元にない。緊急雇用については市では基金積み増し、事業継続の政府要望をおこなっているところ。これも市長に直接いっていただいた。
 本池 市民が働いて食べていけることで、地方自治体に税収が入る。市民の仕事を保障し、公共の福祉に資するのが行政の使命だ。仕事がないのも自己責任というのなら、産業政策などに行政は責任を負わないということを意味する。以前も質問したが、昭和50年代まで見かけた失業対策事業を本格的に実施する必要があると思うが、市としておこなう意思はないのかお聞きする。また産業政策も現状で良しとするなら歯止めがかからない。この四年間、ないしはそれ以前から観光傾斜が際立ってきたが、どう思われているか。
 三木産業経済部長 失対事業について、過去にあったのは事実。それを市単独で実施するというのは非常に厳しい。市がもらっている緊急雇用についても恒久的な雇用につながるものではない。
 本池 緊急雇用ではなく、国がやっていた失対事業を市としてやってほしいという声が出ているので、ぜひ検討してほしい。
  
 公約について

 本池 次に公約について。これはぜひ市長にこたえてほしい。前回市長選で、中尾市長が出した公約は、市庁舎は建て替えない、満珠荘は老人休養ホームとして再開する、あるかぽーとは芝生公園に、地域内分権で四町を活性化する、などだった。ここにあるのがそのとき配布されたマニフェストと選挙公報だ。これらの公約を破棄したことについての認識はどうか。今度の市長選にも出馬されるそうなので、この四年間でどうされたのか、今一度見解をのべてほしい。
 中尾市長 いきなり破棄といわれて、答えろといわれて、そうですかと答えにくいが答える。公約については92%だとホームページにのせている。
 本池 公約を破棄したという認識はない、ということか。
 中尾市長 公約の破棄というのはない。一部変更というのはある。政治の世界ですから。公約を放り投げたといわれるとこっちもがっかりだし、これ以上答えたくない。
 本池 見解の相違とか、進化だとかいわれてきたが、このような印刷物にして大量に配布された公約を市民は信じて票をいれた。中尾市長が市長になるために市民をだましたと声が出ているがそれについてどう思われるか。
 中尾市長 公約破棄とは考えていない。市民のみなさまとの大切な約束ですので誠心誠意とりくんできた。議会のご理解のもとに、一部変更はありえる。
 
 主だった事業の評価について

 本池 次に主だった事業の評価について改めて尋ねる。それぞれの評価についてなので、中尾市長に答えていただきたい。まず消防庁舎について。先ほど聞いていないのに答えられたが、この問題は私も議会で何度も質問してきたが、東日本大震災を経て防災について抜本的な見直しが始まっているなかで、海沿いの埋立地に建設することについて、どのように評価しているのか見解をのべてほしい。
(中尾市長答えず)
 金子消防局長 危惧した液状化だが、地盤改良工事で対策は十分できた。津波に関しては地震発生から3時間30分なので十分に体制はとれる。高潮についても十分な消防活動はできる。ご理解いただきたい。
 本池 次に下関駅にぎわいプロジェクトについて。駅周辺整備に民間も含めると150億円を投じる大きなプロジェクトだ。JR西日本と山口銀行、下関市が三者で進めている事業だが、にぎわっているのはだれなのか? という疑問は市民のなかで強いものがある。JRが建設する駅ビルには、イズミが長府、川中、そして新椋野に続いて出てくると聞いている。地元商店ははじき出されてしまった。この事業全体についての評価を尋ねる。
 赤沼都市整備部長 東口で安全祈願祭を実施させていただいた。着着と工事を進めているところ。駅周辺の活性化を図るために必要な事業というふうに考える。
 本池 次に中央病院について聞く。今年の4月から独法化し市民病院になっているが、市民の反応はどうか。さらに看護師、医師の人数はその後どうなっているのか聞きたい。4年前の職員数と現在の職員数もお願いする。また、入院患者数は4年前と現在との比較でどうなっているか。6階病棟が閉鎖されているが、どうしてそのような事態になっているのか、今後どのように解決するつもりなのかお聞きする。
 綿谷病院事業部長 平成20年12月1日現在の職員数は全体で421人。そのうち医師が58名、看護師は275名。今年12月1日で比べると全体で417人。医師63名と看護師256名。来年に23人採用を予定しており、退職者を除いても増員の見込み。院内に投書箱を設置しているが、「病院の雰囲気が良くなった」などの意見をいただいている。6階西病棟については、看護師が減員したことで休床している。平成24年度から4年間の中期計画で7対1看護配置への移行を優先しているが、できるだけ早期に移行し、6階西病棟についてはその後の状況を見て検討したい。
 本池 中央病院が市民病院になるにあたって、看護師のみなさんは「患者さんのために良い医療にしたい」と願い、議員にも思いを綴った手紙が届いた。独法化を急ぐ行政との矛盾があったと思う。この過程でたくさんの看護師が退職し、市民病院になってからは募集してもなかなか入って来ない現状がある。少ない人員で患者にかかわることは困難で、蓄積した疲労等等は患者さんへの対応にもあらわれる。また命に関わる職場において職員が入れ替わることによって、それまで築き上げてきた連携や意思疎通といったチームプレーにも影響が出ることは否めない。立体駐車場ができ、医療機器は高額なものを導入されるようだが、それを使いこなす人間の側、医療体制そのものが混乱しているのでは元も子もない。市民病院になってからどうなったのか? と心配する声を市民のみなさんから聞く。市長は状況をどう把握しているか、独法化後の市民病院の評価をお聞きする。
 中尾市長 市長としては覚悟をもって切り替えさせていただいた。本池議員と評価が逆。私の聞く範囲では医師も看護師も希望をもって働いている。本池議員の調査は間違っているのではないか。
 本池 教育では、川中中学を教科センター型にしたが、評価はどうか市長に聞きたい。また、市内の学校現場で、「トイレそうじに学ぶ会」のみなさんが素手や素足によりトイレ掃除をされていると聞いた。校長先生や教頭先生に、いいことだということで呼びかけられているとか、「教員の新任研修にとり入れる」という話も耳にしたが、いったいだれがどういう経緯ですすめているのか。
 波佐間教育長 川中中について、一つは(教室のつくりなどあげて)生徒の興味関心を引き出しやすい、二つ目に教室移動のなかで、異学年との交流が増えた、三つ目に教室が近く気軽に相談に応じられ、生徒とのふれあい時間が増えた、という報告を受けている。「そうじに学ぶ会」では、会員やボランティアを中心に毎月1回トイレ掃除をおこなっている。狙いは心豊かな人間社会を作ることだと理解している。自主的に参加させてもらったが、毎回心を洗われるような清清しい気持ちになっている。教育委員会としては、学校を貸し出すことにとくに問題はない。
 本池 教育長が呼びかけをしているということか。
 波佐間教育長 私自身、一市民、一ボランティアとして参加しており、教育長ということではない。趣旨については大いに賛同している。
 本池 たしか下関支部長の松村久さんは中尾市長の後援会会長だったと思う。市長もかかわっておられるのか。
 波佐間教育長 中尾市長から、そういう話は一切したことがない。
 本池 やっておられるのは何年前からか。
 波佐間教育長 詳しくはしらないが150回を迎えたので12で割れば年がでる。
 本池 個人がどのような掃除をされるかは自由だが、市民から見て、教育の理念からしても、市長周辺の特定のイデオロギーが教育の場に持ち込まれているのはあってはならないという声が出ているが、どう思うか。
 波佐間教育長 イデオロギーとは関係ないと思っている。
 本池 現場の先生のなかで疑問視する声が出ている。その点では検討されないといけない。
 
 税金の取り立て強化について

 本池 次に税金の取り立てを中尾市長は強化してこられたが、市税収入が減少し、差押えが増大しているが、4年前との比較でどうか。
 片山財政部長 過去4年間の税収のなかでも市民税でみると、平成20年度は個人分が132億2200万円、法人分が40億700万円で合計172億2900万円、23年度は個人分が約118億円、法人分が33億4600万円、合計151億4700万円となっている。過去4年の差押え件数は平成20年が1634件、23年は2732件となっている。
 本池 払いたくても払えない市民の暮らしを改善するのではなく、取り立てを強化するだけではまったく解決にならないが、この点について市長はどう評価されるか。
(中尾市長答えず)
 本池 最後に、中尾市長は記者会見の場で前回市長選で掲げた47項目の公約に対して、達成率は92%と自己評価されていたようだ。何をもって92%なのか教えてほしい。
 中尾市長 異儀田議員の質問で、いろいろくわしく答えたので、市役所のホームページをみて、ご自分で検証していただけるか。
 本池 自分でひと言でもいわれるかと思ったが大変残念だ。公務員の勤務評価でも、直属の上司や部下が点数をつけるそうだ。中尾市政4年に対する評価は市長自身が下すものではなく、来年3月10日に市民が選挙で下すのだと思う。中尾市長との最後の一般質問になるかもしれないが、これで私の一般質問を終える。

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