下関市長選で現職・江島潔市長が、安倍事務所丸抱えの選挙で、得票率19・3%という不信任を突きつけられて2カ月が過ぎたが、反省の色はなく、さらに度はずれたハコモノ利権事業に突っ走っている。6月市議会には展示するものもハッキリしない新博物館を108億円もかけて可決させようとしている。つづいてし尿処理場、細江町の新文化会館、JR西日本の駅舎改築、新市庁舎など、矢つぎばやである。いずれも建設費がべらぼうに高く、さらに運営費が異常なほど高い。安倍事務所がらみの特定業者だけが独占している。次期総理と騒がれる安倍代議士が安倍カイライ市長にたいして「アンフェアなことはやめろ」といえばやらないことは明らかだが、そうはいっていないことを示している。アメリカン・スタンダードばやりであるが、まるでシカゴを支配したアル・カポネ親分のようなものがいて、市長も議会も警察署長も各政党やマスコミも子分になって、文句をいうものはたたきつぶし、さんざんに市財政を食い物にするという暗黒政治があらわれているとも語られている。
特定業者が独占 異常に高い建設費と運営費
21日に開かれた市民討論会では、母親たちのアルマイト食器をかえる教育アンケート運動につづいて、新博物館にたいする意見があいついだ。「市長はアルマイト食器には財源がないからできないといい、一方ではだれが見に行くのかもわからないような博物館をつくらないといけないのか」(唐戸・商店主)、「議員すら展示内容を知らないということだが、いったいどんな役に立つというのか」(70代男性)など、108億円も税金を使って建てることに、怒りが噴き上がった。
当初の計画どおりにいけば、プランハウスグループとの本契約は6月末であるが、展示内容がいまだに決まっていない。なにを展示するか、それがいかに大事かなどどうでもよく、108億円を使うことばかりが先行している。
市の文化財保護課によると、5月末に予定している仮契約のあとに、プランハウスグループが具体的な展示内容について決めるという、ゲタ預けである。市議会の文教委員会(中田博昭委員長)は、6月に入ってやっと長府博物館など市内の施設を見学するありさま。
市のホームページで明らかにされた計画の概要は、長府博物館に収蔵している既存の資料や出土品がおもな展示内容になるという抽象的なもの。各界著名人をアドバイザーとした企画や、映画監督を起用した映像展示、3次元データ作成などを上げている。市当局は「初年度の入場者12万人、通常は年間8万4000人の目標水準を設定している」と、契約にうたってあれば心配ないという対応。
108億円の内訳は、新博物館と駐車場の建設費が29億円(開業準備も含む)で、管理運営費が63億円、出資者配当金が5億円、金融機関へ利息支払いが9億円などとなっている。新博物館は1階から3階まで鉄筋コンクリートで、延床面積は4490平方㍍。外壁はガラス張りで、展示スペースが1300平方㍍、収集・保管に716平方㍍、1階にシアターやレストラン、2階は展示室、3階は多目的室などという内容である。坪単価で60万~70万円もかければ、じゅうぶんな建物ができると建設業者のあいだでは指摘されている。
1983年にオープンした計画地に隣接する市立美術館は、延床面積で新博物館を上回る4736平方㍍で、総建設費は13億円であった。1993年にオープンした豊北町土井が浜の人類学ミュージアムは、約2000平方㍍で総建設費は10億円であった。内閣府の統計データによると、PFI事業による公共発注に比べて民間発注は、20%以上の予算削減効果があるとされている。そのうえ公共工事であった市立美術館と比べると、設計施工を一括することからしても、新博物館は10億円を切るとみなされている。立体駐車場をふくめても新博物館の建設費29億円は、ピンハネするにしてもひどすぎる金額である。
管理運営費は年間三億円超
また管理運営費の63億円は、年間にすると3億1500万円にのぼる。総勢17人の人件費としているが、類似施設と比較したところ6倍も高い。人類学ミュージアムは、正職員4人、臨時職員9人の総勢13人で、昨年度の年間予算は5380万円であった。1年目は14万人が訪れ、近年は2万人前後となっている。新博物館の企画内容とも似ている京都市東山の幕末維新ミュージアム(霊山歴史館)は、総勢17人の職員で年間約5000万円の予算となっている。毎年10万人の入館者があり、昨年は維新ブームで20万人と倍増したという。こちらは財団法人が運営する民間施設で、入場料と顕彰会の寄付だけで成り立っている。
下関市内にすでにある文化施設のそれぞれの運営費は、長府博物館・2700万円、考古博物館・7400万円、美術館・1億6700万円、烏山民俗資料館・817万円、ホタルミュージアム・2100万円、歴史民俗資料館・3000万円となっている。
類似施設と比べて2億数千万円、20年間で50億円近くにのぼる税金が、いったいなんの差額なのか、どこに流れていくのか、そうとうのピンハネとみられる。
地元業者は「公平な競争」のかけ声で電子入札・ダンピングの「経済制裁」状態であるが、この108億円事業はプランハウスグループだけの無競争という江島市長の二重基準。だがゼネコンをふくめて、「江島市長の私設秘書である疋田善丸氏や佐藤総合計画(東京)がからんだグループなら参加してもむだ」という官制談合の評価が定着して、みんなはじめから参加しないようになっているのである。プランハウスの佐野公一社長は、安倍晋三代議士の選挙で選挙用街宣カーの運転手をつとめ、業界でも知られた「安倍代議士の側近」といわれる。
10年続けた到達点 箱物利権の黒い構図
この新博物館事業にはじまる四期目の安倍代理・江島市長のハコモノ利権の構図は、この10年やってきたことの到達点といえるものである。下関市における大型公共事業は予定価格が異常に高いうえに、談合情報どおりに、神戸製鋼所などゼネコン、大企業が落札しつづけてきた。全国的に騒ぎになっている橋りょう談合の平均落札率九四%などほとんどが上回るものである。
神戸製鋼所は安倍代議士の出身企業として、下関市の環境施設を牛耳ってきた。2000年5月におこなわれた奥山工場ゴミ焼却炉の入札は、超大型であるにもかかわらず、指名業者がわずか3社で、実績がまったくない神戸製鋼所が110億円で落札した。また2001年8月におこなわれたリサイクルプラザの工事発注も、入札に参加した共同企業体のうち神戸製鋼所以外の6グループが途中、すべて辞退する異常さのなかで、事前の談合情報どおりに神戸製鋼所九州支社が、落札率99・9%の60億円で随意契約した。
そのほか終末処理場や下水関係などもふくめると、神鋼グループが受注した公共事業は、5年間で200億円をこえる。江島市長の側近である疋田善丸・私設秘書が、安倍事務所の陰の実力者で警察上がりの元秘書と組んで、利権事業をすすめてきたといわれる。神鋼は土木建築の実績はないため、ゼネコンの西松建設へ丸投げしてきた。下請の大部分は九州など他地域から入っていたが、そこでのやり方は略奪や詐欺のようなものだった。
数千万円の追加工事代金を支払ってもらえず、倒産した鉄工所のケースや、土木工事で踏み倒された下請など、表に出てきたのは氷山の一角で、数知れない中小業者が泣かされている。ゼネコンが引っかけるのは、本契約以外のやりなおしの工事や追加工事は、契約書をかわしていないことが多いため、もし裁判になっても下請の中小業者が泣き寝入りせざるをえないケースが多い。相手が倒産してしまえば本契約されていないから、支払わずに数千万円のもうけになるという、ヤクザがよく使う手口で詐欺以外のなにものでもない。
奥山工場ゴミ焼却炉の入札後すぐの2000年6月には安倍事務所に火炎ビンが投げこまれ、発砲されるという事件も起きている。前年四月の市長選で対抗馬を中傷するデマビラをばらまいたヤクザが、見返りとして江島市長と安倍事務所から公共事業を発注してもらう約束をしていたが、ほごにされたことに腹をたてて、九州の暴力団といっしょに騒ぎを起こしたものだった。疋田善丸氏や平川敬一助役(当時)の自家用車が焼き討ちにあい、安倍晋三代議士の車庫にも火炎ビンが投げこまれた。リサイクルプラザ工事の入札がおこなわれた2001年にも、中国一円や九州から黒塗りの街宣カーが来て市役所のまわりを中心に拡声器でがなりたてていった。大型公共事業から生み出された黒い金をかぎつけて、集まってきたその道の人たちだった。
江島市長がポストについてから10年間で、新水族館、新唐戸市場、奥山工場ゴミ焼却場、リサイクルプラザ、沖合人工島など、900億円近い大型公共事業がおこなわれてきた。このうち疋田氏や安倍事務所周辺が、3~5%近くをリベートとしてぬきとっているとも語られている。金額にすると二十数億~四十数億円にのぼる。現在すすめられている彦島のし尿処理場も、予定価格60億円のうちリベートとして1億8000万円が三菱重工に要求された話や、PFI事業の文化会館や新市庁舎についても、同様のうわさ話が絶えない。
市民苦しめる根源 大事業で大規模抜き取り
またそのようにして建設したものの運営費が異常に高いのも特徴である。奥山工場ゴミ焼却炉は大手焼却炉メーカーのタクマが、2002年まで年間1億8000万円の委託契約で運営にたずさわっていた。市からの委託費は1人当り600万円の人件費が支払われ、そのなかにはショベルカーやダンプの燃料や経費もふくまれていた。総勢27~30人のうち二交代制で16人の労働者が、150㌧と220㌧の焼却炉二つを遠隔操作で運転し、破砕機に6人、灰運搬や汚水処理、プラットホームに各1人、それに事務所に2人といった配置であった。ほぼ全員が正社員であった。
ところが2002年末に150㌧炉が廃止され、疑惑の新しい180㌧炉が稼働するとともに、神戸製鋼所に委託が切りかえられた。タクマは稼働中の220㌧炉の管理からもはずされた。タクマにとってかわった神鋼環境ソリューションは、年間4億円という前年の実に2・2倍の委託契約をかわした。人員も2倍強の総勢63人にふやされ、1人当り600万円に乗じた契約額が結ばれたとみられる。
神鋼環境ソリューションの正社員は、所長と副所長2人をふくめた5人。9割以上の人たちが出向や下請、別会社から引っぱってこられた人たちだった。220㌧炉は神鋼環境ソリューションでは運転できないため、タクマへ下請に出すといういびつな形になった。賃金や条件が下がったためにやめたという労働者は、「子どもや妻を養えるような賃金でなかったため、別に職を求めざるをえなくなった」と語っている。この運営費もものすごいピンハネがおこなわれているとみて不自然ではない。リサイクルプラザで働く労働者をあわせると、神鋼環境ソリューションだけで100人近くの人材派遣をしており、年間2億円のオーバーホール代をふくめると約8億円が毎年支払われている。
奥山工場管理は、高いゴミ袋の値下げを求める市民世論に押されて、今年度分からは入札となった。しかしわずか3社しか参加せず、神鋼環境ソリューションが3億7800万円で落札した。4月中旬におこなわれた市議会の環境消防委員会では、ほかの2社の名前すら明かされず、入札の日時や方法についても、3月末としただけだった。資料もまともに出さず市議会の冒涜(とく)もはなはだしいのに、追及しようという市議はほとんどいなかった。
運営費については、新水族館も年間7億円の委託料が支払われているが、支出先には疋田氏と安倍事務所がらみの業者が占めているといわれ、メスが入れられることはなかった。警察や国税の出番であるが、出たことはない。
今度の市長選挙まで来ると、江島市長は安倍代議士の代理市長であることがだれの目にも明らかとなった。安倍代議士が「そんないかがわしいことはやめろ」といえば、すぐにやめることは明らかである。江島市長がそれをやめずに突っ走るのは、安倍代議士が「やめろ」といわないことを証明しており、「やれ」といっている可能性の方が大きいことを示している。
当選するはずがない汚れた江島市長を、権力と金でむりやりに当選させたのは、安倍代議士みずからが汚染しているからと指摘されている。それは「1930年代のアル・カポネが支配したシカゴ市と同じではないか。経済界をはじめ市役所から警察、暴力団まで配下においている。公共事業からばく大なピンハネをおこなっている」と語られている。「総理候補と騒がれるが、その資金づくりのために下関が食いつぶされているのだろうか」とも語られている。
市内の婦人を中心に、ゴミ袋の値下げを求める運動はさらに大きくなっており、学校給食で犬猫以下のアルマイト食器のやりかえを求める運動はさらに大きくなっている。ダンピング入札で苦しむ地元業者、妻子も養えぬ労働者、あるかぽーと売却を策動することに怒る商業者など、それらの市民の困難は、大型事業で税金の大規模ぬきとりをするシカケによってもたらされている。
江島代理市長を操る安倍代議士の姿勢を問うことなしに、下関市民の困難の解決はない。安倍代議士は「北朝鮮を経済制裁する」と叫んでいるが、すでに早くから下関市民がさんざんに経済制裁を受けている。