下関市では2日から12月議会が開催されている。下関市民の会の本池市議は11日に一般質問をおこない、市立大学のトイレ改修問題の経過をはじめ運営費が少ない問題や教育機関として正常な運営がなされていない問題について追及した。また下関港の存亡がかかった問題として解決が切望されている、岬之町のガントリークレーンの廃止ならびにコンテナターミナルの人工島移転を強行している問題をとりあげた。質問の要旨を紹介する。
下関市立大学について
本池 一般質問で何度もとりあげてきたが、市立大学のトイレ改修費が焦げついた問題のその後の進展について尋ねたい。市としては「和解することによって、損害金の回収の見込みが立つ」ので市立大学は和解に応じたという説明をしてきた。過払いになった990万円、再入札でかかった620万円も本来なら必要なかった経費なので損害として扱われなければならない。合計1610万円の損失が市立大学にきちんと返済されたのか、990万円だけでなく620万円も含めたすべての損失が回収されたのかどうかお聞きする。未納金額があるとしたら現時点での入金額はいくらか、利息延滞金はどうなっているのか、完納期限はいつかお聞きする。
松崎総務部長 A講義棟トイレ改修工事に関する損害賠償請求の裁判の和解については、内容については公表しないということが裁判上の和解の条件とされているため、市立大学としては公表しないと聞いている。大学としては損害金を回収することを最優先し、平成25年7月13日に和解した。この和解で損害金の回収見込みが立ったということだ。回収については順調に進んでいると報告を受けている。再入札後の追加の工事によって増額となった部分についても回収は順調に進んでいると報告を受けている。市立大学の平成25年度の財務諸表付属明細書の長期貸付金について期首残高1210万5000円、期末残高790万5000円と記載されており、平成25年度中で420万円の回収があったものと推測されている。利息等については和解内容について公表しないということなので了知していない。期限についても存じ上げていない。
本池 420万円ということは1610万円のすべてではない。まだ未納ということか。
松崎総務部長 財務諸表のうえでこちらが読みとったものだ。大学側からは順調に返済されていると伺っている。
本池 この問題については何度も執行部に尋ねてきたが、「和解内容を公表しないこととする」という文言を盾にして、みな煙に巻いてきた。訴訟記録の閲覧に制限が加わる前に和解文書を見た読売新聞の記者は「元事務局長が200万円を支払い、元総務グループ長は建設会社の大学側に対する債務のうち990万円までを連帯保証することで和解した」という事実を記事にしている。しかしそれでは損害額の1610万円にはならない。全額回収できる見込みがあるといえるのか。
松崎総務部長 大学からの報告によると合わせて双方の回収の見込みは立ったから和解という話を聞いている。
本池 公金の扱いについて、裁判の和解条項を盾にして曖昧にしたまま秘密扱いすることが通用するのかどうかだ。しかも閲覧制限を求めた上申書のなかでは、議会に報告する場合はその限りではない、とあるのに、どうして議会に報告することがはばかられるのか?どう認識しているのか。
松崎総務部長 和解の内容については存じ上げていない。市としては別の人格を持った市立大学の話なので内容について話すことはできない。
本池 この問題は公金の扱いを巡って非常に不透明な部分を残したまま「決着」扱いされているように思う。市政全般において同じような事例が発生した場合、最後には秘密にされるようなことが常套手段になったらどうなるのか懸念しないわけにはいかない。なぜ今回のような問題が起きたのか、誰が何をやったのか、その背景まで含めて執行部もみなわかっていることだと思う。議会の場で、いつも消化不良のような議論にしかならないことに疑問を感じるし、そこまでしていったい何を守っているのか?という印象を抱く。
次の質問だが、事務局や市役所OBかかわりでの公金の扱いに不透明な部分がある一方で一般職員や教員にはおおいに「透明性」を求めているようだ。些末な話かもしれないが、先生方の研究室の入り口のドアにもうけた透明ガラスののぞき窓に「張り紙をしてはいけない」と通知があり、大きな問題になっていることを聞いた。建て替え前の旧校舎の研究室のドアにはガラス窓はなかった。新校舎になってから、大きな透明ガラスののぞき窓がつき、まるで教員たちを監視しているかのようだ。「ハラスメントが起きるから」という理由のようだが、先生方はハラスメントを起こすものという認識で市立大学は運営されているのか。
松崎総務部長 本館棟、1棟、2棟の新設にあたっては事前に市立大学と十分な協議をおこない、ハラスメントや事故防止の観点から教員研究室の窓を大きなものとするのが望ましいということでもうけた。目張りの撤去については昨年度下関市公立大学法人評価委員会で委員より指摘があり、以降もたびたび指摘されている。議会の方で設置された出資法人調査特別委員会の調査結果報告書においても委員会から厳しい指摘が出ている。ハラスメントなどの発生を未然に防止するためにも目張り撤去は必要な措置だと考えている。
本池 質問は先生方がハラスメントをするものだという認識で運営しているのかということだ。
松崎総務部長 未然に防ぐのが目的だ。
本池 研究室の窓ガラス云々を巡って、これほど揉める必要があるのだろうか? もっと先生方が研究に神経を注げるような環境をつくることこそ運営側の仕事ではないかと思う。犯罪を起こすことを前提で先生方を捉えているのだとしたら、これほど失礼なことはないし、信頼関係はどうなっているのか? と疑問に思う。外から覗かれているような環境について、気が散って嫌だと思う先生方もいるだろうし、まったく気にならない先生方もいるだろう。人それぞれ感覚も違う。
一方で公金の扱いは真実が何も明らかにされず、まったく透明ではない。しかしもう一方では透明性を求められる運営側が他の大学関係者には透明性を求めている。これは本末転倒というか、ダブルスタンダードだと思うがどうか。あと貼り紙をしたら市立大学では何らかの罰則があるのか? よその大学では聞いたことがないので設置者の認識を聞きたい。
松崎総務部長 ダブルスタンダードではないかということだが、裁判所が認めた形だ。前後関係は十分な調査はされ明らかになっている。窓ガラスについては、今新しい大学ではこういう形をとるというのが基本で、いろんな可能性、蓋然性を消し去るうえで必要だ。(罰則は)とくにない。
本池 議会棟が引っ越して、私たち議員は真新しい庁舎を使わせてもらっている。初めて来たときは会派控え室、議長室、副議長室などの一枚のドアに透明ガラスが入れ込まれていた。ところが翌々日と思うが、曇りガラス風のシールが裏表から貼られ中がまったく見えないものに変わっていた。「議員の中から意見が出た」ということだった。お金をかけてやり替えたのだと思う。覗かれているようで嫌だという要望を受けての対応だ。受け止める人によってはとても小さな問題ではあるが、教員=悪というような扱いでは決して大学運営が円滑に進むとは思えないし、現在の市立大学の問題を象徴していると思う。
交付税は市財政に流用
かねてから市立大学の運営費を巡っては、行政からの予算投入はゼロに等しく、ほぼ学生の授業料によってまかなわれてきた経過がある。独立行政法人化して以後は、年に1億から2億ほど運営交付金が下りるようになった。国の交付税交付金のうち大学関係諸費として下関市に入っている金額はどれくらいあるのか。2011年と2014年、公共マネージメント学科ができてからだが、金額を教えてほしい。また、そのなかから大学運営費として市が大学に入金している額はそれぞれいくらか。
松崎総務部長 2011年の基準財政需要額は5億4000万円、その年に市大に交付した運営費交付金は2億4700万円だ。2014年は4億6700万円、運営費交付金は2億1500万円だ。
本池 国の下関市への大学費の交付金の残りは一般会計に繰り入れられ、市の一般財源として使われている。
市立大学の運営費はほとんどが学生の納付金でまかなわれている。その負担によって85~90%くらいがまかなわれ、残りの10~15%ほどが市から入っている。学生の納付金だけで大学の運営ができるわけがないという意見も聞いた。運営費の大部分は人件費だ。運営費が限られているために職員の数が少なく、1人の教員が15人から20人の学生を見ておられるようだ。同じ経済の単科大学の高崎経済大学では、教員1人に対して学生は数人といわれている。学生が2000人いることで下関市に国から5億円近く交付金が下りてきているのに一般財源として取り込まれ、学生たちの勉学のために注がれる金額は半額程度だ。独法化以後、大学は授業料を値上げして、学生たちも必死にアルバイトをしながら勉学に励んでいる。勤労父母も一生懸命に仕送りをしている。親は子どものためなら自分の生活も我慢してお金を工面するが、設置者の自治体は若者たちのために注がれるお金をむしろ取り込んでいく。この歪んだ構造を解決すべきだと思う。
次の質問だが、大学において教育を直接担うのは教官および職員など大学を支える人人であり、そこで学ぶ学生たちが主人公でなければならない。この人材こそが財産であると思う。ところが現状では非常に些末なことで、ことあるごとに教員の言動に圧力というか、市役所退職者なり出向者が入っている事務局側が圧迫するものとして存在している印象だ。取り締まる側と取り締まられる側という不毛な関係が、大学運営をまともなものにするのかどうか考えなければならない。
市立大学は何のためにあるのかという問題ともかかわるが、下関市にとって五億円の交付金なり財源を引っぱってくる道具と見なすのか、学生たちがそこでしっかり学び、下関なり山口県の将来を担う人材として育っていくために運営にあたるのか、役所OBが会計不明瞭を疑われるような工事ばかりするためにあるのか、立場によってまったく運営は異なったものになってくる。
中尾市長は現在大学院に通われている。そして設置者である下関市長として任命した理事長が、市長の研究を指導する担当となっている。来年、大学院終了にあたって卒論を書いて審査を受けなければならないときを迎えている。偶然なのか、「卒論なしのコース」が初めてつくられ大学内で驚かれているようだ。論文というのは大学なりの勉学を極めた証で、STAP細胞を巡っても早稲田大学が問題になったのが記憶に新しいかと思う。市長は「卒論なし」で終了されるのか。市長にお尋ねする。
関谷議長 地方自治法132条によって私事については議場ではやらないということが決まっている。今の発言はこの場における質問としてはふさわしくない。
本池 市大の問題をはっきりさせたいと思い、一つの例としてとりあげている。
松崎総務部長 平成22年度から修士課程を見直して、実学を重視した社会人教育プログラムを実施するために社会人を対象として、学位論文ではなくプロジェクト研究による教育プログラムとしてより実践的な調査、研究報告を必修科目とすることを検討して、平成23年度から実施した。
本池 結局どうするのかわからなかったが、大学はそこで学ぶ学生たちのためにある。人材育成のための大切な機関だ。学長選で敗れた前学長が市長の引き立てで理事長に就くという人事そのものが信じがたいもので、しかも大学院での担当教官という関係は市民から見てどう思われるか、考えなければならない。また、それで得た終了課程の称号がどれほどのものなのか、是非市民にも公開してもらいたいと思うが、卒論を市報なりホームページにおいて公開されてはいかがか。
中尾市長 いたらない心配をして頂いてありがたい。大学院に行ったのは学問を極めたいという純真な動機で、大学人事とはまったく関係ないし、個人として勉強している。テーマは地域内分権。中尾市政六年の集大成をまとめている。論文を書かなくていいというのは初めて知った。別に本池さんの期待に応えてではないが、大きな論文を書いているので楽しみにしてほしいが、見せるつもりはない。
下関港の存亡かかる
本池 今議会の議案187号にガントリークレーンの廃止や人工島へのリーチスタッカーの配備などが出されている。岬之町のコンテナターミナルを人工島へ移転する計画が打ち出され、この間関係する企業から随分と反発の声を耳にしてきた。風が強い人工島ではうまくいかないという懸念を抱いておられる。一二月に入ってからも真冬並みの強風が吹き荒れているが、垢田の人工島周辺はとりわけ冬場の風が強烈なのが特徴だ。
人工島へ移転させたとしたらジブクレーン、リーチスタッカーの停止する基準は風速何㍍になるのか。それと船社であるシノコーは人工島移転をいつまでに回答するといわれているのか。あと冬場の風の強いときの接岸のさいの補助はタグボートか何か具体的な方策は考えておられるのかお聞きする。
西村港湾局長 荷役の基準は下関港として定めており、最大瞬間風速16㍍以上で作業を中止する。(シノコーの回答は)現在船社サイドと協議中で、相手がある話なので合意する時期については明言できない。できるだけ速やかに回答をいただけるよう鋭意とりくんでいる。タグボートに限らず人工島移転にともなって利用者に一時的に負担が生じるということで、支援措置については関係者の意向を踏まえて検討しているところだ。具体的な内容については27年度の予算前に改めて議会にも諮りたい。
本池 具体的な方策としてタグボートで接岸を補助するということは考えていないのか。
西村港湾局長 方策の一つとして検討しているところだ。
本池 港湾に従事する方方がこぞって心配されているのは冬場の風の強さだ。「人工島周辺はとりわけひどい」といわれ、それが懸案材料になってきたことはご存じだと思う。問題がなければすんなりと移転計画は進んでおかしくない。移転を推進する行政としては現地の風速調査なりをしているのか。どれぐらいの日が接岸可能で、港湾作業ができると見なしているのか。風が強いとコンテナが動くため、現在地でも風速一六㍍以上になると作業を停止するようだ。毎日作業が可能であるというならそのように太鼓判を押さなければならない。
西村港湾局長 平成20年12月の供用開始以来、常時観測しており、長州出島における強風による荷役作業への影響を分析した。平成25年度の1年間の風速データをもとに分析し、定期コンテナ船の荷役作業が人工島で可能かどうかシミュレーションをおこなった。平成25年度1年間に岬之町のコンテナターミナルで実際に荷役作業がおこなわれたのが164日ある。このうち強風により長州出島で荷役ができなかったであろうと推測される日数は1日という結果だった。従って風が原因となって長州出島のコンテナ荷役に支障を来すものではないと認識している。
本池 どこでだれがおこなった風速調査か。
西村港湾局長 市港湾局で風向風速計を人工島に設置し、データを常時観測して保存している。
本池 港湾局が長州出島で測った風向風速において昨年1年間で岬之町と1日の違いだったということで判断したのか。
西村港湾局長 今回は平成25年度1年間でのシミュレーションなので、一日かどうかというよりも岬之町と比べてそれほど遜色がないと判断している。経過を船社にも説明し、ご理解を頂いている状況だ。
本池 いざ移転してみて作業ができなかった、こんなはずではなかった。太鼓判を押したではないか、となると困る。「大丈夫だ」という根拠をしっかりと示すことは重要だと思う。
なぜこれほど大急ぎで岬之町のコンテナターミナルを人工島へ移転させるのか疑問だ。建設委員会で港湾局は「シノコー、オリエンタルフェリー、関釜フェリーも岬之町で荷さばきするのだからそのままだ」といわれた。しかしそれは二~三年間の話で、その後はウォーターフロント計画が進み始めるようだ。岬之町の跡地はどうしようと考えているのか。
西村港湾局長 長州出島にコンテナ機能を移転した後も当面の間は荷さばきや保管機能を維持していく必要があると考えている。一方で岬之町地区は現在の港湾計画においてウォーターフロント開発を推進する地区に位置づけている。将来的には隣接するあるかぽーと地区と一体となった、にぎわい交流拠点の形成をはかっていきたい。
本池 下関の港湾機能はさまざまな分野の人たちによって、今の体制がつくられ発展してきた。大陸と一番近い下関の強みは「早さ」だといわれていた。しかし、それが人工島への移転でどうなるのか、変化は大きなものがあると思う。現実には船社もすんなり頷いていない。荷受業者も将来を心配して嫌がっており、しかも人工島にはガントリークレーンもつけない計画だ。
「事務所を持たないものがどうやって運営するのか」「人手を別に雇用する余裕はまったくないが、港と離れた倉庫を行き来してどうなるのだろうか」など、時間、費用、商売相手との補償問題など心配は尽きない。不安と不信は強いものがある。
下手をすると下関港にこれまで入っていた荷物の多くが高速便をつくった大阪に取られてしまうのではないかという心配もされている。執行部はよくポートセールスに出かけているが、下関の港湾の将来を左右するほど大きな問題であると思う。来年四月一日から人工島へ移転して業務開始ということだが、強行して荷が一層減ったということになっては元も子もない。岬之町を開発するという都合からではなく、もっとしっかりと港湾に従事する人人の意見を聞いて対応することを求めて、一般質問を終わりたい。