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下関署が不可解な家宅捜索 下関風力反対のリーダー宅 まるで犯罪者扱い 

 経済産業省がお墨付きを与え、東京のゼネコン準大手・前田建設工業が下関市の安岡沖に持ち込んだ国内最大規模の洋上風力発電建設計画に対して、昨年から住民各層が結束して立ち上がり、力強い反対運動が発展してきた。反対署名は7万4500筆をこえ、昨年9月には1200人の大デモ行進が下関駅前でおこなわれ、風車の建設予定地をかかえる横野町の住民は毎月100人以上が国道沿いに立って反対を訴えている。そんななかで、前田建設工業が「安岡沖洋上風力発電建設に反対する会」の中心メンバーとみなした四人を告訴し、16日早朝には下関警察署の刑事数人が家宅捜索をおこなって携帯電話を押収するなど、常識では考えられないような恫喝行為が加えられ、大騒ぎに発展している。
 
 携帯押収し長時間尋問 「なぜ警察が?」

 16日午前7時ごろ、下関警察署の私服警官3人が突然、風力反対の会のメンバーの自宅にやってきた。「昨年の環境調査のさい、業務妨害・器物損壊があったということで、前田建設工業から被害届けが裁判所に出され、それが受理された。必要な調査をおこなう許可みたいなものが出ている。話が聞きたい」といいながら、「パソコン、携帯電話、カメラの画像データ、書類を見せてくれ」といって室内に上がりこもうとした。会のメンバーは「家宅捜索には捜査令状が必要なはずだ。捜査令状を見せてくれ」といったが、見せなかった。


 会のメンバーは「“業務妨害・器物損壊”と、警察が前田建設と同じことをいう。業務妨害も器物損壊もしていない。前田建設の風力建設には安岡連合自治会が反対しており、安岡新町自治会は環境調査そのものを拒否する申し入れもおこなった。一私企業の前田建設が住民の同意もなく勝手に進めている調査であり、押し売りが物を置いていったのと同じなので測定機器を返しにいっただけだ。家に上がって調べることは断る」とのべた。刑事が「このまま放っておいたらもっとおおごとになるので」というので、メンバーは「こんなことをすると、逆に住民の怒りの火に油を注ぐことになる」といった。刑事たちはいったん引き揚げた。


 夕方5時ごろ、再び2人の刑事が同じメンバー宅を訪れたが、メンバーが「器物損壊というが、どの機材がどれだけ痛んだのか?」と聞くと、刑事は答えることができなかった。そして、再度捜査令状を見せるよう要求すると、「今日はこれで帰る」といって立ち去った。


 他の反対の会のメンバー宅にも午前7時すぎに私服刑事が突然訪れ、「威力業務妨害及び器物破損に関する物品差し押さえ許可証」を見せて、家に上がりこんで書類を調べ、写真を撮り、携帯電話を押収した。刑事が「調書をつくるので警察署まで来てくれ」というので、一人のメンバーは「地域のため、次の世代のために風力に反対しているのであって、僕は罪人ではない」と拒否。別のメンバーは下関署刑事一課に呼び出され、3時間近くにわたって尋問を受けた。

 ゴリ押ししたのは前田建設 環境調査 

 下関署はいったい何がしたかったのだろうか。見せることができない「捜査令状」というのが第一に不可解で、任意でありながら極めて強制的な形で家に上がり込もうとし、はじめから罪人扱いしていることに特徴がある。その家に踏み込んでも朝食をとっている奥さんや子どもしかおらず、日常生活しかないのをわかっていて、朝っぱらから何を「家宅捜索」したかったのか疑問となっている。さらに昨年夏の出来事について今になって大騒ぎしているのも不思議な点となっている。また、「器物損壊」を捜査しているのに、何の器物がどれだけ損壊したのかも知らないで捜査しているという点についても、目くら状態でどのような「捜査」が進められるのか疑問となっている。いずれにしても、反対運動のリーダーたちを狙い撃ちにした今回の家宅捜査については、常識では考えられないような事ばかりで世間は驚いている。


 問題になっているのは昨年夏の環境調査を前田建設工業がゴリ押ししたさい、住民たちが「勝手に地域におかしな機材を設置しないでほしい」と求め、みんなで丁寧に返却したことが発端だ。機材をたたき壊したり、野蛮な行為に及んだわけではない。それがいつの間にか「業務妨害・器物損壊」容疑に切り替わり、裁判所も警察も一緒になって恫喝する事態に発展している。「器物損壊」で刑事事件に発展する以上、真相は徹底的に解明されなければならないし、その過程で明らかにされる事実が例えば「ネジが緩んでいた」等等のくだらないものなら、なぜ下関署はこれほどの人数を割いて大騒ぎしたのか説明が求められる。


 疑いないのは、警察権力を動員して反対運動のリーダーたちを萎縮させるという、きわめて政治的な意図が貫かれていることである。最近ではスラップ訴訟(恫喝訴訟)も流行りで、同じ国策とたたかっている上関町祝島の島民たちも「業務妨害」で法外な損害賠償を吹っかけられたり、いつも大企業は開き直って住民を恫喝する。国策であればなおさらで、首相官邸で影響力を発揮しているといわれる経産省の肝いり事業なら、いまや何でもまかり通るといわんばかりの横暴さとなっている。下関署までがその手先になって住民側を犯罪者扱いするのだから、たまったものではない。


 下関署が励むべきは、江島前市長のような利権疑惑まみれの政治家やブローカーたちを逮捕するとか、覚醒剤関係者をとり逃がして世間に迷惑をかけないとか、川棚マグノリアの婦女暴行魔を逮捕するとかで、風力に反対しているからといって、住民たちを脅かすようなことではない。住民の生活や安全を脅かしているのは前田建設工業であり、この暮らしを守るために、外部からやってきて蹂躙する側が逮捕されなければ誰も納得しない。


 よそ者の準ゼネコンがODA(政府開発援助)で後進国に乗り込んでくるような調子で下関にあらわれ、企業の利潤のために、もともと住んでいた人人の生活を脅かし、漁場も破壊して、あくまで洋上風力発電をつくろうとしている。これに警察までが加担して反対運動の鎮圧に乗り出すというのだから、よほど国政レベルの大きな力が背後で働いていることを伺わせている。ゴリ押しと恫喝なら得意技にしているのが安倍政府で、おかげで沖縄ではにっちもさっちも行かなくなって、逆に基地撤去斗争に火をつける結果となった。恫喝を恐れる者に対しては効果があっても、恐れない者や幾千、幾万の大衆的な力を束ねて盛り上がる運動に対しては逆効果で、怒りに火をつける効果しかもたらさないことをわかっていない。


 安岡沖洋上風力建設に反対する運動は、リーダーたち数人だけがやっているものではない。地域住民が総力を挙げたたたかいであり、「子や孫のため、全国の人のために」という強力な住民運動である。リーダーたちをそれぞれの職場や業界、地域社会全体の力で守ることは当然として、事態を広く市民全体に伝えてさらに世論と行動を強めること、こっそり裏側でくり広げられる恫喝については、逐一市民に知らせて公開し、その性質を明らかにすることである。そのうえで逮捕するというのなら、1200人のデモ参加者なり、7万5000人の署名人に呼びかけて広く社会に訴える形で不当逮捕を弾劾するしかない。

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