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中尾市長の修士論文問題 下関市立大学で犯人捜し 

携帯履歴提出求める

 下関市の中尾友昭市長が市立大学に提出していた修士論文が不合格判定を受けた問題とかかわって、ほとぼりが冷めた今頃になって、同大学で「誰が毎日新聞に不合格情報を漏えいしたのか?」と犯人捜しがはじまっている。論文審査にかかわった教授たちには大学事務局が携帯電話などの履歴提出(任意)を求め、交友関係に至るまで個人情報を丸裸にする勢いで「捜査」が実施される有様で、中尾市長と天下り役人たちがムキになって報復に及んでいることが問題になっている。
 
 非常識な延長戦に突入

 この問題を巡っては、設置者みずからが大学で学位を取得しようとしていた非常識が世間に暴露されたあと、中尾市長が開き直って会見するなどして火に油を注ぎ、大炎上していた。慌てて世間に対して謝罪したのが中尾市長だったが、その後も議員や周囲の人間を捕まえては恨み節を口にし、反省の色などまったくないことが指摘されていた。案の定、水面下では配下の大学事務局が「鎮圧」に乗り出していた。
 修士論文の不合格判定を真っ先に報じたのが毎日新聞であった。携帯履歴の提出は記者と誰が連絡をとりあっていたのかあぶり出すことに眼目が置かれているようだ。任意なので断る教授たちもいると見られているものの、それを一種の踏み絵にして「情報漏洩」を理由に処分を下したい意図がある。ただ、大学事務局に個人の携帯電話の履歴開示を強制するほどの「捜査権」は付与されておらず、警察の真似事にしかならない。
 中尾市長及び天下り役人たちがまたしても非常識な振舞を始めて世間を驚かせている。おとなしくしていたのは僅か二カ月程度で、引き続き大学私物化の延長線上で混乱が持ち込まれている。新聞報道で不合格が発表されたあと、市長みずからがその日のうちに大学に乗り込み、学長はじめ関係者を怒鳴り回したことが発覚したが、その後、学長名で市長に宛てて謝罪文が提出されていたことも取り沙汰されている。世間に対しては市長が謝罪したのに、水面下ではまったく逆の動きになっているのである。
 そして、不合格そのものをとり消すことはできないため、今度は「機密漏洩」に的を絞って制裁に乗り出している。その本意は市長の恥をさらした罪を問うというもので、不合格論文を書いたみずからの努力不足を責めたり省みるのではなく、どこまでも「大学が悪い」という意識にもとづいた言動となっている。恥をさらしたのは本人自身なのに、「恥」の根源は自分自身にはなく他人にあるというのである。
 下関市立大学の運営を巡っては、何年にもわたって政治家の介入による私物化が問題にされてきた。学位取得問題については「努力が足りなかった」と市長本人が認めて態度を改め、驕りを反省することが求められていたが、事態はまったく逆方向に動き始めた。本来、学生たちが学問を学ぶ場であるはずの大学が、市長が学位を取得する道具として利用され、公私混同が持ち込まれたうえに、なお混乱させるというのだから悪質極まりない大学破壊である。というより、中尾友昭個人がカネを出して設立した私立大学ではないのに、市長というだけで厚かまし過ぎるのである。市役所や学校、大学などの公共的な設置機関を市長が好きなように利用できるという思い上がりをあらわしていると同時に、市政において公共性が破壊されている姿を端的に物語っている。
 学位取得問題の延長戦をやるというのなら、犯人捜しの顛末についても広く世間にさらさなければならない。そのうえで炎上して燃え尽きるなら市長本人の責任であって、誰のせいでもない。市長としての器量を世間に問い直すことにもなる。
 なお、毎日新聞下関支局が取材源を秘匿することは当然のこととして、いったいどのように報道するのかも注目されている。

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