経済産業省の肝入りで東京の前田建設工業が持ち込んできた下関市安岡沖の洋上風力発電建設を阻止するため、下関市民の三度目の大規模なデモ行進が四日におこなわれ、昨年九月のデモを上回る1000人以上の人人が「前田建設は下関から撤退せよ!」と力強いシュプレヒコールを駅前の繁華街に轟かせた。安岡地区の住民が風力発電建設を知って反対する会を立ち上げてから約二年、住民の運動は前田建設が恫喝告訴をくり返すなかでますます盛り上がり、デモ行進も乳母車を押したり子どもの手を引いた若い夫婦から80代の年配者までが気持ちを一つにして道行く市民に風力反対を訴えた。
恫喝し火に油注いだ前田建設
この日、予定時刻の一時間前になると、創意工夫をこらしたプラカードや幟を携えた市民が続続と下関駅前の海峡ゆめ広場に集まってきた。今月に入っても続く前田建設の海の調査を連日阻止している安岡の漁師たちは、昨年のデモより多い12本の大漁旗を持って家族で参加した。この一年間、夏の暑さにも冬の寒さにも負けず毎月国道沿いに立って風力反対のアピール行動を続けてきた横野の会の住民は、3枚の横断幕と40本の幟、そしておそろいのハチマキで集団で参加した。
安岡の他地区の住民も、自治会でつくった風力反対の幟を持って誘いあって参加した。病院関係者たちは、仕事明けや休み時間につくったうちわやプラカード、デコレーションを持って三三五五集まってきた。
風力の建設予定地に近い安岡・綾羅木地区だけでなく勝山地区や彦島地区、さらに安岡と同規模の洋上風力発電計画が持ち上がっている豊浦町など市内各地からの参加もあり、集会開始時刻の午後一時半になると、会場は色とりどりのプラカードや幟やうちわを掲げた1000人の参加者であふれ、熱気に包まれた。
この間、安岡沖洋上風力発電に反対する運動は、反対署名が8万筆に迫るなど、昨年に引き続いて粘り強くとりくまれてきた。これに対して前田建設は四月、環境調査を妨害したとして反対の会のリーダー4人を告訴し「数百万円の損害」といい、警察が家宅捜索したり、9月には風力反対と海のボーリング調査反対を決議した山口県漁協ひびき支店に対して「数千万円以上の損害賠償を請求」したりと、恫喝訴訟をくり返してきた。だが、これが逆に住民運動の火に油を注ぐ結果になり、反対の声は一気に広がっていった。
集会でははじめに、安岡沖洋上風力発電建設に反対する会の有光哲也会長が主催者挨拶に立ち、「私たちが風力発電反対の運動を始めてから2年たった。当初と比べると反対の機運は非常に高まってきている。風力発電に反対と思った人は行動であらわしてほしい。今日、このようにたくさんデモ行進に参加してもらったことが効果のあることだ。反対の気持ちがあっても都合で今日ここに来られなかった人もたくさんいるので、その人たちの分まで頑張って行進していこう!」とのべた。
続いて風力予定地を臨む住民でつくる安岡沖洋上風力発電に反対する会・横野町の事務局長・村上彪氏が、「昨年九月に横野の会が発足してから、毎月第1土曜日に国道沿いで風力反対の訴えをする活動を始め、それが一年間続いてきた。参加者はのべ2600人強になる。今後もますます行動して、どうしても風力発電の建設を阻止したい。風力ができれば、20年間住民は健康被害に脅かされることになる。私たちの子どもや孫に低周波を浴びさせるわけにはいかないと頑張っている。みなさん、よろしくお願いします」と力強く訴えた。
次に市会議員の福田幸博氏が、「私は自民党だ。自民党は普通、反対運動はしないものだが、今回ばかりは地域を守るために絶対反対しないといけない。党派やさまざまな垣根をこえて、地域を守ることはわれわれ市会議員の使命だ」「今、海で仕事をする安岡の漁師さんたちが、毎日のように漁船を出して、前田建設のボーリング調査を阻止している。東京から来て下関を食いものにする前田建設に対して、怒りをもって下関を守らないといけない」と発言した。
引き続き反対する会の担当者が、前田建設の告訴をめぐる状況報告と会への資金カンパの訴えをおこなった。「昨年9月14日、前田建設がおこなった環境アセス調査に対して、100人近い住民が阻止行動をおこなった。そのとき四人が威力業務妨害、器物破損の容疑で告訴され、警察に事情聴取された。前田建設が風車を建設するためには環境アセスを完了する必要がある。それで多くの住民と手分けをして調査中止をお願いしてきた。八月の調査は前田建設が住民の反対意見を聞いて撤収してくれた。しかし九月の調査は聞き入れてくれず、住民が機器を返却することになった。アセスをおこなわせてしまうと風車建設に大きく近づいてしまうし、他の企業が引き継いで、将来建設着工となる可能性もある。だから住民にとっては、返却するしか他に方法がなかったのであり、故意に壊したり捨ててやろうとしたのではない」と報告した。
そして、「市長に対しても、裁判においても、影響を与える力を今日のデモで示すことができると思う。下関の運動はこれまで以上に全国的にも大きく注目されている。われわれ下関に住んでいる住民が、ただもうけのためだけに東京からやってきた企業に負けるわけにはいかない。頑張りましょう!」と結んだ。