いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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混乱やまぬ梅光学院 隠蔽・恫喝では解決にならず 子供のため教育機能回復を

本紙記者座談会
 
 下関市の梅光学院(幼稚園、中・高校、大学)では、「財政赤字」「人件費比率の削減」を掲げて、今春に中・高校のベテラン教師14人、大学でも11人を退職に追い込むなどして、メンバーが大幅に入れ替わったもとでなんとか1学期を終えた。このなかで、とくに教師が半数近く入れ替わった中・高校や経理2人がいなくなった事務部門では深刻な崩壊状況があらわれている。経営陣が進める一連の「改革」に対して、3月以降、教職員や生徒・学生、保護者、同窓生らが「梅光学院の未来を考える会」を結成して方針の転換と理事長の退陣を求める署名(1万9000筆到達)を広げてきた。それは100年の歴史を誇る梅光学院が、損得勘定のみに身を委ねて混乱するのではなく、代代に渡って大切にしてきた教育理念を継承し、子どもたちが安心して成長できる学びの場として機能を回復するよう、願いがこもったものだった。ここまできた現状について、関係者はどう見ているのか取材し、記者座談会をもって論議した。
 
 経営陣はなぜ怯えているのか

 司会 梅光の問題が表面化したきっかけは、昨年10月に40歳以上の教師14人を人材派遣会社・ブレインアカデミーの研修で辞職に追い込んだことだった。そのやり方が人格否定も含めてあまりにひどかったことから世間が驚いたわけだが、取材してわかったのは、少子化で経営に苦労している地方の私学に文科省キャリアや他の大学で行き場を失ったよそ者たちが乗り込んできて、あれよあれよという間に実権を握り、「改革」といって教育の場を「もうかるか、もうからないか」のビジネス基準で様変わりさせてしまったことだった。教員の大量首切りも、要するにカネのかかるベテラン組を労賃の安い有期雇用に貼り替えただけだった。一学期を終えて現状も含めて論議してみたい。
  中・高校では、昨年10月に40歳以上の教師を対象に希望退職を募るとき、「高いレベルの学力の保証」「国際教育」「ICT教育」などに重点を置くために新しい体制にするのだといっていたが、新年度の現状は「高い学力」とかいう以前に、ベテラン教師が多数いなくなり、1学期が始まる直前まで教師不足でカリキュラムさえ組めない状況が続いた。ブレインアカデミーが塾講師などにも声をかけて県内外から非正規教師をかき集めたが、直前になって国語の教師が辞退したり、新学期が始まってからも理科の教師を募集していることが教育関係者のなかで話題になっていた。生徒や学生、親たちにとって一番心配なのは、教育機関として責任ある体制がとれるかどうかだ。結局、教師を確保できなかった教科は臨時免許を申請したり、副校長が1人で週16時間受け持つなど、かろうじて体裁を整えて1学期をスタートした。
 しかし1年目の教師が全体の半数、2年目の教師が4分の1という体制で、日常の学校生活から文化祭などの行事までわからないことばかりだ。教師の数が減っているので副担任が学年に1人になるなど、校務分掌が回らない状況は今も続いている。従って、教師たちは目前の仕事に追われて、問題が起こっていても意見する暇がない状況だという。
  親たちに聞くと、学校からの連絡が遅かったり、連絡すらないことも頻繁にあるようで、教師向けに配布された通達がそのまま子どもに配られたりもしていたという。混乱は解決に向かうどころかますますひどくなっていて、「子どもを預けて大丈夫だろうか」と不安を感じている。とくに新入生にとって学校生活はわからないことばかりだ。昼食の弁当はどうやって購入するのか、部活動は何時に終わるのか、顧問への連絡はどうするのかとか、日曜日に教会の礼拝に参加しないといけないが、クリスチャンでない家庭はどこの教会に行けばいいのかもわからない。親は「ちゃんと先生に聞いてきなさい!」と子どもを叱るし、子どもは「先生たちも忙しいんだから!」といって親子げんかになる家庭もあったようだ。日日の学校生活を送るための説明もないまま1学期が終わった。
  1学期末のテストも大変だったようだ。テスト範囲発表の日は、前日に雨はやんだのに「大雨警報が出ている」という理由で休校となり、タブレットとホームページ上で範囲が発表されることになった。みないつ発表されるかと待機していたが発表があったのは午後2時か3時頃。しかも初めてタブレットで全校発信したようで、アクセスが殺到してつながらない人もいて、再びメールで同じ内容の通知が来るなど、とても落ち着いて試験に臨むような状況ではなかった。休校になったのも「テスト発表の準備ができていなかったからのようだ」と話題になっていた。
  中1のクラスではカリキュラムが終わっていない授業があり、期末テスト最終日の午後に授業をすることが前日に決まったそうだ。しかしその連絡がなかったため、弁当を持参していなかった生徒たちは昼食を食べずに午後の授業を受けたという。一事が万事その調子で、新入生は一学期が終わっても「学校に慣れた」という実感はなく、疲れ果てている。経験不足の部分を補うベテランがいないから学級崩壊状況のクラスもあるという。中一のなかでも一学期末で退学者が1人出ており、あと3人ほど辞めたいといっているのを学校がひき止めている。高校受験を控えた中3ではさらに退学者が出たという。「この学校、大丈夫だろうか?」という不安が大きいからだ。
 D 1学期半ば頃だったが、独自でとりくんでいる英単語検定が100問すべて四択問題になっていて生徒も親も驚き、「教育内容が最低になっている」と危惧していた。単語テストはスペルを自分の手で書かないと覚えているかどうかわからないが、四択なら覚えていなくても一か八かで点数はとれる。それで「成績優秀」扱いするのは英語の授業担当に入った統括本部長の手柄にはなるが、果たして子どもたちの実力はついているのか? と疑問が語られていた。全国共通模試も今年は参加しないことに決まったようで、他校との比較もできない。受験生を抱える親などは、低レベル化をすごく心配している人が多い。ICT教育の目玉であるタブレットにしても、今年度リニューアルしたが、おもな使途はやはり朝の健康観察くらいだという。あとはソフトバンクやベネッセが開発した「クラッシー」という学校管理サービスを導入して、自宅学習のときに社会が○時間、国語○時間と15分ごとに学習記録を入力するよういわれているが、時間さえ記録すればいいので、次第に中身のない勉強になっていることを危惧する親もいた。先に「改革」に着手した大学はビジネススクール化が進んできたが、中・高校の教育内容も薄っぺらいものになっている。

 中・高閉校に導く路線 不明多い会計や人事 

  子どもたちの放置状態に、学院全般の金銭の不透明さも加わって、親たちの不信感は根強いものがある。昨年からの騒動もあるし、ならば学院は立て直しが進むのかといえば、そうではなく逆に向いている。教育機関としてどうなのか、監督官庁である県教委の責任も問われる問題だ。
  今年度最初のPTA総会が、会計報告を巡って紛糾したことも親たちの思いをあらわしていた。会計報告自体、「学習費支出」「教育費支出」など、予算がついているのに「支出ゼロ」となっている項目がいくつもあり、総額で約325万円の予算に対して決算が約83円と、普通では考えられない会計報告だった。しかも会計監査の日時も捺印も空欄のままだ。事情を聞いてみると、学院本部に預けていたPTA会費をPTA側が整理しようとしたら不明な領収書がたくさんあり、明らかに不適切なものは学院から支出するよう求めたが、不明が多すぎて会計監査できなかったようだ。統括本部長が3月末で経理2人を切り、わからない者ばかりが経理を握ったことも影響しているようだが、説明責任のある財務部長は総会に参加するのを逃げたのだと話されていた。
  子どもたちや親たちが不信を強め、梅光を見限って離れて行くことは、中・高校にとって存亡がかかった問題だ。しかし、中・高校がつぶれて経営陣は残念がるのか? だ。最終的に行き詰まって「仕方がない…」体裁で、なんならもうからない中・高校を閉校して、敷地を売り払った方がもうかるという判断が明らかに働いている。売却益を試算していることのはそのためだと見なされている。いずれ閉校して現在地は売り飛ばすか、オンヌリ教会の本部にするという意図があるなら、現在の中・高校の崩壊状況はそのように時間をかけて誘導していると見てもおかしくない。
  今のところ、塾に勧誘に行くなどして生徒を募集しようとはしているが、「生徒=金」というか「生徒をくれ」という姿勢が露骨すぎて、塾関係者もまいっている。少子化が急ピッチで進む下関で、梅光がこれまでのように生徒を集めるのに困難があるのは確かだ。中・高校は大学のように他県から呼び込むにも限界がある。しかし今通っている生徒や親が「梅光で学んでよかった」と思えない改革をして生徒が増えるはずがない。現実にはボロボロと退学者が出て、じり貧のような状態になっている。まさに閉校に向けてまっしぐらのような印象だ。

 意に沿わぬ職員は追放 崩れる学校運営 

 A 署名運動が一気に広がり、その過程で赤字といいながら30億円の現金資産のうち10億~17億円もの金額を資産運用に回していること、月の限度額が100万円とも200万円ともいわれる法人カードで経営陣が私物を購入したり旅行に使っているといった噂も流れ、事実の解明を求める声が高まっていった。すると三月の理事会で、理事長や学院長、統轄本部長の給与引き上げ案などに反対した理事を解任した。
 経理2人も退職に追い込み、新しく雇った2人の派遣(現在は嘱託)に非正規職員と統括本部長の秘書が加わって、経理内容も外部に漏れない体制をつくり上げた。さらに大学の学長補佐に本間理事長が会長を務める大学マネジメント研究会のメンバーを引っ張ってきたり、事務方にも理事長肝いりの職員を入れるなどして「署名が100万通集まろうが1億通集まろうが私は動じない!」「“卑劣な行為”をしているのが教職員であれば断固たる措置をとる!」と叫んでいた。一見すると盤石な本間体制ができ上がったかのように見えた。
  しかし教育現場や事務を担うのは彼らではなく現場の教職員だ。思い通りになる人を集めたつもりになっていたようだが、そんな手法で実際の学校運営が回るはずがない。中・高校の混乱は先に出た通りだが、事務方でも実務は回らないし、最近でも学費を納めている学生80人にまた請求書を送って抗議が殺到したりと次から次に問題が起こる。引っ張って来た大学マネジメント研究会のメンバーである学長補佐も理事長に相談なく辞表を提出してしまった。
  最近、学長や統括本部長が秘書などを連れて、署名運動にかかわっている人たちや古くからの教職員を一人一人呼び出しては「自分たちについてこなかったら辞めてもらう」などと脅しをかけている。今春にあれだけ辞めさせて、まだ懲りてないようだ。「そして誰もいなくなった」(アガサ・クリスティ著)を真顔でやっている。恫喝以外に手がないというのも稚拙だが、やればやるほど本来温厚なはずの同窓会などを激怒させている。それ自体、家族的なつながりによって結ばれていた梅光ではあり得ないものだ。異物混入事件というか、梅光に異物が混ざってきて紛争が起こっている。
 6月初めには同窓会幹部が呼び出され、「礼拝を無断撮影した同窓会員がいる」と叱責されたり、「未来の会」にかかわっている大学教員が3人がかりで3時間も「不満があるならなぜ辞めないのか」と絞られたことが話題になっている。どこから学内の状況が漏れているのか気にしている。「長周新聞に写真を出すな」とか「この内容を知っているのはだれか」と血眼になって犯人捜しをしている。中・高校の保護者にも探りを入れている。大学敷地内には「関係者以外立ち入り禁止」の立て札もあらわれた。
  やましいことがないなら正正堂堂とオープンキャンパスにすればいいのに、いったい何を隠したがっているのだろうか。個別バラバラに呼び出される方は首もかかっているからすごい圧迫感で、物言えぬ空気も漂っているが、客観的に見ると経営陣がかなり追い詰められて、いつひっくり返されるかとビクビクしているような印象だ。そんなことに何時間も費やす暇があったら、学校のことや子どものことを考えた方が、いまの梅光にとっては余程有益だ。「オマエ、しゃべったな!」以上に、中・高校がまともな教育体制をとれるようにするとか、子どもの教育を第一に考えなければ教育機関ではない。

 放漫な巨額の資産運用 「赤字財政」叫ぶ一方 

  何をそんなに怯えているのか? 経営陣が世間に知られたくないこと、守りたいものは何なのか? だ。同窓会や父母も含めて、みんなは梅光を潰そうとしているのではない。純粋に学院として正常化して欲しいと願っている。教員体制も含めて子どもに向き合える環境を望んでいる。ところが、大胆な首切りや学院改革をやる割には、その内容を知られたくないという行動に及んでいる。立派な改革なら、それこそ正正堂堂「何が悪い!」と正面から訴えればいいだけだ。そして批判や異論についても恫喝して封殺するというのではなく、反駁して思いの丈をぶつけあって、より良い方向を共に見出していけば済む問題だ。なぜそれをしないのかと思う。端から見ていて、教員が異物なのではなくて、逆だろうに…とも思ってしまう。とらえ方がひっくり返っている。
 E この間の改革で理事長には文科省キャリアを招き、「改革」を取り仕切ってきた統括本部長も失礼な言葉でいうとよそ者だ。豊富な現金資産を運用している財務部長も大阪から引っ張ってきた住友銀行出身者だ。同窓会などは理事長の退任を求めているが、頑として辞めない。むしろ行き場がなくしがみついているような印象すらある。しかしこれも一面だけ見ていたらだめで、裏返して見てみると別の側面が浮かび上がってくる。法人カードの不可解な出費など不明朗会計をみなが問題にしているが、もっとも大きな問題は株式運用だ。
 表向きは現金資産30億円のうち10億円を運用しているという説明だったが、取材を重ねるなかで昨年3月末の段階で、野村證券に5億円、大和証券に5億円、大和ネクストに5億5000万円という記録も出てきた。この時点で15億円を超す金額になっている。さらにこの後、「証券は今が底値だから買っておけばもうかる」といって三井住友銀行系の日興証券の系列に2、3億円を突っ込んでいるという話もあり、合計17億円を運用しているとも見られている。最近の説明では12、3億円といっているようだが、長期運用しているのに運用額が減ったのはなぜなのか、12、3億円という説明が嘘なのか疑問が残る。
  追手門学院から来た財務部長が運用担当に就任して、大阪市にあるクライアント・ポジションというコンサル会社に300万円払って相談しながら大規模な資産運用を始めた。普通は財務担当者を雇うと金がかかるからコンサルと契約するのだが、梅光の場合は財務担当を雇ってホテル住まいさせたうえにコンサルと契約を結んでいる。それ自体も赤字財政の経営者がやることなのか疑問だが、さらに問題なのが株価の下落による損失だ。昨年3月というと日経平均株価は1万9000円台と「15年ぶりの高値」といわれていた時期。だがその後アベノミクスも破綻して株価は下落する一方だ。今のところ明らかにされている損失額は8000万円ほどだが、実際のところどの程度の損失が出ているのかわからない。もし「実は多額の損失が出ていた」となったら経営陣の責任は重大だ。通常であれば背任罪を問われておかしくない。

 求められる公明正大さ 誰の為の「改革」か 

  5月の理事会・評議委員会で、山口銀行の代表として評議委員会に入っていた梅本裕英常務(当時)が評議委員をおろされたが、これも株式運用の実態について明らかにせよ! と主張したのが発端だった。山口銀行如きが生意気をいうな! と思ったのか思わなかったのか、メガバンク出身の財務部長から報復のように山口銀行は数億円の資金を引き揚げられている。山口銀行も地銀として大きい顔をしている割に情けない話だが、別の面から見たときに、資産運用に大失敗している実態を把握して逃げたのか? という見方もある。逃げ足の早さこそが山口銀行の真骨頂であることは近年の破綻企業の債権者一覧を見ても話題になることだ。どこから情報を仕入れるのか、身のこなしが素早いし、火の粉をかぶらない対応、つまり切り捨てることにかけては天下一品だと定評がある。こういうときこそ「山銀も!」とやってほしいが、「山銀も! 山銀も!」を封印して評議委員職をポイッと明け渡した。この不思議さがある。
 A GPIF(年金資金)と同じで、資産運用が焦げ付いて回収の見込みがない、あるいは現在の損失についてはとてもではないが公表できないという場合、それは経営陣にとってもっとも知られたくないものだろう。将来的に補うほどの利益が出ればホッと胸をなで下ろす事になるかもしれないが、十数億円も突っ込んで溶かしていた、証券会社にカモにされただけだったとなると重大な背任行為だ。だから、理事長退任などに応じられないもう一つの面として、いまや「立つ鳥跡を濁さず」で逃げることもできず、仮に逃げたら泥をかぶりたくない後任が前任者の責任として洗いざらい公表するだろうし、その上で「背任行為」として訴訟沙汰にするまでいく。理事長職あるいは統括本部長や財務部長ポストにしがみついているのではなく、怖くてとても離れられない事情を抱えてしまったのだと指摘する人もいる。さもありなんだ。
  理事長肝いりの学長補佐が就任早早に辞職していったのも、何らかの事情を察知して、巻き添えにされたらたまらないと判断したことを伺わせた。「立つ鳥」どころか、まるで戦闘機のタッチ&ゴーみたく着地した途端に危険を察知して飛び立っていった。膨大な現金資産はどうなっているのかは見過ごせない。それは理事たちの責任問題にも発展する。
  梅光でくり広げられている「改革」を巡る衝突は、全国の学校改革と共通した問題でもある。企業が求める手軽な人材をいかにつくるかを競わせるものであり、目先のもうけにつながるかどうかが基準になって、梅光と同じように多くの学校がビジネススクール化なり企業の下請研究機関の道を進んでいる。このなかで、文科省キャリアが文科省路線そのままに地方私学を実験台にして、同時に金融資産を空っぽにするのではないかと懸念されている。梅光問題は子どもの教育にとってどうかを中心にして考えなければいけない。それで、「改革」を掲げる側がデタラメならば多いに批判を加えて検証し、その実態を世間に知らせていくことが重要だ。何事も隠蔽とか恫喝ではなく、オープンキャンパスでいくことが信頼につながる。よそ者やオンヌリ教会の乗っ取りに甘んじるのか否か、100年の伝統を誇る梅光がどっちを向いて歩んでいくのかが問われている。

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