山口県宇部市床波の海岸から見える長生炭鉱のピーヤ（排気筒）

　山口県宇部市床波にあった海底炭鉱「長生炭鉱」で1942年2月3日に起きた水没事故から82年が経過するなか、犠牲になった183人の坑内労働者（うち136人が朝鮮半島出身者）の遺骨を収容して遺族のもとへ送り届けることを目指して活動する市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」は、閉ざされた坑口を開けるためのクラウドファンディングを7月半ばから立ち上げることにしている。そのうえで趣旨に賛同する人々にサポーター（呼びかけ人）登録の協力を訴えている。以下、同会の呼びかけ文を紹介する。

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長生炭鉱坑口を開けるクラウドファンディング・サポーター登録のお願い

１．坑口を開口する必要性、緊急性

　1942年2月3日、海底炭鉱であった旧長生炭鉱の坑道で異常出水が起こり、坑内で働いていた183名（うち136名が朝鮮半島出身者）が犠牲となりました。そして、その遺骨及び遺骸は82年が経った今もなお坑道の中にあります。事故直後、二次災害を防ぐためとの理由で坑口はふさがれ、その後、坑口が何処にあったか分からない状況になりました。私たち「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」（以下「刻む会」という）は、1991年に発足し、犠牲者全員の名前が記載された追悼碑の建立を活動の目的の一つに掲げ、活動を開始しましたが、旧長生炭鉱跡地付近の土地の複雑さゆえに20年もかかって、当初希望していた土地とは違う床波漁港付近の場所に2013年やっと追悼碑を建立しました。しかし、建立直後、犠牲者遺族から当初からの望みは無念の死を遂げた犠牲者の遺骨を掘り出して祖国へ帰すことであったとの切なる訴えを聞き、改めてこの問題と向き合うべく、2014年、新たに遺骨収集を目標に掲げ活動を始めました。そして約10年、様々な調査、交渉を行ってきましたが、地方行政及び国は具体的には何も動かない状況が続いています。事故から82年が経過し、事故当時お腹の中にいた子どもも82歳を超え、毎年直系ご遺族が亡くなられています。ご遺族にとっては待ったなしの状況です。

　今年２月追悼式には最後の参加になるかもしれないと直系のご遺族2人が来日されましたが、お一人は来日直後に体調を崩し追悼式に出でることもできず日本で救急搬送・入院となりました。もはや一刻の猶予もありません。人道的見地から考えれば、一日でも早く坑口を開けて調査を開始することこそが私たちができることです。

２．坑口は、排気塔のピーヤの見える海から道路をへて20～30ｍ地点です。私たち刻む会の土地ではありません。私たちの調査では、その坑口付近の土地は宇部市に帰属する土地で、宇部市が測量して登記しなければならない土地です。宇部市に発掘の許可を求めようとしました。ところが宇部市は、「戦後、使用する目的がないので登記していない。登記していないので関係ないし（掘ることに）口出しもしない」という立場です。（6月26日直近の話し合い）

　結局、坑口付近の土地は、所有権を主張する者のいない土地となっています。このような困難な状況の中で遺骨の返還を待ちわびる遺族のために、私たちは日韓市民に呼びかけ、立ちあがる決意をしました。日本の戦争遂行や植民地支配の国策でたくさんの犠牲者が出ました。この土地は使用する目的がないのでしょうか？　長生炭鉱坑口を開けて遺骨を掘り出し、ご遺族に遺骨を返還し、２度とこのようなことが起きないように、そして日韓市民が協力して開けた坑口を平和と人権・国際協力の歴史遺産として、保存することこそ、「緊急で意義ある使用の目的」だと思います。７月１６日宇部市に工事開始にあたっての通知をします。土地の所有者として異議があれば８月中に刻む会まで連絡を求めます。連絡があれば私たちは行為許可を求め話し合いになりますし、なければ10月26日を、「坑口を開ける日」として工事の準備をします。坑口を開けて以降も遺骨調査・発掘・坑口保存のための市としての協力を求めていくつもりです。

３．7月15日から800万円目標（掘削200万・フェンス等設置300万・調査150万・ご遺族招請100万・予備50万）のクラウドファンディングを開始にあたり300人のサポーターを募ります。サポーターは7月15日から始まるクラファン呼びかけのチラシ等に名前を出していただく、クラファンへのご自身の協力、できる範囲でお知り合いの方への呼びかけをお願いします。登録フォームからご登録ください。

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長生炭鉱水没事故犠牲者追悼碑（山口県宇部市床波）