(6月12日付掲載)
下関市で4月から稼働を開始した「新下関学校給食センター」について、稼働後の状況が10日に市議会文教厚生委員会で報告された。新給食センターは南部調理場受配校や自校式であった学校22校を集約し、約8000食の提供をおこなう民設民営の給食センターだが、稼働直後から学校現場より「食器が足りなかった」「ご飯の量が少なくて子どもがびっくりした」など実情が語られてきた。このたびこれまで起きてきた事案について下関市教育委員会が初めて公式に発表したかたちだ。
文教厚生委員会では、稼働から2カ月半を経て、アグリフードサービスからの給食未提供(4件)などが起こったという報告があったとした。具体的には、4月9日…玄洋中1年生の「豚どんぶり」が未提供(配缶作業における確認ミス)、4月9~11日…小学2、5、6年及び中学校、教職員のご飯の提供量不足(炊飯機械への設定入力ミス)、4月12日…勝山中学校で副食「生揚げの味噌がらめ」が未提供(配缶表の誤りによる配分ミス)、5月23日……長成中学校で副食「もやしのソテー」が未提供(配缶量指示の誤りで、最終的に当校への提供分が不足したことが原因)。その他、4月17日に勝山小で異物(ビニール片)の混入、19日には長府中学校で配膳時に異物(プラスチック片)の混入があったとしている。
こうした報告に加えて、議員たちからも「ネギの棒々鶏サラダでは、鶏肉が見当たらない。メインの鶏肉はどこにいったのか?」「ご飯が進む献立ではない」「ハヤシライスの味の薄さが気になる」などの現場の声が紹介され、改善を求める声があいついだ。
質疑のなかではアグリフードサービスの運営体制を教育委員会が報告した。それによるとアグリフードの社員13人、調理員47人、外国人特定技能実習生16人、配送業務19人、受取従事員35人の合計130人、常時約100人で運営しており、運営管理室には市職員が1人、受配校に配置された栄養教諭4人が主に午前中に勤務している。議員からは、未提供となった給食を「後日追加提供」したことを問う質問や、給食だけで栄養をとっている子どももいる実情などから、「子どもたちの給食をつくっているということを現場の調理員さんに、あらためて伝えてほしい」と要望する厳しい声もあった。
教育委員会が22校を集約した民設民営のセンターをつくる計画を出したときから、安全性、美味しさ、教育的意義などさまざまな面から懸念が広がってきた。どのような給食が出てくるのか関心も高く見守られているが、「早いときは10時半ごろに給食が届くが、うどん、ラーメンなどの麺類のときは、麺が吸ってしまって汁がまったくない。ただし温食缶の保温力はすごいので、皮肉にも先日のもずくスープは子どもたちがやけどするほど熱々だった」「先日は小野茶の蕎麦が出たのだが、ヌードルというぐらいだから長いものを想像するがプチプチ切れてしまっていた。このままでは子どもたちが麺を嫌いにならないかと思って少し心配している」「麺類が今の給食の体制にはそぐわないのではないか」などと、市教委の「報告」以外にもさまざまな実態が寄せられている。
こうした学校現場の意見や要望は、民設民営であるセンターには伝えることができず市教委を経由しなければならない。山口県内では前例のない民設民営のセンターの特殊な実態だ。異物混入はもちろん、給食の未提供(配分間違いで足りなくなった)などあってはならず、民設民営の大型センター化を決めた市教委に対して関係者から厳しい視線が注がれている。