下関市生涯学習プラザで4月6日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が、教団の創始者である文鮮明が日本に初めて入国した日(1941年4月1日)を記念する「日臨節83周年記念大会」を開催したことが物議を醸した。この催しのために下関市が会場を貸し出した問題をめぐり、今月9日、「統一教会から福岡を守る会」ほか被害者家族や市民有志が下関市と市議会に対して公共施設を使わせないことを求める要望を出している。
下関市議会は、この要望(陳情)への対応について、今月15日~17日までおこなわれた臨時議会で協議した。
陳情の内容は、安倍元総理銃撃事件後に明らかになった教団の政界との繋がり、その影響力のもとで教団が起こしてきた霊感商法や高額献金の問題に触れている。昨年10月には文科省が教団の解散命令を東京地裁に請求し、福岡県や北九州市の議会では教団との関係をもたない誓約や断絶決議が可決された。陳情では下関市が「従来からの惰性で利用申請を認めたとすれば、やはり慎重さを欠いた判断と言わざるを得ない」として、市議会に次の3点を要望している。
1、これまでの教団との関係性を議会として調査し、明らかにしたうえで、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)および関連団体との接点を持たないこと。
2、教団および関連団体による市の公共施設利用について議会として然るべき対応を行う旨、市に申し入れること。
3、地方自治法に基づいて、関係諸機関に対し、被害者救済を進める趣旨の意見書を議会として提出すること。
陳情は香川議長の判断によって臨時議会開会前に全議員に配布され、取り扱いの判断は常任委員会にゆだねられた。ただし、議員に送付したのみで、提出者が市外であることから委員会内で委員(議員)が提起しなければ協議はなされない「ルール」になっている。
「市外」を理由に不問に付す議会
常任委員会では、非公開の「内部協議」の場で陳情への対応が話し合われた(議事録のみ後日公開される)。
文教厚生委員会では、旧統一教会に市が施設を貸したことについて6月議会で執行部から報告を受けることが決まった。ただ、「教育委員会の審査があったのになぜそのときに誰もいわなかったのだろうか?」との意見が議会内からも出ている。陳情については、提出者が市外であることを理由に「取り扱えない」という前提で話が進み、香川議長も委員会のなかで「参考送付はしたが、通常の陳情として取り扱えるものではない」という趣旨の発言をしたという。
経済委員会では、本池議員が他自治体の対応などを例に出しながら「議会として対応するべきだ」と主張。教団と関係している議員も明らかになっていることにも触れ、「いいにくさもあるかもしれないが、ここまで問題が明らかになっている以上、議会として向き合わなければならないのではないか」と訴えた。香川議長は「文教でやるといっているではないか」といったが、文教厚生委員会で決定したのは陳情の取り扱いではなく、今回教団への施設貸し出しの件について執行部から報告を受けることだけだ。経済委員会でも自民党議員の質問に対して香川議長がそのように答えた。そのため本池議員が、香川議長の「文教でやる」というのは事実と違うではないかとただそうとすると、香川議長が「違うではない!」「話を聞きなさい!」などと声を荒げる場面もあった。公明党議員は「(これ以上は)本池さんが一般質問でやったらいい」などと発言した。ただ、一般質問は議員が執行部に対しておこなうものであり、議会に対して出た陳情への対応は対象でない。
本池議員の「(陳情への対応を協議するため)全員協議会でも開くべきだ」という提起に、香川議長は「しない」とし、参考送付をもって対応済みとした。委員会としては陳情は「取り扱わない」ということになり、議会としても事実上不問に付した。
総務委員会でも議論になり、市民から「なぜ貸したのか」といわれていることなどの意見も出たが、国の動向(解散命令請求の結果)を見守るということでこの日は終わった。建設消防委員会では誰もこの陳情の件に触れぬまま解散した。送付された陳情の存在に気が付いていない議員もいた。
「命にかかわる問題ではない」と前田市長
下関市に対しても教団や関連団体に公共施設の使用を認めないよう求める要望が提出されている。これに関して、前田市長は定例記者会見で「よっぽど生命に危険があるような状況であれば拒絶するが、現在はそこまでいたっていない」などとコメントしている。この市長の発言について、経済委員会で本池市議がその真意を問うた。
前田市長は、「福岡市とか同じように利用制限をかけた地方自治体が(教団と)裁判になってその回答も出ていない。解散請求を出した文科省との裁判の結果も出ていないものに対して、われわれが今、それをやらせない(使わせない)といったところで混乱を生み出す。一連の結果が出ないあいだは普通通りにしておいたほうが下関にとって混乱が出ないのではないかと判断した。それ以外の回答はない」と答弁。
これを受け本池議員は、解散命令の請求は、被害者への聞きとりなど詳細な調査、かつ宗教法人審議会にもかけた結果であり、それが福岡市などの対応の根拠にもなっていると指摘。「(それが)正当な理由にはあたらないと市長は思われているということか?」と再度質問した。ここで香川議長が割って入り、「これは所管の委員会が幅広いので議長として各委員に参考送付した。各委員会でどこで議論するのか、どこで取り扱うのか、決めてから議論する」として幕を引いた。
本池市議は「市長のコメントについて聞いているので、(議会宛の)陳情の扱いとは別問題だ」とし、「こういう多くの信者が苦境におかれて、それが教団の利益に繋がって、政治との関係性も明らかになっている。信仰の自由、宗教活動の自由、そういった範疇(はんちゅう)をこえた問題であり、だから解散命令の請求が出ている。市長は重く考えて対応するべきだ」とのべた。
教団が「聖地」とする下関
統一教会の霊感商法の根絶や被害者救済にとりくむ全国霊感商法対策弁護士連絡会は昨年3月に「全国の各自治体の皆様へ」とする声明を発し、統一教会は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」と認められたことによって解散請求に至っており、公共施設の利用について「地方自治体は、その施設を利用させることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合には、施設の利用を拒否できるものと解される」(地方自治法244条)と指摘。全国的に多数の被害者を生み出している同教団の活動に公共施設の利用許可を与えることは、反社会的とされる活動に公のお墨付きを与えることになるため、利用許可を出さないよう求めている。
福岡市では昨年6月8日、「市が所有する公の施設において、国の見解が示されるまでの間、旧統一教会関連団体からの利用申請に対する許可を保留する」との結論を出し、それ以降、関連団体も含めて統一教会の団体利用を許可していない。
下関市では、安倍元首相の銃撃事件後、国会議員から市長、県議、市議に至るまで複数の政治家が統一教会関連団体と関係していたことが明らかになっており、教団は下関を「文鮮明総裁が日本に初めて降り立った聖地」として、その後も定期的に公共施設で大々的なイベントをおこない宣伝している。全国的に明らかになった反社会的行為の被害を食い止めるために出された要望や陳情に対する市長や議会の対応は、近隣の自治体と比べてもあまりに及び腰な下関市や議会の姿を改めて浮き彫りにしており、「まだ癒着が続いていることの証左」「まったく反省していないではないか」との疑念を市内外から集めている。
(5月20日付)
相変わらず市長も市議会議長も弱腰でどうしようもないですね。統一教会と裏で何かあるのではと疑われてもしょうがない体たらく。市外からの陳情ということがネックになっているようなので、ここは市内の皆さんにも頑張っていただきたいですね。