下関市豊北町粟野にある医療法人豊愛会豊北病院(伊藤實喜理事長・平石貴久院長)が、2019(令和元)年末の一斉退職以後、再びざわついている。2019年末には看護師などの職員が一斉退職し、内科の外来診療を除いてすべての医療、介護事業ができなくなった。その後、外来のみを細々と続けながら、全国から派遣看護師を集めるなどして「再建」して現在に至っているが、その間も病院運営は問題だらけだったようで、ここまできてスタッフへの給料や取引先業者への未払いをはじめ、医療関係者も唖然とするような実態が関係者の証言によって浮彫りになっている。2022(令和四)年1月末には豊北病院院長であり、豊愛会理事長だった入船龍也医師が院内の自宅で自死するという悲劇も起きた。一連の豊北病院の混乱と関わって無視できないのは、一斉退職以前から同法人に深くかかわってきたコンサルの存在だ。再建過程ではスタッフの確保から病院経営の実務面まで実権を握ってかかわってきたようだが、ここ最近の状況はなりふりかまわずといった様相になっていることを多くの関係者が指摘している。豊北病院でなにが起きているのか、患者や地域医療を守るためにも豊北病院はどうなるべきなのか、取材にあたった記者たちで議論した。
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A なぜこんなに地方の小さな病院について取材してきたのかだが、第一に関係者が豊北病院のあまりにもひどい実態を広く世間に知らせて欲しい、患者であるお年寄りたちのためにも一刻も早く事態を是正させたいという思いから、本紙にSOSを発してきたのが発端だった。当初はにわかには信じがたいような内容だったことから、これは1人、2人の証言だけを鵜呑みにすることはできないという思いで、期間もかけて幾人もの関係者に取材をあてていった。すると、それらの人々から語られる内容がほぼピッタリと一致しているし、かなり詳細に実態が見えてきた。そして、医療・福祉とは名ばかりで無視できない状況であるという判断から問題提起することにした。
豊北病院で一斉退職が起きたのが2019(令和元)年末のことだった。それまでは58床の病床を持つ豊北町内唯一の病院で、診療科目としては、内科、整形外科、循環器内科、リハビリテーション科があり、介護事業として通所リハビリ、訪問リハビリ、居宅介護支援事業をおこなっていた。地元スタッフも多く、地域住民からも親しまれていた病院だった。しかし、ここで働くスタッフに支払われる同年6月のボーナスがなんの説明もなく遅配になり、その後も誠実な対応がなされなかったことから、スタッフが一斉退職する事態となった。当時の出来事は本紙でも詳細に扱った経緯がある。
そのために2020(令和2)年1月から病棟を休止し、同月末には通所リハビリ、訪問リハビリも休止。2月末には居宅介護支援事業も休止した。その後は外来を続けながら、休止となった事業については「再開を目指し職員確保に努める」としてきたが、2020年に入院と通所リハビリを再開したきりで、その他は再開していない。診療科目は内科のみだ。
B 入院を再開するにあたって、大手人材広告企業のサイトや職業安定所を通じてスタッフを募集した。基本給は高くはないが、週3日休みの好条件で人が集まったようだ。一斉退職があった病院ということもあり就職に不安を持つ人もいたが、派遣会社の担当者から「過去にいろいろあったが、今は新しい体制になっている」「すでに土地を確保していて、新病院を開く計画もある」などといわれ、ならばと就職を決めた人もいた。実際に入ってみて「話が違う」となっている。こうして集まった派遣看護師は豊浦町川棚の借り上げアパートで暮らしながら、送迎車で豊北病院までを行き来していた。多くが3カ月~半年の契約を更新していくスタイルで、入れ替わりも激しかったという。医師に関しても、コンサルのG社(東京)のつながりで東京や福岡などから連れてくるなどしてそろえたようだ。
A 2020(令和2)年8月から病棟を再開したが、その後の経営状況も決して芳しくなかったと関係者たちは語っており、2021(令和3)年ごろから事業者への未払いが再び始まっている。そして2022(令和4)年1月に入船院長(法人理事長)が病院敷地内の自宅で自死しているのを看護師らが発見した。自死の理由については本人が亡くなっている以上不明だが、考えられる一つに病院の経営難が挙げられている。事業者への未払い金が相当にあり、本人にも少額でない借金があったようだと周囲は語っている。病院や家庭における様々な事情が重なって、絶望したのではないかということだった。いずれにしても関係者も地域住民にとっても衝撃的な出来事だった。
その後、非常勤勤務だった伊藤賢三医師が院長になったが、法人理事長は1年4カ月間の不在だった。2023(令和5)年5月8日に非常勤医師だった伊藤實喜医師が理事長兼院長になり、7月24日付で平石院長が就任して現在まで続いている。
月の半分は医師不在 診療報酬受給への疑問
A 豊北病院をめぐる現在のもっとも深刻な問題は医師不在だろう。豊北病院は20床以上の病床を持つ町内唯一の「病院」だ。外来が火~金、通所リハビリが水~土のそれぞれ4日ずつやっている。大前提として20床以上を持つ「病院」であるため、常時1名の医師が必要だ。しかし現在は、現理事長と週2日(水・木)勤務の非常勤医師の2名しかいない。
しかも、この2人とも豊北病院とは別の病院にかかわっており、月の約半分は医師がいない状態になっているという。地域住民のなかでも医師がいないことは有名な話だ。外来を医師が不在でどうやってできるのか?誰が診るのだろうか? と思うが、看護師が電話で指示を聞いたり、処方箋に変わりがなければ外来看護師の判断でカルテを記入している実態があるようだ。通常では考えられないが、医師不在のまま外来をやっている。
また、患者の状態にもよるのか、営業時間中に電話しても「医者がいるときに来てください」と受診を断られたといった話もある。「外来をしているとうたっているのに、どういうことなのか」「もう少しまともな状態にならなければ豊北病院には行けない」と地域の住民たちのなかでも随分と話題にされている。
B 2022年1月の入船院長の没後、それまで非常勤医師として勤務していた伊藤賢三医師が院長に就任した。しかしその後、およそ9カ月間に及ぶ給与の未払いなどもあって、2023(令和5)年5月に病院を去っていったという。非常勤医師がバイトで何人か来ていたようではあるが、2023年11月現在では、現理事長と非常勤医師1名の2人体制になっている。
7月24日から院長(管理者)となっている平石院長については、8月は来ていたようだが、9月からほぼ豊北病院に来なくなっており「やめてしまったようだ」と現場のスタッフがいうほど、とにかく現場に来ていない。しかし、市によればこの医師が11月現在も院長だ。平石院長も別のクリニックをしているが、豊北病院に来たさいに「Wi-Fi環境がない」と怒っていたという話だった。それに加え、患者を診るどころではなく、本人が介助を要する状態だったとの証言もある。自身の健康上の理由なのか、とにかく今は病院に来ていないのだ。医師の勤務表は空白だらけで2人の医師の勤務日数を合わせても15日程度だ。来る予定になっている日ですら来ない日もあり、スタッフには「〇日~〇日は不在」「何かあったら電話してくれ」という旨が申し送りされている。
A 伊藤實喜理事長に関しては「東京上野マイホームクリニック」で医師をしているようで、そちらのホームページを見ると月~金の診療となっている。もしも伊藤理事長自らが診療をおこなっているのであれば、身体が2つなければこなせないのではないかと思う。だから豊北病院にはひと月に10日ほどしか来れないのだろうか。また、伊藤理事長のクリニックには平石院長もかかわってきたようだ。
いずれにしても、院長ですら豊北病院に長いこと来ていないうえ、「常時1名」の医師の配置基準は守られていない。だから、当直医師が不在で死亡診断書を看護師に書かせようとしたこともあったとか、いや、もう実際に看護師に書かせたのだと話題になっている。医師不在だけでも違法なのに、看護師にさらに違法行為をさせたということになる。また新型コロナのワクチン接種のさいも不在だったという話も出ている。行政の立ち入り検査前に勤務表を捏造しているといった話もあるので、勤務実態について行政はきちんと見るべきだろう。地域住民も含めて医師の不在はみんなが知っているのに、それを行政の目だけが節穴で見落とすようなことはあってはならない。
介護事業としておこなっている通所リハビリも、提供している間は必ず1名以上の医師が必要とされている。「下関市指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例」に定められている。電話やオンラインではだめで、通所リハビリが提供されている間は生身の医師がいなければ違法になる。不在のまま「いたこと」にして診療報酬や介護報酬をもらっていたとしたら返還ものだ。保険医療機関としての届け出については、11月現在で入船理事長から更新されておらず、鬼籍に入った人物の名前で診療報酬をもらっていることも話題になっている。
B 2023年10月15日~17日にかけては、実際に入院していない病院スタッフを「入院したこと」にして、診療報酬と入院費を不正に受給しているという証言もあった。当事者たちは胸に手を当てて考えたら自覚があるはずだ。どこの誰で、何を理由に入院したかまではあえて書かない。病院ぐるみであれば、こうしたこともできるということの一例だ。
オムツ交換減り 車いすはパンク 入浴は水のシャワー
A そのように医師不在の病院運営が違法であるという問題もさることながら、もっとひどいと思うのは入院患者に対する扱いだろう。にわかには信じがたいし耳を疑うものがある。こうした病院の実態に嫌気がさしてやめていく看護師が後を絶たないし、何か意見でもしようものなら契約更新されずに切られていく。看護師の入れ替わりが激しいのはそのためだ。そうして関わってきた人々が、さすがに黙認できないという思いで口々に実態を証言している。これらの証言を「虚偽」というのにはさすがに無理がある。
B お年寄りを乗せる病棟の車いすは多くがパンクしている状態だそうだ。修理に出さないままなのだろう。使い物にならないのではなく、そうしてパンクした状態の車いすでガタンガタンしながら患者を運んでいたというし、入浴に関しては浴槽はお湯が出ないために使用できず、ぬるま湯以下の水のシャワーになっていたという。認知症のない患者からは「風邪をひく」「お風呂に入りたくない」と看護師たちはいわれていたり、入浴から冷えて戻る患者のために部屋を暖めていたそうだ。唯一まともにお湯が出ていたのが寝たきりの患者のための「機械浴」だが、これも最近壊れたという。ストレッチャーもボロボロなため皮膚剥離になったり、風呂に関してはまるで高齢者虐待のような状況だったと語られている。空調が壊れ、修理されないからストーブを置いて温めていたとか、冬は病棟が寒すぎて高齢者が上着の袖に足を通して寒さを耐えていたとの話もあった。
A オムツ交換は1日4回(4時、9時、14時、20時)の交換と決まっていた。しかし、人手不足のためオムツの交換回数を減らす指導がなされていたという。20時以降のオムツ交換は実質禁止とされ、4時の交換をしたスタッフが叱咤されることもあったとか、交換回数を減らすためにオムツのなかに蛇腹状に折りたたんだオムツを入れる指導もあったという。4時に変えなければ20時~翌朝9時までオムツ交換をしないことになるが、そのまま車いすに移乗して病衣に染みる状況もあったという。しかしそのまま朝食をとり、9時の陰部洗浄の時間まで交換ができない状況だった。「冷たい」という患者やオムツかぶれになる高齢者もいたという。そのような施設に大切な家族を預けている人たちはなんと思うだろうか。
さらにショックなのは、高齢者が24時間ベッドに拘束されていたということだ。自分で食事ができない経管栄養の患者などは栄養中に管を外すと命にかかわるので、家族の同意のもとでその時間だけ抑制するということはある。それを24時間拘束していた。長時間抑制されたために手が「グー」のかたちでこわばって固まり、伸びた爪がてのひらに食い込んで血がにじむ状況もあったという。そのようになった患者さんの実名をいってみろ、証拠を出してみろというなら、関係者は証言するだろう。身体拘束に関しては行政監査の指摘も受けているようだ。
こうしたやり方は2022(令和4)年6月以降に強まっているといわれる。患者に対しこのような看護をしたい看護師はいないだろうし、耐えかねて去っていった看護師も多いようだ。当然だ。「看護師として本当にいいたくない…」「亡くならずに済んだかもしれない人が亡くなっていった」「患者を今の場所から適切な場所に移してほしい」――。スタッフとして働いていた看護師たちが絞り出すように口にした言葉をどう受け止めたらいいのだろうか。
B 施設の管理も聞く限りではめちゃくちゃだ。酸素が必要な病棟であるにもかかわらず、酸素の流れる配管が壊れ危険な状態になっていたこともあったという。非常灯や非常ベルの故障もあたりまえ。食堂の電気は切れて昼間も薄暗く、部屋の主要電気も切れて、ベッドサイドの電気を点けて生活していた時期もあったようだ。窓の網戸は破れ、窓を開ければ虫どころか鳥が入ってくる危険性もあったという。先述の入浴のストレッチャーといい、修繕を含めて設備投資をまったくといっていいほどやっていないと関係者は共通して話していた。
業者への未払い続き 感染性廃棄物も山積みに
A こうした患者への「看護」については、下関市内の他の医療関係者に聞いても「ありえない」と絶句される。院内設備に関しても「建物が古い」では片づけられない。暴力ではないものの、認知症があるからといって人権を無視した看護がされていいわけがない。こうした看護を上司の指示でさせられているスタッフ一人一人の思いは別として、豊北病院が患者の命や安全を優先に考えるのではなく、「患者=カネ」の考えで運営されているなによりのあらわれではないかと思う。そうした一部の経営者に握られた豊北病院の体質は、取引先業者への対応にも如実にあらわれている。
B 2020年の「再建」以降、ほどなくして豊愛会は取引先への支払いを滞らせていたようだ。その内容は、スタッフユニフォームや布団などのリネン代、医療系廃棄物の処理費、ガソリン代、車検代、食料品費、検査費、スタッフのアパートの家賃、看護師の派遣企業への支払いなど多岐にわたっている。未払い業者の数は30以上に上るともいわれている。いくつかの事業者に聞いてみたが、「詐欺師じゃないか」というのがみなの評価だ。
業者によって、未払いが始まった時期も未納期間も違っている。再建後の早い段階から始まった業者には、2021年中に「2022年3月に支払う」といわれていた。しかし期日前の1月に入船院長(理事長)が自死。その後弁護士を通じて「入船理事長の息子がハンコを押さないから支払いができない」といった内容の通達があったという。その後、支払いに関しては追って連絡するとのことだったが、11月末現在でなんの連絡もない。
そうかと思えば一部の業者は、「年末に払う」「年末には精算する」といわれており、業者によって対応が違うようだ。すでに取引を停止した業者もいれば、そのつど現金払いにした業者もいる。ここまで状況が悪くなっていることに「半分諦めている」という業者もいた。未払い金について「記者会見をする」といっているようだが、どうせ債権放棄だろうという見方も強い。地域の病院だからと支えてきた業者もいるわけで、まるで信頼を裏切っている。
A 支払いをしないものだから、2021年以降から「支払いがあるまで取引できない」「せめて支払う姿勢を見せてくれないと取引できない」という業者が出始め、院内では感染性廃棄物すらひきとられず倉庫に山積みになったり、検査で採血しても臨床検査業務(検体を回収し検査結果のデータを返す)をしてもらえなくなる事態も起きていた。スタッフのアパート代も払っていなかったため、管理会社から退去するよう通達が来たこともあったという。悪質なのは、スタッフの給与から天引きしている水道代や電気代を払っていなかったことで、急に電気が止まったこともあったという。看護師たちの派遣を請け負った企業にも払っていなかったために裁判を起こされたとか、入院患者用のコメの納入が止まったのでスーパーまでコメを買いに走っているという話もある。一時的に支払いを受けて取引を再開した業者もあるが、検査業務などは支払いをしないまま別の業者に乗り換えていくこともやっている。
職員給与も未払い そのまま退職の医師や看護師も
B 職員の給与については2022年度から医師や一部の職員が未払いになってきたほか、2023年6月28日の支払い予定だった6月分(5月11日~6月10日)の給与が全職員分未払いとなった。その理由については、職員のスタッフルームなどに紙が配られ、支払いができない理由を「一昨日、理事長が第三者から恐喝され、実印を勝手に変更されるという事態が起こりました。当日の夕方に実印を法務局にて登録し直し、今のところ大事には至っておりません。それを踏まえ、銀行の通帳口座を凍結した為に、給与の振り込みが遅れると連絡が来ました」といっている。わけがわからない。
そして翌29日に3分の1が支払われた。残りの3分の2については、3分の1、6分の1が払われたが、最後の残りの6分の1は今も全員が払われていない状態だ。これについては裁判を起こした看護師がおり、残りを支払うよう判決が出ている。
ただ、これに理事長の代理で出席したG社の代表が異議申し立てをしたとかで、「払う気がないじゃないか」と怒りを買っている。さらに別件として、もっと早い時期から1年近くにわたって給料をもらわないまま退職した医師や看護師もいる。
A 特別徴収で給与から天引きしていた市県民税を自治体に納めていないという事実もある。病院には各役所から督促状が届いている。特別徴収の場合の督促は法人に行くもので、職員個人の自宅などに行くことはない。ただ滞納者は個人だ。ローンなどで滞納がないことの証明が必要な場合には影響が出る。豊愛会が払う約束で給料から天引きしているのだから、それを払わないのはただの横領になる。昨年の年末調整の還付金も返ってきていないといわれているし、それらがどこに消えたのかだ。
G社の存在を皆が問題視 消える資産や診療報酬
B 民間病院である以上、内部の衝突や労使のもつれは必ずといっていいほどあるものだ。しかし豊北病院の場合、単にスタッフを大事にしないワンマンな代表が経営に失敗した…では済まない部分が多い。とくに2016年頃から豊愛会にかかわっているコンサルのG社の存在なしには語れない。2019年末の一斉退職で病院を去っていったスタッフも、その後に豊北病院に就職したスタッフも、取引先業者もみながG社の存在を問題にしている。なんなら地域住民までも「コンサルがいけない」と話題にしている。
2019年12月分の給与は当時3分の1しか払われなかったが、その残り分が豊愛会ではなくG社から振り込まれていたことからもわかるように、豊愛会のかなり深いところまで入り込んでいるといわれている。というか、実権を握っていると見られている。ただ、いつも前面に出るのは入船院長だった。入船院長亡きあとは事務スタッフとして直接的に経営にかかわっており、今は未払い業者への対応、裁判対応、行政対応、給与の支払いなどはG社がやっているようだ。というか、やらざるを得ないのだ。
A 豊愛会の法人登記の資産は、2018年から2020年まで3年連続の債務超過になっている。すでに金融機関からは融資が受けられる状態ではない。この資産はどこに消えたのだろうか。そして建物登記からは入船院長個人や豊愛会が金融機関にもっていた借金が2016(平成28)年末頃から一気に返済されていることも読みとれる。そして現在豊愛会には診療報酬がまともに入っていないとの指摘もあるが、それはどこに消えているのか。もしもそのことで豊愛会にお金がないというのであれば、入船院長亡き今、そうした疑問に答えられるのはG社の担当者しかいないのではないか。
入船院長の借金に関しては、生前故人と親しくしていた人からは「ハマチの養殖に投資をして失敗したと本人がいっていた」などの話も伝わっている。こうした投資話を誰がもちかけ、借金を背負わせたのかも気になるところだ。あくまでも憶測だが、投資話をもちかけたのがだれなのかは別として、相手がすってんてんになったところに借金の返済を引き受ける救世主のように登場すれば、絶対的信頼(服従)と病院の経営権を手に入れられる。そうした「救世主」の助言により、支払等の必要性に迫られた経営者が、本来2カ月後に入ってくるはずの診療報酬を早期に得るために診療報酬債権を譲渡するなどしていたとしたら、経営が苦しくてもやめるにやめられない。ここまでシナリオをつくってかかわってくるのであれば恐ろしい話だ。
B 真相は入船院長かG社しかわからないのだろう。しかし、入船院長は亡くなった。伊藤理事長や平石院長に関してもG社に責任だけを押し付けられているのではないかと半分気の毒がられている。そして12月に豊北病院を売却するとG社がいっていることに関しても、とるものをとって用済みになれば逃げるのではないかという噂話が広がっている始末なのだ。ただ現実的に考えて、今の豊北病院を買いとる者がいるのだろうか。施設が古すぎて買い手がつかないというのが大半の評価だ。老朽化が顕著で、施設基準をクリアできないことは関係者であればわかる。しかし、二束三文で売り飛ばしてコンサルの食い逃げみたいな事態にならないかと心配されている。
A 豊北病院の今日の実態は、有り体にいって、経営に行き詰まった地方病院が東京辺りのコンサルに身を委ね、結果として散々なまでに病院崩壊してしまった一例になるのだろう。一連の病院としての実態について、幾人もの関係者たちが証言している内容が事実であればあまりにひどいし、社会的にも看過できるものではない。なにより、入院患者のお年寄りたちが可哀想で、この救済措置は待ったなしではないか。
このことについて、11月29日に豊北病院に取材にいったところ、G社の元代表が対応した。給与の未払いについては「一人だけ」とし「その一人から話を聞いているんじゃないですか」といっていた。一部未払いは全員ではないかと質問したところ、「私が入る前だからわからない」「引継ぎもできていない」とのことだった。ただ、元代表は豊北病院に長く勤めた事務員とともにG社のグループ会社「Y社」をたちあげている。その住所はG社と同一だ。どのような事務をしていたのかを確認しようと思えばできるだろう。
そして、12月で豊北病院を売却して去るのではないかという話についてもコメントを求めたが、本人は「事務だけで働いている」スタッフであり、「経営に関係していないのでわからない」とのことだった。質問は書面でしてくれということだったので、翌30日に質問状を手渡して、現在回答を待っているところだが、1週間たっても何も動きはない。聞きたいことは山ほどあるし、スタッフたちが証言してきた一連の実態について、むしろ記者会見なり開いて丁寧に説明してほしいと思う。報道各社も記者たちが取材に走ったり、取材拒否されたりしているそうなので、みんなで記者会見の場を設けるのが効率的だろう。
B 医療界でG社のようなコンサルがはびこっている実態が豊北病院の例を見ていてよくわかる。今でこそかかわっているのはG社だが、豊愛会には2008年ごろから別のコンサルが入船院長をとり込み、その資産を食い物にしてきたことも知られている。コロナ禍を経て実態のないクリニックだとか、消毒や薬品を売りさばく会社がはびこって、さらにこの傾向は強まっていることが医療界の闇として深刻な問題になっている。
その元締めは大手コンサルだったりするので、表向きは「クリーン」に見える。こうしたコンサルに、医学に精通していても社会常識に疎い田舎の医者たちが食い物にされていくというのではあんまりだ。ちなみにG社に関していえば、その上には有名な大手コンサルがいることを一部の医療関係者たちは知っていて、G社の元代表(Y社の代表でもあって豊北病院の事務員でもある)の顔写真がその企業のサイトのトップページに載っている。病院経営ビジネスのコンサルということなのだろうが、いったいどういう構造になっているのかと思う。
実態解明と機能再生を 入院患者の救済急げ
A 豊北病院は豊北町で暮らす住民たちにとってなくてはならない医療機関として存在してきた。どうしてこんな事態になってしまったのか…という思いは地域の人々のなかでも強い。病院崩壊みたいな事態に至ったことについては、経営の実権を握ったものの責任が重大だ。実質的権限を握り采配を振るっていた者の責任が問われなければならない。名ばかりの院長その他をさらし者にして、実権を握っていた者は二人羽織の黒衣のなかに隠れているというのでは、関係者は誰一人として納得しないだろう。
あと、ここまで放置した行政の責任も問われて然るべきだろう。院内の設備の老朽化については元スタッフも事業者たちも「毎年立ち入り検査があるのに、なぜ通っているのかと思っていた」「非常ベルなどの消火設備も点検を通っていたからびっくりだった」と話題にしていた。これまで豊北病院の状況について労基署や職安、保健所に通報した関係者も複数いるが、その解決のために組織をあげて動いたところは皆無だった。もしかしたらガス抜き的な「指導」はしているのかもしれないが、実際にはなにも変わっていない。
とくに保健所については、2020年8月、2021年6月、2022年11月に立ち入り検査をおこなっている。見落としているのか、見て見ぬふりをしたのかはわからない。いろんなことがあった豊北病院であるため「仕方ないですね…」「再建過程ですもんね」と流しているのだろうか。きちんと組織として振り返る必要があるし、ここまで大きな話題になっている以上、真面目に監査し、その責任において患者を適切な場所に移し、実態解明をするべきだろう。
B 辞めたスタッフのほとんどが「もう豊北病院とはかかわりたくない」と話していた。ただ心配なのは残してきた患者のことで「自分たちは辞めても就職先があるが、残された患者が心配だ」といっていた。在籍時に入院患者の温かい声掛けに救われていたスタッフも少なくなく、そうした患者たちを一刻も早く適切な医療が安心して受けられる医療機関に移すことを求めている。それほどまでにひどいということだ。
勇気を出して告発したのは医療従事者としての使命感からだ。その実態について、当初はあまりにもひどい老人収容所みたいな話で信じがたかったのだが、彼らが虚偽の証言をする必要などまずないし、一人や二人ではない幾人もの関係者の話す内容がピッタリと符合していくことから、大方は真実なのだろうと我々は受け止めた。こうした関係者の話だけでも今の豊北病院の現状は「病院」といえるものではない。「やめた人間が嘘をついている」などといっているようだが、彼らがリスクを抱えて虚偽をいいふらすメリットがいったいどこにあるのだろうか。どちらが社会的使命にたった行動なのか冷静に考えればわかることだ。
つまり、現時点での説明責任はむしろG社の側にあり、病院のあからさまな実態について解明が必要だということだ。疑問については払拭する必要があるし、仮に一連の病院の実態が事実なのであれば、社会に広く知られなければならない。そして、豊北病院は潰れてなくなってしまうのではなく、地域に必要とされるまともな病院に生まれ変わって欲しい。過疎地の医療機関として果たしている役割が大きいからこそ、無視できないのだ。
医療の資格を持っていながら患者虐待を見て見ぬふりをしていたスタッフは許せない。
告発した看護師は勇気があると思う。
告発した看護師に対して、植村明美看護部長や石川圭一理事、川崎美穂理事は「頭おかしいんじゃない?」との発言。どちらの頭がおかしいのか、世間の人は適切に判断するだろう。
石川圭一と川崎美穂の行方は分からなくなり、植村明美はまた甘い蜜を吸うためにどこかの病院で働いていることだろう。
大ウソつきの植村明美たちがどのような嘘を付いて次の就職先に繋げたのかは分からないが、どうか長周新聞の記事をみて、もう医療現場で就職させないでほしい。
天罰が下りますように。