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角島、新宇部揺るがず  宇部岬は涙のむ選択

1県1漁協合併を拒否して単独運営を決意してきた複数の不参加漁協で、13、14日にあいついで臨時総会が開かれた。9月実施予定の県漁連、信漁連の事業譲渡・解散にともなって対応が迫られたもので、角島漁協、新宇部漁協は信用事業廃止をうち出し、あくまで独立経営をやり抜いていくことを決断した。財務面で追いつめられていた宇部岬漁協は、涙を呑んで合併に加わる道を選択。決して本意ではない悔しさが溢れた。

 角  島
 14日に臨時総会をもった角島漁協では、満場一致で信用事業廃止が決定された。異論はなく、今後とも揺るぎない決意で挑んでいく気概がみなぎった。森澄組合長は「角島漁協が生きていけなくなるときは、日本全国の漁協がつぶれるときだ」と熱く訴え、荒波を乗り越えていく覚悟を示した。合併騒動の渦中でも一貫してブレることがなかった組合員、執行部、漁協全体の結束と信頼の関係は、より強まるものとなった。
 漁協役員の男性は「明治期の漁業権取得をめぐる先人たちの苦労に比べれば、いまの困難など屁でもない。監獄にぶちこまれても耐えた人人のおかげで、いまの角島と漁業がある。わたしたちは先人たちのような決意をもって、角島の海と漁業を守っていかないといけないんだ」といった。
 別の役員は、「負担ばかりでどれだけの人間が泣いているか。組合員が大切にされない漁協がいくら大きくても、なんの意味もない。うちの浜では81歳(最高齢)で若手に混じって一本釣りをしている漁師がいるが、年配であろうが若手であろうが大切な存在だ。今日の総会はみんなでがんばっていくことを再確認できた。この結束が島の命だ」といった。
 総会が終わった午後からは、新しく自腹で設置したイカ生け簀の日除けカーテン作りに生産組合メンバーは追われていた。若手漁業者らが談笑しながら担っていた。

 新 宇 部
 13日に臨時総会を開いた新宇部漁協では、信用事業廃止について賛成136票、反対30票となり、懸案事項はとりあえず決着した。今月1日に開かれた臨総では、合併議案について反対98票、賛成80票で拮抗していたが、単独経営を承認したうえで票は大幅に動いた。20日に定款変更のための臨時総会が持たれるが、これ以上漁業者に日程的な負担をかけないように書面議決でおこなわれることになった。
 漁協関係者の1人は「決してすべてが解決したわけではない。いまからもたいへんだ。しかし十分やっていける自信はある。宇部岬は気の毒な結果になったが、いっしょに合併に反対してきた仲間として気持ちは十分に理解している」といった。

 宇 部 岬
 同日に臨総がもたれた宇部岬漁協では、合併の是非を審議。賛成104票、反対39票で、やむなく合併参加を決めた。従来の姿勢から一転した背景には、事業譲渡をゴリ押しされた場合の出資金毀損や借入金返済額を考えると、2億4000万円の欠損金をかぶるなど耐えられないことがあった。どの関係者にとっても決して本意ではない、悔しさに溢れた結末だ。
 役員男性は「反対に投じた39人が辞めていく可能性だってある。とにかく基盤強化などとは裏腹な事態で、今後のことは想像がつかない。悔しい……」といった。組合員の困窮ぶりも理解しているだけに、不安は募っている。浜では「金はどこにもない」と語られており、増資や協力金徴収に応じる余裕などないのが実情だ。
 「喜び」でこらえきれなかったのは県漁協本店と県農林水産部だけで、すかさず各支店にファックスを流して「宇部岬漁協が合併参加」と伝達する始末。浜の漁業者とは無縁の感情世界に暮らす人種であることを物語った。

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