下関市議会議長・副議長の公務用タクシーチケットをめぐって、本紙記者も含む有志でつくる調査チームが2018(平成30)年1月~2019(令和元)年8月の期間について調査をおこなった結果、夜遅い時間帯に唐戸や豊前田(下関市内の飲食街)などから乗車したものも含め、公務等の証明のない支出が相当数にのぼった。来年2月に下関市議会議員選挙を控え、市民のなかから「タクシー代はどうなったのか」「まだ返していないのか」という声が寄せられている。調査期間中に議長・副議長だった4人のうち3人は現在「創世下関」に所属し、「われわれだけが議会改革をしようとしている」という姿をアピールしている。議会改革を叫ぶのなら、みずから不適正なタクシー代(市民の税金)を返還するのが筋といえ、本紙では再び市議会事務局にどうなったのかを問い合わせた。
調査を開始する発端となったのは、市民から「議長や副議長が税金から支出されるタクシーチケットを飲み会帰りに使っているのではないか」という疑問の声が複数寄せられたことだった。情報公開を通じて行政資料を確認したところ、使用総数225回、144万9470円のうち、公務等の証明がないまま支出されているものが143回(64%)、94万540円(65%)にのぼることが明らかになった。
調査期間(林透議長、吉田真次副議長の調査期間は6カ月。戸澤昭夫議長、亀田博副議長の調査期間は14カ月)のうち、公務等の証明のない支出の内訳は、
林透議長(在任期間2019年2月27日~2021年3月2日)…40回、28万5660円
吉田真次副議長(在任期間2019年2月27日~2021年3月2日)…14回、12万8900円
戸澤昭夫議長(在任期間2017年3月2日~2019年2月12日)…69回、49万2900円
亀田博副議長(在任期間2017年3月2日~2019年2月12日)…20回、3万3080円
である。
市議会事務局は公用タクシーチケットの使用基準について「公務(市役所の行事等)または用務(正副議長として他団体に会うなどの仕事)に使用する」と説明したが、「用務」についてはスケジュール管理をしておらず、内容はわからないと説明。4議員に用務の内容などを確認したが、明確な説明を得ることはできなかった。私用に使っても市議会事務局にはわからないシステムで運用されており、市民の税金であるにもかかわらず、非常にずさんな手続きで支出されていることが明らかになった。
その後、使用目的が明確でないタクシー代金を当事者みずからが返金することを期待し見守ったものの、返金する兆候がないため、調査チームは2020年4月、住民監査請求をおこなった。しかし同年6月、監査委員は「143回のうち137回分で公務があったことを確認した」とし、残り5回分についても「公務もある用務もあるということで、適正な運用」という結論を出し、この公金支出を不問に付した。
その後、2020年7月1日付で「下関市議会公用車(正副議長車)・タクシー取扱要領」が策定されている。この要領自体も解釈次第では飲み会帰りにも使用可能な非常に曖昧な内容だが、一応これまで文書として存在しなかった運用規定が制定された。
本紙が今月2日、上記の調査で判明した不適正な公用タクシーチケット使用分について、結局議員から返還されたのか、新たに作成された取扱要領に照らして、これらの使用が適切であったのか否か、現在の認識について市議会事務局・庶務課に問い合わせた。この日、「調べたうえで回答したい」とのことだったが、6日に返ってきた回答は「内部の協議のうえ、回答はしないということになった」というもので、公金が返還されたのか否かも含めて一切の回答はなされなかった。市議会事務局のトップは亀田議長だが、「議長に相談したわけではなく、事務局内部で協議した」ということだった。前田市長の出身会派であり上記4人のうち亀田、林、吉田の3議員が所属する会派「創世下関」は「議会改革」を主導しており、吉田議員はその特別委員会の委員長を務めた。市民からの税金の使途への疑念について公明正大に情報公開をおこなうことなく「議会改革」をうたうのはホラ吹きの類いである。
なお、下関市では次期市議会議員選挙が2023年1月29日(日)告示、同2月5日(日)投開票の日程で実施されることが決まった。新人候補の名前も多く飛びかっているなかで、現職議員のタクシーチケット問題は改めて注目を集めている。