中国電力の上関原発建設計画で、炉心予定地の神社地約10万平方㍍の売却を、神社本庁(東京都・矢田部正巳総長)が承認した。東海村臨界事故が起きて「原発は終わり」と思えば120億円もの漁業補償と二井知事合意で、日本で最後の推進拠点の姿を見せたが、関西電力・美浜原発のデタラメな原発運転による死亡事故が起きたら、愛国心を捨てて金に狂った腐れ神主どもが住民の生命と安全を売り飛ばす行為におよんだ。神社地売却承認といっても、氏子が裁判を起こせばそれで塩漬けとなり、精査調査をするには共有地問題が未解決であり、二井知事が許認可を出すには「安全確認」の大芝居を演じなければならない。上関原発の推進勢力もすっかり息切れ状態のなかで、またも「鼻先ニンジン」で中電の遠い将来の原発利権を継続し、町を生殺しの立ち腐れ状態におくというものである。国、中電が推進する上関原発計画というものは、やっつけなければ終わらないのである。
今回の神社地売却承認の報道は、山口県では読売新聞が夕刊の1面でオリンピックなみにあつかい、各紙は社会面に掲載してあつかった。しかし、東京や関西辺りでは、大新聞の一部が1行見出しの数行程度で新聞の片隅に掲載。いわば山口県むけのあつかいであった。
地権者が多く住んでいる四代地区では、神社の役がない山谷良数区長名が筆頭になって3名の「四代正八幡宮総代」連名で「お知らせ」と題した文章が配布され、八幡宮所有の神社地処分を実施する意向が一方的に通告された。日ごろは住民の目に届くことのない山の中腹にあるお宮の片隅に「財産処分に関する公告」なるものがはり出された。多くの住民は「公告」の存在すら知らない。「また山谷と中電がわしらの知らないところでやった」「四代のものはいつもつんぼさじきだ」という。
「八幡宮代表役員 宮司」宮成恵臣名の「公告」には、中電の代表取締役社長・白倉茂生に八幡山を売却すると書いてある。その内容は、「過疎・高齢化の四代地区を考えると神社の将来にわたる護持・運営、八幡山の維持・管理は困難であるが、八幡山売却によって対処が可能であり、氏子多数の意志を尊重できる」のだと理由をのべている。処分価格は土地売却代金として1億4215万3650円、立竹木補償金として980万3700円のあわせて1億5195万7350円となっている。さらに代金の使途は、基本財産として1億円、特殊財産として5150万円を積み立てること、残りを一般会計繰入金にするとしている。
インチキ宮司の不当で不法な契約
四代地区住民のなかでは、この数年来もめてきた神社騒動で、自分たちの先祖代代のお宮が中電神社になってしまい、神社役員でもない山谷区長が、環境調査のさいに中電からもらった借地料1500万円を横領したり、売却に反対した宮司の首をすげかえて四代の住民が「宮司」と認めていないよそものがインチキな売買契約を結ぼうとしていることが指摘されている。
中電は94年からはじまった環境影響調査のさいに神社と宮司を無視して、山谷氏とのあいだで違法な借地契約を結んで強行し、借地料として年間約300万円を5年間、計1500万円を山谷氏の個人名義の口座に振りこみ、そのカネはいまだに住民には説明もないなどの違法行為もやったうえで、98年には財産処分申請書を作成して山谷氏らに持たせ、「判を押せ」と迫るなど宮司との対立は激化。
住民みんなが慕ってきた林春彦宮司は、売却に反対したために中電が解任を策動し、買われた神社本庁によって首を切られた。山谷区長や推進組織が別の内容の説明で集めたハンコは林宮司解任の嘆願書にすりかわっていたり、解任の理由づくりのために「祭りをやらない不適格宮司だ」と絶叫して宮司が開催しようとしても祭りをやらせなかったり、裁判に訴えて犯罪人のように描いたり、ヤクザ的な宮司攻撃はまさに裏世界を操る電力会社の本性をさらけ出した。中電は地元民に林宮司がいかに不適格であるかの文章をうつさせて、住民の筆跡としてしかるべきところへ提出させたりもした。
県知事と気脈を通じる末永汎本弁護士や神社本庁、県神社庁がそれに加担してマスコミが動き、裁判所は中電に有利な訴訟誘導の違法行為、ヤクザから警察にいたるまであらゆる権力を総動員して、住民の生命と安全、財産を守るという神職として当然の立場を貫いた林宮司を力ずくで解任していった。
そして中電神社になった四代のお宮には、住民の共有財産を売り飛ばすための神主を据え、神社地の略奪をはかった。日本が法治国家ならば、以上の経過が示すことは不当不法な契約であり、大がかりな詐欺であり、インチキ宮司が結ぶ契約が無効なのは明らかなことである。
神社本庁は「原発出世」の役員改選
神社本庁・工藤伊豆前総長は、林宮司解任のためにさんざんテコ入れしてきたが、本庁のなかでは6月に役員改選がおこなわれている。工藤氏の息がかかった矢田部正巳氏(静岡県・三島大社)が後任の総長に就任し、さらに中電の毒饅頭をくらって「大活躍」した山口県神社庁の幹部連がそろって本庁の役付に「原発出世」した。
上田俊成・山口県神社庁長(長門市・飯山八幡宮)は神社本庁の理事に身分が格上げとなり、神社地騒ぎで一役買った金長広典氏(田布施町・高松八幡宮)は、県神社庁の副庁長にとりたてられたが、全国区の神社本庁・評議員に出世した。さらに岩国市・白崎八幡宮責任役員の白井正司氏は、全国のベテラン評議員を抑えて神社本庁・評議員会の副議長ポストについた。
本庁では、バカな時の首相が「日本は神の国」といって有名になった神道政治連盟の会長に美祢市・神功皇后神社の宮崎義敬氏がおり、工藤氏と組んで隠然と力を振るう関係。同氏はKSD事件で代議士を首になった村上正邦元参院議員のカバン持ちでのし上がった関係。山口県では同じ美祢市出身の二井関成県知事や河村建夫代議士などとのパイプを持ち、四代正八幡宮の神社地売り飛ばしに深く関与したとみられている。
神社道といったところで、上層部は「地獄の沙汰もカネしだい」で資本主義崇拝、その親分のアメリカ崇拝がまんえん。国民の生命と財産を守り、家内安全、商売繁盛を祈念するのではなく、原発がもたらす金と権力に目がくらんだ腐れ神主集団であり、さい銭を上げてお参りする値打ちなどまったくないことを暴露した。
裁判を起こせば塩漬け 神社地問題
しかし、神社地売却を強行しても、原発計画がいっきに進展する情勢にはない。神社地については、地区共有地と同様に地元反対住民が裁判を起こせば塩漬けとなる。中電は売却がすんだら詳細調査に乗り出すといっているが、そこでは立木伐採などの許認可を二井知事が「安全性を確認した」といって与えるのかどうかが問題になる。
現地で注目されていることは、神社地売却問題で、反対派の会の事務局にいて資金を握る山戸貞夫氏、岩木基展氏らが、「原発はできない」といって裁判をしないのではないかということである。原発ができないのはたたかうからであり、あけてとおすというのでは話にならない。両氏は推進派中枢のなかでは「仲間」という評価、しかし反対派幹部の看板をかけることで地位を得ており、看板まではずすかどうか注目点となっている。
上関原発計画は、神社本庁が売却承認をしたからといって、中電幹部がいっているように「登山道の入口」あたりであり、すぐに着工になるというものではない。中電は島根とあわせて上関を実施する力はなく、遠い将来のために上関の原発利権を保ちつづけるというのが実際である。しかしながら、中電、国が大きくはアメリカの要求で、自民党からメディアから警察、暴力団まで総動員して推進してきた計画は、うち負かさなければ終わることはない。
いまどき原発を新設するなどというのは、よほどの時代遅れである。とくに、近年、自衛隊をイラクの戦地に派遣し、沖縄の米軍ヘリ墜落事故が示すように日本全土が戦時態勢に入り、おまけに米軍が治外法権の占領者として民有地までも接収するようななかで、攻撃されやすく破壊力はすさまじい原発をつくるのは国の破滅行為である。
山口県では岩国基地に厚木基地の空母艦載機基地を移転し、広島の沖美町では着艦訓練の飛行場の誘致話がつづくなか、数十㌔しか離れてない上関の原発はもっとも危険な標的とならざるを得ない。