下関市議会6月定例会で18日、本池涼子市議(無所属・本紙記者)が下関市議会議長・副議長のタクシーチケットの使用状況に関する住民監査請求の監査結果について一般質問をおこなった。当初、議会事務局に対して質問する予定だったが、通告を受けた議会事務局、林透議長が「議会に対する一般質問はこれを受理しない」との一文を先例集に追加し、本池市議の一般質問を不受理としたため、急きょ質問先を監査委員に変更し、この問題をとりあげた。議長や副議長が夜中の11~12時に、歓楽街の豊前田や唐戸からの飲み帰りに税金から支出されるタクシーチケットを使い放題であるという実態の解明も是正もされぬまま1年近く経過している。さらに6月3日に出た住民監査の結果は、これらをすべて「適当である」と認定した。小野代表監査の答弁を通じて、「公務」「用務」「私用」の判断基準もないまま、議会事務局の説明を追認する監査しかしていないこと、論理の矛盾も浮き彫りになった。本池市議は、質疑を通じて全議員にこの使用方法を是とするのか、公金の使用方法について真剣に考えることを呼びかけた。質疑答弁の要旨を紹介する。
本池 4月6日、住民監査請求が提出された。下関市議会の公用タクシーチケットの使用状況についてのものだ。これは、市民から「市会議員が夜遅くまで飲んでタクシーを使って帰っている」「市議会のタクシーチケットを使っているようだがこれは問題がないのか」との声を受けて、市民有志が下関市議会の正副議長の公用タクシーチケットの使用状態を情報公開等で明らかにし、新聞で報道してきたものだ。
問題になっているのは公務が証明できないにもかかわらず飲み会帰りに公金で運用されている公用タクシーチケットを使っているのではないかという点だ。正副議長には、ほかの議員にはない仕事も多いかと思うが、公用タクシーチケットはあくまでも公用車の代用であり、公務以外では使ってはならないはずだ。その原則が崩れているのであれば市議会としても大きな問題だし、所属する一人として、問題を明らかにしたうえで是正することが必要だと思う。
この間、調査にあたったみなさんから話を聞いたほか、住民監査請求については5月19日の市長側としての議会事務局庶務課による陳述も傍聴した。今月3日に監査結果が出ており、議員のみなさんもご覧になっているかと思う。そのうえで今回の質問をさせていただく。なお、以降「前正副議長」「現正副議長」を「議長」とまとめていわせていただく。
まず市民有志がおこなった調査について話す。
これ【写真1】(PDFで議場モニターに掲示)は情報公開で出された市議会の公用タクシー使用状況だ。記録の一部だが、市民から指摘がなされている通り、豊前田や唐戸から自宅に帰るものが多く、さらに真夜中というものも頻繁にある。
さらにその後の表を見ていただきたい【写真2】。
これは先ほどのタクシーチケットの使用状況とは別に、情報公開請求によって出された案内文などの議長の公務証明をあわせて表にまとめたものだ。空白になっているのは公務の証明がない日だ。文書がないものについては口頭などでスケジュールの確認を求めたそうだが、議会事務局は「用務があったものだが、用務についてはスケジュール管理をしていないため回答することはできない」と説明されたそうだ。
この表からわかることは、公用タクシーチケットを使っているにもかかわらず、公務証明のない日が相当数にのぼることだ。市長・副市長、教育長の公用タクシー使用状況も同時に調査されたところ、教育長はすべて使用目的が記載されており、市長・副市長についても案内文書がない日について秘書課より口頭ですべて公務内容の説明がなされたと聞いている。
議会だけが公務内容もわからないうえ、夜中の10~12時といったものまであるのだから、市民から問い合わせがあるのも当然だといえる。これは明らかに不正・不適当な使用であるとして、該当する議長たちに対して公費の返還を求めること、さらに、市長に対し返還を求めるよう求めたのが今回の住民監査請求だった。
この請求は4月23日に受理され、6月3日に結果が出たが、監査委員は「すべて適当と判断する」という判断を出された。
公用タクシーのタクシー代は市民が納めた税金から支出されている。このような使い方を「適当」として市民が納得するだろうか。私自身、「市議会はこんなことも正せないのか」「このまま放置するのか」という声をたくさんいただいているので、今日は監査委員が「適当」と判断した結果について、その根拠などを一つ一つお聞きしたい。市民にわかりやすく、明確な答弁をお願いする。
公務の有無
まず、請求人が「公務がないにもかかわらず使用された」と主張するものが調査期間で138日分(143回)あるが、監査は5日分を除くすべてで公務があったと認定した。議会事務局がスケジュールを把握していないとしてきた143回のうち137回分で公務があったことを確認したということだ。この137回分について、どのように公務があったことを確認したのか。
小野代表監査委員 議会事務局から手に入れた管内旅行命令簿、運転従事者の管理簿でこの日に送迎があったという旨の記録である。議会事務局におけるタクシーチケットの使用基準だが、公務と用務の場合にタクシーチケットの使用を認めている。137回の運転管理簿の日誌を見るとすべて公用車で正副議長のところに送迎に行っている。公務で迎えに行ったということは公務があると監査委員は判断した。4人の議員がタクシーチケットを帰りの分で使用したというのは適当であり、この使用状況は適当と判断した。
本池 運転管理簿で公用車が使われているから、公務があったと確認したとお返事をいただいた。公務があったと判断された理由は「公用車が使用された」ということだけか。
小野 公務があったから公用車が迎えに行った。公務があった日はすべてその1日は公務があった日と議会は判断しているということで、帰りが公用車かタクシーの場合、すべて公務による乗車と判断した。
本池 公用車が使われたということは何か公務があったのだと、これは一定理解できる。しかし、議会事務局はその部分について、これまで「用務」であって内容を把握していないといわれた。監査委員は137日分の公務内容をすべて確認されたのか。
小野 行事ばかりやっているわけではなく、内部の決裁行為あるいは関係部局、執行部がつねに報告なり相談しながら、たくさんの部署が行っている。議会事務局もすべては確認できなかったということはあるので、すべて公務があったと認定している。
本池 深夜の22時から24時といった時間に豊前田や唐戸から帰宅している日が頻繁にあるという点についてだが、かりに市役所で公務があったとしても、通常、午後6時前後には終了するかと思う。22時や24時まで公務があるものなのか。朝の出発時間は確認されたのか。22時、23時、24時まで公務があるということになると議長の働き方改革にも関係すると思うので、深夜まで公務があるのかどうか、それを公務と認めるのかどうか答えてほしい。
小野 今回3人で監査し、3人の合議での監査結果通知だ。それ以外を1人の監査委員に問われても、この場でいうことはできない。公務が全部夜まで続いたのかとか、そこまでの認定はしていない。公務として役所に出てきたわけだから、間に別の用務が入った、そのあと公務があり、最後に食事をして帰っても「公務である」というルールで議会事務局がこれまでやっているということであれば、監査がそれを公務だ公務でないということを調べるものではない。
本池 公務終了後にその場所から自宅まで送ることには問題ないと思うが、「公務終了後の個人的な用事が終了したあと」にその場所から自宅まで送ることには問題があると思う。請求人が指摘しているのもその点にある。監査委員のご判断では、極端ないい方をすると、午前中に1時間でも公務があれば、その後ほぼ1日プライベートであっても公用タクシーの使用は「適当」ということになる。公務終了後の行動は議長としての仕事ではない、一議員としての活動か、プライベートだと思われるが、監査委員は公務終了後のプライベート後にも公用タクシーを使用することを「適当だ」と判断されたのか。
小野 飲食後にタクシーを使用することの適否は監査結果に記載していない。このことに関する監査委員の統一した見解は読みとれないので、私から見解をのべることはできない。
本池 今のお言葉であれば、午前中に公務があり、その後のプライベートの飲み会であってもタクシーを使うことはありということになるが、それでいいのか。
小野 監査請求があった「4名の議員が市に返還して補てんすること」「市長がその損害金の補てんを求めること」の2点について監査した。中身をどうだこうだというものではなく、現在議会がそういう扱いをしていることについては、適正・適法なものだと判断した。
下関市政で用いられる必殺の造語・「用務」とは何か
本池 市民有志の調査に対して、議会事務局はこれまで138日分・143回は「用務があった日」としてきた。そのため「用務とは何か?」が疑問点となってきたが、監査結果を見ると、「用務があった日」は、公務があった日の137回分を除く5日分となる。この理解でいいか。
小野 監査結果も書いてあるように5回の内訳からすべて公務であると認定したところだ。
本池 残り5日分も公務ということか。
小野 公務あるいは公務と用務が微妙にクロスして、それについてはすべて送迎をするというのが現在の事務局の対応ということだ。5日分についても、安全協議会の名刺交換会、下関市を訪問した他県の知事との意見交換といったものが議会事務局から示されているので、公務もある用務もあるということで、適正な運用であると判断している。
本池 5日分について公務と用務、それぞれどちらに当たるのか、1日ずつ説明していただけるか。
小野 公務と用務がはっきり分かれるのであれば、これは「公」、これは「用」と分けるが、新年名刺交換会はおそらく議長・副議長の肩書があるからお招きできるものだと思う。他県知事との意見交換もそうであろうし、議会事務局との議会運営の意見交換も議会を代表して正副議長がやられたのだと思う。山口県市議会議長会研修会あるいは馬関まつり平家総踊り大会についても、議長・副議長という肩書を必要とされているというのがあり、普通の議員として参加するというものではない、ということでの公務または用務であると考えている。
本池 問題になっているのが用務だが、もう一度「用務」の考え方について説明をお願いする。
小野 議会事務局から聴取したところでは、正副議長としての立場と議員としての立場が重なる場合のあくまで個人的なものではない立場を称して「用務」と仕分けをしているようだ。明文化こそされていないが、議会事務局のタクシーチケットの使用基準によれば、公務と用務による場合はタクシーチケットの使用を認めているのが現状だ。正副議長としての立場と議員の立場が明確に区別できない場合は当然想定されるので、公務的な要素を含む用務であっても使用を認めることに明らかな不合理はないと判断している。
本池 この議場のなかに行政用語として「用務」という言葉を聞いたことのある人がいるだろうか。辞書で「用務」という言葉を調べても「細々とした仕事」としか出ていない。議長の「仕事」となると、それは議会を代表しての仕事となるので公務だ。
「用務」とは何を指すのかがわからないので、県議会事務局にも「用務」という言葉があるのか、それは議員のどのような活動を指すのかを聞いてみた。すると、「用務」という言葉は使うことがないので、なんとも答えようがないということだった。県内の他市町でも「用務」という言葉を使うところは見当たらない。ということは、「用務」という言葉そのものが下関市議会独自の言葉なのかとも思うがどうか。法律用語や行政用語としての定義や解釈はあるのか。
小野 用務の本来の意味は何かという調べ方はしていない。下関市議会において使われる「公務」と「用務」の解釈をもって、それが適正に運用されているかどうかを監査結果に反映させた。
本池 「用務」が一般的にある言葉なのかは確認されていないということか。
小野 監査の審査においては「用務」の日本語としての意味は審議もしていないし、合議もしていないので、監査結果通知にも上がっていない。なんとなく用務という言葉を日常生活で聞いたことはあるが。
本池 用務員さんなどもおられるので、聞いたことはあるだろうが、どうも「用務」という言葉で、内容の把握もないままに使用範囲を拡大しているように思えてならない。具体的に5日間のケースから、どういう状態を「用務」としているのか。
小野 「用務」は議会事務局で使う言葉だが、正式な案内通知などがないが、議長の肩書を求められて出ていくのは公務であり、議員でもあるので用務でもある。少しクロスしているということではないだろうか。
本池 案内文があるものは公務ではないのか。
小野 案内文があるものは公務だ。電話で口頭で招かれたものについてはおそらく正副議長の肩書で呼ばれたのか、議員として呼ばれたのかは判断がしにくいと、こういうものは公務もしくは用務ととり扱っていると考えている。
本池 議長にも「議長の立場」「議員の立場」「私人の立場」の三つの立場・行動があることは理解できる。ただ、議長の立場と議員の立場では、公費支出の適否はまったく異なる。私たち一般の議員は議員として動いたからといって公用タクシーチケットを使うことはできない。議長と議員の立場が重なるといわれるが、公用タクシーチケットは議長しか使えないものだ。であれば、議長の「公務」を使用の判断基準としていいのではないかと思う。
ほかの自治体で「用務」が使われていないのは、公務にしか使えないという明確な基準があるからではないだろうか。県内にはタクシーチケットそのものがない自治体もあるし、年間のタクシーチケットの予算は3万円ほどのところもある。なかにはタクシーチケットはおろか、議長専用の公用車すらない自治体もあった。公用車を議長みずから運転する自治体もある。タクシーチケットのあるところでは、運用は非常に厳格にしておられ、「使えるのは公務のみ」「二次会からは個人的な参加になるので帰りも自費」「議会事務局がタクシー会社に連絡して議長の送迎を手配する」などの方法をとっておられるそうだ。きちんと公務と私用の線引きをしておられ、それ以外は自費で帰宅するなどの運用ルールを持っておられた。それに対し下関市議会はどうだろうか。
公用車の使用がない日に使っている五件
本池 次に監査委員が「公務等」と認定した、公務証明もなく公用車の使用もない5日分について聞く。平成30年4月28日の使用についてだが、この日は下関市を訪問した他県の知事との意見交換があったと確認されている。意見交換した場所と時間は確認されたのか。
小野 監査結果に掲載しているということは、監査委員事務局あるいは監査委員が事実確認している。監査結果に場所や時間は記載していないので、これ以上は申し上げることはできない。
本池 内容や時間を確認しているが、いえないということか。
小野 監査結果は監査委員全員の合議で決定すると地方自治法で規定されている。本件もそのように決定しているので、書面に記載している内容が統一した見解である。これ以外について私が1人でどうだこうだということはできない。
本池 今回は監査結果について質問すると通告しているし、代表監査は説明員として座っておられるのだから説明の義務があると思う。確認されたのかどうかを聞いているので、そこは答えてほしい。
小野 確認したということだ。
本池 この日は豊前田から23時、2人使用している。この使用について説明していただけるか。
小野 複数名で乗車した例もあったことは確認している。
本池 平成30年12月19日だが、19時45分にタクシーチケットを使って竹崎に行き、22時に山の田に帰宅している。監査結果には、議会事務局の職員との議会運営についての意見交換があったとしている。意見交換した時間と場所、内容は確認されているか。
小野 先ほどの答弁、少し訂正させてほしい。事務局からメモが入り、場所・時間は5件とも確認していないと。項目として確認したということだ。
本池 では聞くが、個人的な活動と用務の判断基準は何か。内容を確認されていないのなら、どう判断されたのか説明してほしい。
小野 公用車が迎えに行き、こちらに来て仕事をする。その日に公務があれば公務または用務という扱いだ。
本池 今お聞きしているのは、「用務」と「一議員としての活動もしくはプライベート」との区別の基準だ。
小野 消去法で、公務でもない用務でもないものが私用となるが、5件については公務等と合議で認定した。
本池 公務等の「等」は用務の部分と思うが、内容を確認していないのであれば、「用務」だと認定した判断基準がないということになるが。
小野 議会事務局から提出された行事予定表などを見て、これは公務だろうと判断した。
本池 内容を確認していないといわれたので、では「用務」かどうかわからないではないかと指摘している。この件(議会事務局職員との意見交換)の場合、職務上必要なことであれば昼間に庁舎内ですれば済む話だ。なぜ昼間にしないのか。議会事務局職員との飲食が主体だからではないかと疑われても仕方がない。さらに、夜に自宅から現地に向かうさいに公用タクシーチケットを持っていた点だが、公務等があるときにその都度渡すのではなく、あらかじめ持っているものなのか。
小野 先ほど5件について、すべて場所を把握していないといったが、把握しているものもあるというメモが入った。また「公務」「用務」「それ以外の私用」の区分けだが、今回の監査対象になるのは請求のあった議員に対する請求、市長に対する返還の請求の2点だ。これをもとに公務・用務があった(と認定した)。議会事務局は公務があれば、公務等ということで、私用がいくらか入っているものについてもすべて公務等があったという運用をしている。これについて監査がいけないとか、結果通知には認定していない。
本池 私用も含まれていたが、議会事務局が公務・用務と認めているから監査委員としては何もいわないということか。
小野 何もいわないのではなく審査の対象にしていない。今回の監査請求にあった2点について、適正であったか、そうでないか、勧告すべきか棄却すべきか判断する材料には入っていないということだ。
本池 怠る事実についてはすべての期間が対象になっている。それを全部「適当」とされたのは監査だ。
小野 すべて確認してすべて公務等でくくられるというのが監査結果だ。
本池 もう一点聞く。令和元年8月9日だ。この日は23時に細江から湯玉まで公用タクシーチケットを使用しての乗車がある。監査結果では、陳述のさいの質疑等によって、山口県市議会議長会研修会があったとしている。この柳井でおこなわれた研修会だが、議長だけでなくここにいる議員がほぼ全員参加している。もちろん私も参加した。研修が何時まであったのかは確認したか。
小野 何時から何時まであったかは確認していない。ただ、立派な研修会があったということは公務があったというふうに認定している。
本池 この日は、夕方には柳井から全員バスで帰ってきたと記憶している。しかし、タクシー乗車は23時だ。研修会を「公務等」と認めたとしても、夕方なら公用車で帰宅することができるのではないか。かりに職員の労働環境の関係でタクシーを使用したとしても、23時にタクシーに乗っているのは遅すぎると思うが、研修会後に公務か用務があったか確認されているのか。
小野 帰宅が何時になったとか、どこから乗ったのかなどは、公務等の成立要件に含まれていない。判断は監査委員としてはしていない。
本池 参考までに申し上げると、この日の山口県市議会議員研修会では、千葉県市川市議会事務局の方を講師に、自治体議員のコンプライアンスについての講演をお聞きした。選挙によって選ばれた議員は、「公人」「選良」というラベルを貼られており、公務員よりもはるかに強い住民の監視の目が向けられていること、議会に与えられている自律権は、選挙で選ばれた人たちという信頼にもとづいてあるもので、各議員には自律権の適切な行使(濫用ではない)が求められるというお話を聞いたものだ。
今、「公務等」と、公務と用務がまざっているといわれた5件のうち、3件についてお聞きした。疑問はかなり残るが、監査委員はすべてを「適当」と判断したということでよろしいか。
小野 これが違法であるとか不適当であるという判定はしていない。先ほどの研修会の夜は豊浦町の経済界との会合があったというメモが入ってきた。
本池 では最後に聞く。平成31年3月22日の使用についてだ。この日は、23時に3人がタクシーを使い、川棚から田耕を回って二見(遠回りして同乗者を公金で送ってから帰宅)となっているが、これも問題ないと認定されたということでよろしいか。
小野 深夜のタクシーの利用の適否については監査の結果に今回記載していない。したがってこのことに関する監査委員の統一した見解はないので、私から見解を申し上げることはできない。
本池 田耕を回ったことで目立つのがこの日だが、このほかにも複数乗車は何回もある。監査としては複数乗車も認めるのか。
小野 認める認めないという以前に、この監査結果にないので合議をしていない。今のところどういう判断をしたものでもない。
本池 「すべてを適当とした」といわれたが、これもスルーされているんですよね。
小野 請求人から請求のあった二項目について監査するにあたり、「公務がないにもかかわらずタクシーを使った」と、これについてチェックした結果、すべて公務があったという認定をしている。その中身の項目について、今回の監査請求の要求の二項目に直接影響するものではないので、監査委員の合議はしていない。
本池 4人の議員のなかには、明らかにミスだったとして、指摘されれば返金する意志があるといわれた方もおられたようだ。公金の支出が適正かどうかチェックし、正していくのが監査委員の使命ではないだろうか。
小野 二つの請求項目について監査し、合議した。その結果が監査結果通知だ。その内容がおかしいではないかとおっしゃるが、綿密に資料も持っていないし、どうだとはいえない。監査委員も自治法によって市長から議会の同意を得て選任され、監査基準に従って常に公正不変の態度で監査している。
本池 監査結果の末の「その他」には、「監査により、議会事務局で使用するタクシーチケットに明文の使用基準がないことを確認した。文書によらない基準では混乱が生じるおそれがあるため、市長において改善が必要と考えるところである」とある。明文としての使用基準をつくれということだろうが、これまでのやりとりを振り返ってみて、監査委員自身が「用務」の内容も把握していない、「用務」と「議員の個人的活動」の区別の判断基準も曖昧な状態で、使用基準をつくれるのか。
私たち議員には政務活動費があるが、この使用基準は非常に厳格だ。勉強会に参加すれば、いつどこに行ったのか、その案内文はあるのか、交通手段はなにか、その証拠はあるのか、参加した感想までが必要だ。何かを購入すれば領収書はあるのか、宛先、按分など、すべて厳密な証拠が必要になる。厳しいが、それが公金を使うことの責任なのだと思わされる作業でもあった。公用タクシー使用状況をみるにつけ、同じ議会事務局の仕事なのかと思うが、それを監査もおとがめなしというのもいかがなのか。
小野 請求人からあがった二項目について監査し合議した。使い方に問題があるのではないかということだが、現在明文化されていないということで、監査の方から使用基準の明文化という意見をつけたところだ。これを見て明確な判断基準なりを考えるのは執行部だと思う。
本池 これまで明文化された使用基準を設けてこなかったのは、ほかの自治体を見ても明らかなように「公務のみに使用する」という明確な基準があるので、わざわざ文書をつくらなくても混乱は生じないことが前提にあると思う。議会の自律権は好き勝手にできる自律権ではなく、選挙によって選ばれた「良識ある人たち」だから、法令で細かく規律しなくとも大丈夫という信頼にもとづいたものではないか。この議会に所属する議員一人一人が今回の件について考えなければならないのは当然だが、住民監査請求は住民が直接行政運営に参画する重要な制度だ。独立した機関である監査として、市民の意をくみ、厳正な監査をしなければならないと思う。
最後に、市民のみなさんから見て、このタクシーチケットの使い方はとても納得されるものではないと、市議会の一人として私は思う。この議場におられる全議員に、このような使い方を是とするのか、問われているのではないか。ぜひ考えていただきたい問題と思ったので、今日この場で質問させていただいた。今日のやりとりも通じて、まだ納得がいかない点も含めて、再び何らかの形で質問することもあるかと思う。(おわり)
補足・一般質問前日に起こった出来事
下関市議会議員 本池涼子
今月5日から市議会6月議会が始まり、15~22日の一般質問を挟んで23日に閉会します。新型コロナウイルス感染拡大予防や経済対策についての審議が多くを占めましたが、市政全般についても審議がおこなわれています。今回私は、かねてより市民のなかで問題になっていた「下関市議会の公用タクシーチケットの使用について」を一般質問でとり上げました。
「お金がない」を理由にさまざまな市民サービスが削られていくなかで、市議会では飲み会帰りだと思われる時間帯に、公金で運用されている公用タクシーチケットを使って帰っていることが明らかになり、私自身「市議会はどうなっているのか」とのお声を方々からいただいてきました。該当する議員のモラルの問題であることは当然ですが、この件に関しては公金の支出の基準がどのようになっているのかを質す必要があります。公金支出の事務をおこなっているのは議会事務局なので、質問先は議会事務局なのですが、議員が議会事務局に対して質問するというのはこれまで例がないということで受理されず、その後質問できなくなりました。そのため、この件に関して出されていた「住民監査請求について」ということで、監査委員に質問先を変えて質問しました。
なぜ議会事務局に対して質問できなくなったのかについてですが、8日の議会運営委員会(以下、議運)において、「一般質問等の質問における議会に対する発言通告は、これを受理しないものとする」という一文を下関市議会先例集に追加することが決まったからです。この件について整理すると、3日に私が質問通告書を議会事務局に提出したのですが、そのさい「議会事務局は議決機関の一部であり、一般質問はあくまでも執行機関に対してのものなので、議会事務局には質問できない」といわれ、そのまま保留となりました。しかし予算の執行をしているのは議会事務局なので、それはおかしいではないかというやりとりを何度かしました。保留のまま4日の締切日が過ぎ、5日の議運で出てきたのが、前述の先例集追加案の一文でした。議運には出ることができない無所属議員の私のもとには職員の方からこの一文が事務局提案で出されたとの説明があり、5日の議運では各会派で持ち帰りになったため、先例集追加案と私の出している質問の結論は8日に決まるといわれました。8日の議運では、追加案を認める意見が大半を占め先例集追加が決定し、それにより私の質問は「不受理」となりました。
質問先を監査委員に変えて再提出して受理されたのですが、このような一文を追加してしまえば議会の予算執行に関しては本会議場での質問ができなくなります。その参考とした衆議院先例集の一文は「議長に対する質問書はこれを受理しない」となっていますので追加案自体が拡大解釈もいいところですし、これが事務局提案で出されたのであれば大問題です。
翌9日、「議会に対する発言通告」とは具体的に誰に対してなのか、その内容は何なのか。そして、この追加案を決定する前であったのに、3日に提出した質問書を受理しなかった理由とその根拠は何かを問う「質問書」を提出し、文書による回答を求めました。
この質問書への説明をするとのことで一般質問前日の17日に議会事務局長、次長、議事課長に呼ばれたのですが、質問書には文書では回答せず口頭で説明するといわれました。その理由は、「正副議長と協議した結果、文書により回答をする義務がないから」だそうです。
質問書への回答は、「議会に対して」の「議会」とは、議長、議員、議会事務局のすべてを含むこと、発言通告の内容は、議会に関するすべてのことだということです。
そして、3日に受理しなかった理由は、事務局に対して質問が出た前例がなく慎重にとり扱うこととなったからで、事務局が議長・副議長に相談し、議長が議運に諮問することを決め、議運で持ち帰って再度協議した結果追加案が通ったとのことです。その根拠は地方自治法百四条で定められた議長の議事整理権があるためだとの説明がありました。
高松事務局長は、今回の件は議会への質問がまったくできなくなるということではなく、「直接聞いてほしいということが一つ、もう一つは員外議員として議会運営委員会に出席して質問していただけるので、いっさい質問できないということとは違う」といわれました。私が、「公開の義務があるのは本会議だけであり、岡本次長も議会運営委員会で事務局は執行機関の一部でもあると認めていたのに質問できないのか」と聞きますと、下関市議会は全部公開しているので、公の場でやることは可能だということでした。ただそれは、議長が許可したときだけなので入れない可能性もあります。それについては「そのようなことはないと思う」といわれました。
議会事務局からは、今回の先例集追加案は議長・副議長と協議して出したもので事務局提案ではないと何度もいわれました。しかし私は事務局提案として説明を受けているし、議員のなかにも事務局提案と思っている人が複数いるようです。それをいいますと、それは絶対に違うといわれました。議会は議員自身が運営していくものであり、事務局がそれを提案したとなると大問題で、事務局提案で議会(事務局)に対する質問をできないように決めることはあってはならないことです。職員が「事務局提案」といったのは間違いだといわれ、それについては謝罪されましたが、私は先例集への追加については納得できないことを申し上げました。
今回、私は文書による回答を求めていましたが、口頭での回答になるということでメモをとっていました。そのさい岡本次長が、自分たちは一議員と話をしているのだ(=記者ではなく)と確認されましたので、「そうだが、私は市民に当然報告します」と申し上げました。すると岡本次長が、いってはいけないこともあるのだという旨のことをいわれましたので、隠さなくてはいけないことなのですか? とお尋ねすると、高松局長が「議運でも話しあわれていることなので大丈夫です」といわれました。
その後、議長・副議長が待っておられるとのことでしたので、先例集追加について、議会事務局の説明で間違いないかを確認しに議長室へ行きました。吉田副議長も来られ、林議長は、「本池議員が通告を出した段階で報告があり、前例がないのでどういう対処方法があるのか調べてくれといって、事務局に出してもらった」と、事務局の説明で間違いない旨をいわれました。先例集追加自体が問題ではないかというと、員外議員として議運でも発言できるし、本池議員が総務委員会に入って質問すればいいではないか、とのことです。その後、先例集追加のことではなく、翌18日に質問予定のタクシーチケットの問題について縷々いわれたのですが、私は、「質問の意図としては該当者を攻撃する目的ではなく、議長が忙しいことも、自宅が遠方なのも理解している。ただ、使用実態が崩れているのであれば市民に説明がつくように正さなくてはいけないと思う」という内容を申し上げました。
以上、質問前にあった出来事を報告させていただきました。議場でのやりとりも含め、タクシーチケットの運用については、市民が納めた税金を使っているという意識が欠如していると思えてなりません。課題も山積みですが、議会が本当の意味で市民の代表といえるように、正すべきところは正していかなければならないと感じました。議員は年上の方ばかりですし非常にいいにくい部分があるのも事実ですが、私が何のためにこの場にいるのか、市民がどのような思いで見ているのかを考えると、いくら年少でも一人の議員としてやらなければならないことです。そのことを常に問いかけながら頑張ろうと思います。このたび、お忙しいなか傍聴に来てくださった方々、オンラインで見ていただいたり、激励の言葉やご意見を寄せていただいた方々、ありがとうございました。