93万円の返還求める
下関市議会議長・副議長の公務用タクシー券使用実態について、本紙記者と市民有志でつくる調査チームは昨年9月から本紙紙上で調査結果を公表してきた。
市民の税金から支出される公務用タクシー券だが、情報公開請求や聞きとりなどで調査したところ、平成30年1月~令和元年8月までの調査期間のうち、夜遅い時間に唐戸や豊前田などから乗車したものも含めて、公務等の証明のない支出が相当数にのぼっていた。
市民の税金から支出されるタクシー代がこのように使われていることに、市民のみなさんから多くの意見が寄せられたが、調査チームは市民の皆さんとともに、まずは4人本人(調査期間中の元職、現職)がどのような対応をとるか、自浄能力があるのかどうか、さらに下関市議会に自浄能力があるかどうかを見守ることにし、その対応に期待していた。しかし、年度末を迎えた3月25日、市議会事務局に返金があったのかどうか確認してみると、「悪いことをしたわけではないので、返金していない」ということだった。自浄能力はなかったようだ。
そこで調査チームは住民監査請求をすることにし、4月6日付で「下関市職員措置請求書」を提出した。住民監査請求というのは、違法や不当な公金の支出、財産の取得、管理や処分など市の財務について監査委員に「監査をしてほしい」と求めるものだ。下関市在住の個人または法人であれば、だれでも請求できることになっている。だが、下関市で最後に住民監査請求があったのはもう10年ほども前のようだ。
監査請求は、「下関市職員措置請求書」という文書でおこなうことになっている。市ホームページから監査委員事務局のページに入ると、請求書のひな形が掲載してある。この請求書に、請求の要旨―いつ、だれがどのような行為をおこなったのか、どのような理由で違法・不当であるのか、どのような損害が生じているのか、どのような措置を請求するのかといった内容―を記載する。
文書は縦書きでも横書きでもいい。それに請求者の住所と氏名、印鑑を押して請求書は完成する。氏名は印刷ではなく自筆でなければならない。
今回は、以下のような内容で請求書を提出した。
監査請求内容
下関市議会の戸澤昭夫前議長、亀田博前副議長、林透議長、吉田真次副議長(以下「4人の議員」)は、公務に使用すべき公用タクシー券を、公務がないにもかかわらず不正、不適正に使用し、市に93万1740円の損害を与えた。
この損害金は4人の議員が自主的に返納したか、そうでなければ市長が返還命令を出して、当然全額が賠償されたものと考えていた。
しかし、令和2年3月25日、市に確認したところ4人の議員からは損害賠償されていないこと、また、市の公金を適正に管理する責任を負っている前田市長は、4人の議員の公用タクシー券の不正、不当な使用によって市に損害が発生しているにもかかわらず、4人の議員に対して返還を求めておらず、現在まで損害が放置されたままになっていることが判明した。
よって、①4人の議員は、公用タクシー券の不正、不当な使用によって市に与えた損害金を市に返還し、補てんすること。②市長は、四人の議員に対して、公用タクシー券の不正、不当な使用によって市が被った損害金の補てんを求めること。
地方自治法第二四二条第一項の規定により、別紙事実証明書を添えて、必要な措置を請求する。
地方自治法第二四二条第二項では、住民監査請求は「その行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときにはこれをすることができない」が、「ただし、正当な理由があるときは、この限りではない」となっている。
タクシー券を不適正に使用した日から1年以内ということになると、戸澤前議長、亀田前副議長はまったく監査されないことになってしまう。監査請求の時期が今になったのは、調査が昨年4月にスタートし、不適正な使用実態が明らかになったのが昨年9月であること、またその後も自主的な賠償があるものと考えて見守っていたからだ。調査チームとしては、正当な理由があると考え、タクシー券使用から1年をこえたものについても返還を求めることにした。
この請求書に「事実証明書」として、これまでに情報公開請求で得た「市議会事務局借上自動車使用内訳」と、そのもととなる使用済みタクシー券、公務等の証明となる議長・副議長及び市会議員に対する案内(出席依頼)の文書を添付した。この資料は1回提出してしまうと、戻ってこないということだったので、すべてコピーして提出した。
これから監査委員会事務局が、請求書の様式や内容、請求者が住民であることを確認するなどの審査をおこなうという。要件を備えていれば受理、要件を備えていなければ却下になるということだった。
まずは審査の結果が監査委員事務局から連絡があるそうなので、進行については追って新聞紙上でお知らせする。
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