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山口県と県内12市の議会事務局に確認 タクシーチケット下関市以外は厳格に運用

二次会帰りに公費使う自治体なし

 

 本紙は9月13日付で下関市議会議長・副議長のタクシーチケット使用状況の調査報告を掲載した。下関市議会では戸澤前議長の場合(14カ月間)、使用回数114回(82万2130円)のうち69回(49万2900円)が公務等に関連して使用したと確認できないまま公費が支出されているなど、驚くような実態が明らかになっている。下関市議会事務局はこれらについて「すべて用務をおこなった日である。用務については議長としての用務であり、公務ではないのでスケジュール管理までする必要がないと考えている」と説明している。そこで、他の自治体がどのようにタクシーチケットを運用しているのか、山口県内の12市議会事務局、山口県議会事務局および北九州市議会事務局に取材した。各議会事務局の説明をそのまま紹介する。

 

※参照記事は下記

飲み会帰りのタクシー代を公金で支払っているのでは? 下関市長、市議会議長の公務用タクシー券使用について

 

下関市議会の公用車(左・議長車のクラウン、右・副議長車のサイ)

 

宇部市 議会事務局

 タクシーチケットは1回1枚ずつ渡すようになっている。使うことがあっても月に1回くらいで、ほぼ毎日使うことはない。事務局が「今日はこの行事があるので行って下さい」と1枚しか渡さないので使用目的もわかっており、きっちり管理されている。夜の12時まで公務などない。今の議長は市役所の近くだから公用車もほとんど使わないし、前の議長は遠方だったが、自分でタクシー会社と個人契約を結び、自費で帰っていた。

 

山口市 議会事務局

 タクシーチケットの準備はしているが、ここ1、2年執行がない。今年度もタクシーチケットを使う事例はまだない。公用車は1台、議会が優先して使わせてもらっている車があるが、夜の会合に参加するさいに、送迎をするのは議長として出席をする場合のみだ。必要があれば送迎をするし、それがかなわない場合にはご自身で帰ってもらっている。二次会から先はプライベートな扱いにさせていただいている。

 

萩市 議会事務局

 うちには公用車はない。議長は自分の車を使って出勤しており、駐車場だけは確保している。
 だいたい公務で会合などに出席するのは議長しかいない。副議長は一般議員の範疇なので、公用車とタクシーチケットの使用は論外だ。うちの議長は酒を飲まないので、会合のあとの宴会も帰りは自分の車で帰るし、タクシーチケットなど使ったことはない。

 

防府市 議会事務局

 議長車はあるが、副議長の専用車はない。副議長が使うこともあるが、議長・副議長2人で1台の公用車を使っている。タクシーチケットは、請求が来て支払時に何の用事でどこからどこまで乗ったのかわかるので、おかしな点があれば確認するようになっている。

 しかし、議長にはタクシーチケットを渡してあるが、今の議長もその前の議長もほとんどタクシーチケットは使っていない。タクシーチケットは公金であり、公私の線引きが難しいからではないか。タクシーチケットではなく、だいたい公用車を呼ぶか自費で帰っている。

 

下松市 議会事務局

 議長車というものがなく、議会車としてシルバーのランディを使用している。議長の送迎だけでなく議会事務局の職員も使うし、また必要なときは他の課に貸し出すこともある。以前は議長車もあったが今は議会車のみだ。議長が市役所に来るときは自分で来て、公務があれば議会車で送迎している。
 タクシーチケットは基本的に市外に公務に行ったときに使用している。そもそもタクシーチケットの年間予算は3万円しかないため、ほぼ使用しておらず、年に数えるほどだ。公務後の意見交換会もないことはないが、公務としてはあまりないのではないか。二次会など聞いたことはない。

 

岩国市 議会事務局

 議長には1枚だけ予備として持ってもらっている。タクシーチケットは1枚上限1万円で、使えるのは議長もしくは議長代理として公務に出席した者のみとなっている。議長への案内を受け、議会事務局がその都度1枚議長に渡し、何に使用したかもすべて把握するようにしているので、「証明できない」という状況はない。
 タクシーチケットを使用するパターンは①公務として出席した会議や催しから自宅までの帰り、②公務として県外に出張したときの空港から自宅までの帰り。ほぼその2パターンに絞られる。

 

光市 議会事務局

 タクシーチケットの制度は一応あるが、ここ数年は使っておらず、「タクシーチケット」としての予算もつけていない。議長の送迎に使う車はあるが、議会の視察に来た人たちの送迎などにも使うので、議長車というよりも公用車と兼用だ。議長は毎日自分で市役所まで来て、そこから公務で外に出るのであれば車で送迎する。普通の一般職員とあまり変わらない。
 下関とは予算規模がまったく違うので、タクシーチケットをいくらでも使えるような余裕はない。タクシー代を出す財布がない状況だ。政務調査費も年間24万円だ。議長が意見交換会などに出かけたときは、だいたい自分で帰るか、奥さんに迎えに来てもらっているようだ。

 

長門市 議会事務局

 市長や議長を公用車で送り迎えすることはしていない。市長も議長も自分の車で来るか、家の者が連れて来る。公務の関係でやむを得ず迎えに行くことはあるが、基本的にない。
 タクシーチケットはあるが、公用での一次会の宴会に限って発行している。二次会は絶対にダメで、基本は9時くらいまでだろう。これまでも議長にしろだれにしろ、タクシーチケットを使うのを嫌がるため、今年に入って使われたタクシーチケットは数回だ。

 

柳井市 議会事務局

 タクシーチケットの年間予算は例年3万円ほどだ。上限までいくと、公用車もしくは議長の自腹で帰ってもらう。公務現場から自宅までの直帰以外の使用は認めていない。二次会に参加すればチケットを使うことはできない。あくまで公務として参加したその現場からしか利用は認めておらず、同乗者がいる場合も使えない。使えるのは議長もしくはその代理だ。
 そもそも財政が厳しいなかで、議長のタクシーチケットも例外ではなく、どうしても条件は厳しくならざるを得ない。職員が送迎すると人件費もかかるため、極力経費を抑えるようにしている。

 

美祢市 議会事務局

 専従の運転手はおらず、議長も自分の車で出勤している。市長も会合などで遅くなると、秘書や奥さんを呼んで自分の車で帰るし、市長や議長が遅くなるとホテルで宿泊することもある。
 副市長や副議長は公用車を使うことはない。公用車といっても普通の職員が使うような軽の車なので、何かあれば他の職員も使うという扱いだ。
 また各種団体の総会などに議長が参加することはあっても深夜に及ぶことなどはない。議長などはタクシーチケットを使うのを嫌がり、渡してもだいたい使っていない。今年に入ってタクシーチケットを使ったのは1~2回くらいだ。

 

周南市 議会事務局

 議会の代表は議長なので、議長車はあるが副議長にはない。議長の代理で会合に出席するときには乗せることもある。現在の議長は自分で市役所まで来て、そこから外部で公務があるときには議長車で送っている。公務には基本的に秘書がついて行くので、帰りは秘書が送り届けることもある。
 会合後の意見交流会に参加するときは公務なのでタクシーチケットを手渡しているが、二次会などに参加したときには、公務ではなく議長の個人的なおつきあいになるので自費で帰ってもらっている。タクシーチケットは公金なので使用するときは公務に限る。意見交流会のときもだいたい付き添いの職員が「何時にどこまで」というように帰りのタクシーを手配している。23時や24時にタクシーチケットを使用することは考えられない。うちは公務に限るとしているので用務というのはよくわからない。

 

山陽小野田市 議会事務局

 タクシーチケットを議長に直接渡すことはしておらず、議会事務局からタクシー会社に何時にお迎えに行って下さいと連絡する。遅くても午後9時だ。年間で4万円ほどしか使わない。

 

山口県 議会事務局

 タクシーチケットの制度はない。過去にさかのぼって資料調査をおこなったが、過去にも存在しなかった。
 会合などの出席に対する送迎の取扱については、公的立場で行事への出席依頼が来たさいに、出席することが適当かどうか、議会事務局で精査したうえで、対応可能とした行事については酒席も含めて公用車で送迎している。送迎は議会中と公務の場合だ。

 

北九州市 議会事務局

 議長が使うタクシーチケットはあるが、基本的に市の執行部の運用規定と同じだ。勤務時間内は公用車を使い、時間外でどうしてもタクシーを使わなければならないときだけタクシーを使っている。たとえば遠方の行事へ出張で出かけて帰りが夜遅くなり、公用車が使えないというようなときにタクシーチケットを使う。そのため、市内でタクシーチケットを使うことはほとんどない。飲み会帰りにタクシーチケットを使うということは基本的にありえない。回数も毎日というような回数ではない。

 

 

 各自治体に取材したところ、以上のような回答だった。公用車やタクシーチケットについて全自治体が厳格な運用をしており、二次会以降の使用は認めていないなど、下関ほど議長・副議長が好き勝手に使用を認められている自治体は見当たらなかった。

 

 町になると、「そもそもタクシーチケットはなく、公務現場に事務局の職員が送るか、もしくは同席する。基本的に議長が公用車を運転して現場に行き、自宅に帰る。お酒が出る場合もあるが、飲まずに自分で運転して帰る場合もある」(周防大島町)など、さらにシビアな回答が返って来た。平生町も同じくタクシーチケットはないという。

 

 県内の議会関係者からは、「1カ月で8万円以上など、とうていいかない」「うちは年間の政務調査費が下関のタクシー代よりも少ない」「23時、24時の使用はあり得ない」「公務の証明ができない使い方はしていない」など、驚きの声が寄せられている。また、ある市議会の議長経験者は、「議会事務局からチケットをもらっても自分のチケットを使って返していた。行事に出席しても一次会で帰っていた。夜の12時は二次会だろう。これはモラルの問題だろう。市財政が厳しいなかで、あまり派手には使えないはずだが…。今どき珍しい」と話していた。

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