中国電力は10日、上関原発建設計画に関連して、7月で期限切れとなる建設予定地の海面埋め立て免許の再延長を山口県柳井土木建築事務所に申請した。建設予定地の約14万平方㍍を埋め立てる工事で、期限を2023年1月6日まで3年半延長するとした。
上関原発建設にかかわる公有水面埋立免許は二井知事(当時)が2008年に交付し、2012年10月までの3年間の期限とした。だが祝島の漁業者が漁業補償金の受け取りを拒否しているため工事着工は今日までできないままできている。2011年3月には福島原発事故が起き、原発新規立地・再稼働反対の圧倒的世論が高揚するなかで、国は新たなエネルギー計画には原発の新規立地を盛り込むことができていない。
2012年10月に中電は埋め立て免許の延長を申請したが県は7度にわたって判断を先送りし、2016年8月に村岡知事が埋め立て免許の延長を条件付きで許可した。だが、祝島が断固として漁業補償金の受け取りを拒否し続けているため、中電は埋め立て工事に着手できないまま、今年7月6日に期限切れを迎える。
中電は今回、原発の新規制基準に基づく予定地の断層評価のため実施する海上ボーリング調査に半年間、工事再開から埋め立て完了まで更に3年の延長が必要とした。建設予定地で活断層かどうかを確認するボーリング調査についてデータを補強する必要があるとして、新たに陸地から200㍍ほど沖合に作業台船を据え付け、やぐらを組んで水深約13㍍の海底を約60㍍掘り下げるとしている。
中電は09年12月に上関原発の原子炉設置許可を申請したが、2011年の福島原発事故を受けての新規制基準の施行後、原子炉本体設置をめぐる国の審査は事実上止まっている。
2016年に村岡知事が埋め立て免許延長を認めるにあたって「国による原子炉設置認可と発電所本体の着工の見通しがつくまで関連工事も再開しない」ことを条件とした。具体的には「上関原発に係る国の審査が現在まで開催されていない」「中国電力が国に届け出た電力供給計画に上関原発の着工時期が未定とされている」点をあげていた。その点について見ると、経済産業省は現在まで原子炉設置にかかわる審査がおこなわれていないことを明らかにしており、中電は2019年の電力供給計画でも上関原発は未定としている。また経産省は「原発の新設は想定していない。現在のエネルギー基本計画に原発の新設は入っていない。上関原発は原発の新設に入る」との見解を示している。
上関原発を建てさせない祝島島民の会は、「国側がエネルギー基本計画でも原発の新設を明記せずに先送りだけを続けている状況で、埋立工事に必須である当該海域の漁業権の放棄や漁業補償金の受領も、祝島側は一貫して拒否し続けている。こういったなかでの中国電力による申請や、県側の申請許可という対応は、今後も何年にもわたって祝島島民や上関町民、近隣住民が国・県・電力会社などの都合で振り回され続ける」「上関原発計画を止めるためには、祝島島民や上関町民だけではなく、全国の皆様のご支援ご協力が不可欠」とし、上関原発計画を撤回させる固い意志を表明している。
どこから見ても上関原発建設の見通しはまったくないなかで、それでもなお中電は埋め立て免許延長の申請をおこなった。原発を推進してきた国および中電としては上関町における利権を決して手放そうとはしないということであり、仮に原発建設計画がとん挫しても、使用済み核燃料の処分場など別目的に利用することを企んでいる可能性もある。