下から地盤固め防衛省訪問する町長激励
「むつみ演習場へのイージス・アショア配備に反対する阿武町民の会」(吉岡勝会長)の代表4人が23日、花田憲彦町長を訪れ、町民の会の会員数が20日現在で有権者(2898人)の55%にあたる1603人に達したことを報告した。同時に24日に防衛省を訪れ反対の意志を伝える町長に対して、「阿武町民の反対の意志をぜひ国に伝えて欲しい」と訴え激励した。
イージス・アショア配備計画をめぐって、防衛省は10月からおこなってきた適地調査に問題がなかったとして、27、28日に防衛副大臣が計画地のある秋田、山口両県を訪れることを明らかにしている。
その直前に町長が防衛省に阿武町としての反対の意志を表示することになった。
花田町長は、「適地調査の結果発表はなされると思うが、配備のための適地調査が意味するものは、私たちがおこなってきた町づくり、地方創生の面から見て相容れないものだ」と語った。また「今なぜ若者たちが田舎に来ようとするのか。それは自然や人とのつながり、食の安心安全などへの魅力を感じているからだ。お金で人は動かない。どんな町かを見て若い人たちが集まってきている」とし、I・Uターン政策を進めてきた町づくりとは相容れない、あまりにも民家に近すぎる配備計画は容認できないとのべた。
「調査」結果発表に強い反発
阿武町では防衛省の調査結果の発表について「地元住民の理解がまったく得られていない」として多くの住民が反発を強めている。今後、住民に対する説明会が実施されるのを前に、阿武町民の会では会の基盤をより強くして臨むうえで、一歩進んだ町民同士の交流と結束を促す具体的行動を望む声が各地で広がっている。宇生賀の住民は、「防衛省の調査は住民が知りたいことを調査するものではなく、わずかなボーリング調査をもって“水質に異常はない、適地だ”などというもので、誰も納得はしない。こんなに民家に近い場所に配置することは世界を見ても例がない。防衛省の不誠実な態度でより不信感が募っている。調査、説明といっても私たちが知りたい具体的なことはなにも答えない国の姿勢は理解に苦しむ。私たちはこの地域を先祖から引き継ぎ守ってきた。その自然や農地を守りたい。ただその思いだけだ」と不信感を募らせている。また昨年の防衛省の説明会で「配備は地元理解が大前提」と公言していることから、「その大前提がまったく進んでいないではないか」とみなが指摘している。
別の住民は「阿武町宇生賀は農村の桃源郷のような場所だといわれている。自分たちで農地を守り地域をつくってきた誇りがある。みなが結束して反対の声を上げている。日本の社会を変えていけるのは、このような苦楽をともにしてきた小さな農村からではないか。そのことは歴史が教えている。イージス・アショアに反対することは、同時にこの町や地域、農地をどう守るのかを考え続け実践していくことだ」とのべ、防衛省の「適地」発表は到底受け入れられないと語っていた。
当初、配備計画地の近隣に位置する福賀地区(福田・宇生賀)の住民たちが、切実な思いで反対意見を表明したが、その思いが奈古や宇田地区に広がり町の将来にかかわる町全体の問題として捉える世論が広がっている。奈古、宇田で会員を募って回った町民は、「これは福賀地区だけの問題ではない。岩国基地がいつの間にか極東最大の米軍基地となったように、むつみ演習場に一度ミサイル基地を許せば、あの一帯が軍事拠点となる可能性が高いではないか。これは健康問題にとどまらず町をどうするのか、萩市、ひいては山口県全体の問題だ。阿武町民の会が1600人になった力は大きく、私も回るなかでいろいろな意見を聞いた。ぜひ各地の町民が集まって意見交流などができないだろうか。そうすることで町民の会の地盤固めをする必要があるのではないか」と問題意識を語っていた。
防衛省の「適地」発表を前にして、人から人へと草の根運動として広がってきた阿武町民の会を、今後どのように発展させていくのか活発な論議が広がっている。