下関市では新市議会発足後初となる3月定例会が2月27日に開会した。冒頭に議長・副議長選挙があり、議長に林透(62歳、みらい下関)、副議長に吉田真次(34歳、創世下関)といずれも安倍派所属の議員たちが就任した。水面下の駆け引きが進行するなかで噂にはなっていたものの、思いも寄らない人選に市役所内外で驚きが広がっている。
市議選後、議員たちにとっては選挙で得票を減らしたことも、市民から厳しい意見が寄せられたことも忘れるほどの関心事がポストを巡る争いで、会派をまたいで合従連衡をくり広げてきた。今回は2年前の市長選から続く安倍派・林派の対立の延長線で、志誠会(林派)を蚊帳の外に置き、安倍派の創世下関とみらい下関が両ポストを手にした。
議長・副議長ポストを見据えて保守系三会派(創世下関、みらい下関、志誠会)は、自民党新人の阪本祐季、村中良多、濵﨑伸浩、林昂史、吉村武志の5人の獲得合戦をくり広げた。結果、創世下関が阪本祐季、濵﨑伸浩、吉村武志の3人を獲得、林昂史がみらい下関に、村中良多が志誠会に所属することになり、これまで4人の少数会派だった創世下関(前田市政与党)が、みらい下関と同数の最大会派となり、元議長の関谷博率いる志誠会をしのぐ勢力となっている【表参照】。
会派確定以後、議長ポストをめぐる駆け引きが、おもに最大会派の創世下関とみらい下関とのあいだでおこなわれていた。自薦候補も多数おり、亀田博(82歳、創世下関)も議長就任を夢見ていたといわれる。だが、公明党市議団(5人)を従えたみらい下関から「副議長を吉田真次にやらせるから、議長を譲ってほしい」「創世とみらいで2年交替でやらないか」といった裏工作を受けて立候補を断念した模様だ。
連合系会派である市民連合も副委員長ポストなどとひき替えに取引に応じたとみられ、安倍派と連合安倍派、公明党安倍派の結託による議会体制が出来上がった。一方で志誠会も完全無視というわけにはいかないことから、委員長ポストや監査委員ポストを分け与え、うまいこと収まっていく格好となった。
正副議長選は34人のうち欠席者1人(江原満寿男)を除く33人でおこなわれた。議長選には「日共」の桧垣徳雄と林透が立候補し、結果は桧垣3票、林26票だった。無効票が3票で、立候補していない亀田博に1票が入った。副議長選には「日共」の片山房一と吉田真次が立候補し、片山3票、吉田真次27票、無効票3票だった。
先の市長選を受けて、関谷議長体制が“天の声”に従うかの如く崩壊したのち、議長ポストには豊浦町出身の戸澤昭夫が就いていた。今回、成り代わって同じく豊浦町出身の林透が就任することについて、議会の品位や健全性とも絡めて「大丈夫なのか?」といぶかしがる声も多い。また、最年少の34歳で副議長になった吉田真次についても、自力で副議長ポストを手に入れるほどの実力者と認めている者はおらず、大和町界隈が将来的に議長に据える配置なのだろうと見なされている。
公用車での通勤必要か 「自分で運転して来い」の声
なお、正副議長には1台ずつ黒塗りの公用車がつき、職員が送迎することになる。今回は2人とも旧郡部出身議員であり、林透は豊浦町湯玉、吉田真次は豊北町二見と、どちらも小一時間かかる距離だ。ガソリン代も職員の時間外手当の負担もバカにならない。これを問題にする市民は多く、「自分の車で通勤しろ」「吉田真次などは若いのだから、車でもJRを使ってでも通勤できるではないか」という声が広がっている。議会事務局に公用車の取り扱いについて尋ねたところ、「自宅の位置によって区別はしていない」とのことで、朝8時30分に職員が市役所を出発して自宅まで迎えに行き、帰りは可能な限り午後5時15分の就業時間内に送り届けることができるよう調整するという。自家用車等で通勤した場合、費用弁済が発生するという事情もあるようだ。
ただ、一般市議の報酬が月額54万5000円であるのに対して、議長は月額65万5000円、副議長は59万円とさらに上乗せがある。「市財政が厳しい、厳しいといっているのだから、正副議長が率先して経費削減に努めるべきではないか」と指摘する声も上がっている。
なお監査委員には亀田博と関谷博が就任したほか、委員長・副委員長ポストは、創世2、みらい2、志誠会1、公明2、市民連合1の振り分けとなっている。