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安岡沖洋上風力 工事差し止め求めた控訴審始まる

制限受ける漁船の航行 広範囲の漁場を喪失

 

 下関市の安岡沖洋上風力発電の建設をめぐり、山口県漁協下関ひびき支店の3人の漁業者が事業者・前田建設工業(東京)に工事の差し止めを求めた裁判の控訴審・第1回口頭弁論が13日、広島市の広島高等裁判所でおこなわれた。

 

 昨年10月、山口地裁下関支部が下した一審判決は、原告の漁業者らの裸もぐり漁(アマ漁)は「長期間継続しておこなわれ、漁獲物が県漁協を通じて出荷され、ひびき支店では原告以外にも多数の組合員が従事し、資源保護のための放流もおこなっている。密漁や違法操業とは本質的に異なるもので、法的保護に値する権利である」とした。同時に、「この海域では漁業権管理委員会が結成されておらず、もぐり漁は漁業権行使規則の手続きをへていないので、物権的保護は与えられない」「風車建設の漁業への影響は大きいとはいえず、また北九州の風車施設には魚礁効果が認められる。したがって漁業行使権の侵害とはいえない」として、漁業者の訴えを却下した。

 

 その後、漁業者らは控訴した。控訴審の第1回口頭弁論で、漁業者側の代理人弁護士は控訴理由を次のようにのべた。

 

 下関ひびき支店の漁業者のアマ漁は、漁業権行使規則の承認があったことと同等に扱われるべきである。本来、山口県漁協が漁業権管理委員会を設置し、アマ漁を承認する手続きをおこなわなければならなかったが、それをやらずに放置していたことに問題がある。漁業権について指導管理をおこなう山口県も、同海域のアワビ・ウニ漁のための魚礁設置を目的にした一般海域占有許可を与えるなど、ひびき支店のアマ漁を認識し承認していた。廣田弘光氏(下関外海漁業共励会会長)の反対があるというが、それはひびき支店の漁業者が風力反対を表明したことへの嫌がらせを目的とするもので、アマ漁を否定する理由にならない。

 

 洋上風力の建設が予定されている海域は、アワビ・ウニ・サザエがよく獲れるためにとくに漁業者らにとって重要な漁場であり、漁業者らはこの漁場での資源管理に腐心してきた。もし工事を実施すれば、漁場が将来にわたって失われることによる損害は金銭に見積もることなどできず、事後の損害賠償によってつぐなえるものではない。工事差し止め請求が認められるべきである。

 

「風車は魚礁」の欺瞞を暴露

 

 漁業者側の代理人弁護士はまた、工事による悪影響として、これまでの主張に加えて以下の点を強調した。

 

 港湾法は洋上風力発電の建設後について、風車が倒壊した場合を考慮して乱流範囲であるロータ径(風車の羽の直径)の2倍ほど離して航路を設定するよう定めている。それが風車の両側に設定されるので、安岡沖洋上風力発電の場合、ロータ径130㍍×2×2で、風車の周囲520㍍の範囲は船が立ち入り禁止となる。そうすると風車のそばでアマ漁をすることは不可能で、魚礁効果など無関係となるし、同海域の広い範囲で漁業をおこなうことが不可能となる。風力発電建設による漁業への影響は甚大である。

 

 この漁業者の訴えを図にしてみた。風車は15基建設する予定なので、広い範囲が漁船の入ることのできない海域になる(図参照)。港湾法は港湾区域を対象にしたものだが、県が管理する一般海域には同様のルールはなく、国の港湾法が準用される可能性が高い。事業者がもし以上のことを説明せず、「風車は魚礁になり漁獲が増える」ことだけを漁業者に伝えて同意を迫っていたなら、それは漁業者をだましたことになると専門家は指摘している。

 

 なお、前田建設工業は安岡沖洋上風力発電の工事着工予定を2015年4月としていたが、下関ひびき支店が総会で風力反対を決議し、地元の安岡自治連合会も反対決議を上げ、反対署名は10万人を上回り、大規模デモ行進を5回おこなうなど住民の反対運動が大きく盛り上がるなかで、計画はストップしている。

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