いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「安倍派だらけじゃないか」 近づく下関市議選 新人多いというけれど…

 来年1月27日告示、2月3日投開票の下関市議選が迫っている。定数34議席に対して、今回の選挙では8人の現職が引退し、新人が多数出馬するなど、大幅に顔ぶれが変わることが予想されている。下関市政は長年にわたって安倍派・林派が持ちつ持たれつの関係を築いて牛耳ってきたが、近年では安倍代議士の中央政界での出世を契機に安倍派に投機する勢力が勢いを増し、市長ポストも議長ポストも要職をみなもぎとり、それに対して押しのけられた林派がいじけているような光景がある。国政よりも先んじて安倍派「一強」体制が敷かれている下関で何が起こっているのか、その番頭争いと化した市議選情勢はどうなっているのか、記者座談会で分析した。

 

  師走も駆け抜けて、1月に入ったらいよいよ市議選は本戦に突入する。各陣営にとっては年末年始をまたいでラストスパートの1カ月だろう。立候補予定者説明会に参加していたのは42陣営だったが、その後とりやめた陣営もいる。泡沫が出てくる可能性もあるものの、市内で実際に動いている様子を観察したところでは41陣営の激突となる見込みだ。

 

  自民党の公認や推薦が決まった。現職の公認は9月に決まっていたが、新人の支部推薦が11月末に決まり、12月になって81歳の亀田博にも公認が下りた。ザッとメンバーを見てみると、この選挙はさながら自民党だらけのイスとりゲームみたいな様相を呈している。

 

自民党公認
関谷博 福田幸博 林真一郎 田中義一 香川昌則 小熊坂孝司
江村卓三 星出恒夫 井川典子 板谷正 亀田博 木本暢一
松田英二 吉田真次 林透 戸澤昭夫
自民党推薦
阪本祐季 下村秀樹 村中良多 青木博美 濵﨑伸浩 旦育子 吉村武志

 

 このなかから落選する者も出てくるだろうが、新人も含めて自民党だらけ。もっと厳密にいうと安倍派だらけのような顔ぶれだ。市長選で中尾友昭を応援し、安倍夫妻の選挙介入を議場で批判した安岡克昌(林派)は、とうとう自民党公認をもらえなかった。引き続き自民党下関支部のなかで制裁をくらっている。安倍事務所秘書出身の秋山賢治も市長選で中尾陣営を押したせいか、自民党推薦をもらえなかった。市長選と同日選挙になった市議補欠選で安倍派本命の星出に対して、ならばと林派にひっついたことが響いているようだ。

 

  自民党新人は公認ではなく推薦候補になるが、「新人が多い選挙」といっても安倍派だらけでなんともいえないものがある。安倍事務所秘書上がりの阪本がホープだそうで、「前田晋太郎がいずれは国政に進出し、阪本君が次の市長だ!」と安倍派の若手あたりが盛り上がっている。それに対して、「市議にもなっていないうちから、未来の市長とはいかがなものか…」と周囲が困惑している。これらの新人は、当選すれば保守系会派の仲間入りをしていくことが確実視されている。こうして20議席近くは自民党関係者で確保し、2~3の会派を形成するのだろう。

 

  それ以外の候補者を見てみると、公明が5人、「日共」が4人、連合系ではJR西日本出身の山下隆夫(社民党)、全逓の支援を受けている濵岡歳生、国民民主党から出馬する新人の東城しのぶの3人。3人が当選しなければ連合系会派は消滅する。あとは現職の田辺よし子、何度も落選をくり返している鈴尾進、安倍昭恵のウズハウスにかかわっていた林昂史が無所属で出馬する。林は菊川町の県議・林哲也(林派)の甥っ子のようだが、彼にはなぜか自民党の支部推薦は出ていない。林哲也が応援している風でもない。彦島の小熊坂の地盤と露骨に競合する形で出てきており、事務所を目と鼻の先に開いたりして地域の人人を驚かせている。それこそ市長選の怨恨から「熊潰し」を意識した配置なのだろうかと話題になっている。小熊坂は中尾を応援した。あれ以来、県議の平岡(安倍事務所秘書出身)に暴行されて骨を折られたり、どうも骨折り損が続いている。

 

  それらオール翼賛体制の外枠から、民主主義と生活を守る下関市民の会推薦で本池涼子(本紙記者)が立候補する。28歳は安倍派ホープの阪本と並んで最年少でもある。安倍・林に飼い慣らされた議会に染まるのではなく、是是非非で下関市政に民主主義を貫いていくと訴えている。本池陣営の場合、企業や団体などの組織票があるわけではなく、草の根で一人一人の支援者に依拠していくほかない。市民の会の候補はこれまでも下位当選だが、政治構造としてはガチガチの街で、巷から力を結集していけるかどうかが鍵になる。決して安泰ではない。これら41陣営が34議席を争うことになる。落選するのは7人だ。

 

個別利害の奪い合いが加熱 一方で疲弊する街

 

  目下、市長選の怨恨で安倍派vs林派のバトルも過熱している。この「オレのもの」争い、すなわち私物化が下関市政の本質だ。制裁のターゲットになっているのが安岡克昌で、みせしめみたいな感じになっている。安倍夫妻の批判をチョロッとした程度で、こんなにも執拗にイジメるのかと驚かされる。安岡と同じ地盤の長府からは補欠選で当選した星出恒夫が自民党公認で出馬する。市内全域の住宅に封筒入りの選挙リーフを投函するなど、星出については「相当にカネを持っているんだろうか?」と驚かれている。

 

 安岡は前回選挙までは上位当選の常連だったが、今回は明らかに異変が起きている。これまで長府商店街の中心部に選挙事務所を構えていたのに、支持者だったはずの寺が星出に鞍替えして、国道近くに押し出された格好になっている。支持者への自民党からの締め付けも相当のものなのだと話題になっている。

 

 同じ自民党なのに、「安倍先生の顔に泥を塗った!」といって、安倍派が集団リンチみたいなことをくり広げている。多様性が売りの自民党などといっていたが、物いえば唇寒しで、安岡みたいな扱いを受けるのだろう。北朝鮮や中国の独裁がけしからん! と日頃から吠えている割には、自分たちは制裁したり、結構ひどいことをするものだ。

 

  あくまで自民党内の揉め事であって、一般の市民には関係のない話ではあるが、議会というのは多様な言論を持ち寄る場なのに、異論は認めないという体質をあらわしている。こうして安倍派と林派の持ちつ持たれつの均衡が破壊されて、一強になったことで林派が覇権の座から押しのけられている。だからといって林派が可哀想とかの話でもないが、机の下でつねりあいっこしているようなことではなく、もう少し気合いを入れてぶつかったらどうかと思う。行くところまで行った方が後腐れなくすっきりするだろうに--。同じ自民党員だろうかと思うほど感情的なシコリはひどいようで、市職員や他の市議たちも唖然としている。

 

  安倍事務所や所属議員たちが天下をとったように振る舞っていることについて、随分と批判はある。やはり、第2次安倍政府になってからとくに拍車がかかっている。しかし注意してやる者がいないから、立ち止まって考えたりする機会がないのだろう。力の誇示というか、ゴリラのマウンティングみたいなものだ。左翼にもその手の連中がいるが、「オレが凄い」「オレが一番」なのだと自己顕示欲を満たし、自惚れと幻想に浸っているのがいる。そこに育ちがあらわれるし、満たされてなかった者ほど反動がひどいものだ。こんな者が権力を握ったら、右だろうが左だろうがろくでもないことになる。

 

 安倍派として考えなければならないのは、林派がそっぽを向いたときには安倍晋三の10万票はいっきに崩れるのに、逆らう者は叩きつぶすといわんばかりの攻撃を加えていることだ。欲張り過ぎて「持ちつ持たれつ」を意識してないのだろうかと思う。正直にいうと、単細胞なんだろうか? という気がしないでもない。その行動がもたらす結果は、最悪の場合自分たちで「泥を塗る」という結末にもなりかねない。そして、下関に代替わりやなにがしかの政界再編等が起こったときには、戦国時代が到来する。思い上がったり、傲慢になってはならないということだ。市長選とて3000票程度しか差はなかったのに、足下が見えているのだろうか。

 

  一方で、子分をフルボッコにされているのに黙っている林派の親分についても、派内では「情けない…」という声が多い。大臣のイスくらいをあてがわれて、結局のところ選挙に動員されているのが実際だ。そして安岡一人が歯を食いしばっている。林派の心配をしているわけではないが、トップが意気地なしでは浮かばれないだろうに…。こうして安倍と林の上下関係みたいなものを県議、市議レベルまで持ち込まれて暗闘を続けている。

 

  「熊潰し」も露骨だが、議長を引きずり下ろされた関谷もかつてないほど逆境にさらされているようだ。なりふり構わず企業への挨拶をくり返している。市長選で中尾を応援した面面の地盤が揺さぶられているのが特徴だ。この攻撃性と執着は目を見張るものがある。

 

  林派は合同ガスやサンデン、唐戸魚市や大津屋をはじめとした関連企業が揃っていて、それこそ市長選では中尾を担いで4万票以上は叩き出した。しかし市議会、県議会には安倍派と比べて人材が乏しい。県議会でも塩満、林哲也の2人くらいだ。林派の2人に対して、安倍派の下関選出県議としては安倍事務所秘書上がりの平岡、西本、友田、高瀬の4人がいる。高瀬が豊浦町の稲村元町長グループの組織票を林哲也から奪ったために、林哲也が割を食っているのだという。

 

 ちなみに市議選後に予定されている県議選は実質的な無投票ともいわれている。公明が2人から1人に絞ったおかげで、国民民主党の酒本が漁夫の利を得る構造なのだともっぱらだ。選挙にはなるにはなるだろうが、泡沫候補の名前がちらほら聞こえる程度。あと一陣営でも組織力のある陣営が出てきたらヤバイ…と実は戦戦恐恐としている陣営が少なくない。一方で安岡沖洋上風力反対を叫んで自分が県議になろうとうごめいている者もいるようだが、住民運動に乗っかるのも大概にしろと思う。それはそれで浅ましさすら感じさせている。短期決戦にはなるが、市民横断的な力を組織して、まともなのを誰か擁立したらどうだろうか。候補者が「○○さんは県議選には出馬しませんよね…?」「○○が出なかったら無投票になる…」と請い願っているのを見ると、情けなくなる。政治家たるものが選挙で洗礼を受けることなく議員になってやろうという魂胆なのだ。市民の皆さんには無投票狙いの彼らの腹の内を是非とも伝えておかないといけない。

 

  市議選は宗教票で実質的な当確が決まっている公明党を除くと混戦模様だ。今回の選挙は現職の引退と新人の出馬が重なり合って、一定の支持基盤がガラガラポンになる。菅原の引退にともなって神戸製鋼の組織票が誰に回るのか、三菱労組をはじめとした連合安倍派の組織票は誰に回るのか、現職が引退したところでは、その支援企業や団体は誰の支援に回るのか等等、水面下でコントロールされる組織票の行方も気になるところだ。

 

 今のところ、自民党新人、安倍派肝いりといっても、本人や陣営の存在がまるで見えない者もいる。表面的にはまるで素人で、しおりすら見かけない者もいる。不思議な光景だ。ところが「警察関係の票がバックについている」「神戸製鋼の票が流れることになっている」とか、まことしやかに語られている。この候補にはこの団体を回して、この候補にはこれだけの票を回して--という風に誰かがそろばん勘定でもしているかのようだ。傍から見て素人丸出しの前哨戦をしている者が、一方で当選を確信しているような側面があって驚かされる。露出度や陣営の運動員の熱量、しおりの広がり方など、市民のなかにどれだけ浸透しているかを推し量るときに見るべきポイントがある。しかし、しおりの一つも見かけないというのは異常だ。余程の素人か、当選した場合は裏通り選挙をやったと見なさなければ説明がつかない。どのような力によって市議会の「安倍派だらけ大作戦」がやられるのか注目されている。

 

産業振興に全力をあげなければ危機的な状況

 

  街中で選挙に関心がある人のなかでは、誰が落選するかを予想するゲームみたいなものが暇つぶし程度にやられている。しかし、全般として選挙の雰囲気すらなくしらけている。市議の顔ぶれが多少変わったところで下関が変わるとも思えないし、衰退著しい街の状況を見ながら「あの人たちが選挙で唱えることを実行していたら、今ごろ下関はもっとよくなっていたはずだ」などと話題にしている。調子の良いことを唱えても見透かされている。本人や陣営が熱を上げているのとは逆に、市民感情はさめざめとしている。このギャップがすごい。議会が市民からいかに浮き上がっているかを表している。

 

 A 日頃からバッジをつけたくらいで威張り癖がひどい者とか、企業票や団体票のうえにあぐらをかいている者とか、票欲しさで会合に顔を出すだけの者とか、ろくなのがいないという実感があるからだろう。従って、まず第一に期待感が乏しい。街の閉塞感をあの議会全体が代表しているようにも見える。右へならえで飼い慣らされてしまい、議場において執行部や市長と侃侃諤諤(かんかんがくがく)の論争をしているのを見たことがない。せいぜい飲み屋で喧喧囂囂(けんけんごうごう)の場外乱闘をやって小熊坂みたいに骨を折るのが関の山だ。あの連中はなにをしているのだろうか? と多くの市民が幻滅している。

 

 しかし、そうした議員たちが各種企業や団体の利害代表としてそれなりの得票を重ね、一元代表制に成り下がった議会の賛成マシーンとして機能する。そして、行政に対するチェック機能としての緊張感がないため、議場で寝てばかりいる。一言でいえば税金泥棒という批判が当たる。何度でもいうが、市長からして居眠りばかりしている議会だ。そして人口減少や少子高齢化は全国でも指折りのレベルで進行している。危機的なのだが、危機意識がない。

 

 C 「新人が多数出馬」といっても出馬段階から「安倍事務所に挨拶を済ませる」というこの街のお作法をこなし、これといって新鮮さはない。顔ぶれが変わっただけで右へならえの構造はそっくり引き継がれることが濃厚だ。今時は国会も審議せずに法案を片っ端から強行採決していくが、下関でも議論がない議会というか、寝ているだけの賛成マシーンなら議会はいらないことになる。このなかで、一人であっても是是非非で民主主義を貫いていく者が必要だ。

 

  安倍派vs林派といっても基本的には覇権争いであり、3000億円の年間予算の執行権をどっちが握るかの争いでしかない。市民生活そっちのけでそのような私物化争いをしている間に市政は停滞し、街の産業は寂れるに任せている。そろそろいい加減にせいよ!という世論は鬱積している。下関の衰退ぶりは目を覆うものがある。産業振興策を具体的に講じていかなければ、じり貧なのは誰の目にも明らかだ。

 

 D 真面目な市職員のなかには、産業振興について本気で心配している者も少なくない。どうにかして手を打たなければ手遅れになるという危機意識がある。税収の落ち込みもすごいものがあるし、現場ほど切実な思いを抱いている。ところが上を見てみると、市長や議会をはじめとした政治構造がガチガチで、身動きがつかない。終いには安倍・林が「やったな!」とかいってつねりあいっこしている始末だ。とことんくだらないし、どうしようもないものがある。

 

  幹部職員のなかでも、市長が威張り散らすことについて辟易している人が少なくない。これらの番頭たちが威張り散らして財政破綻の道を疾走するというのでは目も当てられない。右肩上がりの時代ではないが、そのなかでどう地場産業を振興し、定住人口を維持していくのか、高齢化が著しいなかで年配者の福祉を維持していくのか、地域コミュニティを維持していくのか、しっかりと戦略をもって地方自治を運営していかなければ、5年後、10年後の未来は暗い。江島、中尾と続いた失われた10年、20年の延長線では展望にならない。江島の時代に都市開発や箱物事業は山ほどやったが、建物が立派になったというだけで街は寂れた。やはり市民生活にとってなにより重要なのは産業振興だ。一部の安倍・林派にぶら下がった関係者が補助金をくすねていくような一過性のものではなく、真面目にやらないと話にならない。いつも利権にしてしまうのは悪い癖だ。

 

  市議選では、立候補者たちに是非ともそのあたりの見解を問うてみてはどうだろうか。「明るい下関にします!」「元気な下関!」とかアホみたいなことをいっている者については、そこで峻別すればいい。真面目に下関の振興策について考え、実行しようとしている者、議員としてチェック機能を果たす者を選び出すことが求められる。個別利害のみを追いかける政治を打破することが重要だ。

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