基準額通りで落札した他社は不問 不可解な展開に驚く関係者
昨年12月に周南市が発注した徳山動物園のリニューアル工事の入札で価格情報を漏らしたとして、19日に市都市整備部次長の国沢智己容疑者(60)が官製談合防止法違反と公契約関係競売等妨害の疑いで山口県警、周南署に逮捕された。また、同市の建設会社「福谷産業」社長の福谷徳三郎容疑者(66)も公契約関係競売等妨害の疑いで逮捕された。
市が昨年12月6日におこなった「徳山動物園リニューアル北園広場修景工事」の条件付一般競争入札をめぐり、当時財政部技監兼検査監だった国沢容疑者が昨年11月下旬に福谷容疑者に対して同工事の設計金額(税抜き8901万9000円)を教え、同社に落札させた疑い。周南市では下限である判断基準額を下回ると失格になるが、11社が参加したこの入札において福谷産業は、判断基準額である8014万9300円をわずか980円上回る8015万280円で落札していた。
国沢容疑者は平成28年4月に財政部技監兼検査監に就任。同年度までは技監が1人体制だったため、国沢容疑者が1人ですべての設計図書をチェックしていたという。29年度からは技監が2人体制となり、主に土木関係の設計図書を担当していた。
20日には緊急の記者会見がおこなわれた。その場で福谷産業との関係性を問われた木村市長は、「私が市長になってからは節度あるお付き合いをしている。後援会の活動にもかかわっていない」と何度も強調していたが、福谷産業の社長である福谷徳三郎容疑者と木村市長は中学校の同級生であり、4年前の市長選のさいにも福谷容疑者が必死になって応援していたことは、多くの市民が知るところである。また福谷産業のある福谷ビルには、数年前まで木村市長が代表を務め、現在は息子が共同代表を務める司法書士事務所「みらい」が入居している。
「そっちか!」と関係者が驚いた訳
しかし今回の福谷産業と国沢次長の逮捕について、関係者のなかでは「そっちなのか?」と驚きの声が上がっている。
周南市では、以前より入札に関して関係者のなかで「官製談合がおこなわれているのではないか?」とのうわさが流れていた。そこでは主に別の建設会社の名前や市職員の名前が挙がっていたからである。
現に福谷産業が官製談合によって落札したとされる平成29年12月6日の入札では、この工事のほかにも2件の入札がおこなわれていたが、そのうちの一件は、「疑わしい」として名前の挙がっている建設会社が入札額の下限である判断基準額ぴったりで落札していた。ある建設会社の関係者は「福谷産業は980円の差額があるだけまだましだ。同じ日の入札で判断基準額ぴったりの会社があるのに、そちらは不問なのか」と話す。この企業が判断基準額ぴったりで落札しているのはこの1回限りではないのだ。
別の建設会社の関係者は「これまで業界内で官製談合の話は耳にしたことはあったが、今時そんなことがあり得るのか? と半信半疑だった」という。「単純な工事であればどこの会社も同じような設計金額を出すこともあるが、特殊な単価が入っている工事では当然設計金額にばらつきが出る。他の会社の設計金額がばらけているなかで役所の設定する判断基準額ぴったりを出すのはかなり厳しい。よほどのまぐれでなければ無理だ」と指摘する。
建設会社の名前だけでなく、特定の市幹部職員、また県議会議員・市議会議員の固有名詞が飛び交い、それらのルートを通じて建設会社に設計金額が流れているというなまなましい話が真顔で語り合われている。今回の逮捕劇はトカゲのしっぽ切りなのか、はたまた市長選を前にして木村市長潰しが動き始めたのかと、さまざまな憶測が飛び交う事態となっている。