米陸軍のミサイル司令部である第38防空砲兵旅団司令部が、10月16日から相模総合補給廠(神奈川県相模原市)へ段階的に兵員駐留を開始した。首都圏では10月初旬、羽田空港の新ルート設置をめぐって、米軍側が横田ラプコン内の通過を拒否したばかりだ。だが米軍側は地元自治体の同意も得ぬまま、一方的にミサイル司令部の配置計画をおし進め、日本の首都圏をミサイル攻撃の拠点にする動きを加速させている。
第38防空砲兵旅団司令部は、車力通信所(青森県つがる市)と経ヶ岬通信基地(京都府京丹後市)に配備した「Xバンドレーダー」を運用する部隊の指揮・統制が任務だ。どちらも朝鮮半島から米本土に届く弾道ミサイルを迎撃するための早期警戒レーダーで、長距離ミサイル攻撃につながる軍事施設である。
しかもこの新司令部はハワイの第94陸軍防空ミサイルコマンドの指揮下にあり、日本に前線司令部を置くことでより迅速に日本からアジア諸国向けの迎撃・攻撃態勢をとるための軍事配置といえる。
これまで都市部や軍事拠点に配備してきたパトリオットミサイルや、高高度で弾道ミサイルを破壊するTHAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)などのミサイル大隊も指揮し、米海軍横須賀基地(神奈川県)に配備する迎撃ミサイル搭載型イージス艦とも連携する方向だ。それは近隣諸国との軍事緊張をますます高める効果となる。
なお、新たに配備する米軍ミサイル司令部要員は115人で、半年から1年かけて段階的に配置する予定である。これまで相模総合補給廠に駐留していた第35戦闘維持支援大隊(90人)は、昨年10月段階でキャンプ座間に移転させており、新司令部配置計画は相当前から準備が進行していたことも明るみに出た。しかしこうした動きは地元自治体である座間市には伝わっていなかった。相模原市にもミサイル司令部設置計画を知らせないまま、準備が進行していた。
防衛省は米軍側から国に相模総合補給廠へのミサイル司令部設置が伝わったのは今年の9月5日だったと主張している。だが、その内容を南関東防衛局が相模原市に伝えたのは9月28日。そして在日米陸軍基地管理本部の司令官が、直接相模原市の加山俊夫市長に「ミサイル部隊の新司令部を置く」と伝達したのは、移転開始日の約2週間前だった。相模原市は機能強化をしないことや詳細な情報提供を求めたが、米軍司令官は「受け止める」と答えただけだった。
こうしたなかで10月4日、相模原市は防衛大臣と外務大臣に対し要請行動をおこなった。同市の要請文は「長年にわたり基地の整理・縮小・早期返還を求めてきた本市としては、かねてより基地の運用等に変更のある際は、あらかじめ地元に情報提供し、協議を行うよう求めてきたところですが、本件について、何の事前相談もなく、決定事項として突然知ることとなったことは、甚だ遺憾なことです」とし「そもそも米陸軍の兵站を担うとされる補給廠に、このような司令部が駐留することに違和感と疑問が拭えません。特に、本件によって、補給廠の機能が強化されることがあってはならないと考えています」とのべている。そして「近年、補給廠周辺地域は、米空軍ヘリコプターによる深刻な騒音被害に悩まされています。これ以上の新たな負担を受けることはできません」と指摘し、司令部駐留が相模総合補給廠の機能強化・恒久化につながることのないよう、責任をもってとりくむことを求めている。