辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票をめぐり、沖縄県議会米軍基地関係特別委員会(仲宗根悟委員長)は24日、県が提出した県民投票条例案をほぼ原案通りで可決した。さらに26日の本会議でも可決し、来春までに投票が実施されることとなった。
24日の特別委員会では、自民党・公明党会派が提出していた「辺野古埋め立てについての選択肢を『賛成』『反対』に『やむを得ない』『どちらともいえない』を加えた4択にする」などの修正案が、賛成少数で否決した。「維新」会派の委員は「本会議で意思を示す」として退席した。
賛成多数で可決した条例案は、署名請求代表者が9万2848筆の署名とともに県に提出した原案とほぼ同じで、「国が辺野古に計画している米軍基地建設のための埋め立てに対し県民の意思を的確に反映させる」(一条)ことを目的とし、辺野古の埋め立てについて「賛成」か「反対」のいずれかを選択する。また法的拘束力はないものの、「賛否いずれか過半数の結果が、投票資格者総数の4分の1以上に達したときは、知事はその結果をただちに告示するとともに、これを尊重しなければならない」(九条)と明記し、賛成・反対の得票率に関係なく、日米両政府に結果を通知することも加えた。本会議で可決した後、公布から6カ月以内の実施が義務づけられており、来春までには投開票が実施される見込み。
沖縄県は、県民投票条例の成立後に「県民投票推進課」を新設し、中立的な立場で県民に投票参加を呼びかけるほか、投開票事務を委託する市町村との連絡や調整を担うことにしている。
投票事務をめぐる攻防
条例成立がほぼ固まるなかで、次の焦点は自民・公明など保守系会派が拒んでいる市町村の投票事務をめぐる攻防に移っている。
11日までに「県議会での議論を見守る」として投票事務への態度を「保留」していた6市(うるま、浦添、宜野湾、豊見城、糸満、石垣)のうち、石垣市議会が17日、県民投票に反対する意見書を保守系与党などの賛成多数で可決。「(今回の県民投票は)普天間基地移設計画の主眼である危険性の除去について県民の意思を示すものではなく」、「一定の政治的主義主張に公費を使用して訴えるもの」であり、「国防や安全保障」には「一地方自治体の住民投票はそぐわない」として反対を主張している。
この石垣市議会の意見書を受けて「辺野古」県民投票の会(元山仁士郎代表)は24日、声明文を発表した。「憲法と地方自治法に基づき、県民投票条例制定を求める運動をはじめ、2カ月間で、法定必要署名数2万3171筆の4倍を上回る有効署名9万2848筆(署名総数は10万950筆)」が集まり、石垣市でも「要件となる773筆の3倍に迫る有効署名2260筆(署名総数2428筆)を集めたことを改めて提示し、(石垣市議会が指摘するような)「普天間の危険性除去」には県民の中に異論はなく、意見が割れているのは「辺野古沿岸部埋め立てによる米軍基地建設の是非である」と指摘。
「県民の民意は、これまでの知事選挙及び国政選挙において何度となく示されてきたと受け止められてきた。しかし、日本政府は、地方自治尊重という憲法原理を軽んじ、沖縄県民の民意を重く受け止めていない。また、司法の場においても、残念ながらこれと異なる見解が示されている。2016年9月16日の違法確認訴訟判決は、各種選挙結果からも沖縄の民意には、“普天間飛行場その他の基地負担軽減を求める民意”と“辺野古新基地建設反対の民意”が存在するとして、民意を相対化し、後者の民意が明確ではないとの判断を示している」とのべ、「このような状況の下では、シングルイシューで問う県民投票に基づき県民の意思を明確にすることは社会的にも、法的にも極めて重要」と強調した。
また「政治的主義主張に公費を使用する」との批判についても「県民投票それ自体は、県民の意思、すなわち、賛成であれ、反対であれ、一人一人の意思を表明するための投票を求めるものであり、制度それ自体中立的なもの」にほかならず、「広く賛成・反対双方の情報が提供され、自由な議論が行われ、県民一人一人が改めてこの問題を深く考え、意見を表明」し「住民自治を成熟させる」ものとして、「金銭には換えられない価値を持つ」と反論した。
さらに「国防や安全保障問題を国民全体の問題として議論する場合においても、地域住民の民意を無視して、一部の地域住民にこれを強制してはならない。憲法が保障する地方自治制度の尊重原理に基づき、国策においても地域住民の意思が十分に尊重されなければならない」とのべた。
安倍政府が、沖縄県の辺野古埋め立て承認撤回を執行停止させる法的措置に踏み出したことにより、オール沖縄を支える島ぐるみの力は、辺野古埋め立て阻止に向けてさらに強まっている。この流れに逆行して県民投票に抵抗すればするほど、日米政府を忖度して県民を裏切る勢力の存在があぶり出される形になっている。県民投票をめぐる攻防は知事選に続く日米政府vs沖縄県民の追撃戦として島ぐるみの世論を活性化させている。