佐賀空港へのオスプレイ配備計画をめぐり、空港のある佐賀市の南川副公民館で7日、「自衛隊・オスプレイ等配備反対川副町民集会」(主催/佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会)が開かれた。事前に地域住民の会の会員が南川副地域を中心にチラシを配布し町民集会への参加を呼びかけた。8月24日に山口佐賀県知事がオスプレイ受け入れを表明してからは初めての反対住民集会であり、川副町民や佐賀市民を中心にした住民らが集まり、今後さらに反対運動を強めていくことを確認した。
初めに住民の会の古賀初次会長が挨拶をおこなった。「8月24日に山口佐賀県知事は小野寺防衛大臣からの申し入れに対して熟慮するとの発言の後、わずか3時間後に佐賀市、地権者である漁民、地域住民との議論も経ずにオスプレイ17機を佐賀空港に受け入れる方針を表明した。“佐賀県のことは佐賀県で決める”との選挙公約も破棄し、国防政策には基本的には協力する立場であり、佐賀県も一定の負担をすべきだというのが山口知事の論理であった。多くの県民はオスプレイ配備には疑問を持っており、特に空港周辺の自治体住民は不安や懸念を抱くなかで、住民の民意を聞かず、ただ国からの圧力に負け、防衛省のいいなりになっている県知事の行動は佐賀県民への重大な背信行為だと思っている」と強く批判した。
そして佐賀空港の建設前に県は地権者である地元の漁協と自衛隊との共用はしないとの公害防止協定を結んでいること、農協や川副町に対しても公害防止協定を結んでいることを指摘し、「国は約束事を無視するということを諫早の干拓問題で多くの県民が経験している。今回の山口知事の受け入れ表明は、公害防止協定という約束事を反故にする暴挙だとしかいえない。地方自治体の首長がとるべき政策は国策第一ではなく、山口知事のもう一つの選挙公約であった県民の安全・安心、これが第一である。迷わずに受け入れ反対に方針転換すべきだ。今回の佐賀空港自衛隊基地建設、オスプレイとヘリコプター離発着の行為すべてに反対し、即時撤回を要求する」と強くのべた。
そして「私たち住民の会はすべての佐賀県民、佐賀市民、その子どもや孫の安全を一番に願っている。それを無視して知事は国防のために協力すべきだという。ただ国からの圧力に負けただけではないか。国からの回し者だとしか思えない。選挙公約は全部嘘だったのか。彼は私たちを騙している。私たちの生活を彼に任せるわけにはいかない。住民が安心して暮らせるようにするのが地方自治体の仕事だ。今日はみんなで意見を出し合って、私たちの運動の糧にしたいと考えている」と呼びかけた。
次に、佐賀空港建設時に川副町(当時)と佐賀県が結んだ公害防止協定について解説した。そのなかでは第1条に「(佐賀県は)空港建設地が産業上極めて重要な位置に存ずることを十分に認識し、この協定に定める事項を誠実に履行し、公害の未然防止に最大限の努力をする」と定められており、これに対し「県は川副町と結んだこの重大な協定すら無視し、農業者、漁業者の声を聞こうともせず国にいわれるままオスプレイの配備を押しつけようとしている。市議会・県議会もこのような協定があるにもかかわらず容認決議をあげている」と指摘した。
次に川副町内の男性が発言に立ち、「最近沖縄について自分なりに調べるようになった。オスプレイ配備に賛成している自民党の人たちは佐賀にオスプレイが来ることで経済的に潤うなどといっているが、ではなぜ日本一基地が多い沖縄県は県民1人あたりの所得が最下位で失業率も最下位なのか。基地が来ることで経済が潤うというのは沖縄の現実を見れば疑わしい」とのべた。そして「沖縄の基地負担を本土も引き受けなければいけないという意見もある。しかし佐賀空港にオスプレイを配備する一番の根拠は南西諸島の防衛だ。日本政府は対中国や対北朝鮮への防衛として、今の軍備では心許ないということで南西諸島防衛計画というのをつくっている。現在沖縄にある防衛組織だけではなく、まったく新しい防衛組織をつくろうということで長崎県の相浦に基地が建設されている。その相浦の基地の応援部隊として佐賀に基地を建設し、攻撃用ヘリコプターと17機ものオスプレイを配備する。佐賀空港へのオスプレイ配備は沖縄の基地負担軽減とは何も関係がなく、軽減にはならない」とのべた。
また2016年に自衛隊が配備された与那国島では、160人の自衛隊とその家族が住んだことによって短期的な人口増と経済効果はあったものの一時的にすぎず、島の衰退の原因は産業が乏しいことであり、自衛隊以外の振興策をとりくまなければ問題の解決にはならないという報告もあった。
今後は町内各地域で集会
その後は挙手によって会場から次次に住民が発言した。
沖縄県に親戚の子どもが嫁いでいるという川副町内の男性は「今その子が6カ月の子どもを連れて佐賀に帰ってきているが、私に“おじさん絶対にオスプレイを受け入れたらいけんよ”と話してくる。沖縄では日常的に上空を戦闘機やオスプレイが飛び回っている。うるさくてそのたびに赤ん坊が起きるのだという。“私は平和な佐賀の町で育ってきたから沖縄に住むのは大変だ”といっていた。もっと深刻に考えて山口知事を呼んで徹底的に話さないといけない」とのべた。
佐賀市内から来た男性は「8月24日の山口知事の記者会見をどう受け止めるかが重要だ。県知事が受け入れを表明したものの、今から漁協や地元の人たちと話し合わなければいけない。新聞記事など報道だけを見ているとまるで配備が決定したかのような書き方だったが、決定したわけではない。佐賀市の秀島市長もハードルは2つあるといっている。自衛隊との空港共用を否定する約束をしている県有明海漁協、そして農協・佐賀市の同意も必要となる。先ほど説明のあった川副町との公害防止協定を引き継いでいるのが佐賀市だ。まだまだ押し返す運動の余地はある」と力を込めて語った。
川副町内に住む男性は「沖縄の基地を本土も負担しなければいけないという論調に疑問を感じる」とのべた。そして「これは日米安保条約と日米地位協定が根っこにある問題だ。現在横田基地にもオスプレイが配備されたが、日米地位協定があるから日本に対して事前の相談もない。そして日本は反対することすらできない。日米地位協定があるかぎり、米軍が佐賀空港に来ないとは断言できない。県議会は米軍は来させないといっているが信用できるわけがない。この反対運動は大変だが一緒に頑張りましょう」と呼びかけた。
佐賀市内から参加した男性は「今日本全国あちこちで軍備が拡大されているが、佐賀は公害防止協定があるから簡単に基地をつくることができない。公害防止協定によって県は自衛隊の基地は絶対につくらせないと約束している。公害防止協定は私たちにとって大きな武器だ。これがあるから頑張れる。アメリカとの地位協定があるから、自衛隊が来れば必ずその後に米軍がくる。しかしいくら県知事が受け入れを表明したところで、川副のみなさんが中心になり地権者が土地を売らなければ基地をつくることはできない。期待しています。私も反対で頑張りたい」とのべた。
別の男性は自身が戦争体験者であることを話し、「公害防止協定を結んだその精神とはなにか。自衛隊の飛行機が訓練で上空を飛び回ったら大変なことになるということだけではない。“自衛隊の基地があれば戦争が起きたときに大変なことになる”という精神があったからだ。協定を結んだ当時の人たちはみんな戦争体験者だった。私も肉親が戦争で死んでいる。会長である古賀さんも同じ名前の初次さんというおじさんが21歳で戦争で亡くなっている」と、戦争体験者として二度と同じことをくり返してはならないという切実な思いを語った。
そして「安倍政府は閣議決定で日米の共同防衛をやる、アメリカのために日本の軍隊を派遣して戦争に参加するということを決めている。実際に戦争をするための準備が進んでいるのが現実だ。防衛白書を見ると中国を仮想敵国としていつ戦争が起こってもいいように、あるいは自分から戦争を仕掛けるのではないかと思うほど軍備を拡大したり軍隊の配備をおこなっている。オスプレイの配備というのはアメリカと一緒になって中国と戦争をするための着着とした準備だ。それに待ったをかけようとしているのがわれわれの運動であり、これは日本の平和を守るためにもここで頑張るのが今後大きな力になると思う」とのべた。
佐賀市内から参加した男性は「最近になってマスコミが佐賀空港のオスプレイ問題を頻繁にとりあげるようになったが、普通の人たちは県知事の発言でもうオスプレイ配備は決定したと思い込んでいるのが現状だ。今は情勢が煮詰まっており、県も3月までは一歩下がって情勢を見ようという感じになっているが、それまでなにもしてこないというのはありえない。突然100億円の着陸料などを持ち込んできた手口を考えると、絶対なにか裏ではやり続けると思う。山口知事が地元との話し合いも何もなしに受け入れを表明し、さらに今も直接会うこともしないというのは、住民をなめているからだ。無視して進んでもいいと思っている。しかし無視できない声だということに気付けば選挙も危ないとなるかもしれない。そのためにはもっと情報をたくさんの人に知ってもらうことが大切だ。情報を発信することで私たちも体制を強化することができる」とのべた。そして「今後主力になるのは地権者である漁業者であり、川副町の住民のみなさんだ。地元の住民が一番力を持っている。私たちもそれを精一杯応援していきたい」とのべ、会場からは大きな拍手が起こった。
住民の会は今後も川副町内の各地域で町民集会を開催し、地域住民がオスプレイ配備について議論を交わす場をつくっていくという。