戦争阻止、「安保」破棄の全国的統一戦線の形成を
2014年の新年を迎え、読者・支持者のみなさんに謹んでご挨拶を申し上げます。
リーマン・ショックから東日本大震災をへて、安倍内閣の登場から1年たちました。人民を貧乏にさせて戦争に突き進むファッショ的専制政治がだれの目にも明らかになるなかで、大衆世論の革命的転換が始まっており、各界各層の人民が行動に立ち上がっています。新しい年は、戦争を阻止して独立、民主、平和、繁栄の日本をつくるたたかいを発展させ、日本の平和運動の様相を一変させることが最大の課題です。
一
昨年1年、アベノミクスなるものの正体が広く暴露されてきました。それは輸出大企業や大手金融機関を潤わせ「大企業天国」をつくる一方で、人民にとっては「景気回復」どころか倒産・廃業や失業が増え、病院にも行けずまともに生活できない社会になったと、だれもが実感するところとなりました。
安倍内閣は「福祉のため」といって消費税率引き上げを決めましたが、それは法人税を引き下げるためでした。円安のもとでも工場の海外移転はますます進み、大量の失業者が生み出されています。「企業が繁栄すると賃金が上がる」といっていますが、賃金は下がる一方で、そればかりか解雇自由の解雇特区や、すべての正社員を派遣社員にかえることを可能にする労働者派遣法の改悪を進めています。
農業はTPP(環太平洋経済連携協定)の先取りで減反廃止をうち出し、九割の農家を廃業に追い込んで農業のない国にしようとしています。それは森林や田畑を今以上に荒廃させ、洪水防止や水源涵養機能を失わせて、国土崩壊の危機すら引き寄せる馬鹿げたことです。
社会保障の分野では、医療や介護という国民の生命にかかわる分野を民間企業のもうけの対象にし、貧乏人はそこから締め出そうとしています。小学校から英語漬け教育を進め、情緒や生活習慣まで米国化して、日本語もまともに話せない民族の背骨を抜かれた人間をつくろうとしています。
また、安倍内閣は選挙公約を覆してTPP交渉に参加しました。TPPはアメリカの多国籍企業が日本の国内法も勝手に変える自由を持つというもので、日本市場を全面的に売り飛ばす平成の不平等条約にほかなりません。しかもその内容を国民に公開せず、国会のチェック機能も否定する民主主義の破壊を実行しています。
東日本大震災から3度目の冬を迎えていますが、いまだ十数万人が避難所生活を強いられ、福島原発は収束不能の危機が続いています。しかし安倍首相は地元の復興は放置したまま原発輸出のトップセールスに駆けずり回り、事故の賠償責任も核廃棄物の処理も日本が負うといって、原発立地町を核処分場として奪いとろうとしています。
こうして日本を農業も漁業も製造業もない国にし、若者に職がなく子どもを産み育てることもままならず、高齢者の孤独死が蔓延する国にしたあげく、アメリカは日本を基地にしてアジアで核戦争をやる準備を始めています。安倍内閣が強行成立させた秘密保護法は、日本版NSC(国家安全保障会議)の設置、今年の通常国会で成立を狙う「国家安全保障基本法」とセットであり、アメリカの指図のもとで集団的自衛権の行使を認め、国民総動員の戦時国家づくりを狙うものです。
戦前の天皇制政府は、労働者や農民への搾取・収奪を強め、国民が貧乏になって消費購買力がなくなると、海外市場の略奪に進み戦争という手段に訴えました。今度は対米従属のもとで同じ方向に進んでいます。日本が米国本土を守る盾となり、国土が原水爆戦争の火の海に投げ込まれることを、黙って見ているわけにはいきません。
広範な人民のなかで、既存政党に頼っても社会は変わらず、下から大衆行動を起こし全国的につながって、この国の構造自体を変えようという流れが圧倒しています。戦後の議会制民主主義の欺瞞のベールはひきはがされ、一握りの米日支配層が軍事力を根幹に国会、官僚、裁判所、マスメディアを握って人民と対立している姿が浮き彫りになっています。歴史の発展を決定づけるのは人民の力であり、いかなる権力者も人民を動員することができなければ戦争をすることなどできません。
二
現在、世界は戦後史を画する大きな転換点にさしかかっています。
第2次大戦後アメリカは、戦争の廃虚のうえに生産を拡大してきましたが、1971年のニクソン・ショック、金ドル交換停止をへて、新自由主義、市場原理主義経済へと転換しました。それは世界的な過剰生産危機が進行し、生産に投下できない巨額の余剰資金が生まれたからです。そして株や債券などに投機して暴利をむさぼる金融詐欺経済がつくりあげられ、世界経済をガタガタに破壊して、リーマン・ショックの大破綻に行き着きました。
市場原理主義経済は、目前の株価つり上げのために技術継承や生産現場の秩序を破壊し、大事故を頻発させています。そして労働者を非正規化し、低賃金を求めて工場を海外移転し、世界的な絶対的貧困化を加速させています。国や自治体は独占大企業の利権の道具になり、「市民のため」という公益は投げ捨てられ、統治機能の崩壊があらわれています。市場原理主義のもとでは働く者が生活できず、社会は維持できないところにきています。
昨年、デトロイト市が財政破綻しましたが、アメリカは国家財政そのものが破綻の危機に直面しています。また、アメリカのシリア攻撃は国内外の反発で頓挫し、中東政策は大破綻しています。アメリカの歴史的衰退は覆い隠しようがありません。そのもとでオバマ政府は「アジア重視」戦略に転換し、TPPで中国包囲網を形成しつつ、日本を前面に立てて戦争をやろうとしています。そして安倍がこれに全面的に付き従い、祖国が再び原水爆戦争の廃虚になることも辞さないという度外れた売国奴政治を進めています。
その根底には、生産は多くの労働者が協力しあって集団的・社会的におこなわれているのに、生産手段や生産された社会的富は私的に占有されるという資本主義の矛盾が、いまや極点に達していることがあります。もはや終焉(えん)を迎えている資本主義の搾取制度を維持するために、再び戦争をくり返し甘んじて殺されるわけにはいきません。戦争を阻止し、独立、民主、平和、繁栄の日本をめざす大衆的政治斗争で、社会の根本変革を成し遂げなければなりません。
三
安倍内閣が戦争政治を突っ走り、野党解体・翼賛化が進んだ昨年は、第2次世界大戦の痛恨の体験を基礎にした「再び戦争をさせてはならない」という憤激が、全国的にかつてなく高まりました。それを敏感に反映して、学者や弁護士など知識人がTPP交渉即時脱退や特定秘密保護法反対で社会的に発言し、行動を起こしました。
そして、ここまで日本社会をデタラメにした戦後の対米従属構造を打破し、アメリカの植民地的な支配から脱却することを求めています。地域共同体の結束を基礎に第一次産業の振興に努め、全国との団結を志向しています。個個バラバラのたたかいではどうにもならず、みんなが団結してこの国を変えようという世論が圧倒し全国的政治斗争の機運が非常に高まっています。
原水禁や原水協など既存の運動の存在感がなくなるなかで、8・6原水禁運動は、全広島・長崎市民に基盤を持つ最大平和勢力として圧倒的な存在感を示しています。小・中・高校生や大学生が平和運動の新しい担い手として登場し、被爆者や戦争体験者が「今こそ体験を語り継ぎ、戦争を阻止しなければならない」と使命感をもって行動しています。被爆者が学校や大学に行って体験を語り、子どもや学生、教師、父母がこれまでになく真剣に受けとめる状況が各地で広がっています。
はぐるま座の『動けば雷電の如く』沖縄公演は、明治維新革命のテーマが現在直面する問題と重なって強く響きました。公演のとりくみが「安保」破棄、基地撤去をたたかう沖縄県民自身の運動となって発展しています。本土と沖縄の分断をうち破り、沖縄の全県団結、本土との団結による共同の斗争で世の中を変えようとの世論が広がっています。
下関の市民運動は、「人工島軍港化阻止、無駄な箱物をやめて働く場をつくれ」の署名運動で全市の各階層の運動を結びつけ、この大衆世論の力で安倍代理・中尾市政を追い詰めています。「30万市民のために」を掲げて統一戦線の形成を促す活動が、全国的な注目を浴びています。
上関では「反対の顔をした推進派」を暴露することで全町民の団結が強まり、中電や県、県漁協の執拗な漁業権剥奪の策動を、全県・全国と団結した大衆行動でうち破っています。安倍が原発再稼働・輸出を騒ぐなかで、原発の新規立地を阻む上関のたたかいは全国に影響を与えています。
人民教育の体育実践や被爆体験に学ぶ学習が各地に広がり、若い教師の結集が始まっています。文科省の「自由・民主・人権」教育は、数値競争で子どもをバラバラにし、子どもの成長を押しとどめ破産しています。この戦後型の軍国主義イデオロギーとたたかって、「みんなのために」のモラルを教え子どもたちを次代の担い手に育てる教育が、労働者である親たちの圧倒的な支持を集めています。
こうした質の運動を全国に押し広げ、各界各層の人民の力を大結集するなら、戦争を押しとどめる巨大な力にすることができると確信できます。安倍内閣の戦争政治は、労働者の首切りや失業、TPPによる農業破壊、「自由・民主・人権」による教育の破壊、大学民営化による「学問の自由」の破壊、医療や介護の切り捨てなど、あらゆる分野にわたって具体的に進められています。したがって労働者、農漁民、中小商工業者、知識人・文化人、青年学生や婦人など各界各層の基本要求に立った独自の運動を、職場・生産点、学校を基盤に大いに発展させつつ、これらのたたかいを戦争阻止、「安保」破棄の全国的な統一戦線に大合流させていかなければなりません。
そして戦争反対斗争においてもっとも力を持っている勢力は、社会の生産を担う労働者階級です。労働運動は、全人民の利益を代表し、働く者が主人公となる次の社会を建設するというのが歴史的な使命です。60年「安保」斗争後にはびこった経済主義、改良主義を一掃し、革命的な労働運動を建設しなければなりません。
四
かつて戦争がもっとも苛烈になる時期に、日本共産党は、弾圧もあったが事実上自然消滅し、人民を手助けすることができませんでした。そして日本人民は戦場に無理矢理駆り出されて殺され、原爆や空襲で焼き殺され、国土は灰燼に帰しました。戦後、「日共」修正主義集団や社会民主主義をはじめとする多くの政治勢力は、小集団セクト主義の自己主張型で、自分たちの利益のために大衆を利用する体質が根深くあり、人民はそれに辟易してきました。彼らは戦争が接近する今、自然消滅するか、翼賛化して排外主義になっています。
労働者や農民をはじめさまざまな階級階層と結びつき、その力を束ねて社会変革の巨大な統一戦線に合流させることのできる政治勢力をつくることが決定的になっています。この政治勢力は、社会を変革する主人公は幾千万の人民大衆だという立場に立ち、人民に奉仕する思想に徹して、大衆の苦難を調べ、その立ち上がりを援助し、大衆の先頭に立って権力者と非妥協的にたたかうというものでなければなりません。そして実際の大衆運動は、こうした政治勢力が奮斗したところで発展しています。
人民に奉仕し大衆とともに進む新しい政治勢力を全国につくりあげるなら、今度こそ戦争を阻止し、独立した平和で豊かな日本を建設する道を大きく拓くに違いありません。
読者・支持者のみなさんとともに、長周新聞に課せられた歴史的な役割を果たせるよう、勤務員一同奮斗する決意を明らかにして新年のご挨拶とします。
2014年元旦
長周新聞社