4月から消費税が8%に上がる。それにともなって水道代などの公共料金をはじめ、生活にかかわるさまざまな物が値上がりすることになり、ますます暮らしが脅かされることが話題になっている。年金が減っていく高齢者にとっても、子育てに追われる現役の親たちにとっても必需品の値上がりは頭痛の種で、父ちゃんの小遣い等等、なにを減らすかを思案せざるを得ない。円安でガソリン、電気代、ガス代、食料品も値上がりしてきており、最近では豪雪の影響で葉物野菜も値上がりを始めている。下関市内を見ても「給料が上がった」という企業はどこにあるのかわからず、むしろ収入は下がる一方なのに、インフレ率2%アップといって生活の心配など必要のない為政者が意図的に物価高をもたらし、さらに消費税増税で巻き上げていくことに怒りが渦巻いている。
若い母親たちのなかでは、ようやく歩き始めた一歳の子どもの紙パンツといっても、支出はバカにならないことが語られている。ある母親は、いつもドラッグストアの売出しに出る64枚入り1080円(Lサイズ)の一番安い物を買う。1枚当たりの単価に換算すると約17円。パンパースやメリーズなど高額な品物になると1枚20~27円するものもあり、紙パンツもピンキリだ。高いのは肌触りもいいけれど、1日に最低4枚、1カ月に2袋以上使うので贅沢はできない。袋に「10時間持つ」と書いてあるので、本当に10時間替えなかった人もいるというが、おむつがふくれて遊べないし、うんちを放置していたら赤ちゃんのおしりがかぶれるので、そんなことはできない。これが8%になると1袋30円ほど上がる。新生児の紙おむつになると更に大量に必要だから出費はかさむ。ミルク、衣類、食料と生活にかかる費用すべての消費税がプラス3%になるのだから、どこからひねり出すか考えていた。
化粧品店の店主は、「今月は15日が年金日だったが、2人しかお客さんが来なかった」と話す。数年前までは年金支給日にはお客が10人ほど増えたり、何千円分か買って行く人がいてそれを頼りにしていたが、昨年後半頃からそうしたお客が来なくなった。「年末に出費が多いから1月は仕方がない。2月はどうかな…と思っていたが、それもだめだった。家賃も出ないし、自分の給料もとれない。これでまた消費税が8%になって、1人、2人のお客さんまで来なくなるのではないかと思うと、この先がすごく不安だ。商売をやめたいと思うが、年齢的に他に仕事がないから仕方なく開いているのが実情だ」と話す。
別の食料品店では、350円で売っていた「青のり羊羹」をすでに400円に値上げした。「製造元もこれまで材料費が上がってきているから、値上げせざるを得ない。それにまた消費税が入ってくる。小さい商店は今まで自分たちがかぶってきたが、もうそれもできない。結局お客さんからもらうことになるが、この値上げがどう影響するか、お客さんが逃げてしまうのが怖い」といった。
家族で営んでいるバイクの販売店では、資材の値上がりでメーカーから仕入れる価格自体が高騰していると語られていた。同じ車種のスクーターで、昨年仕入れたときは15万9600円だったが、先月仕入れると17万2200円だったという。すでに1万円以上上がった。4月に入ればこの価格を消費税8%の値段に書き換えないといけない。「販売店の利益は目標台数に達したら13%、達しなかったら11%で、1台売れてもわずか1割。目標自体も昔は100台以上だったのが、今は三十数台の目標を達成するのがやっとになっている。取引先だった新聞販売店もやめるところが多く、本当に厳しい」と話した。
オイルも以前から値上がりしているが、これまではオイル交換は1000円で続けてきた。出張修理も5㌔以内は出張費なしでサービスしてきたが、今後はこれらの値段をどうするか迷っているのだという。「消費税前の駆け込み需要というけれど、そんなお金に余裕のある人は車を買う。バイクを買う人はもともと節約しようという人だから」と話した。
価格に転嫁できぬ現実 小売店も医療界も
市内のあるスーパーでは、5%引き上げのときに駆け込み需要が起こった商品を3月下旬に向けて少し多めに準備している。下着をはじめ腐らない物が中心だ。しかし「消費税増税で、もし駆け込み需要があったにしても、その後の冷え込みの方が長引くのではないかと思う」と反動を心配していた。
今でも高齢者を中心に、惣菜が半額になる夕方の時間を狙って買いに来る人は多い。「常連さんはもう顔見知りで、バックヤードに隠れていても、“早く半額にして。次の店に行かないといけないから”と呼びに来るくらい。店の都合もあるのだが…と思いながらも半額シールを貼るんです」と話す。年金生活の高齢者の節約ぶりを日日まのあたりにして、「98円のものを4月1日から105円にすると売れなくなるので、しばらくは据え置きにしようと思っている」という。
価格に転嫁できないが、消費税が8%になることで小売業の出費は大きい。肉などを量り売りする機械を更新しなければならないし、3月31日には万単位の種類の商品の値札を貼り替える作業をしなければならない。従業員全員で徹夜覚悟でやるという。来年10%に上がるとまた同じことが起こる。「レジや秤、値札のメーカーは特需が起きて少しいいのかもしれないが、小売業にとっては消費税でよくなることはない。とくに下関のような地方では給料も上がっていないし、景気が回復した実感はみんな持っていない」と話した。
開業医の一人は、医療の分野では消費税を医者がかぶってきたことを明かし、「それで診療報酬を引き下げる。消費税八%を全部かぶったらやっていけない。輸出企業のように払い戻し制度にならなければ、患者さんからとらないといけなくなる。やることがむちゃくちゃだ」と憤りを語る。安倍政府が「消費税増税分の対策」といって、初診料を120円、再診料を30円上げることを打ち出したが、他方でそれ以上の診療報酬の引き下げをしており、実質マイナス改定。「患者さんは医者が消費税をとっていると思っている。“消費税が上がったら医療費も上がるんですか?”と聞く人もいる。政府のやることが汚い」と話した。
中小企業にも税理士を通じて導入した会計ソフトを買い換えないといけないと連絡が入ったりして、「いい加減にしてほしい」と怒りが語られている。決算時期を迎えて、来年どうするかと頭を悩ませているところも少なくない。中小企業では従業員の給料を増やすどころではなく、逆に円安による経費の値上がりで経営が厳しさを増している。
本部から「経費増は認めない」「とにかく節約するように」と連絡が来て、経費削減のため待合室のテレビを消し、新聞はすべてやめて、有線放送の契約も打ち切ったというガソリンスタンドもある。それほど節約しても利益が出ない。
生活保護受給が最多に アベノミクスの結末
「株価が上がった」「景気が回復した」といって消費税の増税に踏み込んだ安倍政府だが、いったいアベノミクスでなにがよくなったのか? 最近国が発表した統計でも隠すことのできない結果があらわれている。
給与
2013年の残業代やボーナスを含む給与総額は月平均で31万4054円。前年を73円下回り過去最低を更新。正社員は2年ぶりに増えたが、パート労働者の給与は減少。給与の低いパート労働者の割合が29・44%と過去最高になり、全体の給与水準を引き下げた。(厚生労働省・毎月勤労統計)
雇用
2013年10~12月期、正社員は前年同期と比べて47万人減の3283万人になり、非正規雇用の労働者は122万人増の1965万人となった。どちらも4期連続。全労働者に占める非正規雇用の割合は37・4%まで高まっている。(厚生労働省・労働力調査)
生活保護受給者数
2013年11月の生活保護受給者は216万4857人と、前月比519人増加した。2カ月連続で過去最多を更新し、受給世帯数も同867世帯増の159万5596世帯で過去最多を更新。
さらに、「円安になって輸出企業がよくなれば雇用が回復する」といっていたが、今年1月の貿易赤字は2兆7900億円と過去に例を見ない赤字を記録した。もともと大手製造業は、円安であろうが円高であろうが、安い人件費を求めてすでに海外移転しており、労働者の雇用にとってはなんの関係もないことだった。結局円安や株高でもうけたのは外資ファンドや大企業だけだったことが浮き彫りになっている。
「2013年の経済指標を見てから決める」といい、昨年10月に安倍政府が消費税増税を決定した。当時、国土強靱化や一連のバラマキによって経済指標だけは上向いた格好となり、黒田日銀総裁も「景気は回復している」ばかり発表してお墨付きを与えた。しかし絶好調だったはずのアベノミクスも新年を境に暴落をはじめ、量的緩和によって演出されていたに過ぎなかったこと、大企業といっても円安効果によって史上最高益を得ただけで、実需によるものではなかったことが暴露され、その間、労働者の賃金は上向くどころか低下してきた。「大企業がもうかれば傘下の労働者の賃金アップにもつながる」といってきたが、大企業が搾り上げるから低賃金なわけで、事実、企業の内部留保は過去最高額を記録するまで膨らんだ。
安倍政府は2%のインフレ目標を実現するといって日銀が大量のお札を刷り散らかしてきた。賃金は下がるのに円安による物価高となり、さらに消費税だけで4月から3%も値上がりする。国民生活からみたときのインフレ率は2%どころではない。介護保険料も月5000円を突破し、制度開始から2倍以上の値上がりで、市県民税も上がるばかりである。
大収奪体制を強めながら、一方で海外に出かけてODA(政府開発援助)を大盤振舞したり、「僕のカネ」くらいに思って無尽蔵に使い果たしていく姿に、強烈な怒りが充満している。