腐朽衰退する資本主義を乗り越えた世界への展望
2016年の新年を迎え、読者・支持者のみなさんに謹んでご挨拶を申し上げます。
昨年は長周新聞創刊60周年記念祝賀集会を盛大に開催していただき、戦争を阻止し、平和で豊かな社会の実現をめざす新たな出発点に立つことができました。今年は創刊65周年に向けて、さらに全国的な役割がはたせるよう、人民言論事業を大きく発展させる決意です。
一
内外情勢は波乱に満ちた大激動の時代を迎えています。資本主義各国はリーマン・ショック以後の金融恐慌の行きづまりから抜け出せず、危機を乗り切るために犠牲をみな労働者、人民に転嫁してきましたが、それに対して各国で大規模なストライキや大衆的な決起が始まっています。資本主義体制のもとでは生きていけないことを多くの人人が実感し、次なる社会の到来を切望する世論と運動が国境をこえて強まっています。
18世紀から19世紀にかけて発展した資本主義社会は、20世紀初頭には帝国主義段階へと進み、過剰生産恐慌にもがきながら植民地市場争奪を巡る第1次大戦を引き起こしました。そのなかで1917年にはロシア革命が勝利し、労働者の国家が世界史のうえで初めて誕生しました。第1次大戦後、資本主義各国はしばらくはバブルに浸っていましたがすぐに崩壊し、30年代の大恐慌を迎えました。社会主義ソ連がめざましい発展を遂げる一方で、資本主義国では民心が離れるのを警戒して一定の福祉政策をとり入れたり、大恐慌脱出をはかってニューディール政策などのケインズ主義を実行してとり繕っていましたが、最終的に経済ブロック化や通貨戦争が避けられず、第二次大戦へと突入しました。この戦争によって世界中を破壊し尽くしたことによって復興需要をつくり出し、その後の資本主義の相対的安定期につながりました。第2次大戦では中国をはじめとした被抑圧民族が革命を勝利させ、一連の社会主義陣営が誕生しました。同時に、アメリカが欧州各国や日本が疲弊している条件のもとで、西側資本主義陣営のなかで最強の存在として君臨する結果となりました。
戦後の世界はアメリカが覇権を握ってきましたが、60年代のベトナム戦争によるドル垂れ流しなどが響いて七一年にはニクソン・ショックとなり、金ドル交換停止に追い込まれてブレトンウッズ体制は崩壊しました。しかしこの危機のもとで、今度は管理通貨制・ドル体制へ移行するとともに、軍事力と金融・IT技術の優位性を武器にして新自由主義、グローバル化をとなえ、市場原理主義によって一極支配をはかってきました。
生産に投入できない過剰な資本が積み上がるなかで、市場経済化を迫りながら世界中の市場をこじ開けてバブルをつくり出し、各国の通貨や株、証券、国債、原油や食料をはじめとする現物商品を投機の具にして、金融詐欺によって暴利を貪るというものでした。一握りの多国籍化した金融資本があり余ったカネを握りしめて、国家の財政や税制、金融政策を動かして強欲に利益を得ていく。そしてバブルが破綻する度に、ゼロ金利や金融量的緩和を実施し、犠牲はみな各国の人民に押しつけてきました。
そして新自由主義によって強烈なる搾取収奪の社会をつくった結果、世界中で貧困が拡大しました。日本国内では安倍政府がアベノミクスで大企業天国にするのだといってきましたが、企業及び金融資本がもうける源泉は労働者を徹底的に搾取する以外にはありません。したがって資本主義的な私的所有で強欲に利潤を増殖させようとする勢力と、労働者との矛盾はますます激化していくほかありません。社会は労働者が集団で協業し、人人にとって有用なものを生産することで成り立っています。労働者の資質は、もっぱら自分だけがもうかればよいという強欲資本の性根とは根本的に異なるイデオロギーに貫かれたものです。生産を社会化して、この労働者が主人公になるような社会にしなければ、資本主義のもとでくり返される貧困、失業、戦争という矛盾は解決しません。
アメリカでもヨーロッパでも日本国内でも、資本と労働の矛盾、帝国主義と人民の矛盾が激化しています。さらに帝国主義国同士による市場争奪も激しいものになり、かつての大戦前と同じように経済ブロック化や通貨戦争が勃発しています。米ソ二極構造の崩壊から四半世紀が経ちましたが、いまや「資本主義の永遠の勝利」を叫んでいたアメリカ及び西側資本主義こそが腐朽衰退し、体制崩壊がさまざまな形で顕在化しています。この大変動をともなう戦争と革命の情勢のなかで、労働者が社会の主人公としての自覚にたって立ち上がるなら、現在の社会を変える大きな力になることは疑いありません。
二
日本国内では昨年、安保法制を巡る斗争が燎原の火の如く広がりました。アメリカは自衛隊に米軍任務の肩代わりをさせるためにガイドラインを見直し、地球の裏側まで武力参戦させるために安保法制を強行させました。対中国包囲網のTPPで経済的な緊張関係が深まると同時に、尖閣諸島をはじめとした軍事的緊張によって米中衝突の矢面に立たされ、さらに国益など何も関係がない中東やアフリカ地域にまで駆り出されるものです。日米「安保」条約はアメリカが日本を守るものだと欺いてきましたが、守るどころか米軍の鉄砲玉として戦争に投げ込まれる、日本列島をミサイル攻撃の標的にさらすものであり、70年にわたる対日支配の本質を暴露するものでした。
これに対して長年の停滞を打ち破って知識人や学生、若い母親などが行動に立ち上がり、60年安保斗争以来の全国的な政治斗争が発展しました。人民運動は下から大衆的な連帯と団結を強めながら、新しい様相を持って広がりはじめ、列島を揺るがす爆発的な力を発揮しはじめました。
日本人民はかつての大戦によって320万人もの命が犠牲になりました。広島、長崎の原爆投下、沖縄戦の大殺戮、全国の大空襲、戦地における飢餓、病死、輸送船の撃沈などで親兄弟を無残に殺された記憶は、かき消すことなどできません。この新鮮な怒りを若い世代に受け継ぐことはきわめて重要です。天皇をはじめ独占資本集団、官僚機構、新聞などの戦争指導勢力は、負けると分かっていた戦争を長引かせて、全国空襲や原爆投下などで国民を殺させるに任せ、戦後はアメリカの対日支配の協力者になって民族的な利益をことごとく売り飛ばすことで、自分たちの支配的地位を守ってきました。70年たった今日、日本社会はこの対米従属のもとで無惨に崩壊し、富だけでなく命までも奪いとられるところへきました。異次元の金融緩和にせよ、TPP、原発再稼働、沖縄への辺野古基地建設にせよ、まるで日本政府が自主的にやっているように見せかけて、アメリカがみな指図していることです。金融、軍事、エネルギー、教育、文化、農漁業、労働、医療福祉など全ての分野で売国政治との矛盾が噴出し、対米従属構造を突き破らなければ日本社会の展望は切り開けないことが現実的課題となっています。
三
大衆的な基盤を持った新しい型の運動が、確実に発展しています。この十数年来、下関、広島、長崎、沖縄をはじめ全国で、原爆詩人・峠三吉の詩をベースにした「原爆と戦争展」が開催され、被爆者の気迫あふれる体験の伝承によって原爆反対、戦争反対の強力な力を発揮しています。広島の八・六集会は広島市民の圧倒的な支持を集めるものとなっています。沖縄では祖国復帰斗争の経験をよみがえらせ、基地撤去・日本の独立要求のたたかいが島ぐるみで発展し、辺野古基地建設をゴリ押しする日本政府との全面対決の様相を呈しています。対米従属の構造を真っ向から暴露してたたかう、そのような行動が人人の心を捉えています。
上関原発阻止斗争では、祝島島民が全国との団結のもとで下から決起して漁業補償金の受けとり策動をはねつけ、新規立地を押しとどめています。下関では安岡沖で全国最大規模の洋上風力発電の建設計画が持ち込まれたのに対して、住民たちが反対運動に立ち上がり、1000人以上の市中デモをくり広げました。大衆の行動機運は全国津津浦浦に充満していることを確信させています。教育運動は、「いじめ」「体罰」などで教師現場を萎縮させて指導性を剥奪し、鍛えてはいけない、指導してはいけないという自由主義の強要と対置して、勤労父母の資質を身につけさせるという人民教育の路線が日本の教育の展望を示しています。劇団はぐるま座の再建は、修正主義の欺瞞と虚飾の劇団から人民劇団にとり戻すために劇団員が奮起し、公演活動を通じてリアリズム演劇の大きな力を発揮しています。
四
日本社会の針路をかけて、かつてなく大衆的な行動機運が高まっています。ところが、これほど国民全体の難儀な問題が起こっているときに、人民大衆の側を代表した政治勢力、あてになる政治勢力が国政政党を含めて見当たらないのが現状です。旧社会党であれ「日共」集団であれ、みな自分の利益、地位、もうけのために小集団の自己主張をしている勢力がほとんどです。戦後アメリカを平和と民主主義の進歩勢力とみなしたこれらの潮流が大衆から見離され、苦難にあえぐ人民には関心がないか、関心を寄せたふりだけするといった、支配の枠の中で安住してきた勢力は消滅の道を進んでいます。
現在発展している新しい政治勢力は、人民大衆が歴史を創造する原動力であることを確信し不断に大衆のなかへ入り、その生活と斗争に学び、大衆の先頭に立って人民を抑圧する敵と正面からたたかうことで運動を切り開いてきました。日本の命運を決める最大の力は、寄生的な支配階級ではなくて幾千万の勤労大衆です。いかなる権力者も大衆の協力がなければ戦争などできるわけがありません。労働者、農漁民をはじめ各階級各階層の人民が全国的に結びつくならば戦争を阻止できないわけがありません。そのために大衆を導く政治集団が形成されていくなら、日本社会の展望を大きく切り開いていくことになります。朝鮮戦争真っ只中の戒厳令下にあった広島で原爆反対・朝鮮戦争反対を掲げて切り開いた1950年8・6斗争は、正面からアメリカを暴露して戦争を阻止すると同時に人民世論を激励し、沖縄の基地撤去・祖国復帰のたたかいをはじめ全国の基地撤去のたたかいを激励し、世界の平和運動をリードするものとなりました。そして朝鮮での原爆使用を押しとどめました。
長周新聞の勤務員は、人民に奉仕する思想、自力更生、刻苦奮斗の精神を貫き、独立、平和、民主、繁栄の新しい日本を実現するために奮斗することをお誓いして、新年のご挨拶といたします。
2016年元旦
長周新聞社