全国各地で墜落事故があいつぐ中
今年1月、米軍が広島県廿日市市沖に軍用ヘリを集結させて低空飛行訓練をおこなっていたことが米海軍のホームページ上で公開され、廿日市市(眞野勝弘市長)が詳細情報の公開を求める要請文を国に提出した。沖縄でのヘリ墜落や小学校への部品落下、佐賀での自衛隊ヘリ墜落、青森での米軍戦闘機による燃料タンク投棄事件など、米軍とその傘下に組み込まれた自衛隊の常軌を逸した訓練による重大事故があいつぐなかで、極東最大規模に拡張した岩国基地周辺でもその脅威が身近に迫っていることに危惧が高まっている。
米海軍の公式ホームページには、廿日市市役所がある市内中心部や木材港南地区を眼下に米海軍所属の戦闘ヘリ2機が低空飛行する様子を撮影した画像が掲載され、英文による注釈では「広島、日本(1月25日、2018年)米海軍の第51海上攻撃ヘリコプター飛行隊(HSM51)と第25海上戦闘ヘリコプター飛行隊(HSC25)のMH―60RとMH―60Sヘリコプターが米海兵隊岩国航空基地の打撃調整と偵察訓練のため、広島沖で編隊飛行を実施」(翻訳/廿日市市)と記している。宮島の東側上空から廿日市市街地へ侵入する途上で撮影したものとみられ、市街地を「打撃」と「偵察」の対象に見立てた訓練であったことがうかがえる。
これらのヘリは横須賀基地配備の米空母に艦載するもので、厚木基地所属となっている。岩国基地への艦載機部隊の移転に便乗し、ヘリ部隊も岩国を拠点にする可能性が浮上している。
廿日市市は、2月13日に市民からの通報を受けて同サイトを確認し、事実の確認を求める要請文を外務省と防衛省に提出した。「米軍機による低空飛行や艦載機移転増強計画については、騒音や事故の発生など住民生活への影響が懸念されることから、これまでも周辺自治体と連携し、繰り返し、住民の不安が増大することにならないよう要請」しているものの、「岩国基地への空母艦載機移駐が大幅に進み、本年1月、本市沿岸部に設置した航空機騒音測定器は、70デシベル以上の騒音を昨年の4倍程度測定し、住民からの苦情も増えている」と訴えている。市が阿品台市民センターに設置した騒音観測機では、70デシベルを超える米軍機の騒音回数が今年1月だけで22日(80回)に達しており、昨年1月(11日・18回)、一昨年1月(14日・18回)と比べても突出していた。
「広島の海岸」に打撃調整、偵察訓練のために米軍機を集結させたことについて、「事故が発生した場合は、市街地や本市特産である牡蠣の養殖用の筏への甚大な被害も想定」され、「到底容認することはできない」こと、訓練の詳細について事実確認と情報の公開とともに、地元自治体の声に真摯に耳を傾け、「住民の不安の増大や、生活環境を悪化させ」ない措置を求めている。
岩国基地所属の米軍機は、これまでも広島県や島根県にまたがる中国山脈を「ブラウンルート」や「エリア567」と名付けた訓練場にしてきた。航空法で定めた高度規制(市街地300㍍以上、その他150㍍)をも度外視した低空飛行が無制限におこなわれていることに対し、昨年7月には県北西部の廿日市市、三次市、安芸太田町、北広島町の四市町が連名で飛行訓練の中止を求める要請書を送付している。昨年8月から厚木基地の空母艦載機61機を岩国基地に段階的に移駐させており、訓練域も山間部から市街地に拡大していることを示している。
70年前に原爆で焼き払った広島を攻撃訓練の標的にしてはばからない米軍の傍若無人な振舞は、騒音や事故による危険性を高めるだけでなく、数十万犠牲者が眠る被爆地を武力によって踏みにじり、核戦争の出撃拠点として日本列島をふたたび核の惨禍に巻き込む米軍の進駐意図を露骨に示している。沖縄や岩国をはじめ、日本全国の基地撤去の世論と繋がり、被爆地の使命に立った世論と運動を起こすことが抜き差しならない課題となっている。