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最盛期迎えるノリ出荷作業 オスプレイ配備に反対する佐賀市川副町

ノリの出荷作業(2日、佐賀市川副町)

 佐賀空港へのオスプレイ配備問題を抱える佐賀市川副町では、有明海の特産品である養殖ノリの摘み取りが最盛期を迎えている。ノリ漁師や住民たちは、今年のノリのできが良好だったことを喜ぶとともに、有明海をオスプレイが飛び交う軍事基地にさせぬ決意を新たにしている。

 

 今年のノリ(冷凍網)の出荷作業は、1月半ばに始まり2月末ごろまで続く。水温によって品質が変わるノリを最適な状態で出荷するためには、1年でもっとも寒い時期が勝負になる。若手漁師たちが船に乗り、沖に張った網で生育したノリを摘み取って船着き場まで運ぶ。

 

 船から直接吸引ホースでパイプラインに流し込み、そのまま近くの加工場のタンクに貯め込まれていく。加工場で洗浄して細かく刻まれたノリは、織機のような機械で1列10枚ずつ正方形に整えられ、巨大な乾燥機で乾かした後、黒く光った艶のある板状のノリとなって1枚ずつベルトコンベヤーの上を流れてくる。機械と人の目で色やよごれなどを注意深くチェックしながら、きれいに束にまとめて出荷される。

 

 網に付いているノリの芽は、刈り取った後から再び生育するため、1週間後にまた摘み取る作業を8循環くり返す。これほどノリの生育が早いのは、大小112の河川からノリの成長に欠かせない栄養分が豊富に流れ込む有明海だからこその強みだ。この時期の作業は一家総出でおこない、夜通しの作業になることもある。

 

 有明海のノリは、柔らかくて歯切れがよく、火であぶるとパリッとした食感とともに潮の香りが口いっぱいに広がる。全国的にも最高級品として取引されており、もっとも柔らかい「一番摘み」には1枚100円の値が付き、少し固くなる2~4番摘みも50~20円の高値で買われていく。

 

 「今年は冷え込むのが例年より早く、寒かったことでノリに最適な水温になった。台風で海の中が撹拌(かくはん)されて栄養分が行き渡り、青ノリなどが付着しなかったことも品質に影響している。おかげで今年も日本一のノリを届けることができる」と、漁師たちも安堵している。

 

 佐賀有明海漁協南川副支部では、15年ほど前からノリ養殖の協業化に踏み切り、船や加工場などを整備するとともに共同所有にして、4人ずつの協業体で作業をおこなっている。それまで各家でおこなっていた出荷作業を協業化することで、船(1隻3000万円以上)や乾燥機(1台4000万円)などの設備投資の負担や労力を分担することができ、知恵や技術を共有し、地域全体で高品質のノリを安定して出荷することが可能になった。加工場を港付近に集約することで、騒音や排水による悪臭の問題も軽減した。その甲斐あって、今では一協業体あたり年間1億2000万円、一家で3000万円を稼ぐなど、収入が安定することで後継者も増え、南川副では100人以上の若手漁師が育っている。「先祖たちが苦労して残してくれたこの豊かな海を守っていくことが、ノリ養殖にとっても、地域全体の雇用・経済にとっても死活問題だ。諫早干拓などの公共事業による環境の変化で、アサリやタイラギなど貝類は全滅した。いつ落ちるかもわからないオスプレイが四六時中上空を飛べば安心して農漁業は営めないし、一度でも海に墜落すれば有明海はとどめを刺されるも同じだ」と語られている。

 

オスプレイ反対の会が4月初旬に住民集会

 

 佐賀空港へのオスプレイ配備計画に反対する地域住民の会(古賀初次会長)は、4月初旬に川副町住民の反対集会を準備している。計画が浮上した2年前から毎年開いているもので、昨年は国が買収を計画している空港西側用地を所有する佐賀有明海漁協が反対を表明したため国は一時的に引き下がったものの、県知事や県議会は「受け入れ」を表明しており、地元との攻防は水面下で続いている。

 

 古賀会長は、「沖縄ではオスプレイの墜落だけでなく、毎週のように米軍ヘリの墜落や不時着、保育園や学校への部品の落下が続いており、海では米軍艦船との衝突事故もあいついでいる。北朝鮮のミサイル以上に現実的な脅威ではないかと感じる。にもかかわらず、日本政府は調査も抗議もできず、米軍に飛行をやめさせることもできない。米軍基地があることで安全よりも危険性が増している。沖縄県民が怒るのは当然だし、佐賀市民も同じ思いで連帯していきたい。漁師が一坪たりとも土地を売らなければ軍港化計画は進まない。反対を貫くことで腹は固まっている。県知事や議会が国の圧力になびいているが、佐賀の将来のため漁師、農業者や商工業者、地域住民も含めて幅広い市民の結束を強めていきたい」と抱負を語った。

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