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痛快な新潟県民の勝利 知事選挙で揺るがぬ再稼働反対の力示す

 柏崎刈羽原発の再稼働の是非を最大の争点とした新潟県知事選挙が16日投開票され、現職泉田氏の不可解な撤退表明の後に「再稼働阻止」を掲げて急遽出馬した米山隆一候補が大逆転の当選を果たした。安倍政府や自民党、東京電力が総力を挙げて選挙運動を展開した前長岡市長の森民夫候補は、当初は敵なし状態で安泰と見られていたが、再稼働阻止を願う県民世論が選挙情勢を丸ごとひっくり返し、痛快な勝利をもたらした。選挙では候補者の善し悪しを超えて県民の鋭い政治判断が動いた。自民党にせよ、民進党にせよ信頼が乏しいなかで、政党の束縛を離れた民意の力が躍動し、原発再稼働を争点とする県知事選挙では7月におこなわれた鹿児島県知事選挙に続いて力を示した。投票率は53・05%で前回選挙よりも9・1ポイントも跳ね上がり、新潟県の命運をかけた選挙として関心が強かったことをうかがわせた。得票は米山氏52万8455票、森氏46万5044票となった。

 政党の束縛を離れた力が躍動

 柏崎刈羽原発は東京電力が抱えている17基のうち7基が集中する世界最大の原発であり、東電にとっては経営の生命線ともいえる再稼働を巡って、絶対に負けられない知事選挙であった。直前には再稼働に慎重姿勢を貫いてきた現職の泉田知事が不可解極まりない撤退表明をして、東電なり安倍政府の圧力が相当に加わっていることを感じさせていた。選挙戦に入ってからは首相官邸をはじめ自民党の大物政治家が次次に現地入りし、また労働組合の団体である連合も森氏応援に回るなど、総力をあげた応援態勢をとった。
 他方の米山氏は民進党の衆議院候補として名前が上がっていたが、候補者選びが難航したもとで県知事選挙に出馬。9月29日の告示日直前の決定となった。しかも民進党は連合が森氏支持に回ったことを理由に推薦を拒否したため、民進党を離党して無所属での出馬となった。
 選挙戦はどこからみても「森氏圧勝」の構造のもとでスタートした。だが、「原発再稼働」を最大の争点とする選挙戦が進むなかで、「原発再稼働阻止」の県民世論が高揚し、終盤に米山氏が猛烈な勢いで追い上げ、県内のみならず全国的な「再稼働阻止」の世論が米山支持に集中し、痛快な勝利で幕を閉じた。
 知事選全般の流れを振り返ってみると、4期目の出馬が確実とみられていた泉田裕彦知事が8月末、突如不可思議な出馬見送りを表明した。東電に対して厳しい姿勢を貫いてきた泉田氏の出馬断念で原発推進派は柏崎刈羽再稼働への展望が開けたと沸き立った。他方、再稼働反対が強い地元関係者は難航した末に米山氏を後任候補として決定した。だが同氏が県支部長を務めていた民進党は、米山氏の公認や推薦を出さず自主投票とした。自民党、公明党、民進党、労働組合の連合といった既存組織が一方は前面に出て森応援をやり、片方は選挙サボなり公然とした森応援で呼応していたなかで、陣営が依拠できるのは県民世論だけとなった。そのなかで、まさに有権者が選挙構造も含めて為政者の目論見を粉砕した。
 それほど再稼働への有権者の危惧は強かったことを浮き彫りにした。選挙では、当初は原発問題を争点からはずそうとしてきた森氏も8日の柏崎市での演説では「原子力規制委員会の結論が出てもすぐ再稼働ということではない。検証して問題が出れば、東電に対しても国に対しても“再稼働にはノー”という覚悟で臨んでいる」と表明せざるをえなかった。応援に入った石破氏も13日の応援演説後、「(森氏当選の場合)新潟県知事として原発をどう考えるか、森さんが判断すること」と指摘し、県民世論を意識して柏崎刈羽原発再稼働について表立って推進姿勢を示すことができなかった。
 5年半前に福島で爆発事故を起こした東電による原発再稼働は全国的な注目を集め、柏崎刈羽原発についても「再稼働させるな」の世論が圧倒した。震災後に再稼働できた原発は川内原発1、2号機と伊方原発3号機のみであるが、いずれも「加圧水型」である。福島第1原発とタイプが同じ「沸騰水型」は、柏崎刈羽が動けば初のケースとなるところであった。福島原発事故の収束もいまだにめどがなく、事故原因も究明されていない段階での東電の柏崎刈羽原発再稼働に対してはとりわけ厳しい批判世論が集中した。世論を背に受けた泉田知事が慎重姿勢を頑なに貫いていることが、東電にとっては目の上のたんこぶとなり、その撤退表明は東京発で「邪魔者を消す」力が働いたことを誰もに実感させた。
 中盤以降の逆風のなかで13日、安倍首相は官邸に泉田知事を招き、森候補の支援を要請したことも報じられた。しかし、泉田氏は森氏応援を断り14日には米山氏応援のメッセージを出すことを決めていた。これについてもなんらかの圧力が加わり中止となった。今回の新潟県知事選挙をめぐっては、自民党の不可解な暗躍が注目された。
 7月の参院選新潟選挙区(改選数1)で、自民党現職が野党統一候補だった森裕子氏に敗北した自民党は、「悪夢の再来を避ける」ことを至上命令とした。8月30日に東電の原発再稼働に厳しい姿勢を示していた泉田氏が不可解な4選出馬断念を表明した後の9月1日自民党本部は「いい形だ。これで決まった。無投票もありうる」と圧勝ムード一色で、民進党が自主投票を決めたことも楽観論を加速させていた。民進党及び連合というのが安倍自民党を補完する勢力でしかないことも全国に暴露された。
 参議院選挙結果で危機感を強めた安倍首相は今月上旬、県連幹部に電話をかけ、「2連敗は避けたい」と指示した。二階氏は副幹事長や二階派議員らに新潟入りの号令をかけ、みずからも12日、新潟市内に県連幹部を集めて引き締めを図り、土地改良団体などの組織票固めに奔走した。13日には公明党の漆原良夫中央幹事会会長も応援に入り、さらにテコ入れを図った。
 だが、選挙戦がスタートして以降世論は激変し、「再稼働阻止」を掲げた米山氏が当選を果たした。この選挙は新潟だけの選挙ではなく、再稼働を強行するのか阻止するのかをめぐる全国規模のたたかいとなった。安倍首相官邸の暗躍を吹き飛ばす再稼働阻止の新潟県をはじめとする全国的な世論が、いかなる力をもってしても抑えつけることができない勢いで燃え上がっていることを示した。

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