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安倍首相を山口地検に告発 今治加計獣医学部めぐる詐欺幇助罪で

モリ&カケ疑惑追及の2市民団体

 

加計学園問題で安倍首相を告発した黒川氏(右)と木村市議

 「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表(衆院山口4区から出馬)と「森友学園問題を考える会」の木村真・豊中市議は16日、加計学園(岡山市)が愛媛県今治市に建設をすすめている岡山理科大獣医学部(校舎建設中)をめぐり、安倍晋三首相を詐欺幇助罪で山口地方検察庁に刑事告発した。

 

 追及を逃れるために国会解散権を行使し、疑惑の幕引きを急ぐ安倍首相だが、選挙中に地元で刑事告発を受ける異例の事態となっている。

 

加計学園のずさんな計画 土地と補助金の不正所得疑惑


 告発状では、安倍首相がアメリカ留学時代からの「腹心の友」とする加計学園理事長の加計晃太郎(孝太郎)が、極めてずさんな大学の設置運営計画を提示しながら、今治市の関係責任者らに「堅実な獣医科大学が開設されるものと誤信させ」、37億円相当の土地(16・8㌶)を加計学園に無償譲渡させ、それらの土地を不法に領得していると指摘している。


 加計学園の今治キャンパス開設計画では、大学施設の建設費用は148億1587万円としており、坪あたりの建設単価は147・57万円となる。だが、設計図面を分析した一級建築士・森山高至氏ら建築専門家は、「鉄骨造、壁は6㌢の成形コンクリート板、床は配線・配管などの底上げなしのコンクリート打ち、室内壁・天井は石膏ボードにビニールクロス等であって何一つ高価なものはない」「高く見積もっても坪単価100万円程度」「同様の仕様でイオンモールなどの商業施設は坪単価45万円で業者が受注する例もある」と指摘していることをあげ、「このような倍近い費用額は、敷地提供・補助金についての詐欺行為」とのべている。


 現在までに加計学園は、今治市に対して大学運営についての正確な具体的内容は開示しておらず、これら水増しが疑われる「大学建物の設計図」などのみで、大学設置経費192億円を申告し、その2分の1にあたる96億円(限度額)を「大学立地事業補助金」として4年にわたって分割交付することを今治市に約定させた。


 この獣医学部が「獣医学部新設に関するいわゆる閣議決定4条件をクリアして文科省の認可が得られるか」や、「長期に健全で安定した学校経営が可能かどうか」は極めて疑わしいが、「大学誘致による地域振興」を第一義とする今治市は、これらを「望ましいものとして自己の主観的意図に合致させてしか現実を見ようとしていない」とし、このような強い主観主義的な態度は、「詐欺罪の被害者に通有している」と指摘している。

 

不当な圧力で認可ゴリ押し 「腹心の友」に便宜

 

 さらに被告発人である安倍首相の幇助行為として主に以下のようにのべている。

 

 安倍首相は、国家戦略特区の選定のための諮問会議に、2016年10月4日、同年11月9日、2017年1月20日と3回出席し、「実現に向けた議論を加速」するよう指示したり、「私と一緒にドリルの役割をお願いしたい」などと発言。同学園獣医学部新設のために今治市を国家戦略特区に指定するように具体的に指示・指導し、諮問委員を督励した。最終的に、今年1月20日の諮問会議でそれらを認めさせ、内閣の決定として、「一校に限り特例的に設置認可の対象にする」と告示した。

 

2013年5月 バーベキューを楽しむ安倍首相、加計理事長(中央)、萩生田副官房長官(「はぎうだ光一の永田町見聞録」より)

 そのうえで、設置認可の権限を持つ文科省に対し、加計学園と雇用関係(千葉科学大名誉客員教授)にある萩生田副官房長官を通じて「これは官邸の最高レベルの意向だ」などとのべさせ、前担当者が「文科省の行政が歪められた」と述懐するほどの強力な圧力を文科省の担当官僚に対してかけた。


 これら特区指定や認可への政治力発揮に及んだのは、「(平成)30年開学」を標榜する加計学園の獣医学部(すでに建設中)が、原則として「医師等国民の命に関わる分野については大学新設を認めない」とした文科大臣告示や、従前の「文科省告示・閣議4原則」である、①既存の獣医師養成ではない構想、②ライフサイエンス(生命科学)など新たに対応すべき分野で具体的な需要、③既存の大学・学部では対応困難、④獣医師の需給動向を考慮する――に適合しないことを安倍首相自身が知っていたからにほかならない。現実に、文科省がこの申請の可否当否を諮問している大学設置・学校法人審議会(設置審)の結論は、8月9日の時点で「保留」となっており、これらの問題点が解決される可能性は何ら示されていない。


 一方、今治市による「破格の協力」は、上記の条件を満たす研究・教育が成されるものという期待(加計学園の働きかけによる錯誤)によるものだが、安倍首相はそれを知ったうえで「旧知の親しい関係にある加計晃太郎理事長に便宜を図ることを最優先」し、総理大臣としての力を振るって詐欺行為を幇助した。


 また、安倍首相は加計理事長と頻繁にゴルフや会食等を重ねながら、「近時は会っていない」と嘘をつき、それが暴露されるや今度は「諮問会議での特区指定決定(今年1月20日)まで、加計学園の本件新設計画は知らなかった」と言い訳を変更した。特区指定決定への積極的関与や文科省への圧力をかけた事実経過からもそれはありえず、森友学園の場合と同じく「嘘を小出しにして誤魔化す」ことをくり返す行為からも、「加計学園の仮装による補助申請を容易ならしめる」という故意が認められる。

 

実態解明から逃げ説明せず 国会同様に選挙戦でも

 

 告発状では、補助金96億円のうち愛媛県からの補助が前提になっている32億円が愛媛県議会で承認される見通しはなく、今治市はまったく財政的裏付けのない32億億円について加計学園に補助する義務だけが発生することや、仮に愛媛県の補助金額見直しがされた場合は、同学園は運営資金に巨額欠損を生じて経営破綻する可能性が高く、補助金の回収不能に陥る被害は「今治市にとって致命的」と指摘している。


 また、建設中の獣医学部校舎は、安全度の低いBSL(生命危険度)3の設備仕様であり、鳥インフルエンザや家畜伝染病を含むバイオハザード対策がされていないなど、先端ライフサイエンスの研究などできない「お粗末」な設計であることを示す複数の専門家の指摘を列挙している。


 山口地検に告発状を提出した黒川氏は、「事実に基づいた調査の結果、加計獣医学部の建設費には少なくとも50億円水増しの疑いが浮上した。森友・加計問題は、とくに衆院山口4区においては最大の争点になるべき問題だ。安倍首相は選挙戦においてもこの問題への説明責任を果たす構えがなく、選挙陣営は取材にすら応じていない。全国的にも選挙を通じてこの問題について説明してほしいという国民のニーズは明確であり、告発は市民運動としての強い抗議だ」と強調した。告発の賛同者は現在200人をこえており、来年春にかけて1万人まで集める予定だという。


 木村市議はさらに、「今回の解散は、明らかにモリカケ隠し解散であると多くの国民が感じている。安倍首相は、国会解散時には“選挙こそが最大の論戦の場だ”と主張しながら、選挙戦では一切語らず、今度は“国会でやればいい”という。説明から逃げるために3カ月も臨時国会を引き延ばしたあげく、審議を拒否しての冒頭解散。あまりにも国民をバカにしているし、虫が良すぎる。首相がみずからの疑惑隠しのために解散権まで利用して逃げ続ける以上、選挙中であることが告発を躊躇する理由にはならない」とのべた。

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