米海兵隊の大型ヘリコプターが墜落・炎上した沖縄国際大学とその周辺で、いまなお米軍の治外法権をふりかざした横暴な占拠状態がつづくなかで、普天間基地のある宜野湾市はもとより、沖縄全土で、今回の事件を怒りをこめて糾弾する世論が大きく発展、抗議集会が各所で持たれ、各界の声明があいついでいる。今回の事件を機にアメリカの占領、植民地状態にあることへの憤激が高まり、「国家主権の回復」と米軍基地の撤去を求める声が日増しに強くなっている。また、今回沖縄にあらわれた状況は、日本全体の縮図であり、それがアメリカの戦争に日本の国土と人員を総動員する有事法制のもとで露骨にあらわれたことが全国的に語られている。独立と平和を求める民族の誇りにかけて、「日米安保条約」を破棄し、米軍基地の撤去を求める全国民的な運動を、イラクやアジア諸国の人民との連帯を強めて力強く発展させる機運が高まっている。
沖国大が抗議声明 国家主権の侵害に憤り
米軍ヘリ墜落・炎上事件で深刻な被害を受け、いまだに米軍の占拠状態にある沖縄国際大学では、大学当局や各学部教授会が抗議声明をあいついで発表している。
沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落事件対策本部(本部長=渡久地朝明理事長・学長)は、15日抗議声明を発表、今回の事件で、「本館ビルは使用不能となり、学術情報ネットワークが切断され」たこと、同大学の中枢が被害を受けたために「事務・教学機能がマヒする事態」におちいったと明らかにし、米軍が事故直後から現場を一方的に封鎖し、大学関係者の要請する「緊急かつ必要最小限度の立ち入りはもとより、沖縄県警の現場検証さえ拒否するなど“国家主権”が侵害されている異常な事態」がつづいていること、「今日にいたるまで米軍および日本政府関係者から本学へのなんらの謝罪もない」ことへの憤りを表明。「普天間基地を使用する航空機の即時飛行中止とともに、普天間基地の一日も早い返還を強く要求」している。
同大学法学部では19日午後、臨時教授会を開きつぎのような抗議声明を採択、発表した。
臨時教授会で声明採択 法学部教授会
8月13日午後2時20分頃、沖縄国際大学本館(1号館)ビルに米軍海兵隊所属のヘリコプターが激突し、墜落・炎上するという重大な事故が発生した。普天間基地は、宜野湾市の面積のおよそ3分の1を占めており、しかも本学を含む学校および住宅地域に隣接していることなどから、騒音被害に加えて事故発生の危険性が繰り返し指摘されてきた。今回の事故は、それが現実のものになったのである。
今回の事故では、米軍ヘリの乗員3名が重軽傷を負ったことを除いて、本学の教職員、学生および付近の地域住民に犠牲者がいなかったことは奇跡的というほかはない。米軍は、事故発生直後から墜落現場およびその周辺一帯を一方的に封鎖し、本学関係者の立入や沖縄県警の現場検証さえも拒否し続けてきた。これは日米地位協定に明確な根拠がないのみならず合同委員会の合意議事録に照らしても“不法占拠”の疑いがきわめて強いものである。これは重大な人権侵害であり、大学の自治に対する侵害でもある。さらに、県民の生命や安全の確保に責任を負っている県警が、合法的かつ適切な現場検証、および捜索活動などを妨げられるということは、日本の“国家主権”が侵害されているということにほかならない。
このようなことは、法治国家においてはそもそもあってはならないことである。しかも、日本政府が直ちに米政府や米軍に抗議しなかったばかりか、容認もしくは黙認する姿勢さえ示していたことは、看過することのできない問題点である。
また、このような重大な事故が発生し、その後も異常な事態が続いているにもかかわらず、加害者である米軍関係者が事故発生から3日後にようやく本学に謝罪に訪れたこと、その際に飛行訓練を再開する旨告げたこと、また日本政府、およびその関係機関が未だに何らの謝罪も行っていないことに憤りを禁じえない。
本学は、創立以来、地域に根ざし、地域に開かれた大学として、地域とともに発展してきた。本学のみならず地域住民をも巻き添えにした今回の事故は、あいまいなかたちで幕引きすることは決して許されない。日本政府は、米軍が行うであろう原因究明と調査結果を速やかに公表することを要求すべきである。
われわれは、今回の米軍ヘリコプター墜落事故に対して強く抗議するとともに、一連の異常事態の根源ともいえる日米地位協定の抜本的改定を要求する。また、このような惨事の再発を防ぎ、大学の教育研究環境と地域住民の安全を確保し、人権が侵害されないようにするために、普天間基地を離発着する航空機の訓練飛行を即時中止すること、および普天間基地の早期返還を強く要求する。
以上の通り決議する。
2004年8月19日
沖縄国際大学法学部教授会
総合文化学部でも抗議
これに先がけて、総合文化学部が17日の臨時教授会で、「米軍ヘリ本学校内墜落・炎上事故に抗議し、即時普天間基地飛行停止、返還を要求する」と抗議声明を出している。
声明は「学問の府である大学にヘリが墜落し、建物を破壊しただけでなく、米兵が多数侵入し大学の中枢である本館を占領したことは、大学に対する生命、財産、自治の重大な侵害で、国家主権の侵害である」と強く抗議している。
宜野湾・那覇両市議会が抗議決議を採択
宜野湾市議会(伊佐敏雄議長)は、17日、臨時市議会を開き、普天間飛行場の早期返還、SACO(日米特別行動委員会)合意の見直し普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設の再考を求めるなど7項目の抗議決議案と意見書案を全会一致で採択した。決議は、「絶対にあってはならない最悪の事故が発生した。一歩誤れば市民多数の命を奪いかねない大惨事になるところであり、激しい憤りを覚える。今回の事故により米軍乗員3人が負傷し、民間人には負傷者がないものの、現場は広範囲にわたって機体の一部や破片が飛び散り、民家の鉄製のドアを貫通したり、乳児の寝室の窓ガラスが割れるなど、基地の存在そのものが住宅の中でも安全でないことが証明された。さらに日米地位協定を盾に米軍により事故現場への立ち入りが制限され、沖縄県警をはじめ日本側の事故検証さえできないなど異常な状態がつづいている。米軍基地が存在するかぎり、市民、県民を死の恐怖におとしいれるこうした事件、事故は絶対になくなるものではない」と強調し、日米地位協定の抜本的改定、被害調査と完全補償、事故原因の徹底究明、住宅地上空での全機種の飛行訓練中止、すべての米軍航空機のいっせい点検整備を求めている。
宜野湾市議会は、1999年8月、政府と県に県内移設を求める決議をあげているが、今回の決議はそれをくつがえし転換するものである。99年の決議では、「SACOの基本方針通り、普天間飛行場の移設先の早期決定を強く要請する」とし、県内移設を容認する内容であった。16日の基地関係特別委員会では、保守系会派からも「ここで辺野古をとり上げないと16年(移設に要する最低期間)待ってもかまわないと思われる。宜野湾がいわなくてだれがいうのか」「普天間の早期返還だけではこれまでの抗議と同じ。一歩すすんでSACOも入れるべきだ」との主張が強く出された。
那覇市議会も18日、SACO合意の見直しをふくめ検討を求めることを盛りこんだ抗議決議を採択した。
宜野湾市職労等が抗議集会
宜野湾市では米軍ヘリ墜落事故を糾弾し、米軍の訓練再開を糾弾する集会が、18日午後5時過ぎから、北中城村石平の在沖米軍司令部前で開かれた。宜野湾市職労(大城紀夫委員長)が呼びかけたもので、同市職労の組合員をはじめ、沖縄市職労や北中城村職労などから結集した。
大城委員長は、95年の少女暴行事件での県民のたたかいによって、米政府に普天間基地の返還を確認させたが、「移設条件付き返還」は到底認められない、普天間基地を撤去させることは公務員労働者の使命であると強調した。さらに、「自由・民主・人権を叫ぶアメリカは日本の刑事手続きを批判するが、沖縄の人間が殺されようが財産を破壊されようが勝手放題だ。これが民主国家アメリカの姿だ」と強く糾弾した。
中部地区労顧問の有銘政夫氏は「在沖米海兵隊から約4000人がイラクへまた派遣されるが、沖縄はイラク攻撃の前線基地となっている。まさに沖縄は戦場だ。県民大会を開くまで団結して行動をつづけよう」と訴えた。
沖縄の中部地区労・平和運動センターも16日正午過ぎから、米軍第2ゲート前で緊急抗議集会を開いた。
採択した決議では「これまでも、墜落事故や不時着、燃料タンクなどの落下事故が起き、そのつど、事故の徹底究明と再発防止が叫ばれながら、一時的な飛行中止など県民だましの小手先の方策でかわされてきた。45年まえの宮森小学校の大惨事から、なんら沖縄の状況は変わっていない。
今回の事故にさいし、武装海兵隊員が市街地や大学校内に流れこみ、なんの根拠もなしに、立ち入り制限、交通規制、報道管制を強いたことに強く抗議する。まさに有事体制がなんなのかを想起させる事態である。県民の生命をつねに脅かす危険な基地は、沖縄のどこにもいらない。
沖縄の米軍基地は、イラクへの出撃基地でもあり、基地の機能・役割は強化されてきた。普天間基地の早期無条件返還と、辺野古への移設断念を強く求め、すべての軍事基地の撤去を求める」とのべている。
九月五日に市民大会 沖国大グラウンドで
宜野湾市では、米軍ヘリの沖縄国際大墜落事故を糾弾し、普天間基地の閉鎖返還を求める市民の総意を結集した市民大会を、9月5日沖縄国際大グラウンドで開く準備がすすんでいる。宜野湾市では20日の臨時庁議で正式決定し、実行委員会を発足させ沖縄国際大の協力を得て、市内自治会や商工会、婦人会、労働組合など市内の関係団体に参加を呼びかける。
沖縄国際大は18日、部局館長会議を開き、「市から正式な協力要請があれば、開催場所として大学構内を提供する」ことを決めた。