いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

「日本の農業みんなで守ろう!」 令和の百姓一揆・全国14カ所で一斉行動 山口、沖縄、岐阜会場 生産者も消費者も一体に

■山口会場 生産者や消費者100人がデモ

 

山口市でおこなわれた「令和の百姓一揆」トラクターデモ(3月30日)

 「令和の百姓一揆」の山口会場(山口市)には、県内各地の農業者、消費者など約100人が集まった。2台のトラクターと14台の軽トラックがのぼり旗を立ててデモの先導や後方につき、100人の参加者とともに山口県庁前のパークロードを行進した。

 

 デモに先立ち、実行委員会の石田卓成氏は、「ヨーロッパでは何度もトラクターデモがとりくまれており、なぜ日本ではやらないのだろうかと思っていたが、ここ山口県でもトラクターデモをとりくむことができた。地方の第一次産業がなければ東京は成り立たない。地方の現実や思いを政治に届けよう。国のやっていることが一番おかしい。地方・地域が農業を守るしかないところまできている。私たちは精一杯力を合わせて、山口の農業、地元の農業を守っていこう」と呼びかけた。

 

 デモには県内各地の農業者が声をかけあって参加したほか、昨年からのコメや野菜の急激な高騰をきっかけにして数人で連れだって参加した若者、親子連れなども目立ち、市民の「食」や「農業」をとりまく問題への関心の高まりをあらわした。今回初めて山口県内でこうした行動がとりくまれたことへの感慨深さとともに、農業者・消費者みなが一緒に声をあげ、「まともな農業政策がおこなわれるまで」何度も行動していくことが確認された。

 

 トラクターデモののちには、農業者がマイクを握り、「今日は心があたたまった。これだけ農業のことを多くの人が考えてくれている、行動まで起こしてくれるということに、日本の未来はまだまだあると思った。子どもたちが元気で健やかに育てられる世の中にみんなでしていきたい。みんなが笑って過ごせる世の中にしていこう!」「今の農政にはみんな不満を持っていると思う。ここに来てコメが足りないなどふざけるなといいたい。農業政策をまともにしてもらって、もう少しみんなが豊かに暮らしていける農業にしたい。これからも行動を続けていこう!」「生産者だけでなく、みんなと一緒に、共同体としてやっていきたい。つくる人も食べる人も、みんな一緒になってやっていこう」と熱く訴え、大きな拍手が湧いた。

 

野菜も果樹もすべてが危機 生産者の声

 

 参加した農業者からは、国の農業政策によって衰退の一途を辿ってきた農業現場の実態や国に対する強い怒りが口々に語られた。地方では、農業の衰退は地域の衰退と直結しており、食料安保と地方の人々の暮らしを置き去りにする国への怒りでもある。

 

 山口市阿東でコメをつくっている農業者は、「阿東で30町ほどコメをつくっている。これまで減反や転作などコメを減らせといわれ続けてきて、今になってコメが足りないなどあまりにも馬鹿にしている。今は少し値段が上がっているが、それまでは1俵が8000円台という時期もあり、コメをつくればつくるほど赤字だった。そんな状態で誰が農家になろうとするのか。それでも私たちはずっとコメを作り続けてきた。コメが足りない、農家が減ったと今になって騒いでいるが、最初からこうなることはわかっていたはずだ。馬鹿にしすぎている」と語っていた。

 

 阿東町の元農家の男性は、「農家の友人に誘われてきた。農家では食っていけないから阿東町など農業地域はどんどん人がいなくなっている。これでは商売も成り立たない。農家が元気にコメをつくっているから地域は成り立つし、商売もできる。今は耕作放棄地や空き家ばかりが増え、地域そのものがだめになっている。百姓自身の懐に入る金を増やして百姓になりたいという人を増やさないといけない。百姓をやめたから私には関係ないという話ではないため、今日は手伝いに来た」と語っていた。

 

 45町の農地でコメをつくっている山口市の男性は、「コメが安く、このままでは農家が続けていけないという状況はずっと続いてきた。しかし昨年から本格的にコメが足りなくなり、値段もどんどん上がるなかで、農家以外のすべての人が自分のこととして農業政策を考えるようになった。そのような状況のなかで、全国が一斉に立ち上がり農業政策を見直すよう訴えるトラクターデモがとりくまれたという意味は大きい」とトラクターデモ開催への思いを語った。前職では製薬会社に勤めており薬漬けの現実を目の当たりにし、退職して農家になったが、農業もその土地が持つ力以上の生産量を上げようと薬漬けになっていた。そこには農家は規模を拡大し大量生産をしなければ続けていけない実態もあり、こうした“歪み”についても指摘していた。

 

 下関から参加した若手農業者は、「知り合いの農家に誘われて参加した。今、農業問題はコメが中心になっているが、野菜や果樹も含めて農業全体にいえる問題だ。農村では人が減っていっていて、もう5年もたつと中核の人がいなくなる。一農業者として、農業・食料を担っていくという意志を伝えていくことが大事だと思っている。このままでは農業や食料をとても守り切れない。助けてほしい。フォローしてほしい。今までのやり方では行き詰まるのはすぐそこだ」と危機意識を語った。

 

 防府市で露地野菜をつくっている農業者は、「チラシを見て参加した。今のコメのように、食料の値段が上がり続けるということがあってはいけないと思っている。今の農政は“水張りルール”にみられるように、おかしい。“5年水張りルール”は撤廃になるというが、それにかわる(農業支出削減のための)制度がつくられていくという話もある。問題は、なぜ撤廃しなければならないようなルールが農水省で作られているのかだ」と語っていた。

 

主食のコメ確保は国の責務 次の開催望む声多数

 

デモ行進に沿道からも声援が飛んだ(3月30日、山口市)

 長門市の農業者は、「国が農業を捨てている。食料生産は国家の根幹であり安全保障だ。農業は国防だ。安全保障をないがしろにして、国内で農業生産がままならないようにしてなにが国家なのかと思う。日本政府は日本国民のためにやってもらわなければ困る。今回はデモといいつつ整然とした大人しいものだが、フランスなどでは省庁前に堆肥をばらまくなどかなり激しい。本当はそれぐらいやりたい。五公五民で打ちこわしが起きたのが江戸時代だが、現代も同じ状況ではないか」と強く語っていた。

 

 田布施町の農業者は、「重要なのは、なぜ、このような行動をしているのか、しなければならないのか、ということだ。今、山口県の農業者の平均年齢は70歳をこえている。このままではあと10年ももたない。若い人につなげていけないように国がやってきた。今、コメの値段があれほど上がっているが、農家を辞めさせるように、つくるな増やすなとやってきた。そして辞めればそれきり。その結果が今の状況ではないか。日給100円などといわれているが、そういう農家の犠牲の上にコメ作りは成り立ってきた」と話す。若い人が農業をしようと思っても生活ができない。作付け面積の割り当てがあって簡単にはコメをつくることができず、「昨年から“コメはないか”という問い合わせが多く来た。国の主食のコメを減反するのではなく、余ってもいいのだから確保するのが国の責務ではないか。若い人が農業をしないのはそれでは生活できないからだ」と語っていた。

 

 その他の参加者からも参加にあたっての思いが語られた。美祢から来た20代の保育士の女性は、「ネットでトラクターデモを山口でもやると知って参加した。コメがひと月に1000円ほど上がり続けていて、消費者としても切実な問題だ。本当に困っている。農家だけでなく消費者である私たちにも直接関係する問題だと思い、友人を誘って参加した」と語っていた。

 

 下関から参加した母親は、「“食”は子どもたちにもかかわることで、もっと多くの人が関心を持たないといけないと思う。農業だけでなく、世の中なにかおかしいことばかりだと思っていた。だから変えるためにもなにか行動をしないといけないと思い、赤ちゃんは旦那に預けて上の子どもを連れて参加した。安全保障は食料やコメが一番大事だ。食料を守らないといけない」と話していた。

 

 散会のさい、「次の開催はいつですか?」という声が主催者に多くかかっており、今後も全国の百姓一揆に連帯した動きを山口県でも活発化させていく機運の高まりを感じさせるものとなった。

 

■沖縄会場

「農業は離島県の生命線」 軍拡よりも食料安保を

 

沖縄県那覇市でおこなわれた「うちな~はるさ~一揆」(3月30日、沖縄県庁前広場)

 沖縄県那覇市の沖縄県庁前広場でも3月30日、「令和の百姓一揆」の呼びかけに応えて「うちな~はるさ~(農民)一揆」が開かれ、県内各地の稲作、野菜・花作農家、畜産農家など約300人が参集した。参加者は「日本の食と農を守ろう」「未来の子どもたちに国産の食を味わってもらうために」と書かれた幟を掲げ、「全国的な大運動を巻き起こしていこう」との意気込みを共有した。

 

 集会では、稲作、野菜・花作農家、畳製作者、畜産業者などが次々にマイクを握り、食と農の危機的状況を訴えた。

 

 無農薬で野菜を栽培している男性農家は「地域では長年野菜作りをやってきた高齢者の方がやめて耕作放棄地がどんどん増え、収入を得るために宅地に変わっていく。自然災害の多い沖縄では、有機農業も慣行農業も幅広くおこない、多種多様な技術を維持することで食料危機に備えなければいけない。そのためには所得保障が必要だ。いまや農家は絶滅危惧種になっており、ヤンバルクイナよりも守らなければいけない存在になっている」とのべた。

 

 石垣島で畜産業を営む男性は、「石垣島では令和4~5年度にかけて子牛の登録数が1000頭余り減っている。先月、競り値が10万円上がって喜んだが、経費はそれ以上に上がっている。飼料代が上がり、100頭いた牛を40頭に減らし、空いた時間でアルバイトをしながら生計を立てているのが現状だ。農家は40軒廃業し、牛舎や草地を売りに出し、それを外国資本が買ってホテルを建てるのではないかという恐怖もある。農家が食べていける状態をつくるのが国の責任ではないか」と訴えた。

 

 また、「コメや野菜が高く感じるのは、消費者も所得が上がっておらず、税金と同じように光熱費も年々値上がりしているからだ。農家が田畑を手放せば森になり、それをまた耕すにはまた何年もかかる。沖縄では台風が来ればスーパーの棚は空になる。台湾有事のさいには、九州や山口に避難する計画になっているが、減反政策で田畑を潰せば食料の確保すら難しいはずだ。子どもたちの未来を守るために今、大人が動かなければいけない」と決意をのべた。

 

離島など県内各地から生産者が集まり、実情を訴えた(那覇市)

 家畜人工授精師の女性は、「畜産牛の種付けをしているが、この2年で和牛の値段は暴落した。消費税の影響もあり、飼料も資材も暴騰している。担い手の減少もあるが、一番の問題は和牛の価格暴落、そして和牛に手を出せる一般の消費者が少ないことだ。国民を豊かにするために消費税廃止や減税も必要だ。農業を守るために力を貸してほしい」と呼びかけた。

 

 「沖縄の食と農を守る連絡協議会」共同代表の桜井国俊氏(沖縄大学名誉教授)は、「1965年には73%あった日本の食料自給率は2020年には37%にまで低下した。穀物自給率は28%だ。日本の中でも沖縄がとりわけ深刻で、その食料自給率は30%とされているが、サトウキビを除けばわずか6%だ」「沖縄は離島県であるがゆえに、気候変動にともなう災害の発生や戦時の到来により、生命線である食料の輸送経路が断たれる恐れがある。軍事安全保障のみを語り、食料安全保障をないがしろにし、アメリカへの従属の道をひた走る日本の政治こそが沖縄にとっての脅威だ。今回のコメ騒動に象徴されるように、われわれの生命線である食と農の危機が迫っている」とのべ、行動を活発化させる意志をのべた。

 

 主催者を代表して賀数郁美氏(元糸満市議、農家)は、「数年前から稲作を沖縄で復活させる活動をやっている。沖縄ではおコメが作れないと思わされていることに気づいてほしい。田んぼを増やして沖縄の食料自給率を上げていく」とのべ、「今回のはるさ~一揆は、単なる打ち上げ花火ではなく、たたかいの狼煙だ!」と宣言した。

 

■岐阜会場 知事に食料安定供給体制確立を要求

 

岐阜県各務原市でおこなわれた「ぎふ百姓一揆」(3月30日)

 東京の「令和の百姓一揆」に連帯して3月30日、岐阜県各務原市でも「ぎふ百姓一揆」がおこなわれた。

 

 「室内集会だけでは面白くない、行動しよう」と、まずはじめに「桜まつり」で親子連れで賑わう各務原市民公園に集合し、公園の周りの歩道をフラッグ、横断幕を持って行進し、「日本の食を守れ!」「日本の農業を守ろう!」「輸入に頼らず地産地消」などとコールしながら1時間余り歩いた。行進には主催者の予想した倍の60人が参加した。

 

 その後、近くの各務原市総合福祉会館を会場に衆議院議員の坂口直人氏(れいわ新選組)が講演をおこない、約70人が参加した。坂口氏は鈴木宣弘氏の全国での「ごはん会議」の様子も交えながら、鈴木氏の発言や資料を参考にして深刻な農業の現状などを話した。

 

 質疑応答でも「食料の安全保障こそ真の安全保障だ」「若い人たちの就農意欲がみられる。高齢者とのマッチングができないか」「農業ボランティア募集のサイトを立ち上げているが、若い人で公務員をやめて農業をやらないといけないという人がうちにきた。農業ができる環境を国としてつくってほしい」「日本の政治でアメリカ批判はタブーだった。国の安全保障が完全に属国化し、日本企業よりアメリカ企業優先だ」など、国の在り方をめぐっての論議が交わされた。

 

 講演終了後には再び市民公園に繰り出して「リレースピーチ」をおこなった。その後総合福祉会館で、映画「種子(たね)―みんなのもの? それとも企業の所有物?」が上映された。のべ6時間にもおよぶ力の入ったとりくみであった。実行委員の一人の青年は「若い人が農業をやりたいと思える方向にもっていきたい。農産物は安いのが当たり前のようにいわれるが、農業の現状が伝わっていない。若い人に食の大切さがわかるようにしたい。輸入すればよし、金で解決すればよしというが、貿易でも関税とか簡単ではない」と話していた。

 

 翌日31日には実行委員会のメンバー4人が岐阜県庁におもむき、岐阜県知事に「岐阜県は食料の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」をおこなうよう要望書を提出した。「ぎふ百姓一揆実行委員会一同」として「現在の日本は、食料を輸入に依存している。特にWTO体制の下で、食料自給率の低い我が国に対する農産物の市場開放要求はますます強まっている。また生産、輸送、貯蔵の過程で使用された農薬の残留や遺伝子組換え作物、家畜伝染病、抗生物質などによって、食料の安全性への不安が高まっている。さらにこうしたなかで表示の偽装問題も加わり、食に対する不安感は増している」「食の安全、安心と食料自給率向上が緊急の課題だ。県民に安定して安全な食料を供給するため、農林水産業を県の基幹的産業と位置付けることを求める。地域の食料自給率向上を目指すために農業者の経営支援を大胆に断行することを求める」などと要望した。

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。