(10月21日付掲載)
衆議院選(27日投開票)も中盤戦に入るなか、全比例ブロックと全国19選挙区に35人の候補者を擁立したれいわ新選組(山本太郎代表)は、東京、千葉、神奈川、名古屋、大阪、京都、兵庫、福岡など全国各地に山本代表が赴いて街宣活動をくり広げ、連日衆目を集めている。「失われた30年をとり戻す」「消費税廃止」「悪い物価高が収まるまでの現金給付」など独自の経済政策に加え、43兆円もの軍拡を進めながら貧困や災害に苦しむ人々を救うために機能しない与野党の茶番にも斬り込み、「政治をこの国のオーナー(有権者)の手にとり戻す」ため、有権者の約5割におよぶ政治に絶望した人たちの結集を呼びかけている。
山本太郎代表の演説では、物価高による生活苦が広がり、中小企業の事業経営が厳しさを増し、倒産件数が急増している現状に触れ、30年前の消費税の導入後、民主党への政権交代を挟んで税率が10%まで引き上げられ、それに合わせて法人税を減免された大企業は過去最高益を更新して内部留保をため込み、国民の多くが貧困から脱出できない悪循環のなかに置かれている現状を指摘。
また、非正規雇用の緩和によって人間が使い捨ての部品のように扱われ、世代をこえて家庭や社会にさまざまな悲劇をもたらしていることや、企業や団体、宗教団体などに依存した政党によって、一部の利権集団のためだけの横流しがまかり通る政治構造が固定化し、政治の私物化が極まっている問題を提起。国内をさんざん草刈場にし、外資に公共財を売り飛ばし、戦争ビジネスへと傾斜していることに警鐘を鳴らし、このような売国的政治を「戦うふり」で野放しにしてきた主要野党も痛烈に批判している。
「与党にも野党にも緊張感を与える、体を張って徹底的に抗う勢力」を増やし、翼賛化した旧野党に対峙する力を持つ新しい野党を再編成する必要性を訴え、「政治によってつくられた地獄は政治によって変えるしかない。その先頭に立って、風穴を開けさせてほしい。風穴では終わらない、もっと大きな穴を開けさせてほしい」と終盤戦に向けて支持を呼びかけている。
各地の演説会場では、山本氏の演説が始まると、多くの人々が足を止め、引き込まれるように集中して話に聞き入っている。子どもを連れた親や主婦、高齢者、中高校生、大学生、背広姿のサラリーマンの姿も目立ち、聞く側の真剣さも増している。人々はどんな思いを持ち、れいわ新選組の訴えをどう受け止めているのか――街宣の現場で聴衆の声を聞いた。
全世代の底上げが必要 東京・関東
JR横浜駅前で山本太郎の演説に拍手を送っていた30代のサラリーマン(金融業)の男性は、「れいわ新選組の主張が各党のなかで一番まともだと思う。もっとこのような政策や主張をおこなう政党があるべきではないか。立憲や維新など、野党といいながら政策が自民党と違いがない。自分たちの世代は“失われた30年”そのものが人生だ。景気が良い時代を知らないし、好景気を実感したこともない。これほどの経済不況は企業だけの問題ではなく、政治や税制によるものだと思う。応援したい政治家に投票しても落ちるから無駄だと考えたり、投票しても政治は変わらないから選挙に行かないというループで、政治が一部の既得権を守るためだけのものになってしまったと思う」と話した。
「微々たる賃上げがあっても、物価高にはとても追いつかない。自民党は“物価に賃上げが追いついた”というが実感はない。むしろ社会保険料が上がって手取りは減っている。仕事柄、中小企業をたくさん見ているが、みんな経営に苦しんでいる。倒産企業は確実に増えているし、その予備軍といえる状態の企業も多い。残業規制で余計に首が絞まっている。借金をして設備更新をしたところで返済するメドがたたないので古い機械を無理して使っている製造業も多い。一方、富裕層は何もしなくてもお金が増える仕組みになっている。持ってない人はどんなに頑張っても這い上がれない。自民党の裏金問題にしても、あれだけの所得隠しで捕まらないのは普通におかしいし、司法も含めて国家ぐるみのもみ消しだと思う。神奈川2区では菅元首相に対抗できるのは、れいわ新選組しかない。とにかく今の政治に風穴を開けられる存在が必要だし、当初から主張が一貫しているれいわに期待したい」と話していた。
同じく横浜駅前の街宣に参加した50代の女性は、「フリーランスのイラストレーターとして何十年も働いてきたが、今後はいつどうなるかわからない。山本太郎氏が“誰かのためではなく、自分自身のために政治を変える決心をした”といっているのを聞いて、私も“自分のために自分が動かなくてどうするのか”と思い始めた。娘は20代で進路に悩んでいるが、こんなに世の中がおかしくなったのは、自分たちの世代の責任でもあると感じる。格差が広がり、東京都内でもホームレスの数も増えている。他人事ではないし、世の中が悪くなっていくのを見て見ぬ振りはできない」と話した。今では母娘で、れいわ新選組の宣伝活動に参加しているという。
たまたま通りかかって街宣に足を止めた60代の女性は、演説を聞いて「政治に新しい風を吹き込む熱量を感じた。これだけ人の心を引きつける演説をする政治家は見たことがない。石破さんには期待していたのだが、自民党内のしがらみには抗えないことがすぐにわかってしまった。今の経済を見ていると、私たちより下世代の生活がますます厳しい時代になっていくと思う。政治の世界では“少子化の解決”といいながら、子育て世代にわずかな補助をし、そのぶん高齢者の社会保障を削るなど、世代間を分断する人気とり政策が多い。生活の苦しさは全世代共通の問題だし、若い人もいずれ年をとる。全体の底上げが必要だ。そのためにも消費税の廃止というのは理にかなっていると思う」とのべた。
母親と一緒に横浜駅前の街宣に訪れた50代の女性は、「東京で働いているので、新橋SL広場で山本太郎さんが一人で街宣をしていたころから見てきた。れいわ新選組はロゴも派手で、初めは不信感を抱いていたが、今では自民党政治を終わらせるために必要な党だと思うようになった。立憲民主党ができたときも応援してきたが、結局裏切られた。今では野党の多くが、自民党と変わらない存在になってしまっている。戦争が近づいているという危機感があるので、私は防衛費増額に反対なのだが、それに体を張って真っ向から反対したのは、れいわ新選組だけだった」と話した。
続けて「私は20年前までフランスで暮らしていたが、あちらでは日本人ほど労働していなくても日本よりも暮らしは豊かだった。芸術文化に対しても手厚い公的補助があり、第一日曜日には全美術館が無料になったり、バカンス時期には無料映画祭もある。社会福祉や文化的生活を国民に保証することが国のプライドのようになっている。日本ではどれだけ身を削って働いても半分は税金でとられ、みんなが貧乏している。この差は何なのかとずっと思ってきた。れいわ新選組は庶民の苦しみを背負って国政を変えようとしていると思う。とにかく自民党中心の政治に大穴を開けてほしい」とのべた。
東京・JR昭島駅前での街宣に幼児を連れて参加した母親は、「そろそろ政権交代をすべき時期だと思う。弱者のための政治にシフトしてもらわなければ、切り捨てられる人たちが増えていく。20歳からずっと選挙には行っていたが、これまで自民党や維新などに投票し、左寄り政党には興味が湧かなかった。でも、自分の子どもが障害(自閉症)を持って生まれてきたことで、この社会でいかに弱者が見捨てられているかを実感した。福祉制度は誰からも教えられないし、自分で情報を集め、自分で申請しなければ支援制度があることすら知ることができない。障害児の公的な受け皿は少なく、民間のフリースクールなどに通わせると、たいへんなお金がかかる。れいわ新選組の積極財政に共感する。社会的弱者を救うための財政支援を拡充してもらいたい」と話した。
同じく60代の女性は、「買い物の途中で通りかかっただけだが、演説の熱量に引き込まれた。消費税廃止が本当にできるのか? と思っていたが、山本さんのいうことには共感できる。頑張ってほしい。とにかく食料品から値上がりして日常生活がたいへんだ。こんなときに国会では与党も野党も国民の側を見ず、弱っている人に何の手当もしない。政治には諦めの気持ちがあったが、演説を聞いて、それではいけないと感じた」とのべた。
もう「第二自民党」はいらない 近畿
近畿では、JR塚本駅前(大阪市淀川区)、大阪駅御堂筋北口、瓢箪山駅前(東大阪市)、あべのキューズモール前(大阪市天王寺区)、京都・河原町ガーデン、兵庫・JR尼崎駅前、阪急三ノ宮駅前(神戸市)などで街宣をおこない、どこでも人垣が生まれ、集まった人々が真剣に話に聞き入った。
山本氏が「今のような与党と野党の茶番では、この国が壊れるスピードを緩めることすらできない」「こんな状態でどうやって政権交代をするのか!」と国会の内幕を暴露すると「そうだ!」「頑張れ!」の声があちこちから飛んだ。
大阪・JR塚本駅前での山本太郎の演説に足を止めて聴いていた30代の男性サラリーマンは、「今の自民党政治に風穴を開ける突破力を感じる。彼には私たちと同じ怒りがある。今の政治に第一に求めるのは、やはり経済政策だ。働いても働いても、とられるお金が多く、税負担が重い。夫婦共働きで子どもを育てているが、物価高で日々切り詰めて生活している。自分は製造業(大手プリンター機器)で働いているが、海外での売り上げが好調でも国内は収縮の一途。国内で売れないから日本向けの機器を作らなくなり、原材料の仕入れ値も上がっているので、工場ごと海外に移転していくという悪循環になっている。日本国内で消費購買力が弱り、経済活動が縮小していることが問題だと思う。まずみんなが使えるお金を増やしていくためにも消費税廃止のインパクトは大きい」と語った。
また「大阪では維新に期待していたが、結局は自民党が維新という看板を付け替えただけだった。自民党と同じように利権集団化して、みんな幻滅している。自分は山本太郎に期待していたので、今日はたまたま遭遇できてうれしい」と高揚した面持ちで話していた。
塚本駅前でチラシを配っていた40代の女性は、「コールセンターでパートで働いている。当初は、れいわの街宣は“怖いな…”と思っていたが、対話型の集会を見てすばらしいと思い、寄付をしたのをきっかけにして情報を得るようになり、今回からボランティアに参加している」とのべた。「政治は弁護士や官僚などエリートが中心で、私たちのような素人は蚊帳の外だ。でも、れいわ新選組は、さまざまな社会問題の当事者を政治の舞台に送る。二人に一人が選挙に行かないという日本の異常事態を変えるには、政治を変えるのは自分自身だと思って行動することから始まると思う」と意気込みをのべた。
小学生の子どもを連れた母親は、「組織のバックになにもなく、しがらみもないれいわ新選組に期待している。だからこそ国会でバシバシと追及できるし、それが他の野党との違いだ。最近まで保育士をしていたが、保育士は他業種と比べて10万円も給料が安く、ほとんどボランティア状態だ。しかも大阪維新は、その教育福祉予算を削る。大阪府が子育て世代支援として1人5000円分のお米券を配る施策をやっているが、そんな微々たる支援のために申請するのが腹立たしくて申請しなかった。それ以前に、子どもが給食のパンを食べるとおなかを壊す。弁当に切り替えたら精神的にも安定をとり戻した。いくら給食を無償化しても、輸入小麦で粗悪なものでは意味がない。親としては、子どもの食の安全にとりくんでもらいたいと感じている」と要望を口にした。
JR大阪駅御堂筋北口で演説を聞いていた男性(大学職員)は、「自分は保守の立場だが、経済政策は、れいわ新選組が一番まともだと思う。これだけ景気が冷えこんでいるときに増税をすれば、国内はもっとズタズタになる。消費税廃止くらいやらないと話にならない。コロナ禍から学生が授業料を払えず、支払い遅延のお願いに来たり、奨学金を増額して多額の借金を抱えたりすることが増えた。自民党は大企業、経団連、財務省など高所得者の側にしか立たないので、自民党自身が変わることはもう不可能だと思う。裏金づくりには熱心だが、国民のことは何も見えていない。大阪では維新がそれにかわることが期待されたが、自民党と同じ利権構造をそのまま自分たちに付けかえただけだった。IRカジノ、万博、メガソーラー事業などの問題が山積している。政治は何かにつけて増税、増税といい、外交安全保障問題も増税のために利用しているようにすら見える。まずは国民の生活を豊かにする経済政策をやってもらうために、れいわ新選組に期待したい」と話した。
社会保険労務士の男性は、「今、多くの人が、生きていけるか、生きていけないかという瀬戸際にある。これ以上の大増税を許したら中小企業はもたない。飲食店などは売上に対して3・9%ほどの利益しかないのに消費税を10%もとられるのだから、まるで納税のために働いている状態だ。こんなものは税制として成り立っていない。自分が暮らしている住吉区でも中心商店街はシャッター通りになり、最近アーケードも老朽化で撤去された。なじみの飲食店、喫茶店、銭湯…どんどん店が潰れている。自民・公明・維新などの利益共同体の繋がりは強固だが、その外側の人たちは、みんな苦しんでいる」と話した。
さらに「共産党はウクライナ戦争の支援に諸手を挙げて賛成し、反戦の理念を捨てた。国民民主党は“自民党のアクセル”を自称し、維新は“第二自民党”、立憲民主党は“隠れ自民党”だ。戦争の道に突き進まないためにも、れいわ新選組に頑張ってほしい」と期待を寄せた。
東大阪市・瓢箪山駅前で小学生の子どもを連れて街宣を聞いていた母親(30代)は、「一人親世帯なので、子どもが病気をしたら仕事を休まなければならず、その月は収入も減る。だから節約を心がけているが、米の値段も3割以上も上がり、日々の生活は大変だ。大阪府(大阪維新)は小学校の給食費無償化を実績にしているが、東大阪市では無償化は5、6年生だけ。そのように地域によって差がある。学童保育も土曜日は利用料が加算され、月額1万円もかかる。これまで政治に関心は薄かったが、親になって子育てにこれほどお金がかかることを知り、政治の力でみんなが等しく受けられるサポートを整備してもらいたいと思うようになった。山本太郎さんが、庶民の立場に立って政治の世界で挑戦していることを頼もしく思う。これからも突き進んでほしい」と感想を語った。
大阪市天王寺・あべのキューズモール前で山本太郎の演説を聞いていた男性(製造業労働者)は、「まるで自分が思っていることをかわりにいってくれているように感じた。私たちのかわりに怒ってくれている。これまでれいわ新選組についてはあまり関心がなかったが、思わず拍手を送った。今、自分が働いている企業でも新規の注文が減り、国内向けも海外向けも需要が落ち込んでいる。職場には派遣労働者が多く、以前は若い人中心だったが、今では60、70代の人も増えている。給料が上がるわけではないが、貯蓄もなく、仕事をしなければ生きていけない。食べていくのがやっとだ。ボロボロになるまで働いてがんになってやめていく人もいる。人間の扱い方が使い捨てのように雑になっている」と憤りをのべた。
「これまで政治の世界に自分たちの声が届くとは思っていなかった。れいわ新選組は今は少数派だが、まずは野党の中で意見を通していくことで政治を変えていくことができるという話に希望が持てる。そこに賭けたいという気持ちになった」と期待をこめて語っていた。