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声をあげる秋田の低周波被害者 風力発電に囲まれた住宅地で起きていること 秋田県由利本荘市を訪ねて

(9月25日付掲載)

秋田県の道路沿いに林立する巨大風車群(秋田県潟上市)

 「風力発電先進地」と宣伝される秋田県では、現在、陸上で280基以上の風力発電が稼働しており、最近では秋田港・能代港の港湾内で合計33基の洋上風力発電が商業運転を始めた。加えて秋田県沖の一般海域では、国の洋上風力促進区域に全国最多の4海域が選ばれ、今後200基近くの洋上風車が建設されることが取り沙汰されている。さらに由利本荘・にかほ市沖は国の浮体式洋上風力の実証実験場になろうとしている。こうして住民たちが巨大風車にとり囲まれた生活をよぎなくされるなか、風力発電の低周波音による健康被害を訴える人が増え、由利本荘市で2022年、被害者の会である「風力だめーじサポートの会」が結成された。国は風力発電と健康被害の因果関係を認めず、事業者はもうけのために風力発電建設をやめようとしないが、その下で住民たちはどのような状況に置かれ、なにを訴えているのか。本紙は現地を訪れて取材した。

 

◇      ◇

 

 秋田県の南部にある由利本荘市やにかほ市の海岸沿いを車で走り、さらに北へ秋田市、潟上市、能代市と上っていくと、巨大風車と人々の生活圏があまりにも近いことに驚く。

 

 山を見れば、尾根沿いに風車が林立している。にかほ高原のような観光地も、舗装した道路が風車の真下を通って展望台につながっており、おかげでキャンプ場は使えなくなった。

 

 海には海岸沿いに風車が10基、20基と建っている。秋田県の海側は大昔は砂丘であり、強風が吹くため、江戸時代に防砂林をつくるまではそこに人が住むことはできなかったそうだ。その風を利用しての風車だという。

 

 道路を走っていても、街中で突然、巨大風車が出現することも少なくない。由利本荘のコメ作りの中心地・子吉平野に水を供給する溜め池の周辺にも、あちこちに風車が建っていた。

 

 これだけ風車に囲まれているのだから、身体への影響が出ないはずがない。2022年9月、風力発電の低周波音による健康被害を訴える人たちが集まって「風力だめーじサポートの会」を結成し、由利本荘・にかほ市の風力発電を考える会とともに記者会見をおこなった。

 

 記者会見でだめーじサポートの会は、「事業者や市役所への私たちの訴えは、なにもなかったように無視され続けている。しかし、泣き寝入りなどしたくない」「事業者に風車の稼働を止めてもらうか、撤去してもらうしかない。みんなが安心して生活できる環境をとり戻したい」と訴えた。

 

 今回、だめーじサポートの会の5人のメンバーに集まってもらい、健康被害の実情や思いを聞いた。

 

話を聞いた「風力だめーじサポートの会」のメンバー。左から道川、笹、佐藤、畑山の各氏

 

■低周波が引き起こす動悸や胸部痛がいまだに続く


    由利本荘市 道川 誠二(71歳)

 

 私は、由利本荘市内の日本海に近い団地に住んでいる【地図参照】。2012年に子吉川河口の本荘マリーナに本荘風力発電所(1990㌔㍗、1基)ができた。私の家から1・9㌔のところだ。そして2017年、その南側に電源開発の由利本荘海岸風力発電所(2300㌔㍗、7基)ができた。これは私の家から2・4㌔だ。

 

 加えて2019年の秋頃に、今度は自宅から北東方向約2㌔の三望苑で、由利本荘第三風力発電所(1990㌔㍗、1基)と由利本荘第二風力発電所(1990㌔㍗、1基)が稼働し始めた。

 

 初めはあまり気にしていなかったが、年が開けて2020年2月17日、夜中2時頃に目が覚めたら、突然グウングウンという音が聞こえてきて、急にドキドキした感じになり、血液が頭にドクドク流れ、血管が破れるんじゃないかというような感じがしばらく続いた。少しして収まったが、朝まで眠れなかった。次の日も夜中に目が覚めたら同じような音が聞こえ、ドキドキ感があった。それから気になって夜寝られないし、寝ても1時間か1時間半で目が覚めるようになった。

 

 その年の6月、南西の風が強かったときだが、そのときも音が聞こえて2日間ほとんど寝られなかった。そこで由利本荘市長に手紙を書き、「事業者に風車を夜間だけでも止めるようにいってくれないか」と訴えた。その後、市職員と事業者が来たが、低周波音による健康被害についてはわかってもらえなかった。

 

 同年9月初め、耳鼻咽喉科の病院で聴力検査をしてもらった。私は若い頃、突発性難聴になって左耳はまったく聞こえない。聞こえる右耳は、高い周波数は歳相応に聴力が落ちているが、低い周波数はそれほど落ちていない、との検査結果だった。睡眠導入剤と精神安定剤を処方された。

 

 しかし、その後も音を強く感じる日は眠れない。9月末、2回目の受診で病院に行ったときのことだ。待合室にいると急にドキドキし始め、調べてもらったら血圧がかなり高くなっており、内科に行って心電図を調べてもらうようにいわれた。内科では上室性期外収縮(不整脈)と診断された。血液検査をしてみると、ドーパミンやアドレナリンの数値が異常に高くなっていて、ストレスによる緊張が原因といわれた。

 

 その後も睡眠不足は続いており、寝ているときグウングウンと低周波音が強く感じられるとドキドキすることが多くなった。胸のあたりがぐうっと押された感じがして少し痛んだり、頭がズーンズーンと痛むこともある。また、頻繁に肩がこるようになった。

 

 風力だめーじサポートの会をつくった2022年の9月頃、夜中に目が覚めて血圧が異常に高くなっていたので、内科の医者に行った。睡眠導入剤と血圧を下げる薬を処方され、その1カ月後にはもっと強い薬をもらったが、やはり風車の音が気になって目が覚めることが多くあった。睡眠導入剤もだんだん効かなくなってきて、逆にそのせいで具合が悪くなるようにも感じ、それ以来一切のんでいない。

 

 市役所生活環境課が「遮音効果の高い耳栓を試してほしい」というので、それを借りてグウングウンという音が聞こえる夜中に試してみた。耳栓をすると低周波音の振動だけが聞こえて、しないときより気になって眠れなくなるようだった。今は、ラジオを聞いているとマスキング効果で寝られるよとアドバイスを受け、そうしている。

 

 そういう症状は、自宅を離れると出なくなる。だからあちこち安い温泉を捜して2、3日泊まりに行ったり、寝袋を持って車で遠くに行き、車中泊をしている。音が気になるのは冬が多く、車中泊は夕方から出掛けるのだが、吹雪の中を出て行くのがいやで、それでも遠くに行くとちゃんと寝られて帰ってこれる。

 

 具合は年々悪くなっている。前は寝ているときが多かったが、ここ1、2年は日中でも、胸が痛いし苦しい。そのとき家から南西側を見ると、風が強くて海岸の風車がぐるぐる回っていた。最近では腸の具合が悪いし、脈が飛ぶことがある。不整脈なのだが、寝て起きてドキドキしたなと思ったら、突然脈がピタッと止まった。びっくりしたが、10秒ぐらいで脈が出始めた。

 

症状と時間や風速を日記に

 

 海岸の風車も三望苑の風車も、どちらも家から約2㌔のところにあり、両方にはさまれた真ん中に私の家がある。だから両側から低周波音が来ているのではないかと思う。南西の風が相当強いときには風車が回る騒音が聞こえることもあるが、多くがグウングウンという低周波音だ。ブレード(羽根)と支柱が交叉するときに生まれる衝撃音で、支柱の振動が空気振動で伝わり、頭にグウングウンと響くようだ。

 

 さっき病院の待合室で気分が悪くなったといったが、後で調べたらその病院も海岸の風車と三望苑の風車にはさまれており、どちらも病院から2・7㌔とまったく同じ距離だった。

 

 ところが、夏になるとそういう症状は出ない。私は4年あまり前から、風車の低周波音によってあらわれた症状を日記に詳しくつけている【表1】。そこから「体調異常を感じた日数と比率」の表をつくり、それに私の健康被害を引き起こしていると思われる三事業者の風車の「稼働状況(3社の平均値)」を加えて表にした【表2】。すると、風が強く風車がフル回転している冬場に体調異常を引き起こす日が集中しており、ほとんど風車が回っていないかゆっくり回っている夏場は体調異常がほとんどないことがはっきりした。また、冬場でも風が強く風車がフル回転している日は体調異常になるが、風が弱く風車が回っていない日はそうでもない。

 

 今年1月、このデータをもって市役所生活環境課および三事業者との会合を持ち、「私の体調異常は明らかに風車の低周波音が引き起こしているのだから、夜間だけでも風車を停止してもらいたい」と再度申し入れた。しかしその後、一切音沙汰がない。

 

 低周波音の測定器を借りて枕元に置き、体調異常をきたしたときの音の大きさを測ってみた。スマホのアプリはA特性(人間の耳にどう聞こえるかに配慮されたもので、耳に聞こえない低周波音はカットされる)に設定されているが、この測定器はZ特性で、補正をかけない自然の音が測定できる。

 

■自分は風車音で苦しむが妻には全く聞こえていない


       由利本荘市 佐藤 裕 (71歳)

 

釜谷浜海水浴場に1500㌔㍗の風車17基が立ち並ぶ八竜風力発電所(秋田県三種町)

 この写真は、西北西の風19・8㍍という強風が吹き、ナセルが1分間に18回転したときに撮ったものだ。2023年1月25日午後9時30分頃だ。測定器は83・6デシベルと極めて高い値を示した。とくに1~4ヘルツという低周波領域で高い数値を示している。一方、スマホは34・5デシベルを表示した【写真参照】。実際にはこうした強い低周波音が出ているのに、耳に聞こえないのだから身体に害を及ぼすことはないと主張しているのが環境省だ。

 

 私は、由利本荘市の子吉川沿いに住んでいる。道川さんと同じで、風車は河口に本荘風力発電所1基と、その南側の由利本荘海岸風力発電所7基がある。それまでは風車の音をあまり意識していなかったが、南側の7基が2017年に稼働し始めたあたりから、うるさいと感じるようになった。その風車は家から2・5㌔のところにあり、家から真っ直ぐ海まで見渡せるので、今日は何基稼働しているのかもわかる。しかし、初めはなんの音かわかっていなかった。空調の室外機の音かなと思っていた。

 

 決定的に気づいたのは、私はよく川沿いの堤防を散歩するのだが、そのときだ。外で聞いた音と同じような音が家の中でする。換気扇が室内でクルクルクルとずっと回っているような音だ。あるいはもっと沈んだ音だ。そのとき、エッ? と。そこからいろんな話を聞いてだんだんわかってきた。その日の風の強さや風車の回転数で違うが、毎日、寝ているときも音にさらされている。静寂というものがない。だが、本荘を離れて花火で有名な大曲に行くと、なんともない。

 

 その後2019年になると、北の三望苑に由利本荘第一・第二・第三風力発電所ができた。距離は家から2・5㌔のところだ。その頃から自宅でも、仕事場の事務所(風車から3・5㌔)でも、室内にいるときブゥーンブゥーンという音がうるさくてわずらわしい。

 

 今年の夏は暑かったので、午後、疲れから30分とか1時間、昼寝をした。ベッドに横たわると、立っているときよりもうるさい。昼寝のときはすごく意識する。今の季節は南西の風が多いので、風車からもろに家に来る。とくに静かなとき、風車の音が響いてくる。

 

 私は左耳が突発性難聴で聞こえない。右側も老人性で聴覚の機能が落ちている。しかし、風車の低周波音はよく聞こえる。

 

 ただ、同居している妻は、風車の音はまったく聞こえないという。「きょうは朝からうるさいな」というと、怪訝な顔をする。低周波音問題の難しさはそこで、聞こえる人には聞こえるが、聞こえない人には聞こえない。だから黙殺される。

 

■病院にも市役所にも相手にされなかった


      由利本荘市 笹 耕市 (77歳)

 

 私は風車のそばに行くと頭痛がする。私は秋田市から由利本荘市に6年前に移住してきた。それまでは風車の健康被害についてはまったく知らなかった。

 

 たまたま私の家から1㌔離れたところに西目川があり、その河口でジャスパーなど海のきれいな石がとれる。ここは結構有名で、他にも石をとりにくる人がいる。ここに移住してから毎日のようにそこに石をとりに行っていた。

 

 ここに風車が2基、稼働している(西目風力発電所、1250㌔㍗と600㌔㍗)。3カ月ぐらいして突然、そこに行くと頭痛がするようになった。私はそれまで頭痛なんかしたことがなかった。娘も一緒に行っていたが、「頭が痛いのは風車のせいじゃないかな」というと笑った。しかし娘もここに来ると、8月なのに花粉症のように鼻水をダラダラ流す。おかしいな、と。そして風車から離れると私も娘も症状がなくなる。山側の自宅に戻るとなんともない。その後、怖くてそこには行けなくなった。

 

 医者に行こうと思ったが、同じ風車病に苦しんでいる人から「精神安定剤を出されるだけで、症状を話しても無駄だよ」といわれ、やめた。

 

 今後、洋上に巨大な風車ができた場合、自宅まで被害が及ぶのではないか。それがすごく心配だ。

 

 以前、風力発電事業者レノバが風力発電の説明会をやったとき、私は手をあげて自分の症状を話した。するとその後、秋田市の別の風力発電事業者の社員が来て、「よくそういう話、聞きますよ」と同情してはくれるが、その後なにも音沙汰がなかった。また、由利本荘市役所の職員が保健師さんを連れてきたが、「気の病じゃないか」といっていた。

 

■風車が回ると私も娘も鼻血が止まらない


    にかほ市 加藤 佳子 (仮名、40代)

 

 私の家はにかほ市の海端に建っていて、村落のはずれの家だ。私の家を取り囲むように3基の小型風車が、60㍍、80㍍、120㍍のところで稼働している。3基が半円を描くように建っていて、その中心部にあるのがうちだ。

 

 うちには祖父、夫、息子の男性3人と、障害者である祖父の妹、私、娘の女性3人、全部で6人が暮らしている。小型風車はそんなに害はないのかなと思っていたら、7年前に稼働し始めてから、女性3人は鼻血が出るようになった。めまいと頭痛は日常茶飯事で、とくに雨風の強い日はグラグラする。

 

 祖父の妹は「また鼻血が出てきた。風車回ってるでしょ。うるさいもの」といっていた。祖父は耳が遠く、テレビの音量もまるで爆音のように大きくしないと聞こえないのに、「風車の音がうるさくて眠れないんだよ」といっていた。しかし、主人と息子はまったく気にならないという。

 

 その後、祖父は亡くなった。祖父の妹は「気持ち悪い、気持ち悪い。ここには住んでいられない」というようになった。それで3㌔ほど離れた特養に入れた。今はとても元気で暮らしている。鼻血も止まった。

 

 10歳の娘と私は夜中、ふっと目が覚める。すると、ヒンヒンヒンヒンという、ちょっと高くて耳障りな音、ずっと聞いているとイライラしてくるような音が響いてくる。

 

 また、家の玄関を入ると、頭を抑えつけられるような感じがする。別の場所で、国道をはさんで同じ会社の小型風車が2基稼働しているところがあるが、そこを通ったときも同じ症状になった。「うちの玄関と同じだ。やっぱり風車なんだ」、と。

 

 低周波音の健康被害は、「感じる」と気づいたときからどんどんひどくなっていくようだ。娘は3歳のときから風車とつきあってきた。事あるごとに気管支炎にかかるし、朝起きれば「鼻血が出た」という。最近ではひどい筋肉痛で、「歩くのがつらい」という。しかし娘には、鼻血の原因は風車だといっていない。安心できる家のはずが、恐怖の家になってしまうから。

 

 耳がかゆくなり耳鼻科に行って診てもらうと、聴力が落ちているといわれ、「うるさいところで生活していますか?」「工場で働いている?」と聞かれ、「工場で聞こえているような音が聞こえなくなっている」といわれた。ほとんど家で生活していたのに。また、家ではめまいがするが、お医者さんに行くとなんともないので、精神安定剤を勧められた。私は精神的におかしな人なんだろうか、という扱いだった。

 

 市役所を通じて事業者に電話してもらい、私たちの症状を伝えてもなしのつぶてだ。風車を建てる前、事業者は「風車を建ててみなさんに喜ばれている」と宣伝していた。

 

 引っ越そうかとも考えたが、主人が「今の秋田の状況ではどこに引っ越しても風車ができるよ」といった。新しい被害者が出ないようにするのが私の役目だと思って、会の活動をやっている。

 

◇       ◇

 

被害者の聞き取りをして 市議・あべ十全氏

 

 その後、由利本荘市の市議会議員・あべ十全氏の案内で、だめーじサポートの会代表の畑山昌子氏と一緒に道川氏の家の周辺を回ってみた。

 

 子吉川河口の海岸にそって、マリーナに一基、南側に7基、見上げるように大きな風車が建っていた。周辺は住宅街で、風車までの距離が近い。海側は平地で、山側にしばらく進むと、道川氏の団地があるところは急な坂になっている。海の方から、つまり西から風が吹くと、団地までさえぎるものがない。

 

 あべ氏はこの間、低周波音の被害者から聞きとりをおこなってきた。自分は風車病ではないかと疑う人から、相談が持ちかけられることも増えたという。海岸の風車から1・5㌔のところに住む70代の女性から相談をもちかけられたときのことを、こう語った。

 

 「この女性は、耳鳴りがしたり、身体がこわばったり、痙攣(けいれん)したりと、いろんな症状を訴え、ずっと具合が悪いといっていた。また、夜中に洗濯機が回るような音がするといっていた。しかし医者に行ってもなにが原因かわからず、精神病と診断され、精神安定剤や睡眠導入剤などの薬を処方されて、こりゃだめだということで相談に来た。聞いてみると、他の家族にはそんな症状は出ていない。その女性があんまり症状を訴えるものだから、息子夫婦や孫たちと仲が悪くなって、結局誰も面倒をみないという話になり、その女性は生活保護を申請して風車から3㌔離れたアパートに引っ越した。家族とは離ればなれになったわけだ。しかし、引っ越したら体調がよくなった」

 

 「市役所に行っても病院に行っても、“高齢による健康の不具合”といった木で鼻をくくったような対応で、それで仕方ないと思ってしまい、みんな我慢する。とくに年寄りは…。一般市民はものがいえなくなっている。奥さんに話を聞いていると、ご主人が“お前はそこまでしゃべらなくてもいいべな”というし、奥さんが怒られる。簡単ではない」

 

 「由利本荘には国立病院機構あきた病院がある。昔は国立療養所といっていた。らい病から始まった病院で、今は筋ジストロフィーやALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病患者の病院だ。そこが洋上風力が建てば真正面になる。1基あたり出力1万2000㌔㍗、高さ250㍍、支柱の直径8㍍の巨大風車が2㌔沖に65基建つが、その低周波振動があきた病院に伝わる可能性がある。山側にはすでに多くの風車が稼働しているし、陸上と洋上の累積的影響が大きな問題になりそうな気がする」

 

 「最近、だめーじサポートの会の会員が近所の人から、“この頃、風車の音がうるさくて。なんとかならないか”と相談を受けるようになったという。去年まではそんなことはなかったのに、と。風車の苦情を受け付ける窓口があれば相談しやすいのかもしれない。被害者の会が立ち上がったことは大きいと思う」

 

 別れ際に、だめーじサポートの会代表の畑山氏はこうのべた。

 

 「私たちが目指しているのは、風車で苦しんでいる市民の相談窓口になることだ。苦しんでいても原因がなにかわからない人がいるので、“その体調不良はもしかして風力発電の低周波音かも知れないよ”と知らせながら、いつでも相談にのる。声をあげられない被害者をつなぎ、これ以上新たな被害者が出ないようにするのが私たちの目的だ」

 

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