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「乱立する洋上風力の安全性を問う~能登半島地震から見えた海底活断層の脅威」 札幌市で住民団体や研究者がシンポジウム

秋田市の秋田湾沿いに林立する巨大風車

 シンポジウム「北海道の海に乱立する洋上風力発電の安全性を問う~能登半島地震から見えた海底活断層の脅威~」が7月21日、札幌市の北海道立道民活動センター「かでる2・7」大会議室で開催された。北海道風力発電問題ネットワークと北海道自然保護協会の共催でおこなわれたもので、道内各地から100人以上が参加した。シンポジウムは、第1部「能登半島地震から見えた海底活断層の脅威」で、北海道大学名誉教授の谷岡勇市郎氏と防災推進機構理事長の鈴木猛康氏が講演をおこなった。第2部「洋上風力発電の安全性を問う」では、北海道石狩市、秋田県、山形県の3つの地域で洋上風力計画をストップさせるために奮闘している住民団体から、低周波による健康被害をはじめ現場で直面している問題の報告があった。北海道大学大学院工学研究院助教の田鎖順太氏と日本野鳥の会自然保護室主任研究員の浦達也氏が専門家として提言をおこなった後、総合討論では、この運動をどのように広げていくかが論議された。以下、各発言と討論の要旨を紹介する。

 

日本海の海底断層にともなう津波について


      北海道大学名誉教授 谷岡勇市郎

 

 日本海側のM8クラスの巨大地震としては、1993年の北海道南西沖地震、その前が1983年の日本海中部地震、さらに1960年の新潟地震、1940年の積丹地震、1833年の庄内地震が起こっており、今回能登半島地震が起こって北海道から能登半島までがつながったことになる。これらはいずれも日本海東縁部のひずみ集中帯と呼ばれる地域で起こっている。ここは大きな地震が起こりやすい地域だ。

 

 日本列島の周辺では4つのプレートがせめぎあっているが、そのうち太平洋プレートは日本列島の下に向かって年間8㌢ずつ沈み込んでいる。400年間隔では30㍍沈み込むことも可能で、それを解消するためにM9クラスの巨大地震をくり返すことになる。一方、日本海側では、ユーラシアプレートの沈み込みは年間1㌢にも満たず、400年間隔でも沈み込みは4㍍程度で、400年に1度、M8クラスの地震が起こればひずみが解消されることになる。

 

 海洋研究開発機構が2008~2012年にかけて、日本海東縁部のひずみ集中帯の調査観測研究をおこなった。続いて2014年に国交省の海底断層ワーキンググループが報告書を出し、大規模地震の震源となる海底活断層をトレースした。それを見ると、日本海側の北陸沖から東北沖、北海道沖にかけて海底活断層が連なっていることがわかる。北海道沖でも20をこえる断層があると推定した。

 

 ただ、日本海側のプレートの沈み込みは年間1㌢程度なので、500~1000年に1回しか動かないと推定される。いつ起こるかわからないが、いったん起こるとM8クラスの大きな地震になるといわれていた。

 

 2013~2020年にかけておこなわれた文科省の日本海地震・津波プロジェクトでは、海底活断層の数はさらに増えた【図1参照】。

 

 

 また、国土地理院が衛星データの解析から明らかにしたところでは、能登半島地震では西側の輪島市で4㍍の隆起が起こり、西方向に2㍍動いた。また東側の珠洲市では2㍍の隆起が起こり、西方向に3㍍動いていた。これを使って断層がどこにあってどれぐらい動いたかを推定している。動いた断層は、もともと2023年までの調査で海底活断層としてわかっていた断層だ。

 

 2020年に出された論文では、能登半島は過去にも巨大地震によって数㍍の隆起が起こっていたことも示されていた。過去数千年間を調べたところ、900~1400年の周期で巨大地震が起こっていた。

 

 さて、能登半島地震で亡くなった人は200人をこえるが、低体温症・凍死で亡くなった人が32人(約14%)だ。正月に地震が起こり、家がなくなって、マイナスの気温ではせいぜい10時間ぐらいしか耐えられない。これが能登半島でなくて北海道の真冬だったら、この程度ではすまない。マイナス10度のところに放り出されてどれだけ耐えられるか。

 

 能登半島地震と同じ地震は北海道でも必ず起こる。国土交通省が調べている津波断層モデルを見ると、能登半島と同じように沿岸に沿って断層が連なっている。また海側にたくさん断層があるが、これが動くと津波の被害となる。日本海沿岸は津波のリスクが高い。

 

 しかし、確率に直すと400年に1回などとなり、低くなってしまう。能登半島も確率でいえば低かった。いつかわからないが大地震は起こる。海底活断層があることがわかっているのだから、地震が起こることを想定して対策を考えないといけない。

 

 海底断層が動いたときの津波浸水想定区域を見ると、風力発電が稼働している石狩市の沿岸部には数㍍の津波がくる可能性がある。さらに江差町沿岸は石狩市より断層に近いため、津波が数分で到達する。

 

 能登半島沖地震から考えると、日本海側は同じような断層がたくさんあり、それが動くと同じような地震・津波の被害が起こる可能性がある。

 

能登半島地震の教訓に見る洋上風力に必要な安全性


        防災推進機構理事長 鈴木猛康

 

 7世紀から8世紀の100年間に4回の遷都があった(藤原京→平城京→長岡京→平安京)。それはなにを引き起こしたか。都の建設のために大量の木材を必要とし、奈良盆地から大木が消え、今でも奈良県は水害常習地だ。

 

 増災とは、人為的行為・施策によって災害発生の要因を大幅に増やし、大規模災害の発生リスクを高める行為のことだ。国土・都市開発やエネルギー政策といった国や自治体の施策とのトレードオフで発生することに気をつけなければならない。いったん森林を伐採してしまうと、土石流は止められない。そして事前におこなう災害に強いまちづくりを事前減災と呼び、私はこれを提案している。

 

 能登半島地震が起こった後、風力発電や太陽光発電の被害状況調査をおこなった。珠洲市の珠洲第2風力発電所(2008年12月稼働)では、風車のブレードの1枚がタワーの真上にきた位置で、垂直に折れ曲がっていた。また、志賀町の酒見風力発電所(2007年2月稼働)では、これも真上にあったブレードが破断して、一部が20㍍飛んでいた。ブレードは人間と比べても巨大なものだ。

 

珠洲第2風力発電の破損したブレードと同型のもの

 ブレードが回転しているとき、地震が起こると、ストッパーが地震を感知して風車の回転を止める。そのときブレードの1枚が垂直の状態で停止したら、タワーとブレードは一体になって前後に大きく揺さぶられ、共振が発生する。何度かくり返したところで一番弱いブレード基部のところでボキッと折れてしまったと考えられる。脆性(ぜいせい)破壊が起こったわけだ。日本の耐震設計では、これは絶対にやってはいけないこととされている。

 

 1978年の宮城県沖地震を教訓に、1981年から新耐震設計法が施工された。大地震によって構造物は損傷を受けても、崩壊はさせない設計法が義務づけられた。とくに60㍍以上の超高層建築物では、「時刻歴地層応答解析」といって、実際の振動をコンピューターモデルに加えて揺らすシミュレーションをすることが義務づけられた。そして風力発電にも、2007年からこの設計と性能評価が義務づけられた。

 

 だから、このような脆性破壊を起こすブレードが性能評価をパスするはずがない。つまり風力発電では正当な耐震設計がおこなわれていない可能性があること、とくにナセル内の発電機器やブレードの性能評価がおこなわれていないことが、現地調査で明らかになった。

 

 洋上風力についてはどうか。


 国土交通省が浮体式洋上風力発電施設技術基準・安全ガイドラインを出しているが、「最大津波の想定をおこなうこと」と記述しているものの、日本海東縁部での津波シミュレーションは提示されておらず、津波による影響を考慮する具体的な方法(解析モデル)も示されていない。

 

 この20年間、日本の風力発電は様々な事故を起こしてきた。まず台風による事故で、タワーがへし折れるように倒壊したり、ブレードが3枚とも飛散した事故もあった。地震での損傷もある。怖いのが落雷による火災だ。

 

 沿岸技術研究センター参与の清宮理氏によると、日本の洋上風力発電はヨーロッパでつくられた発電機を持ち込んでいるが、日本はヨーロッパと違って台風や地震、落雷などがあり、地盤も含めて根本的に自然条件が違っている。ヨーロッパの発電機はそれを考慮する設計になっておらず、日本の自然条件に耐えうるかという懸念がある。たとえば風車規格の風条件を見ると、クラスⅠ(風速50㍍/秒)、クラスⅡ(同42・5㍍/秒)、クラスⅢ(同37・5㍍/秒)の3種類のみで、風速60~80㍍/秒にもなる日本の大型台風への対応が課題になっている。これに対して日本の自然条件を勘案した設計方法を再構築すべきだという意見が出て、現在議論が紛糾している状態だという。

 

 東北大学教授の今村文彦氏は、「浮体式風車発電施設に対する津波設計法は、私の知る限り研究されていない」とのべている。浮体式風車は数百㍍のチェーンで係留されるが、津波は海の底から上まで一斉に動くもので、サンゴ礁をズタズタにする力を持つ。風車はそれに耐えられるのか。

 

 300㍍級の風車は、津波で船や家が流されたとき、それに耐えられるのか。地盤変動に風車は耐えられるのか。強い揺れ(重力の2・8倍)に耐えられるのか。津波とともに風車が凶器となって陸を襲うようなことがあってはならない。促進区域指定の前に、陸上風力を含めて台風、地震、津波の影響を正しく評価し、発生する事故・被害の規模と確率を明示し、実施するか中止するかを判断すべきだ。

 

石狩湾に100万㌔㍗級の洋上風力発電計画


    北海道風力発電問題ネットワーク副代表 安田秀子

 

 洋上風力発電の進め方の問題点として明らかなことは、欧州では22・2㌔以上離すことを決めているのに、日本では離岸距離が数㌔しかないことだ。住民が生活しているところと近すぎるし、規模が大きすぎる。また、環境影響が考慮されないまま国によって事業実施海域が選ばれている。そして法定協議会が組織されるが、市民や環境団体が入れない。石狩市の場合、自治体が「有望な区域にしたい」と声をあげ、市議会や市環境審議会の審議もなく、市民無視で進めている。

 

 北海道の石狩湾はどういう海か。環境省が「生物多様性の観点から重要な沿岸域」に指定している。海の生物が産卵・成長する場所だ。サケやニシンなどの漁場があり、6つの漁業協同組合が操業している。ニセコ積丹小樽国定公園と暑寒別天売焼尻国定公園がある景観豊かなところで、道央最大の海水浴場もある。石狩市風力発電ゾーニング計画の「環境保全エリア」がある。

 

 この石狩湾で今年1月、石狩湾新港洋上風力発電所が稼働し始めた。8000㌔㍗の風車が14基あり、出力制御をして10万㌔㍗の発電量だという。事業者はグリーンパワーインベストメントで、工事には鹿島建設や清水建設などの大企業がかかわっている。国内最大の蓄電容量を持つ蓄電池(リチウムイオン電池)もできた。

 

 北海道大学の田鎖先生に協力してもらって「風車騒音の累積的影響予測」をつくった【図2参照】。40デシベルをこえると睡眠障害を起こすという疫学的調査結果があるが、沿岸域を中心に影響が出ることが懸念される。図の★印に住んでいる人は、「これまでも陸上風車が回っていて風下になったとき、めまいがして寝込んだりしていた。健康影響は洋上風車ができてから強くなった。風車が止まっていてもめまいの症状が消えない」といっている。その他にも体調がすぐれないという声を聞いている。

 

 これに加えて石狩市沖の一般海域は、国の再エネ海域利用法にもとづく有望な区域に選定されており、すでに11社が独自に環境影響評価手続きを開始している。コスモエコパワー100万㌔㍗(125基)、ジャパンリニューアブルエナジー100万㌔㍗(最大105基)、丸紅100万㌔㍗(71~105基)といった、それぞれ100万㌔㍗級の計画だ。

 

 さらに国は、石狩市浜益沖を浮体式洋上風力の実証実験の候補区域にあげた。昨年末にJERAによる環境アセスの手続きが始まったが、1万2600~1万4000㌔㍗の風車を2基建てるという。

 

 国は石狩湾を再エネ基地化し、浮体式洋上風力を開発して東南アジアに輸出することをめざしている。私たちは、北海道自然保護協会、石狩湾岸の風力発電を考える石狩市民の会、銭函海岸の自然を守る会など8団体で「石狩湾洋上風車建設反対道民連絡会」を結成し、署名運動や学習会、街頭宣伝活動・スタンディング、国・自治体に宛てた要望書・意見書の提出をおこなっている。

 

(石狩市在住)

 

なかったことにされている低周波音の健康被害


   風力発電を地域から考える全国協議会 山下友宏

 

 今、秋田県は「洋上風力の先進地」として全国的にPRし、いいことしかいっていない。私は課題点を主に報告したい。

 

 秋田県では現在、陸上風車が284基(66万㌔㍗)稼働しており、洋上風車は港湾区域で33基(13万8000㌔㍗)が稼働している。由利本荘市はすでに多くの風車に囲まれており、そこに新たに巨大洋上風車の計画が、離岸距離わずか2㌔のところに持ち上がって市民がたいへん心配している【図3参照】。離岸距離が近いと、騒音・低周波音の影響や景観への影響が大きい。

 

 すでに稼働している風車によって健康被害が出始めている。北海道大学の田鎖先生が風車騒音によるリスクを評価するソフトウェア「H-RISK」を開発した。それを使って、A特性音圧レベルで、環境省の指針値である35デシベル、また過去の疫学調査で不眠症リスクが増大した40・5デシベル以上の風車騒音が出る範囲を特定した。

 

 すると現在でも由利本荘市のかなりの地域で影響が出るという結果になった。さらに由利本荘市沖に計画されている洋上風力が稼働し始めると、その影響は由利本荘市全域に及ぶという予測結果が出た。市民全体にかかわる問題だ。

 

 海岸に林立している由利本荘海岸風力発電所の周辺住民から、健康被害についての声が寄せられた。そして2022年9月、4人の低周波音被害者が顔を出して由利本荘・にかほ市の風力発電を考える会とともに記者会見をおこない、被害者の会「風力だめーじサポートの会」設立を発表した。「風車が発する周期的な低周波音は4~5㌔先まで届き、眠れない、耳鳴り、頭痛、不安、動悸、疲労感、めまい、圧迫感などを引き起こす」「風車ができてから被害が出始めたのだから因果関係は明白。元の生活を取り戻すためには風車の稼働停止か撤去しかない」と訴えた。だが、このことを国や環境省は知りながら、なかったことにしている。

 

 秋田港(13基)と能代港(20基)で洋上風車が商業運転を始めた。工事のさい、モノパイルを海底に打ち込む音がたいへんな衝撃で、住民のなかで騒ぎになった。漁業影響については、イワシやハタハタの不漁など影響が出ているという噂があるが、県は調査しない→因果関係がわからない→問題ない、となっている。思っていてもいえない状況がある。

 

 また、景観は観光資源で、地元の財産であり、地元の人の故郷への愛着だ。二つの市民団体が県に調査を要望したが、3年間放置されたままだ。

 

 秋田県の人事についてだが、歴代の副知事はみんな経済産業省の出身で、風力発電を建てるために来ているようなものだ。

 

 「経済効果」は誰のためか? 『いい風、吹いている! 秋田の洋上風力発電』という冊子を秋田県産業労働部が作成し、県民にPRしている。確かに発電事業者や建設業者には風が吹いているかもしれないが、この事業を再エネ賦課金という形で負担しているのは国民だ。そのうえ低周波による健康被害を被らなければならない。経済のために住民は我慢しなければならないのか?

 

 そして海は誰のものか? 
 再エネという国策に住民が懸念を示すと「理解が足りない」という。しかし、住民への騒音・低周波音の影響、景観影響、鳥類や魚類への環境負荷について理解が足りないのは行政関係者ではないか。

(秋田県にかほ市在住)

 

離岸距離ゼロの風力計画、再エネに疑問持つ人は増加


 鳥海山沖洋上風力を考える会共同代表 三原容子

 

 山形県の日本海側(北の秋田県との県境)に鳥海山があり、海側に沿って遊佐町、酒田市、鶴岡市がある。

 

 遊佐町の洋上風力発電計画だが、現在、促進区域に指定されている。離岸距離が2~5㌔で、高さ270㍍、単機出力1万5000㌔㍗の風車を52基程度建てるといっている。それに続いて持ち上がったのが酒田市沖洋上風力発電計画で、現在有望な区域になっており、離岸距離は0~5㌔だ。これも最大出力50万4000㌔㍗という巨大な計画になっている【図4参照】。

 

 近隣の陸上風力では、酒田市十里塚風力発電が2021年に運転を開始した。クロマツに隣接する砂草地への建設だったが、これは山形県2300㌔㍗×3基、酒田市2300㌔㍗×3基と、建設主体である行政が日本で初めて、環境アセス逃れのための名義分離をやったことで知られる。

 

 一方、出羽三山風力発電は反対する会が立ち上がり、計画は白紙撤回となった。ラムサール湿地近接風車も反対運動が高まり、昨年、計画撤回となった。山形県と宮城県にまたがる蔵王風力も、2022年に計画中止となっている。

 

 私たちの考える会だが、2021年、遊佐町内での説明会で遊佐町と酒田市の住民が知りあい、遊佐沖洋上風力発電を考える会を立ち上げ、その後酒田市沖計画が加わるなかで、鳥海山沖洋上風力発電を考える会に改称した。武田恵世先生や鈴木猛康先生を招いて学習会を積み重ね、遊佐町や酒田市、山形県に意見書などを提出してきた。

 

 酒田市は長い間、住民説明会を一度も開かなかったが、今年6月に条件付きで「意見交換会」を開催した。そこで私たちは「組合長は賛成しているが、われわれはなにも聞いていない」と発言する漁師たちと出会った。

 

 そのなかで山形県と地元大学との関係もわかってきた。日本風力開発系列のエネルギー戦略研究所所長だった山家公雄氏が2012年、山形県のエネルギー政策総合アドバイザーに就任し、長く君臨した。翌年には東北公益文科大学(酒田市)の特任教授になった。そして2023年6月、山家氏は秋本真利と日本風力開発の贈収賄事件を前後して辞任したが、公益大関係者が県の委員会や地域の部会などを担当することが続いている。

 

 一方、革新系を地盤とする山形県の吉村美栄子知事は、出羽三山や蔵王の風力計画には反対したが、庄内海岸の洋上風力については無関心で、住民に対して「反対のための反対」との発言もあった。

 

 山形県は国や経産省とつながって再エネを推進する姿勢を崩していないが、市民のなかでは「再エネは自然に優しい」という宣伝に疑問を持つ人が増えており、低周波音の被害者で声を上げる人も出始めている。

 

・総合討論から

 

 次に北海道大学大学院工学研究院助教の田鎖順太氏と日本野鳥の会自然保護室主任研究員の浦達也氏が専門家として提言をおこなった。

 

 そのなかで田鎖氏は、国が北海道の日本海側、石狩市沖から岩宇・南後志地区沖、島牧沖、檜山沖、松前沖の5つの海域を洋上風力の「有望な区域」に指定しており(いずれも離岸距離は5㌔以内)、合計出力が300万~500万㌔㍗で、これほど近海にこれほど大規模な洋上風力発電の建設を計画した例は世界にないが、国の計画では騒音(大きな低周波成分を含む)の影響はまったく考慮されていないとのべた。

 

 そして、「騒音被害リスクを想定してみたところ、この地域の11市町村などで、環境省の参照値以上の曝露を受けるのが約3万人、その10%が入眠妨害を受けるかもしれないという推定結果が出た。睡眠障害はもっと大きな病気の引き金になる」とのべた。

 

 総合討論のなかでは、以上の状況をどのように打開するかをめぐって熱心な論議がおこなわれた。

 

 会場からの質問に答えて山下氏は、「“風力発電を導入したら原発○○基分”“CO2が減る”というのは風力発電協会や政府の誇大広告でしかない。実際は2022年の総発電量の1%、原発1基分の発電しかできていない。しかも風力発電は、火力発電のバックアップで成り立っているので、原発1基分のCO2が削減できているわけでもない。これだけ全国に風力をつくっても総発電量の1%も発電していないなら、1%の節電に人と金を投入した方が環境負荷は減る」とのべた。

 

 鈴木氏は「“洋上風力を20㌔以上沖合に出せばよい”という意見があったが、私は反対だ。日本海沿岸なら水深は500㍍程度になり、それだけの長さのチェーンで風車と海底をつないで係留しなければならない。もし津波が起こった場合、海の底から海水面まで一斉に水が動く。その力はすごい。また日本海側には海底断層があるので、地震が起これば地盤変動を起こすだろう。そこに台風が来る。20年間のメンテナンスをどうするのか。東京海洋大の先生によると、低周波は魚の身体の器官と共振し、嫌がって遠くにいってしまうという。そうしたことを一つ一つ検討したうえで進めるべきだ。しかも原資は国民が払う再エネ賦課金であり、今後何倍にもなることを心配している」とのべた。

 

 今後の方向として、「市民が声を上げ、全国で運動をやっている人たちとつながり、各分野の専門家と連携して、みんなで政治を変える運動を起こしていこう」と論議された。

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