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全国でメガソーラー火災相次ぐ 感電するため放水もできず 仙台市での火災は鎮火までに22時間 日没まで消防200人足止め

千葉県井原市で燃え上がる水上メガソーラー(2019年9月。総務省消防庁『消防の動き』2020年1月より)

 全国各地で、山の尾根などに設置されたメガソーラーの火災があいついでいる。宮城県仙台市青葉区芋沢にある「西仙台ゴルフ場メガソーラー発電所」では、15日午後に火災が発生し、消防車50台以上、消防隊員・団員200人以上が駆けつけたが感電の恐れがあるためすぐには手が出せず、22時間後の翌日になってようやく鎮火した。また、鹿児島県伊佐市では3月27日、メガソーラー「ハヤシソーラーシステム高柳発電所」の蓄電設備が入った建屋が爆発し、消防隊員4人が火傷を負い、重傷者も出ている。あいつぐ火災に各地のメガソーラー周辺住民のなかでは危機感が高まり、「今後、いつどこで同じ事故が起こらないともかぎらない。国はただちに全国の太陽光発電施設の総点検をやるべきだ」と訴えている。なにが原因でこんなことになっているのか、各地の実情を調べてみた。

 

「危険なもの地方の山に作るな」

 

 仙台市の「西仙台ゴルフ場メガソーラー発電所」は、JR東北新幹線・仙台駅から車で約30分、近郊の丘陵部に位置する西仙台カントリークラブの中にある。同カントリークラブが27ホールのうち9ホールを太陽光発電用地として貸し出し、そこに出力1万6000㌔㍗のメガソーラーをつくった。事業者はリッチ・ソーラー・エナジー合同会社(東京)で、2018年11月から発電を開始している。

 

 そのメガソーラーが火事だという通報が消防にあったのが、15日午後1時43分。当時の様子を映し出したテレビの映像からは、広大に敷き詰められたパネルの間からもうもうと煙が上がり、あちこちに炎も見えた。

 

 通報を受けた仙台市消防局から上空偵察のためのヘリコプター1台、消防車36台と消防隊員157人、加えて消防団から消防車16台と消防団員55人が出動した。現地に集結した消防隊員・団員はあわせて200人以上となった。それによって各消防局の通常勤務の人員が足りなくなったため、非番の隊員に出動を要請し、2次非常配備として680人が配置された。また、10㌧ポンプ車も四台出動したが、隣接する駐車場から水を引くためホースの長さは1㌔にもなったという。

 

 ところが、これだけの人員が集まったものの、太陽が照っている昼間はソーラーパネルは発電し続けており、放水すると感電する恐れがあることから手が出せなかった。そこで、日没までは周囲の山林に燃え移らないよう対策をとることに重点を置いたという。山林に延焼すれば山火事になって手がつけられなくなるし、道路をはさんで大きな住宅地もあるからだ。消防隊員は「当日は風が吹いていなかったから助かった。もし強風なら大火になっていただろう」といっていた。

 

 そして、日没後にようやく太陽光パネルに注水を開始。事業者が再燃防止のためにパネルと配線を分離する作業を始めたのも日没後だった。結局、鎮火したのは翌日の午前11時30分で、22時間燃え続けたことになる。仙台市消防局は、3万7500平方㍍の下草とパネルが燃えたと発表した。東京ドームの面積が4万6755平方㍍だ。人的被害こそなかったものの、相当な範囲が燃えたことになる。

 

 出火原因はなんだったのか? 消防局は「調査中」としている。一方、住民たちは「パネルの裏面の配線がショートし、下の枯れ草に火がついて燃え広がったのではないか。全国でもそういう例が多い」と語りあっている。そもそも「太陽光など再エネの発電装置をメンテナンスする人材不足」と経産省自身がいっている。阿蘇外輪山のメガソーラーをはじめ全国各地の山に巨大なメガソーラーをつくっているのだから、それをすべて定期的に綿密にチェックすることなど不可能だ。農機具のコンバインでも、配線をネズミがかじっていたというのはよくあることだ。

 

 住民たちは「太陽が照っている間は、メガソーラーに対して消火活動はできないし、広大に敷き詰められているパネルの中にも入れない。そのことが今回はっきりした。それほどの危険性があるのに、全国の山々にたくさんつくっている。いつどこで同じような火災が起きるかわからない。われわれは今までにない経験をした」と危機感を語っている。

 

 そのうえ、仙台市青葉区・太白区の尾根沿いではメガソーラー計画が目白押しだ【地図参照】。

 

 同じ青葉区の西側には、岩伸産業(大阪)が「仙台ハイランドメガソーラー発電所」(出力5万2000㌔㍗)をつくり、2020年に運転を開始した。また南側の太白区では、ブルーキャピタルマネジメント(東京)が、約115㌶の土地にパネル12万7500枚を敷き詰める「太白カントリークラブメガソーラー発電所」(出力5万1000㌔㍗)をつくる計画をうち出している。これに対して住民たちが反対する会をつくり、署名を集めて計画中止の申し入れをおこなっている。

 

 そして最近浮上したのが、秋保(あきう)町の山の上に「国内最大級の蓄電池と太陽光パネル製造工場」と「工場が利用する電力をまかなう太陽光発電所」を建設する計画だ。説明会に参加した住民によると、事業者はCES合同会社(沖縄県那覇市)だがバックにアメリカ資本がおり、すでに開発予定面積150万坪の9割を買い占めているという。

 

鎮火後にめくれ上がっている太陽光パネル(仙台市・西仙台ゴルフ場メガソーラー発電所、17日撮影)

 仙台市の太白カントリークラブメガソーラー建設に反対する会共同代表の安藤哲夫氏は、次のようにのべている。

 

 「今回の火災によって、消防車の入れない山の上にメガソーラーをつくっており、メンテナンスもきちんとされていないことが明らかになった。地元はかなり驚いている。太陽光発電の申請時から規制をもうけないと大変なことになる。しかも西仙台、仙台ハイランド、計画中だが太白カントリー、秋保と、ここの山岳地帯のほとんどがメガソーラーに覆われることになる。ここでもしパネルが発火した場合、広大な範囲に燃え広がり、目を覆うような事態になりかねない。とくに秋保はアップダウンが激しい地形で、下の方で火が出て上にのぼってきたら、山全体に火が移っていく可能性がある」

 

 「重要なことは、この辺りが水源地であり、ここを水源とする広瀬川と名取川が仙台平野に注いでいることだ。とくに名取川はダムがなく、豊かな生態系が守られており、水がいいということでビール工場やワイン工場ができている。この上流部分の森林を大規模に伐採してメガソーラーをたくさんつくると、保水力がなくなり、水源の枯渇や川の濁り、土砂災害の危険性が増し、それは仙台平野全体に影響を及ぼすことになる。もし有毒物が流されると、仙台平野のコメはアウトだ。この豊かな自然を次の世代に残したい」

 

蓄電施設爆発し重傷者 鹿児島県伊佐市

 

爆発し全焼した蓄電施設の建屋(鹿児島県伊佐市)

全焼した蓄電施設建屋を取り囲むメガソーラー(同上。いずれも伊佐湧水消防組合提供)

 一方、鹿児島県伊佐市にあるメガソーラー「ハヤシソーラーシステム高柳発電所」(出力1200㌔㍗)で先月に起こった火災では、消防隊員に重傷者が出た。

 

 この発電所は2017年運転開始で、事業者はハヤシエネルギーシステム(鹿児島市)。3月27日午後6時過ぎ、同発電所敷地内の建屋から白煙が出ているのを住民が発見し、消防に通報した。この建屋には、リチウムイオン電池を使った蓄電装置が5基置かれていた。10人の消防隊員が現場に駆けつけ、煙が充満した建屋の中に入り、排煙装置を設置している最中、突然複数回の爆発が発生し、建屋が炎上した。熱風と衝撃で消防隊員四人が負傷し、そのうち顔や手に火傷を負った2人は現在も入院中だという。

 

 爆発直後、周辺の住民はドーンという地鳴りのような音と振動とともに、火柱が上がったのを目撃している。周辺は水田だが、100㍍先には民家もあった。消防は、「電気設備なので水をかけるのは危ない」ことから一切の消火活動がおこなえず、自然に鎮火するのを待つしかなかった。そのため、鎮火が確認されたのは通報から20時間以上が経過した翌28日午後2時35分だった。

 

 専門家は「蓄電のためのリチウムイオン電池は、通電中は水分が加わると感電や爆発の恐れがある。この蓄電施設は大型で、水をかけるなどの消火活動はできず、自然鎮火を待つしかなかった」と説明している。

 

 伊佐市の警察と消防、総務省消防庁の消防研究センター職員などは合同で、4月9日から12日まで現場検証をおこなった。伊佐市消防局に聞いてみると、「調査結果はまだ発表する段階にない」ということだった。

 

 そのほか山梨県北杜市のメガソーラーでは、2020年12月に火災が起きた。メンテナンス作業中の作業員から「太陽光パネルの下の草が燃えている」と消防に通報があったという。強風に煽られ、山林に延焼したが、感電の恐れがあるため消火活動は難航した。原因について聞いてみると、消防の担当者は「調査した結果、原因は不明」と答えた。

 

 千葉県市原市の水上メガソーラーでも、2019年9月に火災があった。京セラTCLソーラー(東京)による「山倉水上メガソーラー発電所」(出力1万3700㌔㍗)で、山倉ダムの湖面上に設置する水上設置型だった。それが台風15号の強風によって、アンカーが湖底から抜け、浮かべられた太陽光パネル約五万枚のうちの8割が折り重なるように倒れ、複数箇所から出火し、炎と煙が立ち上った。車両の進入は不可能、船舶で接近して消火するのも感電の危険性があるため、岸から大容量送水ポンプ車で長距離放水をおこなったという。

 

 原因については、事業者が「パネル倒壊によるケーブル断線、アーク放電によって着火した」と報告している。

 

消防車は島に1台のみ 長崎県宇久島

 

 長崎県佐世保市の宇久島(人口約1700人)では、国内最大級のメガソーラー計画が持ち上がり、5月末にも本格着工が狙われている。事業者は京セラや九電工などが出資する「宇久島みらいエネルギー」。宇久島と隣の寺島の720㌶を開発し、太陽光パネル150万枚を設置するもので、出力は約48万㌔㍗。それによって島の1割以上が太陽光パネルで覆われることになる。

 

 今回の火災について、宇久島の生活を守る会会長の佐々木浄榮氏は次のようにのべた。

 

 「仙台のメガソーラー火災はかなりの人が衝撃を受けたのではないか。私たちも最初から、火災の問題を懸念していた。配線がショートしたりパネルが割れたところから漏電して発火し、枯れ草に燃え移ることはよくあることだからだ。宇久島にパネルを張り巡らせ、もし火災が起きたら、消防車はそこにどうやってたどり着くのか。作業道路があるところはいいが、ないところはどうするのか。水はどこから確保するのか、とずっと事業者に質問してきた」

 

 「根本的な問題として、宇久島には消防車が1台しかない。後は地元の人が入っている消防団に、旧型のポンプ車があるくらいだ。もし火事が起こっても、感電するのでシロウトが手を出すのは危険だ。最近、事業者が配ったパンフレットのQ&Aで、太陽光パネルが火災になったときの消火対策は? という問いに対し、島内に400カ所設置している変電設備に消火器を置いているので、それで消してくださいというような解答だった。まったく住民をバカにしている」

 

有毒物質出て作付中止 岩国市美和町

 

 岩国市美和町に住む農業者・中村光信氏も「太陽光パネルの下の雑草が伸び、漏電などで燃える可能性はおおいにある。配線が剥き出しなのだから。火災は全国どこで起きてもおかしくない」と語っている。

 

 美和町では、開発会社「東日本ソーラー13」(東京)が2016年からメガソーラー(7万5000㌔㍗)の建設に着手。森林110㌶を開発し、24万7000枚の太陽光パネルを設置する工事を始めた。すると2020年、雨が降ると農業用水に使う川に泥水が出始め、泡も出た。住民立ち会いのもとで水質調査をしてみると、鉛やヒ素という有毒物質が検出された。近隣では10軒前後の農家がコメをつくっていたが、一部の作付けを中止。事業者や県に申し入れをし、原因究明を求めたが埒があかず、今日まで有毒物質は出続けている。土壌汚染が原因でコメ作りをやめた農家も出ているという。

 

 中村氏は「地元のことを考えない事業者が、人が少ない山間部にやってきて、水源である尾根を壊して開発を進めている。ここはきれいな湧き水が出るところで、それを農業用水に使ったり飲み水に使ったりしてきた。子や孫の代まで影響が出ないかと心配している」と話した。

 

建築基準法除外が問題 専門家は語る

 

 今回の火災について、専門家のなかでは「国交省が“太陽光発電は建築基準法上の工作物ではない”という通達を出し、それによって太陽光発電が簡単に設置できるようになった。メガソーラーのあいつぐ火災は、制度上起こるべくして起こった問題だ」と指摘する意見が多い。

 

 防災推進機構理事長の鈴木猛康氏は、「建築基準法を適用した工作物になると、火災対策をしなければならず、たとえば消防車が入ることのできる道路だとか、防火用水だとか、感電するというのなら粉末系の消火剤を準備しておくとか、そういうことが必要になる。それによって安全性は担保される。ところがその建築基準法の適用をはずしているわけだから、それがすべての原因だと思う。それも太陽光パネルが2~3枚というシロモノではない。今回火災を起こしたメガソーラーは、パネル数万枚に蓄電施設やパワーコンディショナーをあわせ持つ工場のようなものだ」と語っている。

 

 また、風力発電については、「高さ60㍍以上なら超高層建築物と同じ扱いで、建築基準法が適用される。したがって消防設備を備えなければならないが、しかしそうなっていない。建築基準法適用なら、地震に対しても倒壊しないことを証明したうえで、日本建築センターの評定を受け、国交大臣の認証を受けることになっているが、それもやっていないのではないか」とのべた。

 

 国が再エネ事業者のために、規制を緩くしてサポートしているわけだ。

 

再エネ賦課金は値上げ 庶民からむしりとる

 

地表を埋め尽くすJRE山都高森太陽光発電所のメガソーラー(熊本県上益城郡山都町)

 以上のようにメガソーラーが抱える問題点は多岐にわたり、それは住民の命にかかわることなのに、ほとんど規制がかからないまま野放し状態となっている。それは「カーボンニュートラル(脱炭素)」が国策になっているからで、「CO2削減」という大義名分のもと、外資を含む再エネ企業が金もうけのために地方を食い物にし、住民生活を脅かしている。

 

 そして企業が再エネに群がるのは、国がFIT(固定価格買取制度)をつくり、太陽光や風力が発電する電気を高く買いとることを保証しているからだ。その原資は、各家庭が毎月支払う電気代に上乗せされて徴収されている再エネ賦課金である(ただし電力を大量に使う法人は免除)。再エネ賦課金は2030年には累計44兆円になり、それだけ再エネビジネスを潤わせることになる。

 

 この再エネ賦課金が4月から大幅に引き上げられた。昨年度は1㌔㍗時当り1・40円だったのが、4月からは3・49円と、2・09円も上がった。それによって月400㌔㍗時を使う標準家庭で、年間約1万円もの負担増になる。

 

 それだけではない。政府は電気・ガス代の補助金の打ち切りを決めており、補助金は5月使用分で約半額になり、6月以降はなくなる。それによって標準家庭で、7月以降は月約2000円の負担増。再エネ賦課金とあわせると、今年度は電気・ガス代で約3万円の負担増となる。火災になっても消火すらできない再エネビジネスのために一般家庭からむしりとるというのだから、いいかげんにしろとの声があがるのも当然だ。

 

 初めの問題に戻ると、今回のような火災は全国津々浦々の山々につくられたメガソーラーの、いつどこでくり返されてもおかしくない。だがその場合、消火活動は困難をきわめ、消防隊員や周辺住民の命すら危うくする。政府は全国のメガソーラーの一斉点検をおこない、必要な防災対策をとらなければ、国民は誰も納得しない。それだけでなく再エネ賦課金を廃止するなど、再エネ政策の抜本的な見直しが必要だ。今回の火災は、そのことへの強い警鐘である。

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