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「安保」改定50年 戦後65年を直視

 今年は「日米安保条約」が改定されてから50年目を迎える。敗戦によるアメリカ占領軍の直接支配ののち、1951年サンフランシスコ片面講和条約とともに「日米安保条約」が結ばれ、見せかけ上の独立が与えられた。1960年1月19日、岸内閣は「安保条約」の改定を調印したが、戦後最大の反米愛国の全国的な大政治斗争となって、アイゼンハワー大統領の来日を阻止し、岸内閣を打倒した。
 「日米安保条約」は軍事同盟であるがそれだけではなく、政治、経済から教育、文化にわたって日本社会を全面的に対米従属の植民地状態にすることを規定する条約であった。独立の見せかけのもとで、実際には対米従属構造が深まった。その結末が現在の無惨な日本社会の崩壊である。
 「安保条約」の下で、重化学工業を中心とする「高度経済成長」がはかられた。それによって日本は豊かになったと騒がれたが、今日では世界有数の貧乏大国になっている。「金融立国」と叫んで製造業は海外進出で国内にはいらないなどといって切り捨て、失業者はあふれる一方で労働現場は少人数の殺人労働が横行し、労働者は奴隷どころかモノ扱いとなっている。若い労働者のほとんどが不安定雇用であり、結婚し子どもを育てる見通しも立たない。
 農業は大豆からコメに至るまで、アメリカの余剰農産物を買い込まされて、壊滅させられようとしている。漁業も同じで、世界的な食料危機のなかで、アメリカに胃袋を支配され食料自給のできない国、飢餓の国にされてしまった。
 エネルギーも国産エネルギーであった炭坑をつぶして海外依存の石油に転換し、アメリカに頼るほかはないようにしてしまった。
 中曽根内閣からはじまり小泉内閣になって最高潮となった自民党政府の構造改革は、アメリカの市場原理主義なる要求の言いなりになって、日本社会をさんざんに破壊してきた。すべては資本の効率化といって、公共性や社会的規範をさんざんに破壊した。学問も教育も医療もアメリカの物まねで崩壊している。各省庁も自衛隊や警察、検察なども、大新聞もアメリカ直結の隷属関係で動いていく。
 日本の低金利は日本の金融資本を大もうけさせるためだけではなく、アメリカに日本の資金が流れるために強制され、1400兆円といわれる国民の金融資産のうち500兆~600兆円がアメリカのイカサマ証券や国債で紙くずになろうとしている。
 そして普天間基地移設などといいながら、米軍が日本中の自衛隊基地や港湾、空港を自由に使用できるようにし、日本全土の米軍基地化をすすめている。米軍再編といって、陸海空自衛隊を米軍が直接に指揮する体制をつくり、米軍指揮下の肉弾として組み込まれている。そしてミサイル防衛体制をとらされ、アメリカ本土への核攻撃の盾に日本列島を差し出されている。アメリカの国益のための戦争に日本の若者がかり出され、日本が再び原水爆戦争の戦場にされようとしている。
 外交の問題も、世界ではアメリカ合衆国の日本州扱いであり、独立した外交戦略を持った国とは見なされていない。
 日本の繁栄の問題も、平和の問題も、民主主義の問題も、独立の問題が最大の問題となっている。
 日本は海外に巨大な権益を持つ帝国主義国であるがアメリカの屈辱的な植民地的隷属下にあるという特質を持っている。
 このような日本社会のさんざんな崩壊状況は第二次大戦に根源がある。あの戦争では320万人が犠牲となった。あらゆる家族で親類に戦死者がいないところはないというほど殺された。あの戦争は天皇を頭とする独占資本集団が、国内をさんざんに搾取収奪して、狭隘な国内市場から海外に求めて侵略につぐ侵略、戦争につぐ戦争を繰り返し、最後に中国への全面侵略戦争を引き起こし、米英仏蘭列強の植民地争奪戦に突入して敗戦となったものであった。
 ところがアメリカの対日参戦は、アジアをファシズム国の侵略から解放するためでも、社会主義ソ連とともに日独伊ファシズムとたたかって民主主義の世界を実現するためでもなかった。アメリカは中国市場を奪う野望とともに、日本をたたきつぶし単独で占領するという明確な計画を持って臨んだものであった。
 そして天皇をはじめとする独占資本集団、政治家や官僚、大新聞など、戦争を指導してきた支配層は、人人には「鬼畜米英」「一億総玉砕」などとあおり立てながら、実際には「国体の変革」すなわち人民の革命を恐れ、米英に救いを求めていった。自らすすんでアメリカによる日本支配を担うこと、日本の民族的な利益のすべてを売り飛ばすことによって、自分たちの支配の地位を守ってもらう道を進んだ。
 現在むき出しにあらわれた日本社会の植民地的隷属状態は、日本の政財官界から新聞界などあらゆる支配勢力が、アメリカの利益のために自ら進んで日本の民族的利益を根こそぎ売り飛ばしてきたことによって進行した。かつて旧満州を統治するのに六〇万余の軍隊を必要とした。かつてマッカーサーは「天皇は一〇〇万の軍隊に匹敵する」といったが、四万人ほどの米軍で日本を隷属支配しているのは、アメリカの意向をくんで自分から進んで働いて地位を得るという売国的な支配勢力の存在があるからである。
 「日米安保条約」に規定された、米軍が日本に駐留するのは、日本を防衛するためという建て前であった。90年代の米ソ二極構造の崩壊後、その建て前は崩壊した。90年代の「安保」再定義によって、日米同盟は自衛隊を米軍の要請によって世界のどこへでも派遣するとし、米軍の下請け軍隊になる道を進んでいる。そして米軍の手下になることによって、すなわち米軍が日本全土を前線出撃基地にすることによって、日本の危機を招くことになっている。食料危機も生存権の危機も、アメリカの支配と独占資本がアメリカに隷属して一人大もうけするという構造がつくりだしている。
 現状では「日米安保条約」の規定をはるかに超えた日米同盟、対米従属関係となっている。それ以上に合衆国日本州として併合されるかのような観を呈している。戦前に天皇は超法規的存在であったが、いまではアメリカの支配、対米従属関係が超法規的な存在となっている。
 一切の日本人民の苦難の根源は、戦後社会を貫く対米従属構造にある。「日米安保条約」、米軍基地の存在、また政治、経済、文化、教育、メディアなどあらゆる対米従属構造が、農漁業生産、あらゆる製造業などの生産力の発展や科学技術や教育、文化の発展を阻害して日本社会を崩壊させる根源となっている。安保改定50年、戦後65年を迎えて、この問題と正面から向き合って日本の進路を切り開くことが切実な課題となっている。

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