【提言】
インボイス制度の中止・延期を求める
【提言理由】
適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度とは、税率を変更しない消費税の増税である。コロナ禍・戦争・物価高が襲う前の2016年にとり決められたインボイス制度を、ゼロゼロ融資の返済が本格化し、倒産件数が増え、実質賃金が15カ月連続マイナスとなる今、開始しなければいけない理由はどこにもない。
増税分は、「免税事業者」「課税事業者」「消費者」の誰かが負わされることになる。「誰か」を決めるのは、市場の力関係であり、現場の人間の骨の折れる折衝である。弱い立場にある免税事業者は課税事業者への転換を迫られ、従った場合には重い納税と事務負担が発生する。免税事業者のままでいた場合、取り引きからの排除、もしくは値下げを強要される可能性がある。免税事業者にとってはどちらを選んでも地獄の選択となるゆえ、「インボイスを機に廃業を考える」と答えた事業者は、アニメ・漫画といったエンタメ業界で2~3割、建設業界では1割にのぼった。
生み出す商品・サービスのクオリティやスキルの前に「インボイスの有無」が取引の線引になるインボイス制度は、自由な商取引を歪め、新規参入を阻む。若手の成長や起業を妨げれば産業は衰退し、文化の多様性も損なう。
制度開始前からインボイス未登録を理由にした一方的な値下げや取り引きからの排除も散見されるが、「これは、独禁法違反に当たる恐れがある」と公正取引委員会は警鐘を鳴らす。しかし、実際には「切られた理由」がわからないまま仕事を失うケースが多い。もともと、発注元に身元が割れることを危惧して公正取引委員会へ通報がしにくい弱い立場にある免税事業者は、ますます声を上げられない状況に追いやられている。加えて、影響を受ける事業者が1000万超ともいわれる中、公正取引委員会がセーフティーネットとして機能するとは到底、考えられない。
実務の現場では、取引相手が「免税/課税事業者であるか」「本則課税/簡易課税制度を使っているかどうか」といった、これまでは必要のなかった極めてプライベートな、慎重を要するデータの取得・管理に追われているが、その作業は一切、生産性に寄与しない。制度開始前から過重な事務負担が発生した結果、「経理の仕事を離れたい」と答えた経理担当者は3割強にのぼった。また、適格請求書発行事業者公表サイトにおいて、簡単なプログラミングで個人事業主の本名といった情報が一括ダウンロードできる脆弱なセキュリティは、個人情報の観点から逸脱しているといわざるを得ない。
各業界から反対の声があがる中、開始半年前になって激変緩和措置が講じられたことにより、インボイス制度は経過措置や特例だらけのより煩雑なものとなり、税の三原則「公平・中立・簡素」にも程遠い。唯一の制度導入理由である「複数税率の下での適正な課税」については、立法根拠となる「不適正な事例」の件数すら政府・財務省から提示されず、法案成立から七年経った現在も、道理の通った説明がない。
最後に。免税事業者がインボイス反対の声を上げると、「脱税」「ピンハネ」といった誹謗中傷を受ける事態があとを絶たない。しかし、財務省は消費税に「預かり税」はないという見解を国会で示しており、消費税法上も消費税に「預かり金」や「益税」があるとは認めていない。その見解の周知・広報を徹底し、免税事業者の尊厳が守られることを強く要請する。
我々はフリーランス・個人事業主の集まりであるが、インボイス制度は事業規模や業種にかかわらず、この国で生きるすべての人に影響するものと考える(実際、制度導入で電気代が上がることが国会で明らかになっている)。
現行のインボイス制度には、経済的「成長」も、事業を継続していける「安心感」も、個人情報が守られる「安全性」も、免税事業者への「尊厳」も欠けている。上記のような理由から、我々は、安心・安全・成長・尊厳のないインボイス制度の実施中止、最低でも実施の当面延期を強く求める。
2023年9月4日
インボイス制度を考えるフリーランスの会
どう考えても、政府側のずるい、こそくなやり方、当分自民党には投票しないようにしようと思っています。