いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

「佐賀の未来のため防衛省に土地は売らぬ」 佐賀・オスプレイ配備予定地の地権者らが工事差し止め訴訟へ “漁協に売却権限なし”

原告団を代表して工事差し止め訴訟の方針についてのべる古賀初次氏(6日、佐賀市)

 佐賀空港への陸上自衛隊オスプレイ等配備計画をめぐり、駐屯地予定地の地権者であり反対する住民の会会長の古賀初次氏らが6日に佐賀県庁で記者会見を開き、国を相手取って工事差し止めを求める仮処分を8月中に佐賀地裁に申し立てる方針を明らかにした。5月1日に地権者でつくる管理運営協議会が臨時総会を開催し、「3分の2以上の賛成」をもって土地売却決定を偽装したが、計画に反対する地権者たちは「共有地の売却は全員同意が必要」として土地売却議決は無効と訴えてきた。だが九州防衛局は、254人いる地権者との契約や地代の受領関係も成立しないまま佐賀県有明海漁協(登記人)の間で登記移転を含む売買契約を締結し、6月12日に強引に工事に着手するなど、2025年7月までの配備に向けて遮二無二に突き進んでいる。この動きを止めるため、今月29日には住民集会を開催し、裁判の支援を呼びかけて法廷で争っていくと訴えた。

 

民法上、全員同意のない共有地売却は無効

 

 最初に弁護団準備会の東島浩幸弁護士が、「裁判の方針としては、国を被告として建設差し止めの訴訟をおこなう。最初に仮処分を提出し、しかるのちに本訴を提起する。原告は佐賀空港オスプレイ配備に反対する地権者の方々であり、そして地権者の方々の建設差し止めを求める権利の根拠は、土地の共有権である」との方針を明確にした。

 

 そして現在建設工事が進められている駐屯地予定地の地権者が土地の所有権を持つに至った経緯を次のように説明した。

 

 この土地(防衛省がオスプレイ配備のために取得したとする共有地31㌶)は、国造干拓事業にともなう漁業補償として昭和56年に佐賀県知事が南川副漁協の漁業権者に対し「入植増反希望者に対して国造干拓の農地60㌶を配分する」という覚書を締結しており、佐賀県から直接地権者に対して権利が移転しているものである。

 

 昭和60年には昭和56年の覚書に基づく協定書が作成され、そこでも“増反者に農地として払い下げる”と書かれている。そして昭和63年に佐賀県から南川副漁協に登記が移転し、それが漁協合併によって今は佐賀県有明海漁協という名前で登記をしている。そのため登記上は佐賀県有明海漁協だが、実質的に土地の所有権を持っているのはそれぞれの地権者であり、その共有地である。

 

 このことから東島弁護士は、「反対地権者がいるなかで、登記を持っているからといって漁協が売却する権限があるはずもなく、売却権限がない者から購入した国は所有者ではなく、無権利者である。無権利者が占拠をし工事をしているわけであるから、所有権者である地権者が建設を差し止めるという訴訟の方針だ」とのべた。

 

 地権者であり、裁判の原告にもなっている南川副の漁師である古賀初次氏は、「これまでも法的手段をとると発言してきたが、今回東島先生たちと話をして私たち地権者の権利を守る裁判をおこなうことにした。私たちは絶対に土地を売らないということで反対運動をしてきた。それにもかかわらず防衛省は見切り発車で6月12日から工事を開始し、私たちの土地にダンプや重機を運び込んでいる。何食わぬ顔で人の土地に勝手に入り込み、工事をおこなっている。私も現場に行ったが、自分の土地であるにもかかわらず中に入ることもできなかった。本当に歯がゆい思いでいっぱいだ。こんな強硬なやり方を国がおこなっていいのか」と憤りを語った。そして「私は土地の共有という言葉を信じ、裁判で訴えるしかないと考えて決意をした。腹をくくっている」と力強くのべた。

 

 現在、原告団は地権者の7人。全員が川副町に住む漁師や元漁師の地権者だ。今後もあらたに原告として加わる地権者が増える可能性があるという。

 

 防衛省は住民説明会のなかで、「土地を売却していない」という地権者や市民の指摘に対し、「駐屯地予定地の所有者は佐賀県有明海漁協として登記されていることから、防衛省は佐賀県有明海漁協との間で売買契約を結んだ。そのさいの漁協内部の手続きに関しては漁協の判断であり、防衛省としては問題ない」との姿勢をみせてきた。そして254人の地権者に関しては「九州防衛局は地権者という認識ではなく、“関係者”だ」とまでいい放ち、「所有者は佐賀県有明海漁協であり、地権者ではない」という法をも無視した見解を示している。

 

 これについて東島弁護士は「これは訴訟のなかで主張していくことで今明らかにする必要はないが、基本的な考え方は、県から直接地権者の方が権利を受けており、防衛省がいっていることはまったく違う。防衛省は地権者の人たちが権利者だということをわかっているにもかかわらず、今になって否定してきているという話だと考えている」とのべた。

 

 また土地が254人の地権者の「共有」であることに関して「佐賀県から直接254名の地権者に所有権が移され、その254名の地権者の方々が民法上の『共有』関係にあるというのが基本だと思っている。そこにおいては、土地全体を売るには3分の2ではなく全員の同意が必要である。また持分を移転するのさえ制限しているなかで、管理運営協議会が土地を売る権限がそもそもあるのかという所も問題にはなるのではないか」とした。

 

 「この佐賀空港のオスプレイ等配備問題について地権者の方々に話を聞くと、佐賀空港をつくるさいに漁協と佐賀県との間で“自衛隊と共用しない”という『公害防止協定』が先輩漁業者たちの努力で結ばれ、それが実質的に佐賀空港が平和空港として運営される機能を果たしてきた。それを大切にしたいという思い、そして漁業環境がさらに悪化するのではないかという懸念も持っている。そして、平和を基礎とする佐賀のいろんな生活環境、バルーンや東与賀干潟を守っていくことなど、複合的な問題として反対していると聞いている。今回は土地の所有権を根拠に裁判をしていくことになるが、古賀さんたちのオスプレイ反対の思いは、平和への思い、漁業環境を悪化させない、佐賀の環境を保護するというものだ。この思いは地権者だけのものではなく、佐賀やその周辺地域に住んでいる人たち共通の願いであり、地権者の方々と思いを一緒にする人たちがたくさん集まろうとしている」とのべた。

 

 そのため「佐賀空港オスプレイ等配備に反対する裁判を支援し、地権者とともにたたかう市民の会」を設立し、29日に「裁判へのキックオフ集会」を開催する。現在、大学教授や国会議員、地方議員、文化人、芸能人、宗教関係者など約40人が呼びかけ人として名前を連ねているという。

 

共にたたかう市民の会 周辺住民も参加して集会も

 

防衛省が重機を入れて「工事着手」をアピールしたオスプレイ配備予定地(6日、佐賀市川副町)

 古賀氏は「5月1日に管理運営協議会の臨時総会があり、そこで3分の2以上が売却に賛成という結果が出て以来、防衛省はあまりにも強引なやり方で着工まで進めてきた。そのなかでも私たちは絶対に土地を売らないという思いをもとに運動を続け、他の6人の方も『私も絶対に土地は売らない。加勢する』と声をかけてくれた。私も息子たちがノリの養殖を続けていかなければいけない。これからも南川副支所のなかで仕事をしていかないといけないという葛藤もあったが、絶対に防衛省に土地は売らないと腹を決めている」とのべた。

 

 「土地売買の手続きのなかでは県有明海漁協と南川副支所が間に入った形になっているが、漁協関係については法的に訴えることはないのか」という記者からの問いに対しては、東島弁護士は「今は建設をやめさせなければならないというのが直接的に重要であり、所有権確認の訴訟などをして直接的な効果があるわけではない。建設差し止めであれば、当然(工事は)国がやっていることであるから、国を相手にする」とのべた。

 

 現在、共有地の管理運営委員会から各地権者に送られた「振込依頼書」(口座番号の確認)の回答に応じて防衛省から各地権者に対して土地代が振り込まれているが、古賀氏をはじめ、売却に応じずに口座番号を教えていない地権者は土地代を受けとっていないという状態になっているという。

 

 最後に古賀氏は「私たちの土地は共有であり、川副の言葉で『もやもん(もやいもの)』という。『もやもん』というと、みんなで持っているものであり、それを勝手にとったり傷つけたりするとそれこそ仲間はずれになるものだった。『もやもん』を『もやもん』として守らなければならない。『もやもん』は全部の者が権利をもっている。今回の土地の問題はそれと何も変わらない。それを3分の2以上で決定するというのは協議会が決めたことであり、法的には正しいのかという疑問がある。私も9年間オスプレイ配備計画への反対運動をしてきた。このままではこの9年間が無駄だったことになる。だから裁判でどういう結果が出るのかわからないが、9年間いろいろいわれながら頑張ってきたことを裁判がどう判断するのか見守りたい」と訴えた。

 

 今回設立する「佐賀空港オスプレイ等配備計画に反対する裁判を支援し、地権者とともにたたかう市民の会」の運動に関して、支援者である藤岡直登氏(住職)は「まずは法廷を支援者で埋めて、裁判官に対して関心が高い問題であることを示していきたい」とのべた。

 

 東島弁護士は「漁業者でない人がこの裁判を支援しようとなっているのは、このオスプレイ配備問題が地権者や漁業者だけの問題ではないという思いからだ。この市民の会は、他人事だけど可哀想だから助けてあげましょうというようなものではない。みな自分のこととして集まり始めている。原告は所有権のある地権者に限られるが、佐賀やその周辺に住む人たちに共通して関わってくる問題ということで、大勢の人たちでやっていく裁判を目指している」と話した。

 

 原告に加わっている地権者の男性は、「佐賀空港へのオスプレイ配備は完全に百害あって一利なしだ。600万円の土地代はノリ養殖を頑張っていればすぐに稼げる。それなのにその600万円のために豊かな有明海を手放してどうするのか。オスプレイが佐賀に配備されれば、いつ墜落するかわからないような機体が毎日頭上を飛び交うなかで漁をし、生活していかなければならなくなる。絶対に受け入れることはできない。なぜアメリカでも危険視されているようなオスプレイを日本が受け入れなければならないのか。そして自衛隊が配備されれば、いずれは米軍が訓練としてくるようになる。日本はアメリカに対して何もいえない。佐賀がめちゃくちゃになってしまう」と危機感を語った。

 

 そして「漁師は地域社会のなかで表だって訴訟に参加するということは難しい人もいる。しかしこの配備計画に心から賛成している人はいない。土地を売らなければ漁業に対する補助金がなくなるなどと脅されて仕方なく賛成している人も多い。その人たちにも土地を売らず海を守っていくことが正しいのだと訴えたい」と話した。

 

 藤岡氏は「今日本の国が戦争に向かって進んでいるのを感じている。何とかしてこの流れを止めなければならないという思いから、これまでもオスプレイ配備反対運動に参加してきたし、今回も地権者を支援する市民の会に加わった。オスプレイは敵地に乗り込んでいくヘリコプターであり、戦争をするための機体だ。戦争は絶対にくり返してはならず、日本が戦争に進もうとしている道を止めなければならない。一部の運動にするのではなく、たくさんの人に訴えて広げていきたいと思っている」と話した。

 

 7月29日に開催される「ストップ! 佐賀空港オスプレイ配備 裁判へのキックオフ集会」は、14時から佐賀市のメートプラザ佐賀多目的ホールでおこなわれる。オスプレイ佐賀空港配備のこれまでの動き、そして佐賀空港と同じような問題を抱えている各地の団体や支援者からの報告の後に、「佐賀空港オスプレイ等配備に反対する裁判を支援し、地権者とともにたたかう市民の会」設立総会がおこなわれる。

関連する記事

この記事へのコメント

  1. 自衛隊も軍隊もオスプレイも軍事兵器も軍事基地も戦争もいらない。日本の政府はなぜアメリカの政府の言いなりになるのか?アメリカ人はなぜ戦争をしたがるのか?人の命をゴミ扱いしないでほしい、戦争を起こそうとしないで欲しい。

  2. 戦争などを起こさない為に、私も人として間違った事に立ち向かう勇気を持ちたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。