いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

インボイス増税反対!全国一揆 国会前で1500人・全国20カ所でも同時実施 芸術、運輸、建設など業界こえ

国会前で開かれた「STOP!インボイス一揆」(14日)

 インボイス制度を考えるフリーランスの会(通称「STOP!インボイス」)が呼びかけて14日午後6時から、「増税もう無理 STOP!インボイス全国一揆」を開催した。政府が10月導入を既定路線とするなか、東京・国会正門前(約1500人・主催者発表)と全国約20カ所(約1000人・同)で、インボイス制度の導入の延期・中止を求めて声を上げた。東京会場ではアニメや声優、映画業界、軽貨物の運転手、ウーバーイーツ配達員や建設業界、弁護士、税理士など多彩な業界の人々がゲストスピーカーとしてマイクを握り、インボイス制度は大増税にほかならず、日本の経済や各分野の産業を壊滅させかねない問題であることを各業界の実態から訴えた。

 

10月導入を延期・中止させよう

 

 国会前には、午後6時から時間が経つごとに仕事を終えた人々などが集まり、歩道を埋めた。

 

国会前に集まった人々(14日)

 「インボイス制度の施行によって個人事業主や中小零細事業者が抱える問題ははかり知れず、この制度により負担を背負うことは必至。エンタメ業界のフリーランスのみなさんが負担の実態や影響に対して不安を訴え、他の業界と協力し立ち上がる姿勢に賛同している」
 「映画、映像業界もほとんどがフリーランスや小規模企業の方が大多数だ。コロナ禍もようやく収まりかけた今、性急にインボイス制度を導入することがどれほど多くの個人事業者をまた死活問題に追い込むのか、その結果をまったく想像できていない人たちが決めたことなのだろう。一方で、諸外国に比べ、創造活動者への助成や補助、補償が本当に少ない日本。こんな状況で文化の継承や世界に誇れる未来的価値を作り出すことができるのだろうか」
 全国一揆にはこうした賛同コメントが漫画家、作家、音楽業界などから多数寄せられた。

 

 主催者を代表して挨拶した「STOP!インボイス」の阿部伸氏は、知らないところで市民が立ち上がり、全国20カ所で同時に一揆がおこなわれていることにふれ、「普段は横のつながりを感じることは少ないかもしれないが、実際は同じ思いを多くの人と共有していると今夜、証明できたと思っている」とのべた。「『不景気のときは減税』、これは中学校3年生の公民の教科書に書かれている一節だ。こんな不景気なときにインボイスによる増税をやって、どうやって子どもを産み育てろというのだろうか。これ以上国民を貧困にしてどうするのか。江戸時代、五公五民だったら一揆が起きた。プライマリーバランスの黒字化をめざしている国は世界で日本だけだ。今、この不景気のときに増税をやるべきではない」とのべ、「全国一揆」開始を宣言した。

 

増税25万で生活できず 宅配ドライバー

 

多彩な業界から世代をこえて集まった人々(14日、国会前)

 軽貨物ユニオンの高橋英晴氏は、アマゾンや楽天などの通販や、ウーバーイーツなどのフードデリバリーなど、増え続ける宅配ドライバーのほとんどがフリーランスである実態を発言した。売上はおおよそ年間500万円。そこからガソリン代、保険代、駐車場代、修理費などの経費を引くと所得は200万円台だ。ここにインボイスが始まると、3年間は年間10万円だが、激変緩和措置がなくなれば25万円の増税になるとのべ、「年間10万円というとガソリン代3カ月分だ。25万円だと半月ただ働き。こんなことになってしまうと将来設計が立たない。少子化対策というがふざけるな! といいたい。子どもを産むことも育てることもできない」と訴えた。

 

 インボイスをめぐっては、説明もないまま「インボイス登録しなければ仕事は回せない」「登録しなければ10月から10%減額する」「契約を更新しない」といった話がなされており、泣き寝入りを強いられているのが現状だという。物流業界は2024年問題も抱えており、このままではドライバーが不足して2030年までに3割以上の荷物が運べなくなるといわれている。「インボイス制度を機に、軽貨物ドライバーをやめる人もいるだろう。インボイスをこのまま強行すれば買った物が届かなくなり、工場に部品が届かなくなり、スーパーには物が並ばないということだ。どんどん物の値段が上がる。財務省は日本を破滅に追い込むつもりだろうか」とのべた。「岸田総理は働く人の所得を増やすといっていた。だが25万円の税金を新たに払わされてどうやって所得が増えるのか。生活が回らないのに投資に回す金なんてない。こんなのは国家的詐欺だ」と訴え、廃止に向けて仲間を増やすことを呼びかけた。

 

 野菜農家の齋藤敏之氏は、農家の90%が免税事業者であり、「これからどうするか、だれもが本当に悩んでいる」と話した。市場、農協、スーパー、レストランや飲み屋など、さまざまなところに、さまざまな形で納品しており、インボイスへの対応はそれぞれ異なるという。「勉強したが、これはいくら頑張っても対応しきれない。インボイスは廃止するしかないという一点に意見がまとまり始めている。私たち農民は価格を転嫁できない。それどころか円安とウクライナ危機で肥料や農薬も上がり、畜産業に至ってはエサ代が上がり、毎日毎日赤字を生み出している。そういう状況のなかに増税が重なったら、このままの農業では続けられない」「こんな複雑怪奇なインボイスを中止させる最大の手はずは、まずはインボイスの登録をやめることだ」とのべ、インボイス廃止まで一緒に頑張ろうと呼びかけた。

 

 中小企業家同友会の石渡裕氏は、インボイスが実施されると、小規模企業、一人親方、フリーランスは、課税事業者になることを選んでも選ばなくても、仕事がしづらくなることは明白であり、経営環境を悪化させると指摘した。「同友会としてもインボイスは凍結ないし延期を訴えている。これが通れば日本の状況はますます経済的にひどくなっていくと思うので、断固みなさんと反対していきたい。またインボイスの問題だけでなく大増税にも反対していかないといけない」と話した。

 

 ウーバーイーツ配達員の土屋俊明氏は、6月に運営からメールが届いたが、「インボイス発行事業者として登録したらアプリを使って自分の税務情報を更新してください」とあるだけで、登録しなければどうなるか何も書いていないと話した。ウーバーイーツの配達員は、説明のないままアカウントを停止されることが頻繁に起こるといい、「コロナ禍が終わり、注文は減っている。募集も減っている。配達員そのものも減らされていきつつある。このなかでのインボイス。不安に感じない方がおかしい。アカウントを止められるのではないか、配達できなくなってしまうのではないかと心配している人はたくさんいる」と語った。STOP!インボイスの缶バッジをつけて配達していたところ、偶然出くわした男女に「賛同します」と声をかけられたことを紹介し、「インボイスの影響を受ける人は800万人とも、1000万人ともいわれている。今ここに集まった人は、その方たちの不安と願いを背負っている。われわれが不安なく働けるよう、インボイス制度はぜひとも中止してほしい」と訴えた。

 

 建設鍛冶工の大木栄一氏も、物価高のなかで価格転嫁できず、つぶれていく仲間が多くいるなかで、インボイス制度が迫っていると語った。建設業界に多くいる一人親方は、インボイス制度が始まると、年収400万円、500万円の人たちも消費税をとられるようになり、約1カ月分の収入を納税しなければならなくなる。発注元が下の人たち(一人親方など)の税金をかぶるか、下の人たちがインボイス登録をして税金をかぶるか、仲間内のどちらかが増税になる実態を話し、「こんな悪い制度は廃止すべきだ」と発言した。

 

アニメ・映画界からも 「文化の多様性奪う」

 

登壇して訴えたアニメーター、漫画家、演劇人たち(14日、国会前)

 映画、アニメ、演劇、音楽など芸術・文化業界はほとんどがフリーランスによって成り立っており、インボイス制度による影響は甚大だ。このなかで、声優の有志でつくる「VOICTION」をはじめ、「インボイス制度について考えるフリー編集【者】と漫画家の会」「アニメ業界の未来を考える会」「インボイス制度を考える演劇人の会」の4団体が立ち上がり、「STOP!インボイス」と一緒に行動してきた。

 

 4団体の関係者がそろって登壇し、それぞれの思いを訴えた。
 「アニメ業界の未来を考える会」でアニメプロデューサーの植田益朗氏は、「今、アニメ業界はインボイスでフリーランスのスタッフ、中小のスタジオ、大手スタジオみんな困っている。それは増税だからだ。その増税をだれに押しつけるかという非常に厳しい選択になってきている。私はプロデューサーという立場だが、アニメーター、声優の方々と一緒になって、とにかくインボイスを止めようということで頑張っていく」とのべた。今月にも外国特派員協会の記者会見でもこの問題を明らかにすることにふれ、「何十億という人が世界でアニメを楽しんでいる。そのような日本を代表するコンテンツをつくる業界を疲弊させていくこの制度については絶対に反対していきたい」と語った。

 

 一緒に登壇したメンバーも「アニメーターからすると“いいから仕事に集中させてくれ”の一言に尽きると思う」「インボイス制度がなくなって困るのは何とか省の人だけ。みんなで声を上げて止め、みんなで話し合って世の中を決めていけるような、そんな世界にできたらいいと思う」「一番嫌だと思うのは、免税事業者と課税事業者などで、国民同士が分断されることだ。まだ制度が始まる前なのに、ぶち壊されている。それがとても許せない。税制は公正、中立、簡素だ。簡素も守られていない。絶対にやめてほしい」など、それぞれの思いを訴えた。6月20日には、「漫画家の会」が第2衆議院会館前で初めての街頭宣伝をおこなうことを計画しているという。

 

 映画業界からは、映画監督の深田晃司氏が発言した。映画業界は8割近くがフリーランスで、そのうち6割強が年収300万円以下、9割近くが年収1000万円以下と、ほぼすべての俳優、スタッフがインボイス制度の影響を受けることになるという。

 

 フランスや韓国など諸外国と比べ、芸術労働者のための社会保障や雇用保障の制度は乏しく、雇用関係においてもフリーランスの立場は弱いことにふれ、「インボイス制度が導入され、免税事業者のままでいるかどうか、フリーランスの側に選択権はない状況だ。インボイス制度が導入されると文化・芸術の多様性がなくなる。文化・芸術の多様性は、生前に絵が一枚も売れなかったゴッホの例をあげるまでもなく、同時代的な経済的な評価でははかりきれない。そういったものを守るために各国さまざまな制度をとっているが、日本はそのような制度がもともとなく、文化予算も非常に少ないなかで、芸術に携わるスタッフや俳優が不安定な状態で働いており、インボイス制度の導入、実質的な増税によってまた大きなダメージを受ける。文化の多様性とは人間の多様性だ。人間の多様性が確保できない危機に今あると思っている。以上のことからインボイス制度の導入に強く反対する」とのべた。

 

 日本俳優連合の池水通洋専務理事は、45年にわたり数万人の俳優や声優たちに再放送料を分配する作業を担っていることを話した。再放送料は局ごとに決まっており、ローカル局になると1回の再放送が500円で、これを20人など出演者に分配しているという。

 

ミュージシャンによる演奏も(14日、国会前)

 出演者が亡くなった場合は遺族に2次使用料を分配しており、「そういった人たちを課税事業者と免税事業者に峻別しろという。そんなことはとてもできないと税務署にも国税にも何度も通ったが、“決まったことだから”と押しつけられる。課税・免税の峻別には大変なお金と時間がかかる。私たちの計算では1000万円かかる。1銭にもならない大きな仕事を押しつけられ、1000万円というお金を使わされる。インボイスとはそういう制度だ。今すぐ撤廃していただきたい」と切実な思いを語った。

 

 ミュージシャンの和(いずみ)氏も、「日本は中小企業が支えている。そして音楽、映画、声優たち、みなさんの心に潤いを与えるような人たちが仕事を辞めなければならないのは由々しき事態だと思っている。政治などを勉強したわけではないので、声を上げるなど大それたことではないかと思っていたが、思ったことをいうのは大事だ」とのべ、歌で会場を盛り上げた。

 

 そのほか芸術・文化業界からは、作家の鈴木傾城氏、ラッパーのダースレイダー氏、スタンダップコメディアンの清水宏氏もマイクを握った。

 

政治動かした力に確信 行動参加者たち

 

 「インボイス制度の中止を求める税理士の会」の菊池純氏は、「日本の消費税は帳簿方式をとっている。インボイス方式をとった売上税が廃案になったため、どうしても消費税を入れたい竹下内閣は帳簿方式をとった。この方式は免税事業者が排除されない、事務負担が楽だというメリットがある。帳簿方式で30年以上やってきて、なんの問題もない」とのべた。財務省はインボイス制度導入で2480億円の増収を見込んでいるが、これは一者当り15万4000円の増税を見込んだものであり、この金額を500万といわれる免税事業者数で換算すると7700億円になる。さらに最近、政府がインボイス登録を呼びかけたチラシを1300万枚配布したことを鑑みると、2兆円規模の大増税になると指摘した。「こんなことをしていると、日本は滅びてしまう。税制のことで言葉を発するのは税理士。これからも発していきたい」と決意をのべた。

 

 京都で「STOP!インボイス一揆」をおこなった安藤裕元自民党衆議院議員(税理士)は電話で登壇。
 「消費税は最初からウソで塗り固められている。消費者が負担する税金でもないのに、消費者が負担すると宣伝され、事業者の損益には一切影響がないと国民に教育された。今でも学校でそのような教育がされている。だからインボイスについても、“預かっている消費税を払わない人たちは、自分のポッケに入れているずるい人たちだ”という宣伝がまかり通り、いわゆる有識者という人たちもその誤解の下に政府の味方をして、事業者・国民の味方にならない。その有識者のいうことを多くの国民が信じるという構図ができあがっている」とのべた。「この大きなウソに立ち向かい、日本の社会を正常な経済にとり戻していくためにも、なんとしてもインボイスを阻止し、ひいては消費税を廃止に持っていきたいという思いで活動している。声を広げて頂き、力をあわせて延期、中止、消費税の廃止まで持っていきたい」と挨拶した。

 

 京都大学大学院の藤井聡教授も電話で登壇した。消費税の免税点制度は、所得税の累進制と同じように「税の応能負担の原則にもとづくもの」であり、1000万円以下は税率0%、1000万円をこえると10%と、売上に応じて2つの税率が適用されていたとのべた。「1000万円稼いでいる人は所得税が45%あるのは仕方ないが、所得が100万円くらいしかない人が4割、5割税金をとられると、手元に残るのは40万~50万円しかない。“益税だ”といっている人がいるが、これは全部勘違いだ。応能負担の原則にもとづく累進制の制度を壊して全員高額所得者と同じ税率にするというのがインボイス制度であり、人間の心があるとは思えない。不道徳をすればこの国は滅びる。絶対に許してはいけない」と語った。

 

 郷原信郎弁護士も、「消費税は預かり金だという大嘘をついたままインボイス制度を導入することは絶対にやめてほしい」と語気を強めた。消費税は取引段階で事業者が払う税金で、それを価格に転嫁できる人・できない人がいる現実があり、弱い事業者や消費者は消費税を負担し、強い事業者は負担しなくてよい構造になっているとのべた。今も人気ユーチューバーが「免税事業者がずるいことをしているのをやめさせるのがインボイス制度」と配信するなどしていることにふれ、「消費税は預かり金で、消費者は負担しているが、事業者はまったく負担していない」という認識が定着していることを指摘した。「こんな状況で、泥棒呼ばわりされてきた免税事業者の人たちが、インボイス制度でどれだけ苦しめられるか。これはある意味では人間の尊厳にかかわる問題だと思う」とのべ、「大ウソはやめろ。政府も国税も国民を騙してきたことを認めろといいたい」とのべた。

 

 なおこの日は、国会議員も多数参加し、インボイスを阻止するまでたたかうことを約束した。

 

 「STOP!インボイス」発起人の小泉なつみ氏(フリーライター)は、全国一揆に予想をこえる人が参加したことにふれ、「電子署名は20万5000筆集まっている。インボイスを追及する超党派議連ができ、90人の国会議員が名前を連ね、今夜20人近くが参加してくださった。すべて500日前にはなかったことだ」と、インボイスに反対する声が可視化され、政治家を動かしてきたことを語った。関西では一人で街宣をした人がおり、各地で一揆を計画した有志がおり、仕事道具を使い一揆の文字をつくった京都の竹細工職人がいるという。「この活動は呼びかける人がいて、それに応えてくれる人がいて、その積み重ねで500日やってきた。応えてくれた方が今回は逆に呼びかける側になってアクションを起こして下さったのではないかと思う。10月に制度が始まろうとしているが、政治とメディアに声を届けられるのは、やはり私たちしかいない」とのべ、一人一人の行動の積み重ねでインボイスを止めることができるのではないかと確信を語った。そして、署名100万筆、「お手紙リレー大作戦」で地方議会での意見書の採択をめざしていくことを呼びかけた。

 

関連する記事

この記事へのコメント

  1. そもそも細々した零細・個人が委託業務で大きな企業を支えているんですよ、日本という国は中抜き天国ですから。
    それもギリギリの価格でね。

    大きな事業も、底が腐れば倒れます。
    一番先に影響が出て倒れるのが零細・個人というだけで、最終的にはどうなるか。
    インボイスに関係のない方々も、おそらくは大きく傾くことになるでしょうね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。